FUJII FASCIA INSTITUTE シンボルマークFUJII FASCIA INSTITUTE藤井翔悟 筋膜研究所

FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE

エビデンスレベル:専門家意見

肘筋(アンコネウス)リリース ── テニス肘の「見落とし筋」を外側上顆後面から読み解く

こんな方へ:テニス肘(外側上顆炎)と診断されたが改善しない / 肘の外側がズキズキ・重だるい / 前腕をひねるたびに肘外側が痛む / 肘を伸ばすときに引っかかり感がある / 肘の施術を行う治療家・セラピスト

肘筋(ちゅうきん:anconeus)は上腕骨外側上顆の後面から起こり、肘頭外側面と尺骨後面上部に停止する小さな三角形の筋である。橈骨神経(後骨間神経)の支配を受け、肘の伸展を補助するとともに、前腕の回内・回外時に肘関節を安定させる「補助安定筋」としての役割を担う。テニス肘(外側上顆炎・外側上顆症)の治療では短橈側手根伸筋(ECRB)が注目されることが多いが、同じ外側上顆に起始する肘筋のトリガーポイントが「見落としの原因」になっていることがある。治療家・藤井翔悟の実技動画(YouTube ID: KM2BQIJD_6Y)は外側上顆周辺の硬さの評価と上腕二頭筋・三頭筋の間の組織評価を主な内容とする(動画が肘筋のみを対象としたものであるかは字幕から確定できないため、本記事はその旨を正直に明記し、肘筋の解剖・エビデンスを独立した情報として提示する)。

監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-08-04

FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS

査読論文 4本と照合SR/メタ解析

藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持

研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。

藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。

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手技デモ(実演)

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動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス

EVIDENCE

藤井式の技術を、査読論文4本で支持する

本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。

FUJII METHOD

論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性

評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする

研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。

この記事で学べること/結論を先に

この記事は、治療家・藤井翔悟による外側上顆周辺の評価と手技を解説した実技動画(YouTube ID: KM2BQIJD_6Y)の内容を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。テーマは「肘筋(ちゅうきん:anconeus)」── テニス肘(外側上顆炎)の治療でしばしば見落とされる小さな三角形の筋です。最初に正直にお伝えします。提供された動画の字幕を確認したところ、外側上顆周辺の硬さの評価と上腕二頭筋・三頭筋の間の組織評価が主な内容として確認できましたが、動画が肘筋のみを対象とした専門解説であるとは字幕から断定できませんでした。そのためこの記事では、(A)肘筋の解剖・機能・トリガーポイント理論という独立した医学情報と、(B)動画で示されているであろう外側上顆周辺の評価アプローチを、明確に区別して提示します。

この記事の2本柱をあらかじめ示します。(A)肘筋の情報=解剖学・生理学・トリガーポイント理論に基づく医学情報。肘筋は外側上顆の「後面」に起始する三角形の筋で、前腕の回内・回外時に橈骨頭周囲を安定させる役割がある。テニス肘の痛みが長引く場合に、ECRB(短橈側手根伸筋)ばかりに注目しすぎて肘筋の硬化を見落としている可能性を考える視点。(B)周辺のエビデンス=横断摩擦マッサージ、経皮的針電気分解(PNE)、鍼などの筋膜・トリガーポイントへのアプローチを扱った実在4本の系統的レビュー・メタ解析。(A)と(B)を明確に区別して読み進めてください。

この記事の読み方 ── 動画(体験)と記事(地図)

動画は藤井先生の手技・評価の考え方を体験するもの。この記事は『いま何を・なぜやっているか』と『どこまでが研究で、どこからが臨床経験か』を持ち帰るための地図です。今回の動画は字幕から肘筋専用であると確定できなかったため、動画の手技説明は「外側上顆周辺の評価一般」として記述し、肘筋の解剖情報は独立した文献情報として提供します。医療情報として、研究の裏づけと臨床経験を正確に区別した上で読み進めてください。

