FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE
椎間関節リリース ── 胸椎の伸展制限と背部痛を「関節包の滑走」から読み解く
こんな方へ:背中(肩甲骨の間〜胸椎レベル)が痛む・こわばる / 胸椎が反りにくく猫背が抜けない / 肩こりが抜けない・首のつけ根が重い / 整形外科で異常なしと言われたが背中の不快感が続く / 上位交差症候群(UCS)と言われたことがある / 椎間関節の硬さを扱う治療家・セラピスト
椎間関節(ついかんかんせつ)は、上位椎骨の下関節突起と下位椎骨の上関節突起が組み合わさる平面関節であり、脊椎の各レベルに左右それぞれ存在する「背骨の小関節」です。特に胸椎の椎間関節は関節面が冠状面に近く、伸展・回旋を制限する方向に関節包が拘縮しやすい。治療家・藤井翔悟の実技動画(YouTube ID: ZOX1ZvWjtXU)は、この椎間関節周囲の硬さが背部痛や胸椎の可動域制限の主因となりうることを解説し、棘突起の外側への圧迫と胸椎伸展を組み合わせた直接法リリース手技を示します。
監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-10-14
FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS
藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持
研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。
藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。
手技デモ(実演)
動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス
EVIDENCE
藤井式の技術を、査読論文4本で支持する
本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。
FUJII METHOD
論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性
評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする
研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。
この記事で学べること/結論を先に
この記事は、治療家・藤井翔悟による椎間関節(ついかんかんせつ)リリースをテーマにした実技解説動画(YouTube ID: ZOX1ZvWjtXU)の内容を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。テーマは4つ ── ①椎間関節とはどんな関節か(解剖・機能・関節包の役割) ②なぜこの関節の硬さが背中の痛みや胸椎の伸展制限につながるのか ③藤井先生が示す触診・評価の手順 ④どうリリース(ゆるめる)するか。最初に結論を先に伝えます。椎間関節は、脊椎のすべてのレベルに存在する「縁の下の関節」です。特に胸椎(T1〜T12)では、反り返り(伸展)や回旋の動きを担う関節面の向きから、関節包の拘縮が起きると胸椎全体の可動域が大きく失われます。猫背が「姿勢の習慣」だけで起きているのではなく、関節包という軟部組織の硬化が背景にある場合がある ── この視点が、動画が提示する最も重要なメッセージです。
この記事の2本柱を先に示します。(A)動画の手技=藤井先生の臨床経験に基づく評価と手技。棘突起(きょくとっき)のすぐ外側を触診し、特に硬くなっているレベルを特定してから、斜め下方向への圧迫と患者の能動的な胸椎伸展を組み合わせる「直接法」のリリース。(B)周辺のエビデンス=上位交差症候群(UCS)への矯正エクササイズ・頸椎理学療法・脊椎への保存的介入を扱った実在4本の論文。(A)と(B)は明確に区別して提示します。この手技は解剖の知識と正確な触診を持つ専門家が行うべきものです。
この記事の読み方
