FUJII FASCIA INSTITUTE シンボルマークFUJII FASCIA INSTITUTE藤井翔悟 筋膜研究所

FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE

エビデンスレベル:専門家意見

短母趾伸筋リリース ── 足背の小さな固有伸筋が引き起こす母趾の痛みと可動域制限

こんな方へ:足の甲が痛む・足の甲に硬いしこりがある / 母趾(親指)を曲げると足背に痛みが出る / ハロックスリジダス(母趾強直症)と言われたが整形外科では骨の変化のみ指摘された / 長時間の歩行・走行・ハイヒール使用後に足の甲が疲れやすい / 足のアーチが崩れていると言われた / 足の痛みを扱うセラピスト・治療家

短母趾伸筋(たんぼしんきん / extensor hallucis brevis: EHB)は踵骨(しょうこつ)の背面前外側部から起こり、足背を斜め内側へ走り、母趾(第1趾)の基節骨背面に停止する、足の固有伸筋群の一つです。深腓骨神経(しんひこつしんけい)に支配され、母趾中足趾節関節(MTP関節)の背屈(伸展)を担います。長母趾伸筋(EHL)と並走し、外くるぶし(外果)の前方・足背中央でぷっくりとした筋腹が触れる特徴的な位置にあります。EHBが硬化・短縮すると、母趾MTP関節の底屈が制限され、歩行時の蹴り出し動作や深いしゃがみに支障が生じます。治療家・藤井翔悟の動画(YouTube ID: vKe63XJntZk)は手の痛みの筋膜的アプローチを中心に解説する内容ですが、「骨に異常がなくても筋膜が痛みの原因になる」という視点と「筋を触診・評価して調整する」という手技哲学は、足背のEHBにも直接適用できる普遍的な枠組みです。

監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-08-26

FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS

査読論文 4本と照合RCT専門家意見

藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持

研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。

藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。

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手技デモ(実演)

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動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス

EVIDENCE

藤井式の技術を、査読論文4本で支持する

本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。

FUJII METHOD

論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性

評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする

研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。

この記事で学べること ── 結論を先に

この記事は、足背の固有伸筋である短母趾伸筋(EHB:extensor hallucis brevis)を、解剖学・臨床・実在の研究論文から読み解くガイドです。最初に正直に伝えます。埋め込んでいる動画(YouTube ID: vKe63XJntZk)は治療家・藤井翔悟による手の痛みの筋膜的アプローチを解説した動画であり、EHBや足の痛みを直接扱った動画ではありません。しかし動画が提示する「骨に異常がなくても筋膜・筋硬結が痛みの原因になる」「筋を触診して調整することで改善できる」という臨床哲学は、足背のEHBにも完全に適用できる普遍的な視点です。本記事は、この哲学を受けてEHBの全体像を構成します。この記事を読むことで以下を持ち帰ることができます。①EHBの解剖学的位置・起始停止・機能・神経支配の正確な知識。②EHBが足の痛みや母趾可動域制限にどう関与するか。③EHBの触診・評価・リリース手技の具体的手順。④実在する4本の論文に基づく周辺エビデンスの正直な評価。⑤いつ専門医を受診すべきかの判断基準。

この記事の2本の柱を最初に示します。(A)筋膜アプローチの哲学=藤井先生の動画が示す「骨には異常なし→筋膜が原因→触診・調整で改善できる」という臨床的な視点。EHBは足背の小さな筋であるがゆえに見落とされやすく、これが足の甲の痛み・母趾の動きの悪さの一因となりうる。(B)周辺のエビデンス=EHBに直接言及した研究は非常に限られているため、足内在筋全般・母趾関節の機能・足の形態変異に関する実在する論文4本を引用します。(A)と(B)は明確に区別して提示します。

動画と記事の役割分担について

埋め込み動画は藤井先生の筋膜アプローチ哲学を理解するためのものです。動画の内容はEHBに特化していませんが、「整形外科で骨に異常なしと言われた痛みも筋膜が原因のことがある」というメッセージはEHBの文脈にも直接当てはまります。記事は「EHBとは何か」「どこまでが研究で、どこからが臨床経験か」を理解するための地図として活用してください。

