FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE
腓骨リリース ── 膝の外側の痛みを「腓骨の下方変位」から読み解く
こんな方へ:膝の外側が痛む・O脚と言われたが改善しない / 膝を曲げると特定の角度で外側に引っかかりや痛みが出る / 変形性膝関節症(内側型)と診断され腓骨周辺が気になる / 膝の屈伸時に外側側副靭帯あたりに違和感がある / 腓骨と膝の痛みの関係を知りたい治療家・セラピスト
腓骨(ひこつ)は下腿外側を縦走する細い骨で、その上端にある腓骨頭(ひこつとう)は膝関節の外側に位置し、外側側副靭帯(LCL)を介して大腿骨と連結する。腓骨頭のすぐ後方には総腓骨神経が巻きつき、この部位の硬さや位置の変化は膝の屈伸時の痛みに直結しうる。治療家・藤井翔悟の実技動画(YouTube ID: VA274bOyXQU)は、膝の外側の痛みの原因として「腓骨の下方変位」に着目し、腓骨頭を上方にアシストしながら膝を屈伸させることで痛みが消えるかを確かめる独自の疼痛誘発評価と、そのままリリースとして活用する手技を提示する。
監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-09-13
FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS
藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持
研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。
藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。
手技デモ(実演)
動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス
EVIDENCE
藤井式の技術を、査読論文4本で支持する
本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。
FUJII METHOD
論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性
評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする
研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。
この記事で学べること/結論を先に
この記事は、治療家・藤井翔悟による「膝の外側の痛みと腓骨の関係」をテーマにした実技解説動画(YouTube ID: VA274bOyXQU)の内容を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。4つの柱から構成されます ── ①腓骨とはどんな骨で、なぜ膝の痛みに関係するのか ②O脚と腓骨の下方変位の関係 ③藤井先生が示す触診・疼痛誘発評価の手順 ④腓骨を上方に誘導するリリース手技。最初に正直に伝えておきます。この動画の最大の価値は単純な「ほぐし方」の紹介ではなく、膝の痛みの原因を「関節の外=腓骨の位置異常」という視点で評価する発想の提示にあります。骨棘や軟骨のすり減りといった関節内の変化だけが痛みの原因ではないかもしれない ── この視点の転換こそが動画の核心です。
この記事の2本柱を先に示します。(A)動画の手技=藤井先生の臨床経験に基づく評価と着眼点。O脚や膝の外側の痛みにおいて、腓骨頭が下方に変位していることがあり、腓骨を上方にアシストしながら膝を屈伸させることで痛みが消えれば腓骨が原因に関与していると評価する。その評価とリリースを一体化させた手技。(B)周辺のエビデンス=腓骨周辺の解剖・腓骨に関連した手術的介入のメタ解析・足関節の徒手療法研究・ドライニードリングの系統的レビュー、という実在4本の論文。(A)と(B)は明確に区別して提示します。
この記事の読み方 ── 動画(体験)と記事(地図)