動画は藤井先生の触診の当て方・評価・リリースの発想を『体験』するもの。記事は『いま何を、なぜやっているか』と『どこまでが研究で、どこからが臨床経験か』を持ち帰る地図です。椎間関節の関節包を直接圧迫しながら伸展を誘導するという手技の即時効果を直接検証したRCTは現時点では限られており、この手技の核心部分は藤井先生の臨床観察と解剖学的理論に基づくものです。医療情報として、研究の裏づけと臨床経験を区別した上でお読みください。
背景 ── なぜ「椎間関節」は背中の痛みに関係するのか
「背中が痛い」「肩甲骨の間が張る」「胸椎が反れない」という訴えに対して、整形外科では椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、筋筋膜症候群などが鑑別されます。しかし、これらのいずれにも当てはまらない背部痛の一因として、見落とされがちなのが椎間関節(zygapophyseal joint / facet joint)の関節包の拘縮です。椎間関節は、脊椎の各椎骨の後方にある関節突起(上関節突起・下関節突起)が組み合わさって形成される小関節であり、椎体が組み合わさる部位(椎間板側)とは別の、後方要素としての機能を担います。椎間板ヘルニアは前方・側方の構造であるのに対し、椎間関節は棘突起の外側・背側に位置するという解剖学的な位置関係を頭に入れると、なぜ背部の触診でそこを探すのかがよく分かります。
胸椎の椎間関節は、頸椎や腰椎と比べて独特の特性を持ちます。胸椎の関節面は概ね冠状面(前から見た切り口)に近い向きをしており、この向きの特性から主に回旋と側屈を許容しつつ、伸展方向の動きには一定の制限が加わりやすい。現代人に多い「前傾姿勢・デスクワーク・スマートフォン操作」という生活様式は、胸椎を慢性的に屈曲(前傾)位に保ち続けます。この状態が長期化すると、椎間関節の関節包の後方部分が短縮・拘縮し、胸椎の伸展可動域が著しく失われます。これが「猫背が治らない」「背中を反らせると痛みが出る」という訴えの背景に存在することがある、というのが動画の出発点です。
さらに胸椎の椎間関節周囲には多裂筋(たれつきん)という深部の安定化筋が走行しています。多裂筋は棘突起を跨いで関節柱のすぐ外側に付着し、椎間関節の安定化と細かい姿勢調整を担う筋です。この多裂筋が過緊張・硬化すると、椎間関節への関節内圧が高まり、関節包への機械的な刺激が増大します。椎間関節には豊富な侵害受容器(痛みを感じる神経終末)が分布しており、局所の機械的刺激や炎症が持続することで慢性的な背部痛を引き起こす可能性があります。これは解剖学的・神経生理学的に合理的な説明ですが、藤井先生の手技の具体的な有効性を示す直接的な研究は現時点では限られているため、この説明は理論的な枠組みとして理解してください。
もう一つ重要な文脈があります。近年、理学療法・整形外科領域で注目されている「上位交差症候群(Upper Crossed Syndrome: UCS)」という概念です。UCSとは、胸椎・頸部・肩甲帯の筋アンバランスによって引き起こされる姿勢機能障害であり、前方頭部位(前頭位)・胸椎後弯増大・肩甲骨外転といった特徴的な姿勢変化を伴います。UCSでは胸椎の伸展可動域の低下が中心的な役割を果たし、胸椎の椎間関節の拘縮がその一因になりうると考えられています。矯正エクササイズはUCSの姿勢改善に効果があることがメタ解析で示されており、椎間関節へのアプローチはその中の一手段として位置づけられます。
解剖と機序 ── 関節突起・関節包・多裂筋のトライアングル
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椎間関節(ついかんかんせつ)は、上位椎骨の下関節突起と下位椎骨の上関節突起が組み合わさってできる平面関節です。関節包(かんせつほう)という薄い袋で覆われ、その内側に滑膜と少量の滑液があります。棘突起(きょくとっき)のすぐ外側に位置し、多裂筋(たれつきん)がこの関節を跨いで走ります。胸椎では関節面が冠状面(正面からの切り口)に近いため、主に回旋と側屈を担い、伸展方向の動きは制限されます。椎間関節の関節包や周囲の筋膜が硬化すると、胸椎の伸展・回旋が著しく制限され、姿勢の悪化や背部痛の原因となります。
椎間関節(facet joint)の正式名称は「脊椎後方椎間関節」あるいは「脊椎椎間関節」と呼ばれますが、facet joint(ファセット・ジョイント)という英語名でも広く知られています。解剖学的には、上位椎骨の下関節突起(inferior articular process)と下位椎骨の上関節突起(superior articular process)が組み合わさって形成される平面関節(plane joint)です。平面関節は凹凸が少なく滑走(グライディング)する動きを得意とする関節であり、椎間板・前縦靭帯・後縦靭帯などの前方要素と組み合わさることで、脊椎全体の複雑な多軸運動を可能にしています。