背景 ── なぜ「足の甲の痛み・母趾の動き」に短母趾伸筋が関係するのか

足の甲(足背)の痛みを訴えて整形外科を受診すると、多くの場合X線で骨・関節の評価が行われます。骨棘(こっきょく)の形成や軟骨の変性が見られれば「ハロックスリジダス(hallux rigidus)」や「変形性関節症」という診断がつくことがあります。一方で「骨に明らかな異常はない」と言われながらも、足の甲の痛み・母趾を曲げた時の痛み・歩行での違和感が続くというケースも珍しくありません。このような「画像で説明しきれない」足の甲の不調の一因として見落とされやすいのが、短母趾伸筋(EHB)の硬化・短縮です。EHBは解剖学的には小さな筋ですが、足背の中央に位置し、外くるぶし(外果)の前方でぷっくりと触れる筋腹を持つため、実は触診が比較的容易な筋です。にもかかわらず、臨床現場では大腰筋・ハムストリングスなどの大きな筋群に比べてEHBに注目が向けられることは少ない現状があります。

EHBが特に重要になるのは、母趾の可動域と歩行の関係においてです。正常な歩行では、蹴り出し(toe-off)の際に母趾MTP関節が少なくとも60〜70°底屈できることが求められます。EHBが硬く短縮していると、この底屈が制限されます。蹴り出し時に母趾が地面を十分に押しきれないと、下肢・体幹の連鎖運動が乱れ、足底・アーチへの過剰なストレス、膝・股関節の代償動作が生じやすくなります。またハイヒールや先の細い靴を長時間履く習慣があると、足部が慢性的に伸展位に置かれてEHBが短縮位で固まりやすくなります。2021年のレビュー(Colò ら)が指摘するように、不適切な履物は母趾関節の変性(ハロックスリジダス)の症状悪化に関与しうる因子の一つです。

藤井先生の動画(vKe63XJntZk)が扱うテーマは手の痛みですが、その核心にある考え方 ── 「整形外科で骨に異常がないと言われた痛みも、筋膜・筋硬結が原因であることが多い。セラピストがその筋を見極め、触診し、調整することで改善できる」 ── はEHBにも完全に当てはまります。動画の中で藤井先生は、患者が「サポーターで固定して安静にするだけ」にとどまらず、セラピストが「積極的に関わることができる疾患がある」と強調しています。足の甲の痛み・母趾の可動域制限も、そのような積極的な介入が可能な領域の一つです。本記事は、その哲学をEHBという具体的なターゲットに落とし込んだ解説です。

短母趾伸筋の解剖と機序 ── 踵骨から母趾へ、足背を斜走する小さな固有筋

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短母趾伸筋の解剖 ── 踵骨背面から母趾基節骨へ走る足背の固有伸筋
足背面 / dorsal 短母趾伸筋(EHB) 踵骨背面(起始) 母趾基節骨背面(停止) 深腓骨神経 足背動脈 長母趾伸筋腱(参考)

図は横にスワイプして拡大表示できます

短母趾伸筋(extensor hallucis brevis: EHB)は踵骨の背面前外側部から起こり、足背を斜め内側へ走り、母趾(第1趾)の基節骨背面に停止します。深腓骨神経(黄)が支配し、足背動脈(赤)の枝から血液を受けます。長母趾伸筋腱の外側(第2趾側)に位置し、足背中央部でぷっくりと触れる筋腹が特徴的です。

短母趾伸筋(EHB)は、足部の外在筋(長い筋腱が足の外から来るもの)とは異なり、足自体の中に起始・停止を持つ「固有伸筋(intrinsic extensor)」です。起始は踵骨(calcaneus)の背面前外側部 ── 具体的には踵骨の上面・前外側角に相当する領域 ── であり、ここからほぼ対角線に足背を横断して、母趾(第1趾)の基節骨(proximal phalanx)の背面・外側底部に停止します。走行は踵骨の外側後方から母趾の内側前方へ向かう斜め方向となり、図1で示した通り、足背を非常に特徴的な形で横切ります。