背景 ── なぜ「肘筋」が重要で、なぜ見落とされるのか

テニス肘(外側上顆炎・外側上顆症:lateral epicondylitis / lateral epicondylalgia)は、上腕骨外側上顆とその周辺に痛みをきたす肘の代表的な疾患です。テニスプレイヤーに多いことからテニス肘と呼ばれますが、実際にはパソコン作業・大工仕事・料理・家事など、前腕の使い過ぎによって誰にでも起こりうる疾患です。有病率は成人人口の約1〜3%と報告されており、整形外科外来や理学療法外来でもっとも頻繁に見る疾患の一つです。

テニス肘の主な病変部位として、多くの研究が短橈側手根伸筋(extensor carpi radialis brevis:ECRB)の外側上顆への付着部を指摘しています。ECRBの退行性変化(腱症)・微小断裂が外側上顆周辺の痛みの主要因であるとされており、これを狙ったマッサージ・ストレッチ・エクセントリック運動・体外衝撃波・ステロイド注射などが一般的な治療法として行われています。しかし、このECRBに注目したアプローチだけでは症状が改善しない、あるいは一時的に改善してもすぐに再燃してしまうケースが少なくありません。

そこで注目されるのが「外側上顆の後面」です。外側上顆の前面・外側面がECRBなど手根伸筋の起始部であるのに対し、外側上顆の後面は肘筋(anconeus)の起始部になっています。つまり、同じ外側上顆という骨の突起でも、部位によって別々の筋が起始しており、テニス肘の痛みが外側上顆の前面だけから来るとは限らないのです。外側上顆の後面・下縁にある肘筋の起始部が硬化・短縮したり、筋膜トリガーポイントを形成したりすることで、「テニス肘と同じような外側上顆の痛み」が生じる可能性があります。この観点が治療で抜け落ちると、ECRB を一所懸命に治療しているのに症状が残るという状況が生まれます。

肘筋が見落とされやすい理由はいくつかあります。第一に、肘筋は「上腕三頭筋の補助筋」というポジションで解剖学の教科書に記されることが多く、独立した評価・治療対象として意識されにくい。第二に、肘筋は外側上顆の「後面」にあるため、前腕伸筋群を評価する際に見落とされやすい解剖学的な位置にある。第三に、肘筋が硬化して生じる症状(外側上顆周辺の痛み・前腕後外側の鈍痛)が、テニス肘のECRB由来の症状と区別しにくい。このような背景から、テニス肘が長引いている場合に「肘筋を評価する」という視点が、臨床的に有意義である可能性があります。

肘筋の解剖と機序 ── 外側上顆後面から肘頭への三角形

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肘筋の解剖 ── 外側上顆から肘頭・尺骨後面への三角形の筋
後面 / posterior 上腕骨骨幹部 内側上顆(参考) 肘頭(停止) 尺骨後面(停止) 外側上顆(起始) 肘筋(anconeus)★ 橈骨頭 橈骨神経(後骨間神経)

図は横にスワイプして拡大表示できます

肘筋(ちゅうきん:anconeus)は上腕骨外側上顆(がいそくじょうか)の後面を起始とし、肘頭(ひじとう)の外側面と尺骨(しゃっこつ)後面上部に停止する小さな三角形の筋です。橈骨神経(とうこつしんけい)の後骨間神経が外側上顆のすぐ近くを走行するため、この部位への過度な圧迫には注意が必要です。外側上顆後面は同時に短橈側手根伸筋(ECRB)の起始部でもあり、テニス肘と関連する重要な部位です。

肘筋(anconeus)は上腕骨外側上顆の後面を起始とし、肘頭(olecranon)の外側面と尺骨後面上部1/4に停止する、小さな三角形の筋です。起始から停止にかけて広がる形状(近位に向かって細く、遠位に向かって広がる)が三角形を形成するのが特徴で、上腕骨外側上顆の後面を頂点、肘頭の外側と尺骨後面上部を底辺として考えると覚えやすいでしょう。

