FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE
内転筋リリース ── X脚型の膝の痛みと内転筋裂孔の評価・横圧アプローチ
こんな方へ:膝の内側が痛い・変形性膝関節症(X脚型)と診断されたが改善しない / 膝を曲げるとある角度から内側に痛みが出る / 大腿内側(内もも)の重だるさ・こわばりが続く / TKA(人工膝関節置換術)後も膝の痛みが残っている / 内転筋裂孔(adductor hiatus)について知りたい治療家・セラピスト / 鼠径部周辺の評価を深めたい理学療法士
内転筋群(大内転筋・長内転筋・短内転筋・恥骨筋・薄筋)は恥骨・坐骨から大腿骨内側(粗線・内側上顆)へ扇状に広がる筋群で、股関節の内転と下肢の安定を担う。最大の大内転筋の停止腱が形成する内転筋裂孔(ないてんきんれっこう)を大腿動脈・大腿静脈・伏在神経が通過するため、この部位に筋硬結が生じると血流低下・神経刺激により膝の内側に痛みが出やすくなる。治療家・藤井翔悟の実技動画(YouTube ID: bHtbWN2xlaA)は、X脚型OAや膝内側の痛みの原因として関節の外=内転筋裂孔周辺の硬結が見落とされているケースを指摘し、内側上顆から指3〜4本分上の硬結を触診・横圧しながら膝を屈曲させ痛みの変化を評価する独自の手順を示す。
監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-10-01
FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS
藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持
研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。
藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。
手技デモ(実演)
動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス
EVIDENCE
藤井式の技術を、査読論文4本で支持する
本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。
FUJII METHOD
論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性
評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする
研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。
この記事で学べること ── 2本柱と正直な線引き
この記事は、治療家・藤井翔悟による内転筋と膝の痛みをテーマにした実技解説動画(YouTube ID: bHtbWN2xlaA)の内容を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。テーマは5つ ── ①内転筋群とはどのような筋群か(解剖・機能・内転筋裂孔の意味) ②なぜX脚型の膝の痛みに内転筋が関与するのか ③内転筋裂孔周辺の触診と横圧評価の手順 ④どのようにリリース(ほぐす)するか ⑤周辺の研究は何を語り、何を語らないか。最初に正直に伝えておきます。動画の最大のポイントは「内転筋をほぐすシンプルなハウツー」ではありません。膝の痛みの原因として見落とされがちな『関節の外』、具体的には内転筋裂孔周辺の筋硬結に着目し、横圧評価でそれが本当に原因かどうかを確かめるという評価の発想の転換を提示することにあります。
この記事の2本柱を明示します。(A)動画の手技=藤井先生の臨床経験に基づく評価と着眼点。X脚型の膝の痛みや変形性膝関節症(OA)・人工膝関節置換術(TKA)後の残遺痛においても、関節の外=内転筋裂孔周辺の硬結が原因になっていることがある、という視点。内側上顆から指3〜4本分上の硬結を触診し、横圧しながら膝屈曲させて痛みの変化を見る誘発評価、そしてリリースによる改善確認。(B)周辺のエビデンス=鼠径部痛への保存療法(Brito 2023)・股膝OAへのドライニードリング(Jiménez-Del-Barrio 2022)・セルフ筋膜リリース(Martínez-Aranda 2024)・経皮的神経変調(Fidalgo-Martin 2022)を扱った実在の4本の論文。(A)と(B)は明確に区別して提示します。
