FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE
大内転筋リリース ── 膝の内側の痛みを「内転筋裂孔」から読み解く
こんな方へ:膝の内側が痛む・変形性膝関節症(X脚型)と言われたが改善しない / 人工膝関節置換術(TKA)後も膝の痛みが残っている / 膝を曲げるときにある角度で痛みが出る / 大腿内側(内もも)の重だるさ・こわばり / 内転筋裂孔という言葉を初めて知った方 / 膝の痛みを扱う治療家・セラピスト
大内転筋(だいないてんきん)は骨盤の坐骨(ざこつ)下部から起こり、大腿骨の粗線・内側上顆に広く停止する最大の内転筋である。大腿内側を縦断する深部のこの筋は、股関節の内転・伸展(後部線維)を担うと同時に、停止腱の直前にある内転筋裂孔(ないてんきんれっこう)という開口部を通じて、大腿動脈・大腿静脈・伏在神経の通り道ともなっている。治療家・藤井翔悟の実技動画(YouTube ID: bHtbWN2xlaA)は、X脚型の膝の痛みや変形性膝関節症(OA)・TKA後残遺痛の原因として、関節の外=内転筋裂孔周辺の筋硬結(きんこうけつ)が見落とされていることを指摘し、内側上顆から指3本分上の硬結を触診・横圧評価で確認する独自の評価手順を示す。
監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-07-25
FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS
藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持
研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。
藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。
手技デモ(実演)
動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス
EVIDENCE
藤井式の技術を、査読論文4本で支持する
本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。
FUJII METHOD
論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性
評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする
研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。
この記事で学べること/結論を先に
この記事は、治療家・藤井翔悟による大内転筋(だいないてんきん)と膝の痛みをテーマにした実技解説動画(YouTube ID: bHtbWN2xlaA)の内容を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。テーマは4つ ── ①大内転筋とはどんな筋か(解剖・機能・内転筋裂孔) ②なぜこの筋が膝の痛みに関係するのか ③藤井先生が示す触診・誘発評価の手順 ④どうリリース(ゆるめる)するか。最初に正直に伝えておきます。この動画は「大内転筋をほぐす方法」という単純なハウツー動画ではありません。動画の最大のポイントは、膝の痛みの原因として見落とされがちな『関節の外』、具体的には内転筋裂孔周辺の筋硬結に着目し、横圧評価でそれが本当に原因かどうかを確かめる、という評価の発想を提示することにあります。
この記事の2本柱を最初に示します。(A)動画の手技=藤井先生の臨床経験に基づく評価と着眼点。X脚型の膝の痛みや変形性膝関節症(OA)・人工膝関節置換術(TKA)後の残遺痛においても、関節の外=内転筋裂孔周辺の硬結が原因になっていることがある、という視点。内側上顆から指3本分上の硬結を触診し、横圧しながら膝屈曲させて痛みの変化を見る誘発評価、そしてリリースによる改善。(B)周辺のエビデンス=大内転筋の筋活動異常・膝の運動連鎖・神経筋変調への介入を扱った実在4本の論文。(A)と(B)は明確に区別して提示します。
この記事の読み方 ── 動画(体験)と記事(地図)
動画は藤井先生の触診の当て方・硬結の見つけ方・評価・リリースの発想を『体験』するもの。記事は『いま何を、なぜやっているか』と『どこまでが研究で、どこからが臨床経験か』を持ち帰る地図です。この動画の核心である『内転筋裂孔の硬結が膝の痛みを起こしている』および『横圧評価で痛みが変わるかどうかを見る』という主張は、藤井先生の豊富な臨床観察に基づくものであり、これを直接検証したRCTや系統的レビューは現時点では存在しません。医療情報として、研究の裏づけと臨床経験を正確に区別した上で読み進めてください。