肘筋の支配神経は橈骨神経(radial nerve)で、主にC7・C8の脊髄分節から支配を受けます。重要なのは、橈骨神経の後骨間神経(posterior interosseous nerve)が外側上顆のすぐ近傍を走行している点です。この神経は橈骨頭の前方から回外筋(supinator)の中を貫いて前腕後面に至りますが、外側上顆周辺への強い圧迫・打撃によって、後骨間神経の圧迫症状(橈骨管症候群:radial tunnel syndrome)が生じることがあります。肘筋のリリースを行う際は、外側上顆の前方・前腕の橈側への深い圧迫は避け、外側上顆の後面と肘頭方向に限定することが重要です。

肘筋の主な機能は2つです。①肘の伸展補助:肘を伸ばす主な筋は上腕三頭筋ですが、肘筋はその補助的な役割を担います。全肘伸展力の5〜10%程度を肘筋が担うとする研究も報告されています。②前腕回内・回外時の肘関節安定化:前腕の回内(ドアのノブを内側に回す動き)・回外(外側に回す動き)の際に、橈骨頭の周囲の安定性を維持する役割があります。この機能は肘関節の内側・外側側副靱帯と協調しており、肘筋が疲弊・硬化すると、前腕のひねり動作時に外側上顆周辺に痛みが出やすくなります。

筋膜トリガーポイント(myofascial trigger point:MTrP)の観点から見ると、肘筋は外側上顆後面と肘頭外側の間に硬結(圧痛点)を形成しやすい筋の一つです。このトリガーポイントが活性化すると、外側上顆周辺の局所的な鋭い圧痛(「そこを押すと非常に痛い点」)と、前腕後外側への放散痛が生じます。この放散パターンは外側上顆炎(テニス肘)の症状に非常に似ており、区別が難しいケースがあります。正確な鑑別のためには、外側上顆の前面(ECRB起始部)と後面(肘筋起始部)を別々に触診し、どちらに圧痛があるか・どの動作で痛みが増すかを詳しく評価することが重要です。

動画の手技と肘筋評価 ── 外側上顆後面の横断評価とリリース

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動画で示される評価の考え方 ── 外側上顆の硬さを横断評価する
後面〜側面 二頭筋・三頭筋の間 A B A:外側上顆後面の横断評価(肘筋起始部) B:上腕二頭・三頭筋の間の評価 ※動画の手技を肘筋に特化したものとして断定はせず、  外側上顆エリアの評価一般として図解しています

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提供された動画(藤井翔悟、YouTube ID: KM2BQIJD_6Y)の字幕からは、外側上顆周辺の硬さの評価と、上腕二頭筋・三頭筋の間の組織評価が主な内容として確認できます。肘筋そのものに特化した解説かどうかは字幕から明確に読み取れなかったため、この図は「外側上顆エリアの評価全般」として提示します。横方向の圧を加えながら組織の硬さと痛みの変化を見る評価アプローチは、肘筋のトリガーポイント評価としても理にかなっています。

ここでは、動画(藤井翔悟、YouTube ID: KM2BQIJD_6Y)の内容について確認できる範囲で解説します。繰り返しになりますが、この動画の字幕を確認したところ、外側上顆周辺の硬さの評価と上腕二頭筋・三頭筋の間の組織評価が主な内容として確認できた一方で、動画が肘筋のみを専門的に解説したものであるとは確定できませんでした。以下は「外側上顆周辺の評価一般」として解釈できる範囲の情報です。

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触診 ── 外側上顆・肘頭・橈骨頭で作る「三角形の谷」を探る
後面 ここを押し込む (硬結の確認) 外側上顆 肘頭 橈骨頭 肘筋エリア 触診のコツ 肘を60〜90° 屈曲させると → 触れやすい

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肘筋を触診するには、外側上顆・肘頭・橈骨頭を結ぶ三角形のエリアを確認します。肘を60〜90度屈曲させた状態で、外側上顆の後面から指を滑らせると肘筋の膨隆(ふくりゅう)に触れられます。硬結がある場合は圧痛が強く、押し込むと外側上顆周辺に放散する感覚が出ることがあります。