椎間関節の関節面は薄い関節軟骨(ヒアリン軟骨)で覆われ、その外側は関節包(joint capsule)という線維性の袋で包まれています。関節包の内側には滑膜があり、少量の滑液(関節液)が関節面を潤滑します。関節包の靭帯性の線維は比較的薄く、過度な可動域に対しては弱い制動力しか持ちませんが、持続的な一方向への負荷(たとえば慢性的な屈曲位)を受け続けると線維の短縮・拘縮が起き、可動域が失われていきます。胸椎の場合、関節面の向きから伸展・回旋での制限が顕著に現れやすいのはこのためです。
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椎間関節の関節包や多裂筋が硬化すると主に3系統の症状が出ます。①背部の痛み(胸椎中央〜肩甲骨間)、②胸椎伸展の制限(反り返りにくい・猫背が固まる)、③連鎖した頸椎・腰椎への負担(姿勢全体の悪化)。動画では特に胸椎の椎間関節の硬さが姿勢悪化と背部痛の主因の一つとして解説されています。
多裂筋(multifidus muscle)は、脊椎の深部の安定化筋として近年注目されています。多裂筋は棘突起から2〜4椎骨下の横突起・乳頭突起にかけて斜め上方向へ走行し、脊椎を安定化させながら伸展・対側への回旋を補助します。特に胸椎・腰椎の多裂筋は椎間関節のすぐ外側を走行しており、多裂筋の過緊張・萎縮が椎間関節への力学的な負荷を変化させることが基礎研究で示唆されています。多裂筋の機能低下は慢性腰背痛の患者で報告されており、多裂筋へのアプローチが椎間関節の状態改善に寄与する可能性があります。ただし、特定の手技による多裂筋と椎間関節への即時効果を示す質の高い研究は限られているため、この点は理論的な考え方として扱います。
胸椎の椎間関節には豊富な自由神経終末(侵害受容器)と圧受容器(メカノレセプター)が存在します。侵害受容器はプロスタグランジン・ブラジキニン・サブスタンスPなどの炎症性メディエーターによって活性化され、関節包の機械的伸長・化学的刺激が持続すると慢性的な痛みの源となります。一方、メカノレセプターへの適切な力学的刺激(モビライゼーション・マニピュレーション)は中枢感作を抑制する方向に作用することが研究で示唆されており、これが椎間関節への手技的アプローチの生理学的な根拠の一つとなっています。動画の手技はこの「関節包への適切な機械的刺激によって滑走性が改善する」という考え方に立脚しています。
動画の手技を図解する ── 触診・評価・リリースの手順
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椎間関節の触診は、棘突起(きょくとっき)のすぐ外側を上下に触れることから始まります。多裂筋のボリュームや硬さを確認しながら、棘突起から1〜2横指外側(関節柱ライン)に指を置き、最も外側の部分(横突起方向)まで触れます。胸椎のある高さで極端に硬くなっているところが関節包の拘縮を疑う部位です。患者を座位にして胸椎の伸展を促し、どのレベルで伸展が止まっているかを観察します。
動画(藤井翔悟)が示す手技の流れは、解剖学の知識に裏づけられた段階的なアプローチです。最初のステップは触診による評価、すなわち「どのレベルの椎間関節が最も硬くなっているか」を特定することです。患者を座位にします。座位のほうが胸椎全体の状態を観察しやすく、術者が背後から介入しやすいためです。術者は患者の背後に立ち、まず胸椎の棘突起(背骨の後ろ中央に触れる出っ張り)を頭側から尾側へ順に確認します。棘突起は正中(背骨の真ん中)に並んでいますが、椎間関節はそこから1〜2横指(1.5〜3 cm程度)外側の「関節柱ライン(articular pillar line)」にあります。
棘突起から外側へ指を移動させると、多裂筋(たれつきん)の筋腹が触れ、さらに外側の骨性の硬さ(横突起・関節突起)が感じられます。特に「ボコッ」とした局所の硬さ、あるいは「圧して痛い」という圧痛点がある部位が、椎間関節の関節包の拘縮・多裂筋の硬結を疑う場所です。動画では特に胸椎(T1〜T12)レベルでこの触診を行い、硬いレベルを「最も外側の部分(棘突起から最も離れた部分)」まで丁寧に触診することを強調しています。評価の際は、患者に「ここを押すと痛みや違和感が出ますか?」と確認しながら行い、患者の反応をみながら深さと圧の強さを調整します。