背景 ── なぜ「膝の痛み」に大内転筋が関係するのか
膝の痛みは整形外科領域でもっとも頻繁に遭遇する訴えの一つです。X線で軟骨のすり減りや骨棘の形成が確認され、変形性膝関節症(knee osteoarthritis: OA)と診断される方は非常に多い。しかし動画の冒頭で藤井先生が指摘するのは、このX線の所見と痛みが必ずしも一致しないという現実です。人工膝関節置換術(TKA)を受けた後でも膝の痛みが残るケースがある ── これは、痛みの原因が必ずしも関節の内側の軟骨摩耗や骨棘にあるとは限らないことを示唆しています。西洋医学的な画像診断では見えにくい『関節の外』に、痛みの原因が潜んでいることがある。動画はこの視点から始まります。
特に注目されるのが、X脚型(膝外反=knee valgus)の姿勢・動作パターンを持つ方の膝の痛みです。X脚の場合、大腿の内側ラインに慢性的なストレスが加わりやすく、内転筋群が緊張・硬化しやすい。そして大腿内側の筋群の中でも、最も大きく深部にある大内転筋は、その停止部直前にある内転筋裂孔という解剖学的な特徴から、特別な注意を要します。内転筋裂孔は大腿動脈・大腿静脈・伏在神経が大腿から膝窩部(膝の裏)へ通り抜けるための開口部であり、周辺の筋膜が硬化してこの裂孔を締め付けると、血流低下や神経の圧迫が生じて痛みや重だるさにつながる可能性があります。
さらに、大内転筋の停止部(内側上顆周辺)は、内側広筋(ないそくこうきん)の付着部とも近接しており、筋膜を介した連結があります。内側広筋は膝の最終伸展(いわゆるロック)を担う重要な筋ですが、大内転筋が硬くなることで内側広筋の滑走性が低下し、膝の内側の痛みや動きの引っかかりが生じやすくなる ── これが藤井先生の臨床的な観察の背景にある解剖学的な論理です。もちろんこれは仮説的な説明であり、この具体的な連鎖を直接証明した研究は現時点では存在しません。ただし大腿内側の筋群が膝の安定性と痛みに影響を与えるという観点自体は、近年の研究からも支持されるものです。
動画が提示するもう一つの重要な視点は、『膝が痛いからといって、膝の関節内だけを見ていては改善できないケースがある』という点です。TKA後も痛みが続く患者を前に、『なぜ治らないのか』と悩む治療家・患者双方にとって、関節の外=筋膜・筋硬結という視点は盲点になりやすい。藤井先生はその盲点を、大内転筋・内転筋裂孔という具体的な解剖学的ターゲットとして提示しています。この動画の価値は、シンプルな手技の紹介だけでなく、評価の発想を変えるきっかけを提供する点にあります。
大内転筋の解剖と機序 ── 内転筋裂孔という「特別な構造」
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大内転筋は坐骨下部(起始)から大腿骨の粗線・内側上顆(停止)まで、大腿内側の深部を広く覆う最大の内転筋です。上部(恥骨下枝側)は内転を担い、下部(坐骨側)は伸展にも関与します。停止の直前に内転筋裂孔(大腿骨と腱の間の隙間)があり、ここを大腿動脈・大腿静脈が通過して膝窩部へ下ります。
大内転筋(adductor magnus)は、内転筋群の中で最大の筋です。起始は骨盤の坐骨(座る骨=ざこつ)の下部 ── 具体的には坐骨結節から坐骨枝・恥骨下枝にかけての広い領域 ── から始まり、大腿骨の後面を走る粗線(そせん)に沿って広く停止します。最も遠位(膝に近い)の停止部は大腿骨の内側上顆であり、ここへの停止腱が形成する孔(あな)が内転筋裂孔です。大内転筋は、上部(前部・恥骨側)の線維が主に股関節の内転を担い、下部(後部・坐骨側)の線維は股関節の伸展にも関与します。大腿後面の内側を斜めに縦断するこの筋は、ハムストリングスとも近接し、機能的にも解剖的にも密接な関係を持ちます。
内転筋裂孔(adductor hiatus)という名前は、聞きなれない方も多いでしょう。これは、大内転筋の腱(停止腱)と大腿骨の間にできる楕円形の開口部です。大腿を供給していた大腿動脈・大腿静脈はこの裂孔を通って膝の裏側(膝窩部)へ移行し、膝窩動脈・膝窩静脈となります。また伏在神経(ふくざいしんけい)もここを通過します。すなわち内転筋裂孔は、下肢への重要な血管・神経の通り道という、解剖学的に重要な意味を持つ場所です。