外側上顆の硬さを評価する際の基本的な考え方は、外側上顆という骨の突起を中心として、前面・外側面・後面のそれぞれに付着する軟部組織(筋・腱・筋膜)の硬さと圧痛を比較することです。前面・外側面にはECRBを含む前腕手根伸筋群が付着し、後面には肘筋が付着します。同じ外側上顆でも押す方向によって評価できる組織が異なるため、触診時に指の向きを意識することが重要です。

肘筋を触診するための基本的な手順を説明します。対象者を座位または側臥位とし、肘を60〜90度屈曲させた状態にします(完全伸展では筋が引き伸ばされるため触診しにくい)。外側上顆を触れた後、そこから後方(後面)へ指を滑らせます。外側上顆の後縁から肘頭の外側に向かう三角形の凹みが「肘筋のエリア」です。この領域を指先で横断するように(筋の走行に対して直角方向に)圧を加えてみます。硬結がある場合は圧痛が強く、押し込むと外側上顆周辺に放散する感覚が出ることがあります。

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リリース手技 ── クロスファイバー圧迫とスローリリース
後面 1 2 3 リリースポイントと方向 1外側上顆下縁(起始部直下)2肘筋中央部(最硬結多い)3尺骨後面上部 矢印方向 = クロスファイバー圧 注意 外側上顆の前方(前腕前面)は 橈骨神経があるため強圧しない

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肘筋のリリースは、外側上顆の後面から肘頭・尺骨後面にかけての三角形エリアへの横断的(クロスファイバー)な圧迫と緩徐な持続圧が基本です。筋の走行に対して直角方向(横断方向)に指を当て、組織の抵抗感を感じながら静止圧をかけます。圧迫の強さは「痛いけど気持ちいい」7割程度にとどめ、橈骨神経への圧迫を避けるため外側上顆のすぐ前方・前腕前面への強い圧迫は行いません。

肘筋のリリースには、横断摩擦マッサージ(クロスファイバーリリース)と持続圧(sustained pressure)の2つのアプローチが一般的です。横断摩擦マッサージは、筋の走行に対して直角方向に指を当て、組織の抵抗を感じながら小さなストロークで横断的に動かす手技です。痛みの強さは「痛いけど気持ちいい」と感じる7割程度の強さにとどめ、強い痛みを感じる場合は圧を緩めます。持続圧(アイスキーモ圧、trigger point pressure release)は、トリガーポイントの硬結に指先を当て、組織が少し緩んでくる感触を感じながら10〜90秒静止圧をかける手法です。いずれの方法でも、外側上顆の前方(橈骨神経が走行するエリア)への深い圧迫は避けます。

動画で示される「上腕二頭筋と三頭筋の間の評価」という要素は、上腕の筋間中隔(intermuscular septum)の硬さを評価する視点として解釈できます。上腕二頭筋と三頭筋の間には、橈骨神経が上腕の外側から前腕の外側へ走行するルートがあり、この筋間中隔の硬化が橈骨神経への牽引・圧迫につながる可能性を評価する、というアプローチは解剖学的に理にかなっています。この評価・リリースが肘筋のリリースと組み合わされることで、外側上顆周辺の「テニス肘」症状に対してより包括的なアプローチが可能になると考えられます。ただし、これはあくまで解剖学的な推論であり、藤井先生の動画がこのような意図で示されているかどうかを確定することはできません。

症例の考え方とよくある質問(FAQ)

ここでは、肘筋と外側上顆の痛みに関してよく寄せられる疑問と考え方をQ&A形式でまとめます。

Q1. テニス肘と肘筋の問題はどう区別するのですか? ── A. テニス肘(外側上顆炎・外側上顆腱症)の痛みの中心は外側上顆の前面・外側面であることが多く、手首を背屈させたり物を握ったりする動作で増悪します。一方、肘筋のトリガーポイントが主な原因の場合は、外側上顆の後面・後下方の圧痛が強く、前腕を回内・回外させる動作(ドアのノブを回す、前腕をひねる動作)で痛みが出やすい傾向があります。ただし実際には両者が混在するケースも多く、厳密な鑑別は難しいことがあります。整形外科・理学療法士による詳細な評価が重要です。なお、この鑑別基準は解剖学的論理と臨床経験に基づくものであり、高いエビデンスで確立されたものではありません。