この記事の読み方
動画は藤井先生の触診の当て方・硬結の見つけ方・評価の発想を『体験』するもの。記事は『いまなぜ・何をやっているか』と『どこまでが研究で、どこからが臨床経験か』を整理する地図です。「内転筋裂孔の硬結が膝の痛みを起こしている」「横圧評価で痛みが変わるかどうかで原因を判断する」という主張は藤井先生の豊富な臨床観察に基づくものであり、これを直接検証したRCT・系統的レビューは現時点で存在しません。医療情報として、研究の裏づけと臨床経験を正確に区別した上で読み進めてください。
背景 ── なぜ「膝の痛み」に内転筋が関係するのか
膝の痛みは整形外科でもっとも頻繁に遭遇する訴えの一つです。X線(レントゲン)で軟骨のすり減りや骨棘の形成が確認され、変形性膝関節症(knee osteoarthritis: OA)と診断される方は非常に多い。しかし動画の冒頭で藤井先生が鋭く指摘するのは、このX線の所見と痛みが必ずしも一致しないという現実です。人工膝関節置換術(TKA: total knee arthroplasty)を受け、骨のアライメントが完璧に修復された後でも膝の痛みが残るケースがある ── これは、痛みの原因が必ずしも関節の内側の軟骨摩耗や骨棘だけにあるとは限らないことを示唆しています。西洋医学的な画像診断では見えにくい「関節の外」に、痛みの真の原因が潜んでいることがある。動画はこの視点から始まります。
特に注目されるのが、X脚型(膝外反=knee valgus)の姿勢・動作パターンを持つ方の膝の内側の痛みです。X脚の場合、大腿の内側ラインに慢性的なストレスが加わりやすく、内転筋群が緊張・硬化しやすい傾向があります。内転筋群の中でも最大かつ最も深部にある大内転筋(adductor magnus)は、停止腱の直前に内転筋裂孔(adductor hiatus)という解剖学的に特殊な開口部を持ちます。内転筋裂孔は大腿動脈・大腿静脈・伏在神経が大腿から膝窩部へ移行するための通り道であり、周辺の筋膜が硬化してこの裂孔を締め付けると、血流の低下や神経への刺激が生じて膝の内側に痛みや重だるさが出やすくなるというのが、藤井先生の臨床観察の中核にある考え方です。
さらに動画では、内側広筋(ないそくこうきん)との連結も言及されています。大内転筋の停止部(内側上顆周辺)は内側広筋の付着部とも近接しており、筋膜を介した連結が存在します。内側広筋は膝の最終伸展(いわゆるロック機構)を担う重要な筋ですが、大内転筋が硬くなることで内側広筋の滑走性が低下し、膝の内側の痛みや動きの引っかかりが生じやすくなる可能性があります。この連鎖は解剖学的に説明可能な仮説ですが、直接証明した研究は現時点では存在しません。「膝が痛いから膝だけを診る」という発想から、「膝の痛みは関節の外の筋膜・筋硬結が原因になっていることもある」という視点の転換 ── これが動画全体のメッセージです。
内転筋群の解剖と内転筋裂孔 ── 機序を立体的に理解する
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内転筋群は恥骨・坐骨から始まり、大腿骨の内側(粗線・内側上顆)に向かって扇状に広がります。恥骨筋・長内転筋・短内転筋・大内転筋・薄筋の5筋を含みます。最大の大内転筋の停止腱が形成する内転筋裂孔(★印)を、大腿動脈・大腿静脈・伏在神経が通過します。この裂孔周辺の硬結が膝の内側の痛みに関与します(藤井先生の臨床観察)。