この構造的な特徴が、動画の主張と直結します。内転筋裂孔の周辺に筋硬結(筋の局所的な硬化・痙攣)が生じると、その硬結が裂孔を取り囲む組織を締め付け、血流(動脈・静脈)の滑らかな流れを妨げる可能性があります。局所の血流が低下すると、筋肉の代謝産物(乳酸・ブラジキニンなど)が蓄積し、痛みを感じる侵害受容器が活性化されて痛みや重だるさが生じやすくなります。さらに伏在神経への圧迫が加わると、膝の内側の感覚異常やじんじんとした不快感も出やすくなります。
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内転筋裂孔は、大内転筋の腱と大腿骨の間にある開口部で、大腿動脈・大腿静脈・伏在神経がここを通って膝窩部へ下ります。この部位が硬くなった筋硬結(筋膜の緊張)によって締め付けられると、血流の低下・静脈のうっ滞が生じ、局所の代謝産物が蓄積して痛みや重だるさにつながる可能性があります(藤井先生の臨床的な考え方。この直接的なメカニズムを検証した研究はまだ限られます)。
図5で示したように、大腿遠位部の断面で見ると、内転筋裂孔の周囲に大腿動脈(赤)・大腿静脈(青)・伏在神経(黄)が密集しています。硬結がこの部位に生じると、これらの構造への物理的な圧迫が起きやすくなる ── これが解剖学的に見た大内転筋・内転筋裂孔周辺の問題の本質です。なお、動画では内側広筋との連結も言及されています。大内転筋の停止部(内側上顆)は内側広筋の付着部とも近く、筋膜の緊張が内側広筋の動きに影響を与えることで、膝の屈曲・伸展のメカニズムにも波及しやすいのです。
動画の手技を図解する ── 評価・触診・リリースの手順
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動画の核心。X脚型の膝の痛みや変形性膝関節症でも、関節外の内転筋裂孔周辺に硬さが出ていることがある。内転筋裂孔は大腿動脈・静脈の通り道でもあるため、ここが締め付けられると血流が悪化する。また大内転筋は内側広筋とも筋膜でつながるため、膝の内側の痛みや膝屈曲時の痛みに影響しうる。
動画(藤井翔悟)が示す評価と手技の流れは明快です。まず前提として、X脚型の膝の痛みを訴える患者に対して、藤井先生は関節外の評価をすることを強調します。特に内側ラインに硬さが出ているケースで、内転筋群、とりわけ内転筋裂孔の周辺が痛みの原因になっていることが多いと臨床的に観察している、というのが出発点です。内側上顆(ないそくじょうか)は膝の内側に触れるゴリッとした骨の出っ張りで、解剖学的なランドマーク(位置の目印)として確認しやすい場所です。
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藤井先生の評価のポイント。膝の内側上顆(ゴリッとした骨の出っ張り)から指3本分ほど上に触れると、グリグリとした筋硬結がある部分に当たります。この硬結が大内転筋・内転筋裂孔周辺の評価ポイントです。
触診のポイントは、内側上顆から指約3本分(4〜5cm程度)上に移動した場所です。この部位に指を当てると、グリグリとした硬い線維状の感触(筋硬結)に触れることがあります。これが動画で評価ポイントとして示される部位で、大内転筋の停止腱・内転筋裂孔周辺に相当します。触診の際は患者に膝を立てた状態(膝屈曲位)をとってもらうと、大腿の内側筋群がゆるんで触れやすくなります。内側上顆の2〜3指上から大腿内側を丁寧に触れながら上へ移動し、硬結のある部分を確認します。
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動画の評価手順。硬結を内側方向へグーで横圧しながら、患者に普段痛みが出る動作(膝屈曲100度あたりなど)をしてもらいます。横圧をすることで痛みが軽減・消失すれば、その膝の痛みは内転筋裂孔周辺の硬結が原因と判断できます。痛みが変わらなければ、その部位は原因ではありません。
疼痛誘発評価(確認テスト)が、この手技の最も重要なステップです。硬結を確認したら、グーにした手のセンター部分(第2〜第3中手骨頭付近)を硬結に当て、内側方向への横圧(水平方向の圧)を加えます。この横圧を維持したまま、患者に『普段痛みが出る動作』をしてもらいます。動画では膝の屈曲100度あたりで痛みが出る例が挙げられます。横圧を加えながら膝を屈曲させたとき、痛みが軽減する・または消失するようであれば、その患者の膝の痛みは内転筋裂孔周辺の硬結が関与していると判断できます。逆に痛みに変化がなければ、その部位は主因ではないと考え、他の評価に移行します。この『横圧評価で痛みが変わるかどうかを見る』というアプローチは、治療を行う前に原因を絞り込む精度を高めるための、藤井先生独自の臨床判断法です。