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動画の手技の核心は「椎間関節に対して斜め下(頭側→尾側方向)への圧迫を加えながら、患者に胸椎の伸展を促す」という直接法です。術者は患者の背後に立ち(患者は座位)、触診で硬さを確認した胸椎レベルの棘突起外側に指を当てます。そこから斜め下方向(尾側に向かって45°前後)に圧迫を入れながら、患者に「胸を張るように伸ばしてください」と声をかけます。圧迫と運動が組み合わさることで、椎間関節の関節包・周囲の多裂筋が伸長され、関節面の滑走性が改善するという考え方です。
触診でレベルを特定したら、リリース手技に移ります。動画の手技の核心は「斜め下方向(頭側から尾側に向かって斜め下)への圧迫と、患者の能動的な胸椎伸展を同時に組み合わせる」という直接法です。術者は触診した指(主に母指または中指)を確認した椎間関節のレベルの棘突起外側に当てたまま、「斜め下(尾側・前方)方向」へ圧迫を加えていきます。この方向は、胸椎の椎間関節の関節面の向きに合わせて関節面を開かせる(関節包を伸長させる)方向です。
圧迫を加えながら、「胸を張るようにゆっくり反ってください」「背中を伸ばしてください」と患者に声をかけ、胸椎の伸展運動を誘導します。患者が能動的に動くことで、椎間関節の関節包に自然な伸長刺激が加わります。この「圧迫+能動運動の組み合わせ」は、関節包への機械的な刺激と患者自身の筋活動による動的な伸長を組み合わせた手技であり、単純な持続的圧迫や静的ストレッチとは異なります。術者は伸展のしやすさの変化(「どこまで反れますか?」)を確認しながら、無理のない範囲で行います。手技は片側ずつ行い、左右の硬さの違いも確認します。
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椎間関節の関節包が硬い状態(左図)では、胸椎の伸展時に関節面がスムーズに滑走できず、伸展が止まります。棘突起外側への圧迫を加えながら伸展を促すことで、関節面への適切な力学的刺激が加わり、関節包・多裂筋の抵抗が緩和される(右図)というのが動画で示す考え方です。これは直接法の基本原理であり、多裂筋への反射的な弛緩も加わると考えられますが、この具体的なメカニズムを直接検証した研究は現時点では限定的です。
リリース後の即時評価も重要です。手技前に確認した胸椎の伸展角度・伸展時の痛み・硬さの局在が変化しているかを再評価します。「反りやすくなった」「あの部分の引っかかりが減った」という変化が確認できれば、椎間関節の滑走性の改善を示唆します。動画では1回のリリースで顕著な変化が得られるケースが紹介されていますが、慢性的な拘縮では複数回のセッションが必要になることも多く、リリース後の再発防止のためには姿勢習慣・筋力バランスの改善も並行して取り組む必要があります。
症例の考え方・FAQ ── よくある疑問に答える
Q. 猫背が長年続いていますが、椎間関節をリリースすれば改善しますか? ── A. 猫背(胸椎後弯の増大)の原因は、椎間関節の関節包の拘縮だけでなく、筋力バランスの崩れ(大胸筋・小胸筋の短縮、菱形筋・前鋸筋の弱化など)や、習慣的な姿勢パターン、場合によっては椎体の変形なども関与しています。椎間関節のリリースは、「関節包の拘縮という器質的な制限を取り除く」という意味では有益な可能性がありますが、それだけで姿勢が改善するわけではありません。椎間関節のリリースは「姿勢改善の入り口」として位置づけ、その後の筋力強化・姿勢再教育と組み合わせることが大切です。
Q. 棘突起の外側を押しても硬結が分かりません。どうすればいいですか? ── A. 初学者がこの触診で迷いやすいのは、多裂筋・最長筋など複数の層の筋が重なっているため、どの層の硬さを触れているか分かりにくいという点です。コツは、①まず棘突起という骨性のランドマークをしっかり確認してから外側に1〜2横指移動すること、②強い圧ではなく軽い圧から始め、「ゆっくりと沈み込むように」組織を追うこと、③患者に力を完全に抜いてもらうこと(坐位で背もたれに体重を乗せる、または患者が自ら脱力できる楽な姿勢)です。慣れていない場合は、まず腰椎レベルの多裂筋(棘突起外側で比較的太い筋腹として触れやすい)で練習してから胸椎レベルに応用すると分かりやすくなります。触診は解剖学的な知識と反復練習が不可欠であり、専門教育を受けた上で行ってください。