内転筋群(adductor group)は、骨盤の恥骨・坐骨から起こり、大腿骨の内側(粗線・内側上顆)に向かって扇状に広がる5つの筋からなります。図1のように、最も浅層(表面側)にある恥骨筋(pectineus)は恥骨上枝から大腿骨小転子下の恥骨筋線に付着し、その深層に長内転筋(adductor longus)・短内転筋(adductor brevis)が位置します。最大かつ最深部にある大内転筋(adductor magnus)は、坐骨結節から坐骨枝・恥骨下枝にかけての広い起始部を持ち、大腿骨の粗線全体から内側上顆まで広く停止します。内側の細長い帯状の筋が薄筋(gracilis:ざっきん)で、恥骨下枝から起こり膝関節の内側(鵞足部)に停止します。
内転筋群の機能は股関節の内転(大腿を体の正中線に向けて引き寄せる動き)ですが、大内転筋の後部線維(坐骨結節起始)は股関節の伸展にも関与し、機能的にはハムストリングスに近い側面も持ちます。日常生活では、歩行時の着地後に骨盤を安定させる役割、特に一脚支持相における骨盤の横方向の安定に貢献しており、この機能が低下すると下肢全体のアライメントが崩れやすくなります。
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大内転筋の停止腱(内側上顆)と大腿骨の間にできる楕円形の開口部が内転筋裂孔(adductor hiatus)です。大腿動脈・大腿静脈がここを通って膝窩動脈・膝窩静脈となり、伏在神経もここを通過します。周辺に筋硬結(局所的な筋の硬化・痙攣)が生じると、これらの構造を圧迫して血流低下・神経刺激を起こし、膝の内側の痛みや重だるさにつながる可能性があります(藤井先生の臨床観察)。
図2は内転筋裂孔の構造を示します。内転筋裂孔(adductor hiatus)とは、大内転筋の停止腱と大腿骨の間にできる楕円形の開口部です。大腿前面を供給していた大腿動脈・大腿静脈はこの裂孔を通過して膝の裏側(膝窩部)へ移行し、膝窩動脈・膝窩静脈となります。また伏在神経(saphenous nerve:膝の内側・下腿内側の感覚を担う)もここを通過します。すなわち内転筋裂孔は、下肢への重要な血管・神経の通り道という解剖学的に極めて重要な意義を持つ部位です。
この構造的な特徴が、動画の主張と直結します。内転筋裂孔の周辺に筋硬結(局所的な筋の硬化・痙攣)が生じると、その硬結が裂孔周囲の組織を締め付け、血流の滑らかな流れを妨げる可能性があります。局所の血流が低下すると、筋肉の代謝産物(乳酸・ブラジキニンなど)が蓄積し、痛みを感じる侵害受容器が活性化されて痛みや重だるさが生じやすくなります。さらに伏在神経への機械的な刺激が加わると、膝の内側の感覚異常やじんじんとした不快感も出やすくなります。この部位は内側広筋の付着部とも近接しているため、硬結の影響が膝の内側全体の機能に波及する可能性があります。
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X脚(膝外反=knee valgus)の場合、大腿内側ライン ── とりわけ内転筋群 ── に慢性的な緊張・硬化が起きやすく、内転筋裂孔周辺の締め付けが強まります。動画で藤井先生が指摘する通り、X線では骨の変形が確認されても、その痛みの原因が関節の外=内転筋裂孔の筋硬結にある場合、内転筋を評価せずに治療すると改善が限定的になります。左:正常アライメント(内転筋の張力バランスが良い) 右:X脚型(内転筋が慢性的に緊張→内転筋裂孔の硬結)。
図3はX脚型の動作パターンと内転筋硬化の関係を示します。膝外反(X脚)の姿勢が長期化すると、大腿内側ライン、特に内転筋群が慢性的に緊張した状態に置かれやすくなります。この緊張が内転筋裂孔周辺の硬結を形成しやすくし、血流低下・神経刺激を介して膝の内側に慢性的な痛みをもたらす ── これが藤井先生の臨床観察の中核にある機序の説明です。変形性膝関節症においても、このような軟部組織の硬化が関節変形と並行して、あるいは変形とは独立して痛みの一因となりうる点が、動画で強調されています。TKA後も痛みが残るケースの一部は、関節の変形は矯正されても内転筋裂孔の硬結という「関節の外」の問題が解決されていないことが原因となっている可能性があります。もちろんこれは仮説的な説明であり、直接証明した研究は現時点では存在しません。
動画の手技 ── 触診・横圧評価・リリースの手順