評価で内転筋裂孔の筋硬結が原因と判断されたら、その部位をリリース(ゆるめる)します。動画では具体的なリリース手技の詳細(圧の深さ・時間・方向)は詳述されていませんが、『普段使っている手技でこの内転筋裂孔を緩める』と説明されています。一般的な手技の原則として、筋硬結に対しては過度な強さや速さを避け、組織の抵抗に合わせてゆっくりと圧を入れ、硬結が徐々にゆるむのを感じながら行うことが基本です。圧は患者が『痛いけど気持ちいい』と感じる程度を目安とし、強い痛みを我慢させるほどの圧は避けます。リリース後に再度評価動作を行い、痛みの変化を確認することで、治療効果の即時評価が可能です。
症例の考え方・FAQ ── よくある疑問に答える
Q. 変形性膝関節症と診断されていますが、内転筋裂孔が原因になることはあるのですか? ── A. 変形性膝関節症(OA)は軟骨の摩耗・関節の変形を主体とする疾患ですが、OAのX線所見と痛みの強さは必ずしも相関しないことが知られています。特にX脚型(膝外反型)のOAでは、内側ラインへの反復的なストレスが内転筋群の緊張を引き起こしやすく、内転筋裂孔周辺の硬結が膝の痛みの一因になっているケースが、藤井先生の臨床では見受けられると説明されています。ただし『OAがあれば必ず内転筋裂孔が原因』とは言えません。まず評価(横圧テスト)で確認することが重要です。OAの診断があり、整形外科での管理が行われている場合は、自己流でのアプローチは担当医に相談してから行うことを強くお勧めします。
Q. TKA(人工膝関節置換術)後に膝の痛みが残っているのですが、このアプローチは参考になりますか? ── A. 動画では、TKA後でも膝の痛みが残るケースの一因として内転筋裂孔周辺の問題を挙げています。人工関節を入れても痛みが残るということは、痛みの原因が関節内の軟骨・骨だけではなかった可能性を示唆します。ただしTKA後は手術部位周辺の組織の回復過程があり、深部への圧迫は手術創や修復された組織に影響を与える可能性があります。TKA後の方が内転筋裂孔へのアプローチを検討する場合は、必ず担当の整形外科医・リハビリ専門職に相談してから行ってください。自己判断での強い圧は控えるべきです。
Q. 内側上顆から指3本分上を押しても、硬結が分かりません。どうすればいいですか? ── A. 大内転筋は大腿内側の深部に位置するため、脂肪層・皮下組織を通して触れる必要があり、慣れていないと分かりにくいことがあります。まず膝を立てた状態(膝屈曲位)で大腿の力を完全に抜いてもらうことが重要です。力が入っていると筋全体が緊張して硬結の識別が難しくなります。触れる深さは、最初は軽い圧から始め、ゆっくりと組織をたどるように指を沈めます。また、内側上顆のランドマークをしっかり確認してから計測すると、評価部位のばらつきを減らせます。それでも不明な場合は、理学療法士・柔道整復師など専門職に評価を依頼することをお勧めします。
Q. 押すと拍動を感じるのですが、続けていいですか? ── A. 絶対に止めてください。拍動を感じるということは、大腿動脈(または膝窩動脈)に直接または間接的に圧が加わっている可能性があります。内転筋裂孔付近は大腿動脈・静脈が通過する場所であり、これらの血管に強い圧をかけることは危険です。すぐに圧を解除し、安静にしてください。引き続き痛みや腫れが見られる場合は医療機関を受診してください。評価・リリースを行う際は常に『拍動を感じたら即座に離す』を鉄則としてください。
安全・受診勧奨 ── この手技を行う前に確認すること
図は横にスワイプして拡大表示できます
内転筋裂孔付近には大腿動脈・大腿静脈・伏在神経が走ります。強く鋭く押し込むことで血管を傷める可能性があるため、ゆっくり・圧は加減して行います。拍動を感じたら即座に離す、強い痛み・しびれ・腫れ・熱感がある場合はすぐに医療機関へ。人工膝関節置換術(TKA)後・深部静脈血栓症(DVT)リスクがある方・下肢のしびれや感覚障害がある方は、自己流でのアプローチを控えてください。
内転筋裂孔付近へのアプローチを行う際の安全のポイントを整理します。①押す力は強すぎないこと:深部に位置する構造を無理に圧迫すると血管・神経に影響します。ゆっくり・徐々に圧を加え、組織の抵抗に合わせて行います。②拍動を感じたら即座に離す:大腿動脈が通過している部位のため、拍動感は血管への過度な圧の警告サインです。③強い痛み・しびれ・熱感がある場合は即中止:通常のリリースは不快感を伴うことはありますが、ピリピリとしたしびれや焼けるような強い痛みは神経への刺激が過度な場合のサインです。④禁忌に相当する状態:深部静脈血栓症(DVT)・血液凝固異常・活動性の感染症・骨折・悪性腫瘍の疑いがある方、人工膝関節置換術(TKA)後で担当医の許可なし、の場合は行ってはなりません。⑤妊娠中の方は必ず医療機関に相談してから行ってください。