Q2. 自分で肘筋をほぐすことはできますか?また、どのくらいの頻度でケアすれば良いですか? ── A. 自己ケアは可能ですが、いくつかの注意点があります。肘筋は外側上顆の後面から肘頭方向に向かって走行しており、肘を軽く曲げた状態で外側上顆の後縁から指を滑らせると触れることができます。ただし外側上顆の前方は橈骨神経が走行しており、強い圧迫は神経症状を引き起こす可能性があります。自己ケアは後面・外側面に限定し、痺れや電撃感が出た場合は即中止してください。頻度については、急性期(痛みが強い時期)はむしろ安静を優先し、亜急性期以降に1日1〜2回、1回あたり2〜5分程度から始めるのが一般的な考え方です。

Q3. 肘筋をリリースすると、どのような変化が期待できますか? ── A. 理論的には、①外側上顆後面の局所的な圧痛・鈍痛の軽減、②前腕の回内・回外動作時の肘外側の痛みの改善、③肘の伸展可動域の改善(肘筋が緊張すると完全伸展が制限される場合がある)、が期待される変化として挙げられます。ただし重要なことは、これらは解剖学的論理と臨床観察に基づく「期待値」であり、肘筋リリースの効果を直接検証したRCTは現時点では報告されていません。肘筋のリリースが奏効しない場合は、ECRBの腱症・橈骨管症候群・外側側副靱帯損傷・変形性肘関節症など、他の原因を整形外科・手外科で精査する必要があります。

Q4. テニス肘の治療では何から始めるのが良いですか? ── A. テニス肘の保存療法の基本は、①活動修正(痛みを増悪させる動作の一時的な回避・軽減)、②ストレッチ・エクセントリック運動(前腕伸筋群の柔軟性と筋力の回復)、③手技療法(横断摩擦マッサージ・筋膜リリース・鍼など)の組み合わせです。この記事で解説した肘筋へのアプローチは、標準的な治療を行っても改善しない場合の「追加評価・追加アプローチ」として位置づけるのが現実的です。まずは整形外科・スポーツクリニック・理学療法士で正確な評価を受け、治療方針を立てることをお勧めします。

安全と受診勧奨 ── これだけは知っておいてください

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安全マップ ── 橈骨神経と外側上顆前方への注意
後面〜側面 ⚠ 橈骨神経 ✓ リリース可 外側上顆 ⚠ 前方は橈骨神経 後面が安全なリリース域 中止サイン ・電撃感・しびれ(神経刺激) ・発赤・熱感・急性腫脹 ・骨折・腫瘍の疑い

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外側上顆の前方・前腕の外側(橈側)には橈骨神経(後骨間神経)が走行しており、この部位への強い圧迫は神経症状を引き起こすリスクがあります。肘筋のリリースは外側上顆の「後面」と「後側方」に限定し、前方への深い圧迫は避けます。また、外側上顆周辺の急性炎症(発赤・熱感・腫脹)が強い場合は圧迫を行わないでください。

橈骨神経(特に後骨間神経)は外側上顆のすぐ前方を走行するため、外側上顆前方への強い圧迫・長時間の圧迫は神経症状を引き起こすリスクがあります。自己ケアを行う際は必ず外側上顆の後面・後側方に限定し、前方への深圧は行わないでください。また、妊娠中・腫瘍疑い・活動性感染・骨折後の安定期未確認の状態では、自己流でのリリースは行わないでください。

テニス肘のセルフケアとして肘筋リリースを試みる場合、まず2〜3週間続けて経過を見てください。症状が改善傾向にあれば続けてかまいませんが、悪化または変化がない場合は手技を中止し、整形外科・手外科・スポーツ医学科で精査を受けることをお勧めします。テニス肘は適切なアプローチで多くの場合3〜6ヶ月で改善しますが、難治性の症例では体外衝撃波治療・PRP(多血小板血漿)注射・手術的アプローチが必要になる場合もあります。