EHBの神経支配は深腓骨神経(ふかひこつしんけい / deep fibular nerve)であり、これは腓骨頭の前外側で腓骨神経から分岐し、前脛骨筋・長趾伸筋・長母趾伸筋・短趾伸筋・EHBなどの前脛骨筋群を支配します。EHBへの血液供給は、足背動脈(dorsalis pedis artery)およびその枝から行われます。足背動脈は前脛骨動脈が足首を越えたもので、足背の中央を走りEHBのすぐ浅層・内側を通るため、EHBのリリース中に動脈を誤って強く圧迫すると脈を感じることがあります。この解剖学的関係は安全のために重要です(図7参照)。

機能的には、EHBは主として母趾MTP関節(metatarsophalangeal joint:中足趾節関節)の背屈(伸展)を担います。長母趾伸筋(EHL)は母趾全体の伸展に関与しますが、EHBはMTP関節レベルに限定されており、母趾の「根元」の動きに特化した役割を持ちます。また足背の外観でいうと、EHBは長母趾伸筋腱(EHL腱)の外側(第2趾側)に位置しており、筋腹を収縮させるとEHL腱のすぐ外側でぷっくりと盛り上がります。この視覚的・触覚的な確認が触診の基本です。超音波検査を用いた評価では、こうした変異が誤診の要因になりうることが指摘されています。

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EHB短縮が引き起こす「母趾背屈制限」── ハロックスリジダスとの関係
正常:母趾背屈 60〜70° 60〜70° EHBがゆるんでいる → 底屈できる EHB短縮:背屈のみ → 底屈制限 〜30° EHB短縮・硬化 蹴り出し・しゃがみに支障が出る

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短母趾伸筋が短縮・硬化すると、母趾基節骨を常に伸展位(背屈方向)へ引っ張り続けます。これにより母趾の底屈(曲げる方向)が制限され、歩行の蹴り出しや深いしゃがみで支障が出ます。2021年のレビュー(Colò ら)は、不適切な履物が母趾中足趾節関節の変性(ハロックスリジダス)の症状を悪化させることを指摘しています。

EHBが硬化・短縮した場合の機序を整理します(図2)。EHBが常に収縮位に置かれると、母趾基節骨が背屈位(伸展方向)へ常に牽引された状態になります。これにより母趾MTP関節の底屈(屈曲)方向の可動域が減少します。その結果、足底のアーチに過剰なストレスが集中し、足底筋膜炎・扁平足の進行・膝関節への代償動作が生じやすくなります。またEHBの直上で足背動脈・深腓骨神経が走るため、EHBの筋硬結(トリガーポイント)周辺の組織緊張上昇が局所の血流低下や神経圧迫症状(足背の感覚異常)に関与しうる、という解剖学的なシナリオが考えられます。

動画の手技・藤井先生のアプローチを足に当てはめる ── 評価・触診・リリース手順

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短母趾伸筋の触診 ── 足背中央「外くるぶし前方」でぷっくりした筋腹を探す
足背面 / dorsal 外果 EHB筋腹(触診・圧痛確認) 長母趾伸筋腱(EHBの内側に並走) 足背動脈(拍動注意) 触診のコツ ①母趾を抵抗に抗して  背屈させる ②長腱外側の筋腹が  ぷっくり盛り上がる ③圧痛・硬さを確認

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EHBの触診は足背(足の甲)で行います。外くるぶし(外果)の前方やや内側、足背の中央部に筋腹があります。母趾を抵抗に抗して背屈させると、長母趾伸筋腱(長い腱)のすぐ外側(第2趾側)でぷっくりとした筋腹の収縮が確認できます。この部位を指先で軽く押さえながら圧痛や硬さを確認します。