動画は藤井先生の触診の当て方・腓骨頭の見つけ方・疼痛誘発評価・リリースの発想を「体験」するもの。記事は「いま何を、なぜやっているか」と「どこまでが研究で、どこからが臨床経験か」を持ち帰る地図です。この動画の核心である「腓骨の下方変位が膝の外側痛を起こしている」「腓骨を上方に誘導すると痛みが改善する」という主張は、藤井先生の豊富な臨床観察に基づくものであり、これを直接検証したRCTや系統的レビューは現時点では存在しません。医療情報として、研究の裏づけと臨床経験を正確に区別した上で読み進めてください。
背景 ── なぜ「膝の外側の痛み」に腓骨が関係するのか
膝の外側の痛みは、スポーツ選手から中高年まで幅広い層で見られる訴えの一つです。整形外科では、変形性膝関節症(OA)・外側半月板損傷・腸脛靭帯(IT band)炎・外側側副靭帯(LCL)損傷などが原因として挙げられますが、これらの診断がついていても改善しないケースが存在します。動画の冒頭で藤井先生が指摘するのは、関節内の骨棘や軟骨のすり減りが痛みの直接原因ではないかもしれない、という点です。X線で変化が確認されても、その部位に痛みが出るとは限らない ── 骨膜そのものが痛みを発生させるのだから、骨棘がない部分が痛いのはむしろ当然ではないか ── という問いかけです。
さらに藤井先生が強調するのは、アライメント(骨の並び方)の修正だけで痛みが解決しないケースがある、という臨床的な観察です。人工膝関節置換術(TKA)でアライメントを正確に修正しても、術後も痛みが残るケースが存在する。これは、痛みの原因が必ずしも関節内の構造的変化にあるとは限らないことを示唆しています。この問題意識から、動画では「関節の外=結合組織(筋膜)の硬さ・位置の変化」という視点が提示されます。特に注目されるのが腓骨 ── 膝関節の外側に位置し、O脚患者では下方に変位する傾向があるという臨床観察です。
腓骨(fibula)は、下腿を構成する2本の骨のうちの外側にある細い骨です。体重を支えるメインの骨は内側の脛骨(tibia)であり、腓骨は体重支持には直接参加しませんが、足首の安定・下腿の筋肉の付着点・膝外側の靭帯の起点として非常に重要な役割を担っています。腓骨頭(上端)は膝関節の外側に突出し、外側側副靭帯(lateral collateral ligament: LCL)が大腿骨外側上顆から腓骨頭へと張ります。O脚(genu varum)では、腓骨が全体的に下方にずれやすく、これがLCLや周囲の筋膜に対して不均一な張力をかけることで、膝の屈曲・伸展時に外側の痛みや引っかかりを生じさせうると藤井先生は説明します。
もう一つ見逃せない解剖学的特徴が、腓骨頭の後方に沿う総腓骨神経(common peroneal nerve)の走行です。この神経は膝窩から腓骨頭の後方を巻きつくように走り、腓骨頭のすぐ背後で表在化します。この部位は非常に骨に近く、圧迫を受けやすい解剖学的に脆弱な場所です。周囲の組織が硬化・癒着すると、神経の「滑走性(すべり)」が低下し、膝の屈伸時に神経が引っ張られて感覚異常や痛みを生じさせる可能性があります。エコーの普及によって、この関節外の組織変化を可視化できるようになってから、藤井先生の膝の痛みへの見方が大きく変わったと動画では述べられています。
腓骨の解剖と機序 ── 腓骨頭・LCL・総腓骨神経の三角形
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腓骨は下腿(かたい)の外側を走る細い骨です。上端の腓骨頭(ひこつとう)は膝関節の外側に位置し、外側側副靭帯(LCL)によって大腿骨とつながります。腓骨頭のすぐ後方には総腓骨神経(黄)が骨に沿って巻きつき、下腿前外側の感覚・運動を支配します。腓骨全体は、下腿の筋膜・骨間膜を通じて、膝から足首・足底まで力学的につながっています。
図1は腓骨の全体解剖を外側面から示しています。腓骨は脛骨の外側を並走する細長い骨で、上端の腓骨頭から下端の外果(外くるぶし)まで伸びます。腓骨頭は膝関節の外側に位置し、触診で「ゴリッ」とした骨の出っ張りとして確認できる重要な解剖学的ランドマーク(位置の目印)です。腓骨頭には外側側副靭帯(LCL)の遠位端が付着し、そこから大腿骨の外側上顆へと伸びます。この靭帯は膝の外反(外への崩れ)を防ぐ重要な安定化構造です。