まとめ:肘筋(anconeus)は外側上顆の後面から肘頭・尺骨後面に付着する三角形の小筋で、テニス肘が改善しない場合に見落とされやすい筋の一つです。筋膜トリガーポイントが形成されると外側上顆後面の圧痛と前腕後外側の放散痛が現れ、前腕の回内・回外動作時の痛みに関与することがあります。引用した4本の研究は筋膜トリガーポイントへの介入の有効性を示す周辺エビデンスであり、肘筋を直接対象とした強い研究は現時点では限られています。外側上顆の後面(橈骨神経を避けた部位)への横断摩擦マッサージ・持続圧がセルフケアの基本アプローチですが、症状が続く場合は医療機関を受診してください。

参考文献(使用した実在論文)

Pirri C, ら(2025)Percutaneous Electrolysis for Musculoskeletal Disorders Management in Rehabilitation Settings: A Systematic Review. Healthcare, DOI: 10.3390/healthcare13151793 / Sadeghnia M, ら(2025)The effect of friction massage on pain intensity, PPT, and ROM in individuals with myofascial trigger points: a systematic review. BMC Musculoskeletal Disorders, DOI: 10.1186/s12891-025-08372-x / Trybulski R, ら(2026)Effectiveness of PNE and IMES in the Management of MPS and Tendinopathies: A Systematic Review. Journal of Clinical Medicine, DOI: 10.3390/jcm15072572 / Zhang P, ら(2025)Efficacy of Acupuncture in Treating Nape Back Myofascial Pain Syndrome: a Comprehensive Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Pain Research, DOI: 10.2147/jpr.s509967

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限界と注意・受診の目安

  • この記事は教育・情報提供目的であり、医療診断・治療行為の代替ではありません。
  • 効果には個人差があります。「必ず改善する」という保証はできません。
  • 「肘筋のトリガーポイントが外側上顆の痛みの原因である」「肘筋をほぐすとテニス肘が改善する」という主張は解剖学的論理と臨床経験に基づくものであり、直接検証したRCT・系統的レビューは現時点では見当たりません。
  • 引用した4本の論文はいずれも周辺情報であり、肘筋への徒手的リリース効果を直接証明するものではありません。
  • 外側上顆の前方への強い圧迫は橈骨神経(後骨間神経)への影響が出る可能性があります。電撃感・しびれが出た場合は即中止してください。
  • 急性炎症(発赤・熱感・腫脹)が強い場合は圧迫を行わないでください。
  • 骨折・腫瘍・感染・神経麻痺が除外されていない場合は整形外科・手外科を受診してください。
  • 提供された動画が肘筋のみを対象としているかは字幕から確定できませんでした。動画内容と肘筋解剖情報は本文で明確に区別して提示しています。
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監修・参考文献

掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。

監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)

  1. [1] Pirri C, Manocchio N, Sorbino A, Pirri N, Foti C.2025).「Percutaneous Electrolysis for Musculoskeletal Disorders Management in Rehabilitation Settings: A Systematic Review」. Healthcare (Basel, Switzerland).
  2. [2] Sadeghnia M, Kajbafvala M, Shadmehr A.2025).「The effect of friction massage on pain intensity, PPT, and ROM in individuals with myofascial trigger points: a systematic review」. BMC musculoskeletal disorders.
  3. [3] Trybulski R, Olaniszyn G, Smoter M, Bas O, Tyravska O, Kuszewski M, Walicka-Cupryś K.2026).「Effectiveness of Percutaneous Needle Electrolysis (PNE) and Intramuscular Electrical Stimulation (IMES) in the Management of Myofascial Pain Syndrome and Tendinopathies: A Systematic Review」. Journal of clinical medicine.
  4. [4] Zhang P, Zhang Y, Guo M.2025).「Efficacy of Acupuncture in Treating Nape Back Myofascial Pain Syndrome: a Comprehensive Systematic Review and Meta-Analysis」. Journal of pain research.