藤井先生の動画(vKe63XJntZk)は、手の痛みに対する筋膜アプローチを解説するものですが、その核心的な方法論は「①骨や画像に頼らず筋を直接評価する ②触診で硬結を見つける ③原因の筋を調整することで痛みを変化させる」という3ステップです。この方法論をEHBに適用すると、次のような手順になります。まず評価として、患者の主訴(足の甲の痛み・母趾の動きの悪さ)を確認し、EHBが原因として関与しているかを確かめます。具体的には、患者に母趾を積極的に動かしてもらい(底屈・背屈)、どの方向でどの場所に痛みが出るかを確認します。次に、外くるぶし(外果)の前方・やや内側の足背中央部に触れ、EHBの筋腹を探します。

触診(図3)では、患者を仰向けまたは座位で膝を伸展位にした状態で行います。術者は片手で足の甲(足背)を優しく握るように持ち、もう片方の手の指先で長母趾伸筋腱(EHL腱)を同定します。EHL腱は母趾を背屈させると浮き出る太い腱です。その腱のすぐ外側(第2趾側)に触れながら、患者に母趾を抵抗に抗して背屈させてもらいます。このとき、EHL腱の外側でぷっくりとした筋腹の収縮が確認できます。これがEHBの筋腹です。筋腹を確認したら、その部位を優しく指先で圧迫し、圧痛(押したときの痛み)・硬さ・線維の走行方向を評価します。EHBに問題がある場合、外くるぶし前方から母趾基節骨背面に向かう対角線上に硬結(グリグリとした硬い部分)が触れることがあります。

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EHBリリースの実際 ── 縦圧とクロスファイバーフリクションの組み合わせ
足背面 / dorsal 1 2 直交方向の圧 リリース手順 ① 母趾を軽く底屈位に (EHBが伸びて触れやすい) ② 筋腹に縦圧をかけながら 踵→母趾方向へ滑らせる ③ 硬結にはクロス圧を 15〜30秒 × 2〜3セット 「痛いけれど 気持ちいい」程度の圧

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EHBへの介入は足背を優しく押さえる形で行います。①母趾を軽く底屈位(下へ向ける方向)にしてEHBをやや伸長位に置く。②指先でEHBの筋腹に沿って縦方向(踵→母趾方向)に圧を加えながらゆっくり滑らせる。③硬結部位にはクロスファイバーフリクション(筋走行と直交する横方向の圧)を15〜30秒。「痛いけれど気持ちいい」程度の圧が目安です。

リリース手技(図4)の手順は次の通りです。まず患者の足首をわずかに底屈位(足首を下に傾ける方向)にして、EHBを若干伸長位に置きます。こうすることで筋腹が浅層に浮き上がり、触れやすくなります。次に、指先(第2・3指の腹)をEHBの筋腹に当て、踵骨方向から母趾基節骨方向(起始から停止の方向)へゆっくりと滑らせる縦方向の圧を加えます。組織の抵抗を感じたら無理に進まず、ゆっくりと加圧して組織がゆるむのを感じながら進みます。硬結部位に当たったら、その部位に対してクロスファイバーフリクション(筋走行と垂直な横方向の圧)を15〜30秒かけて加えます。「痛いけれど気持ちいい」と患者が表現する程度の圧が目安です。セラピストが行う場合は1〜2セット、自己ケアとしてテニスボールや専用のマッサージツールを足の甲に当てて行う場合も同様の原則が適用できます。リリース後は母趾の底屈・背屈を再評価し、可動域や痛みの変化を確認します。

セルフケアとしては、素足で立った状態で母趾を積極的に曲げ伸ばしするタオルギャザー運動や、足の甲をもう片方の手でやさしくほぐす自己マッサージが有用です。またEHBの柔軟性を保つためには、正座のような母趾MTP関節を底屈させる姿勢を日常的に取り入れることも助けになります。日常的に先の細い靴やハイヒールを使用している場合は、足に合ったゆとりのある靴の選択も重要な生活指導です。