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藤井先生が示す触診手順。患者を仰向けにして膝を立てた状態(股関節・膝関節90°程度屈曲)にします。内側上顆(骨のゴリッとした出っ張り)を確認し、そこから指3〜4本分上の部位 ── 内転筋裂孔に当たる筋肉のグリグリした硬結部 ── を触診します。グーにした手の中央部で内側方向に横圧しながら膝を屈曲させ、痛みが誘発されるか・または軽減するかを評価します。
動画で藤井先生が示す手技の流れを整理します。まず解剖学的な理解が出発点です。大内転筋は坐骨の下部から起こり、大腿骨の粗線を経て、最終的に大腿骨の内側上顆(ないそくじょうか)に停止します。内側上顆は膝関節の内側にある骨の出っ張り(ゴリッとした硬い部分)で、患者本人にも確認してもらえる骨のランドマークです。内転筋裂孔は、この内側上顆から「大体4横指上、または膝関節の内側から約2横指上の内側上顆からさらに3横指上」に位置します。この部位にグリグリとした硬い筋の線維(硬結)が触診できます。
触診の実際の手順は以下の通りです。まず患者を仰向けに寝かせ、評価する側の膝を立てます(股関節・膝関節をそれぞれ90°程度屈曲させた状態)。この姿勢は大腿内側の筋肉を適度にゆるませ、触診しやすくします。次に内側上顆を触診で確認します。膝関節の内側の骨のゴリッとした出っ張りがそれです。そこから指3〜4本分(約5〜6cm)上に向かって、大腿内側の深部に指を当てていきます。多くの患者でこの部位に「グリグリとした硬い筋の線維の束」が触知できます。これが内転筋裂孔周辺の筋硬結です。押すと圧痛(押すと痛い)があれば、関与の可能性がさらに高まります。
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動画が最も強調するのは、やみくもに筋をほぐすのではなく、まず評価で「この硬結が本当に膝の痛みの原因かどうか」を確認してからリリースするという考え方です。横圧評価で痛みが誘発・再現された場合、その硬結が原因である可能性が高いと判断し、通常の手技でリリースします。リリース後に同じ動作を再評価し、痛みの変化を確認することで効果を検証します。
最も重要な評価ステップは「横圧評価」です。グーにした手の中央部分(第2〜4指の第2関節)を使って、触診した硬結に対して内側方向に横から圧迫を加えます。この横圧をかけたまま、患者の膝を屈曲させます(膝が痛みを生じる角度まで曲げていく)。このとき2パターンを評価します。①横圧をかけると膝の痛みが「誘発・再現」される場合 ── 内転筋裂孔の硬結がその患者の膝の痛みの原因の一つである可能性が高い。②横圧をかけると膝の痛みが「軽減・消失」する場合 ── 同様に、硬結が痛みに関与していると判断できます。変化がなければ、他の部位・原因を精査します。
評価で関与が確認されたら、いつも使っている手技で内転筋裂孔周辺の硬結をリリースします。動画では具体的なリリース手技の細部は提示されていませんが(「いつも使っている手技でほぐしてください」と述べられています)、筋肉の繊維方向に沿った横断摩擦・横圧・ニーリングなどが一般的なアプローチです。リリース後は必ず同じ動作評価(膝を曲げたときの痛みの確認)を繰り返し、痛みが軽減・消失しているかを確認します。この「評価→手技→再評価」のサイクルが動画の真髄です。むやみにほぐすのではなく、評価で原因を確認してから介入する、という治療の哲学が凝縮されています。
この手技が示す視点の革新性
従来の「膝が痛い→膝を診る」というアプローチに対して、「膝が痛い→まず関節の外(内転筋裂孔)を評価する」という発想の転換がこの動画の核心です。特にX線で変形が確認されていても・TKA後も残遺痛がある場合でも、関節の外の軟部組織が原因になっている可能性をまず評価してみる、という姿勢は、臨床の現場で多くの「なぜ治らないのか」という疑問に対するヒントを与えます。ただしこれはあくまで藤井先生の豊富な臨床経験に基づく観察であり、大規模なRCTで検証された方法論ではありません。
症例の考え方・FAQ ── よくある疑問に答える