Q. 背中を反らせると痛みが出るのですが、椎間関節が原因ですか? ── A. 伸展で痛みが出る場合、椎間関節の関節包の拘縮(伸展時に関節面が滑走できずに痛む)の可能性はありますが、同時に除外すべき問題もあります。胸椎の圧迫骨折(高齢者・骨粗しょう症)、脊椎腫瘍、椎間板後方ヘルニア、脊柱管狭窄症などは伸展で症状が悪化することがあります。また急性の炎症期(腫脹・熱感・強い安静時痛)も禁忌に相当します。「背中を反らせると痛い」という症状があり、安静時の痛みや下肢のしびれ・脱力を伴う場合は自己判断でのリリースを行わず、まず整形外科で画像評価を受けてください。
Q. この手技は自分でできますか? セルフケアとして行いたいのですが。 ── A. 動画で示されている手技は術者が患者の背後から棘突起外側を直接触診し、角度を合わせて圧迫を加えながら伸展を誘導するものであり、自己施術は極めて困難です。椎間関節の位置・硬さを自分の手で確認しながら正確に誘導するためには、解剖学的な知識と触診技術の両方が必要です。セルフケアとしてできることは、ヨガのコブラポーズ・バックベンド・フォームローラーを使った胸椎のモビリゼーションなど、胸椎全体の伸展を促すエクササイズです。これらは椎間関節への特異的なアプローチではありませんが、慢性的な屈曲位を解除する効果が期待できます。治療的なアプローチを望む場合は、理学療法士・柔道整復師・整体師など専門職による施術を受けてください。
安全・受診勧奨 ── この手技の前に確認すべきこと
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椎間関節周囲の組織に直接圧をかける手技には、骨粗しょう症・脊椎の圧迫骨折・脊椎腫瘍・急性の椎間板ヘルニアなどの禁忌があります。強い痛み・しびれ・下肢の脱力・排尿・排便の異常が伴う場合は自己流での介入は絶対に行わず、速やかに整形外科・脳神経外科を受診してください。この手技は解剖の知識と正確な触診ができる専門家が行うべきものです。
椎間関節周囲へのアプローチを行う際の安全のポイントを整理します。①強すぎる圧は禁物:脊椎の後方要素(棘突起・横突起・関節突起)は骨粗しょう症がある場合に骨折するリスクがあります。また脊髄・神経根がすぐ前を走っており、過度な圧は神経障害につながる可能性があります。ゆっくりと段階的に圧を加え、患者の反応を見ながら行います。②しびれ・電撃感があれば即中止:腕・脚への電撃感・しびれは神経根への刺激の可能性があります。絶対に圧を続けないでください。③急性炎症期は禁忌:椎間関節炎(背部の腫脹・熱感・赤み)の急性期には手技的な刺激を加えてはなりません。④脊椎腫瘍・感染症の疑いがある場合は絶対禁忌:原因不明の著明な背部痛、特に夜間痛・体重減少・発熱を伴う場合は、腫瘍や感染の可能性があり、手技的アプローチは禁忌です。⑤骨粗しょう症・圧迫骨折の既往がある場合は担当医の許可なしに行わないこと。
この記事を読んで、胸椎の椎間関節という「見えにくい小関節」への新しい視点を得ていただけたなら嬉しいです。猫背・背部痛・姿勢の崩れという一見「筋の問題」に見える不調の背景に、関節包という軟部組織の硬化が関与しているかもしれない ── この視点は、長年改善しない姿勢や背部痛に向き合う患者にも治療家にも、評価と治療の選択肢を広げる一助になりえます。ただし、繰り返しますが、これはあくまで「可能性」であり、「治る」という断定はできません。動画で示された評価と手技を参考に、安全を守りながら、専門職の指導のもとで活用してください。
まとめ・参考文献
この記事のまとめ:①椎間関節は上・下関節突起が組み合わさる平面関節で、胸椎では伸展・回旋を担い、関節包の拘縮が胸椎の可動域制限・背部痛の一因となりうる。②多裂筋が椎間関節の直外側を走行し、多裂筋の過緊張と関節包拘縮が相互に影響し合う。③藤井先生の手技は棘突起外側への斜め下方向への圧迫と患者の能動的胸椎伸展を組み合わせた直接法であり、関節包への機械的刺激と筋の動的伸長を同時に得るという考え方に基づく。④引用した4本の論文(Khorramroo 2026・Opara 2023・Amons 2026・Qin 2026)はいずれも椎間関節への直接手技を検証したものではなく、脊椎姿勢・頸胸椎理学療法の方向性を照らす周辺エビデンスである。⑤しびれ・下肢脱力・排尿排便異常・夜間痛・体重減少・骨粗しょう症・脊椎の外傷・感染・腫瘍の疑いがある場合は絶対に自己判断でのアプローチを行わず、整形外科を受診すること。