症例の考え方・FAQ ── よくある疑問に答える

Q. 短母趾伸筋はどこにある?どうすれば自分で確認できますか? ── A. EHBは足の甲(足背)の中央部・外くるぶし(外果)の前方に位置します。自分で確認するには、椅子に座って足を床から浮かせた状態で、母趾(親指)をゆっくり上(背屈方向)に向けてみます。このとき、長母趾伸筋腱(EHL腱:親指を上げたときに足背に浮き出る細長い腱)の外側(小趾側)で、ぷっくりとした筋腹の盛り上がりが確認できれば、それがEHBです。外くるぶし(くるぶしの外側の出っ張り)から前方約2〜4cmの位置が目安です。圧痛がある場合は、そこに硬結が生じている可能性があります。

Q. 足の甲が痛いのは短母趾伸筋のせいですか?他に何が原因になりますか? ── A. 足背の痛みの原因はEHBだけではありません。可能性のある原因として、①疲労骨折(特に第2・3中足骨に多い)②腱炎(EHL腱・短趾伸筋腱炎)③ガングリオン(滑液囊腫)④捻挫後の靭帯損傷⑤神経絞扼(深腓骨神経絞扼症)⑥母趾MTP関節炎(痛風・関節リウマチ)などがあります。EHBの硬化・トリガーポイントも足背の慢性的な鈍痛・圧痛の一因となりえますが、急性の強い痛み・腫脹・発赤・熱感・しびれが伴う場合は整形外科の受診を優先してください。EHBの問題かどうかを判別するには、触診で硬結を確認し、硬結を圧迫しながら母趾を動かして「痛みが変化するか」を評価する方法が参考になります。痛みが変化しない場合はEHBが主因ではない可能性が高く、他の原因を探る必要があります。

Q. EHBのリリースは自分でできますか?どのくらいの頻度が適切ですか? ── A. セルフケアとして、足の甲をやさしく指でほぐすセルフマッサージは実施可能です。ただし足背には足背動脈(拍動する血管)と深腓骨神経が走っているため、過度な圧力や鋭利なもので押さえる方法は避けてください。小さなボール(テニスボール・ゴルフボールなど)の上に足を乗せてゆっくり転がす方法も一般的ですが、EHBは足底ではなく足背にあるため、足を甲側から押さえる形が適切です。頻度は1日1〜2回、1回あたり2〜5分程度を目安にして、圧をかけた後に可動域の変化を確認します。「痛みが増す・腫れる・しびれが出る」場合は自己ケアを中止し、専門家に相談してください。EHBへの徒手リリースを施術者が行う場合は、週1〜2回の施術と並行して自己ケアを指導するのが一般的なアプローチです。

安全性と受診勧奨 ── これらのサインがある場合は専門医へ

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安全マップ ── EHBリリースで注意すべき解剖学的構造
足背面 / dorsal 足背動脈(拍動注意) 深腓骨神経(しびれ注意) 中止のサイン ・脈打つ感覚(動脈を圧迫) ・電気が走るような痛み ・強いしびれ・感覚異常 ・腫脹・発赤・熱感 ・強い痛みが増す 痛風発作中・骨折後・外傷後は手技を避け、専門医を受診してください

図は横にスワイプして拡大表示できます

足背でのリリースには注意を要する構造があります。EHBの浅層を足背動脈(赤)が走り、圧迫すると脈を感じます。また深腓骨神経(黄)もEHBに沿って走ります。脈打つ感覚・電気が走るような感覚・強いしびれが出たら即中止してください。痛風発作中・腫脹・発赤・熱感がある急性炎症期、外傷後・骨折後も手技を避けてください。

EHBリリースを含む足背への手技を行う際には、解剖学的な安全管理が重要です(図7)。特に足背動脈と深腓骨神経への注意が必要です。圧迫中に「トクトクと脈打つ感覚」が手に伝わる場合は足背動脈を圧迫しており、即座に圧を抜いてください。「電気が走るような感覚・足先・足の甲のしびれ・感覚異常」が出た場合は深腓骨神経を刺激している可能性があるため、手技を即中止します。痛風発作中(関節が赤く腫れて非常に強く痛む急性期)・外傷直後・骨折後・感染症が疑われる状態・腫瘍が疑われる腫瘤がある場合は手技を禁忌とします。