Q1. 「X線で変形性膝関節症と診断されましたが、内転筋の評価は必要ですか?」 ── A. 藤井先生の臨床的な観察によれば、「変形性膝関節症と診断されていても膝の痛みの原因が内転筋裂孔の硬結にある場合がある」ということです。特にX脚型(膝外反型)の膝OAで膝の内側に痛みがある場合は、内転筋裂孔周辺の評価を行う価値があります。X線所見(軟骨摩耗・骨棘)と痛みが必ずしも一致しない ── TKA後も痛みが残るケースがあること ── を踏まえると、「画像診断の外」にある軟部組織を評価することは臨床的に合理的なアプローチです。ただし変形が進行している場合は整形外科医との連携も重要です。
Q2. 「X脚でなくても内転筋裂孔の硬結が膝の痛みの原因になりますか?」 ── A. 動画では特にX脚型OAとの関連を強調していますが、アライメントに関わらず内転筋群が慢性的に緊張・硬化することで内転筋裂孔周辺に硬結が生じる可能性はあります。長時間の歩行・スポーツ活動・デスクワークによる股関節の屈曲位保持などが内転筋群の緊張につながるケースもあります。動画の評価手順(横圧評価)は、アライメントに関わらず「この硬結が本当にこの患者の膝の痛みに関与しているか」を確認するためのものです。まず評価を行い、変化があれば関与していると判断する、という手順が重要です。
Q3. 「TKA(人工膝関節置換術)後も膝の痛みが残っています。このアプローチは有効ですか?」 ── A. 動画の中で藤井先生は、TKA後に骨のアライメントが完璧に修復されても痛みが残るケースの一因として、内転筋裂孔周辺の硬結という「関節の外」の問題を挙げています。TKA後は手術周辺の瘢痕・軟部組織の変性・筋萎縮なども生じているため、評価はより慎重に行う必要があります。特に術後の炎症が残っている急性期や、感染・血栓などの懸念がある場合は、まず執刀医・リハビリ担当医に相談することが最優先です。安定した経過観察期間中で、かつ他の原因を除外した上で評価を行うことが適切です。
Q4. 「内転筋裂孔あたりを押すと非常に痛い場合はどうすればよいですか?強い圧痛がある場合は、まず軽い圧(指の腹で触れる程度)から始め、徐々に深度を増やしていく gradual approachが基本です。脈動感(拍動)を感じたらすぐに圧を軽くしてください。電撃感・しびれ・下肢の脱力感が出た場合は即座に中止し、神経への機械的刺激が疑われますので専門医に相談してください。また、内転筋裂孔を確認しようとして大腿動脈・大腿静脈を強く押してしまうと危険です。解剖を十分に理解した治療家が行うべき評価です。
安全・受診勧奨・まとめ
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内転筋裂孔の近くには大腿動脈(赤)・大腿静脈(青)・伏在神経(黄)が走ります。強圧・急激な力は危険です。施術中に脈動感・電撃感・下肢のしびれが出たらすぐ中止してください。安静時痛・夜間痛・著明な腫脹・発熱・歩行不能などの赤旗がある場合は整形外科・脊椎外科の受診を最優先してください。このアプローチは医療行為の代替ではありません。
以下の「赤旗(red flags)」がある場合は、手技よりも先に医療機関への受診を強く推奨します。安静時・夜間の強い膝痛がある。発熱・体重減少・全身倦怠感を伴う膝の痛みがある(感染・腫瘍の可能性)。外傷後(転倒・スポーツ受傷直後)に膝が著明に腫脹している。膝の脱力感・ロッキング(膝が曲げ伸ばしの途中で引っかかって動かなくなる)がある。足のしびれ・感覚鈍麻が数日以上持続している。排尿・排便の障害がある。これらは靱帯損傷・半月板損傷・骨折・神経障害・関節内感染・腫瘍など、徒手療法よりも先に医学的評価が必要な疾患のサインである可能性があります。また大腿動脈・大腿静脈が走行する鼠径部には強圧・急激な力を加えないこと、脈動感を感じたらすぐに離すことを厳守してください。