限界と注意・受診の目安
- ▸この記事・動画は医療診断・治療の代替ではなく、専門家向けの教育的コンテンツです。下肢のしびれ・脱力・排尿排便の異常・夜間痛・発熱を伴う背部痛・体重減少がある場合は速やかに整形外科・神経内科を受診してください。
- ▸骨粗しょう症の診断がある・圧迫骨折の既往がある・脊椎への外傷後・脊椎腫瘍や感染が疑われる場合はこの手技を行ってはなりません。担当医に相談してください。
- ▸強いしびれ・電撃感(腕・脚方向)を感じた場合は即座に圧を解除し、手技を中止してください。神経根への過剰刺激の可能性があります。
- ▸椎間関節への圧迫と伸展誘導という具体的な手技を直接検証したRCTは現時点では限られており、この手技の核心部分は藤井先生の臨床経験と解剖学的理論に基づくものです。引用した論文(Khorramroo 2026・Opara 2023・Amons 2026・Qin 2026)は手技の方向性を照らす周辺エビデンスであり、手技の有効性を直接証明するものではありません。
- ▸この手技は解剖学の知識と正確な触診技術を持つ専門家(理学療法士・柔道整復師・医師など)が行うべきものです。セルフケアとしての施術は困難であり、強くお勧めしません。効果には個人差があります。
監修・参考文献
掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。
監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)
- [1] Khorramroo F, Rostami M, Bafrouei MJ.(2026).「Corrective exercises strongly improve posture but fail to produce consistent clinical or functional benefits in patients with upper crossed syndrome: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials」. BMC sports science, medicine & rehabilitation.
- [2] Opara M, Kozinc Ž(2023).「Which muscles exhibit increased stiffness in people with chronic neck pain? A systematic review with meta-analysis」. Frontiers in sports and active living.
- [3] Amons AL, Castien RF, De Hertogh W, Burchell GL, Schoonmade LJ, van der Wouden JC, Dekker J, van der Horst HE.(2026).「Efficacy of cervical physical therapy on pain sensitivity in patients with migraine compared to no treatment, sham treatment or usual medical care: a systematic review and meta-analysis」. The Journal of manual & manipulative therapy.
- [4] Qin Y, Song D, Li J.(2026).「Prevalence, risk factors, and conservative management of low back pain in competitive gymnasts: a systematic review」. BMC sports science, medicine & rehabilitation.