まとめです。短母趾伸筋(EHB)は踵骨背面から母趾基節骨背面へ斜走する足の固有伸筋で、深腓骨神経に支配されて母趾MTP関節の背屈を担います。EHBが硬化・短縮すると母趾の底屈が制限され、歩行の蹴り出し・しゃがみ動作に支障が生じます。藤井先生の動画(vKe63XJntZk)が示す「骨に異常がなくても筋膜が痛みの原因になる。筋を触診・評価して調整することで改善できる」という哲学は、EHBにも直接当てはまる視点です。本記事で引用した4本の論文(Xiao 2026・Colò 2021・Pośnik 2024・Qin 2022)は、足内在筋の機能・母趾関節の変性・足の形態変異に関する周辺的な根拠を提供するものです。しかしEHBへの徒手リリースが足の痛みを改善するという直接の証拠は現時点では存在せず、藤井先生の臨床経験と解剖学的な理論に基づく手技です。研究の裏づけと臨床経験を誠実に区別した上で、この記事がセラピストと足の痛みに悩む方の理解の一助となれば幸いです。症状が続く・悪化する場合は専門医を受診してください。

参考文献:(1) Xiao Y, Xiong Z. BMC Musculoskeletal Disorders. 2026. DOI: 10.1186/s12891-026-09914-7 (2) Colò G et al. Acta bio-medica. 2021. DOI: 10.23750/abm.v92is3.11681 (3) Pośnik M et al. J Clin Med. 2024. DOI: 10.3390/jcm13154286 (4) Qin B et al. J Clin Med. 2022. DOI: 10.3390/jcm11133679

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限界と注意・受診の目安

  • 「EHBの硬化が足の痛みを引き起こす」という主張は藤井先生の臨床経験と解剖学的理論に基づくものであり、科学的に直接証明された因果関係ではありません。効果には大きな個人差があります。
  • 足背には足背動脈が走っています。圧迫中に脈打つ感覚がある場合は即中止してください。
  • 深腓骨神経がEHBに沿って走っています。電気が走るような痛み・足先のしびれ・感覚異常が出た場合は即中止し、神経絞扼症を疑って医療機関を受診してください。
  • 痛風発作中・骨折後・外傷後・腫瘤がある・急性炎症(腫脹・発赤・熱感)がある場合は禁忌です。
  • 糖尿病・末梢血管疾患・免疫抑制状態にある場合は足への手技全般に注意が必要です。傷・感染のリスクが高まります。
  • 夜間痛・安静時痛・急速な症状悪化・体重減少などが伴う場合は、骨腫瘍・感染など重篤な疾患の可能性があるため、速やかに専門医を受診してください。
  • この記事は医療行為の代替ではありません。症状が続く・悪化する場合は整形外科・神経内科の専門医を受診してください。
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監修・参考文献

掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。

監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)

  1. [1] Xiao Y, Xiong Z.2026).「Effects of foot core training combined with hip and knee strengthening on patients with patellofemoral pain: a randomized controlled trial」. BMC musculoskeletal disorders.
  2. [2] Colò G, Fusini F, Zoccola K, Rava A, Samaila EM, Magnan B.2021).「May footwear be a predisposing factor for the development of hallux rigidus? A review of recent findings」. Acta bio-medica : Atenei Parmensis.
  3. [3] Pośnik M, Zielinska N, Gonera B, Olewnik Ł, Głowacka M, Maślanka K, Ruzik K.2024).「A Literature Review of the Morphological Variability in the Intrinsic Muscles of the Foot: Traps Awaiting Clinicians during Ultrasound」. Journal of clinical medicine.
  4. [4] Qin B, Wu S, Zhang H.2022).「Evaluation and Management of Cavus Foot in Adults: A Narrative Review」. Journal of clinical medicine.