まとめです。内転筋群(大内転筋・長内転筋・短内転筋・恥骨筋・薄筋)は股関節の内転と下肢の安定を担う重要な筋群です。最大の大内転筋の停止腱が形成する内転筋裂孔は大腿動脈・大腿静脈・伏在神経の通り道であり、この部位の硬結が膝の内側の痛みを引き起こすケースがある ── これが藤井先生の臨床観察の中核です。特にX脚型OAやTKA後残遺痛の患者において、関節の外という視点が見落とされがちな盲点を照らします。触診→横圧評価→リリース→再評価というサイクルが手技の真髄であり、評価で関与を確認してからリリースするという姿勢が重要です。鼠径部痛への保存療法SR(Brito 2023)・膝OAへのDNメタ解析(Jiménez-Del-Barrio 2022)・SMR系統的レビュー(Martínez-Aranda 2024)・PNM系統的レビュー(Fidalgo-Martin 2022)は、筋・軟部組織への標的的介入が痛みと機能に影響しうるという方向性を示す周辺証拠ですが、内転筋裂孔という特定ターゲットへの効果を直接証明したものではありません。
限界と注意・受診の目安
- ▸内転筋裂孔の近傍には大腿動脈・大腿静脈・伏在神経が走行します。施術前に解剖学的な理解を確認し、脈動感・電撃感・下肢の急激なしびれ・脱力が出た場合はすぐに中止してください。
- ▸安静時痛・夜間痛・発熱・体重減少を伴う膝の痛み、外傷後の著明な腫脹・出血、排尿排便障害は手技の禁忌となる赤旗サインです。これらがある場合は先に整形外科・脊椎外科の受診を優先してください。
- ▸「内転筋裂孔の硬結が膝の内側の痛みを起こす」「横圧評価で原因を判断する」という主張は藤井先生の臨床経験に基づくアプローチです。これを直接検証した質の高いRCT・系統的レビューは現時点で存在しません。効果には個人差があります。
- ▸TKA術後の患者・抗凝固療法中の患者・鼠径部の感染・腫瘍が疑われる場合は、このアプローチは禁忌です。執刀医・主治医に相談してから行動してください。
- ▸本記事は医療行為の代替ではありません。症状が改善しない・悪化する場合は専門医へ相談してください。
監修・参考文献
掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。
監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)
- [1] Brito R, Cruz P, Costa D, Afonso S, Barros P.(2023).「Nonsurgical Interventions for the Management of Long-Standing Groin Pain in Athletes: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials」. Cureus.
- [2] Jiménez-Del-Barrio S, Medrano-de-la-Fuente R, Hernando-Garijo I, Mingo-Gómez MT, Estébanez-de-Miguel E, Ceballos-Laita L.(2022).「The Effectiveness of Dry Needling in Patients with Hip or Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-Analysis」. Life (Basel, Switzerland).
- [3] Martínez-Aranda LM, Sanz-Matesanz M, García-Mantilla ED, González-Fernández FT(2024).「Effects of Self-Myofascial Release on Athletes' Physical Performance: A Systematic Review」. Journal of functional morphology and kinesiology.
- [4] Fidalgo-Martin I, Ramos-Álvarez JJ, Murias-Lozano R, Rodríguez-López ES.(2022).「Effects of percutaneous neuromodulation in neuromusculoskeletal pathologies: A systematic review」. Medicine.