この記事を読んで膝の内側の痛みへの新しい視点を得ていただけたなら嬉しいです。大内転筋・内転筋裂孔という解剖学的な構造が、膝の痛みと思いもよらない形でつながっているかもしれない ── この視点は、長年改善しない膝の痛みに向き合う患者さんにも、治療家にとっても、評価と治療の選択肢を広げる一助になりえます。ただし、それはあくまでも『可能性』であり、まず適切な医療機関での評価を受けることが大前提です。動画で示された評価と手技を参考に、安全を守りながら、自分の体への理解を深める一歩として活用してください。
まとめ・参考文献
この記事のまとめ:①大内転筋は坐骨から大腿骨内側顆に停止する最大の内転筋であり、停止腱直前の内転筋裂孔(大腿動脈・静脈・伏在神経の通り道)が解剖学的なポイントである。②藤井先生の動画は、X脚型の膝の痛みの原因として、関節外の内転筋裂孔周辺の筋硬結が見落とされているケースを指摘し、内側上顆から指3本分上を横圧しながら屈曲させる誘発評価で原因を絞り込む手法を示す。③引用した4本の論文(Khou 2024・Tarchichi 2025・Fidalgo-Martin 2022・Lee 2020)はいずれも大内転筋リリースそのものを検証したものではなく、手技の方向性を間接的に照らす周辺エビデンスである。④強い痛み・拍動・しびれがある場合は即中止し、TKA後・DVTリスク・感覚障害のある方は担当医に相談してから行うこと。
限界と注意・受診の目安
- ▸拍動を感じたら即座に圧を解除してください(大腿動脈・膝窩動脈への過度な圧の危険)。
- ▸強い痛み・ピリピリしたしびれ・腫れ・熱感がある場合は即中止し、医療機関を受診してください。
- ▸人工膝関節置換術(TKA)後の方は担当の整形外科医・リハビリ専門職の許可なしに行わないでください。
- ▸深部静脈血栓症(DVT)リスクがある方・血液凝固異常・活動性の感染・骨折・悪性腫瘍の疑いがある方は禁忌です。
- ▸妊娠中の方は必ず担当医に相談してから行ってください。
- ▸この記事の情報は医療行為の代替ではありません。膝の痛みが強い・改善しない場合は必ず整形外科を受診してください。
- ▸効果には個人差があります。動画・記事の内容を実践して痛みが増す場合はすぐに中止してください。
- ▸この記事のエビデンスは大内転筋リリースを直接検証したものではなく、周辺領域の系統的レビューの間接的な引用です。「治る」という断定はできません。
監修・参考文献
掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。
監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)
- [1] Khou SB, Saki F, Tahayori B.(2024).「Muscle activation in the lower limb muscles in individuals with dynamic knee valgus during single-leg and overhead squats: a meta-analysis study」. BMC musculoskeletal disorders.
- [2] Tarchichi J, Zalaket J, Graveleau N, Laboudie P, Bouguennec N.(2025).「Evidence for arthrogenic inhibition of the gluteus medius after anterior cruciate ligament injury: A systematic review」. Journal of experimental orthopaedics.
- [3] Fidalgo-Martin I, Ramos-Álvarez JJ, Murias-Lozano R, Rodríguez-López ES.(2022).「Effects of percutaneous neuromodulation in neuromusculoskeletal pathologies: A systematic review」. Medicine.
- [4] Lee JW, Lee JH, Kim SY.(2020).「Use of Acupuncture for the Treatment of Sports-Related Injuries in Athletes: A Systematic Review of Case Reports」. International journal of environmental research and public health.