腓骨と脛骨の間には上脛腓関節・骨間膜・下脛腓関節という連結構造があり、この「脛腓連合」が足首の安定と下腿の剛性に大きく寄与しています。つまり腓骨は単独で動く骨ではなく、脛骨と一体となって機能する骨です。この事実は、腓骨の位置が変化すると足首・膝・股関節まで連鎖的に影響する可能性を示唆します。一方で腓骨頭の後方には総腓骨神経が走ります。この神経は大腿後面から膝窩を経て腓骨頭の後面を回り込み、前脛骨・腓骨筋群の運動と下腿前外側・足背の感覚を支配します。腓骨頭の直後という解剖学的に表在で圧迫を受けやすい場所を走るため、この神経は他の神経に比べてリスクが高いことを常に念頭に置く必要があります。
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藤井先生の臨床観察では、O脚(genu varum)の患者で腓骨が下方に変位している傾向があります。腓骨頭が下方にずれると、屈曲・伸展時に外側側副靭帯(LCL)や周囲の筋膜が不均一に引っ張られ、膝の外側に痛みや引っかかりが生じやすくなります。左図(正常)と右図(下方変位)の違いを比較してください。この観察は藤井先生の臨床経験に基づくもので、直接これを検証した研究は現時点では存在しません。
図2は正常例と腓骨の下方変位例を比較しています。O脚(genu varum)では膝の内側に荷重が偏り、外側の構造に独特の引っ張り力が加わります。藤井先生の臨床的観察では、このようなO脚の患者において腓骨頭が正常より下方にずれている傾向があります。腓骨頭が下方に変位すると、LCLはより遠位から大腿骨外側上顆へと向かうことになり、膝の屈曲時に普段とは異なる角度でLCLや周囲の筋膜・結合組織が引っ張られます。これが膝の屈曲の特定角度(動画では100度前後が例として挙げられています)で外側に痛みや引っかかりが生じる原因となりうると説明されます。加えて、骨の経年変化として「骨が広がり・落ちる」という考え方とも一致するとも動画では述べられており、これは骨膜の変化・周囲の筋膜の硬化・姿勢の変化が長年をかけて腓骨の位置に影響を与えるという臨床的な観察です。
動画の手技を図解する ── 評価・触診・リリースの手順
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腓骨頭は膝関節の外側、お皿の斜め下外側に突出する骨の出っ張りです。外側から触れると「ゴリッ」とした硬い感触があります。ここを確認したら、腓骨頭を上方に向けて押しながら(アシストしながら)患者に膝の屈曲・伸展をしてもらいます。痛みが消えれば腓骨の下方変位が関与している可能性が高いと評価します。
動画(藤井翔悟)が示す手技の流れは評価とリリースを一体化した明快な構成です。まず前提として、膝の外側に痛みを訴える患者(特にO脚傾向・膝の屈曲時の特定角度で痛みが出るケース)に対して、腓骨頭の位置と周囲の組織の状態を評価することを強調します。腓骨頭の触診は、膝を軽く曲げた状態(膝関節を30〜60度屈曲)で行うと外側の骨性突起が分かりやすくなります。膝蓋骨(お皿)の外下方を指で探ると、膝関節裂隙(関節の隙間)のすぐ下に、ゴリッとした腓骨頭の突起を確認できます。この触診は練習が必要ですが、解剖学的ランドマークの知識があれば比較的確認しやすい部位です。
触診で腓骨頭の位置と硬さを確認したら、次のステップは「疼痛誘発評価」です。術者は親指または示指・中指で腓骨頭を下から支えるように当て、上方へ軽く誘導(アシスト)します。この状態を保ちながら、患者に普段痛みが出る動作(例:膝の屈曲100度前後)を行ってもらいます。重要な原則は「強く押し込まない」ことです。目的は腓骨頭を上方の方向へ誘導することであり、後方への押し込みは総腓骨神経への刺激となる危険があります。上方への軽い誘導を維持しながら、患者に膝を屈伸してもらい、普段出ていた痛みが変化するかを確認します。
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疼痛誘発評価の核心。術者は腓骨頭を上方にアシストしながら、患者に膝の屈曲・伸展を行ってもらいます。①アシストなし(通常)で膝屈曲時に痛みがある。②腓骨頭を上方にアシストしながら同じ動作をする → 痛みが消えれば「腓骨の下方変位が原因に関与している可能性が高い」と評価できます。逆に変化がなければ他の原因を探ります。この評価法は藤井先生の臨床的発想に基づくものです。
疼痛誘発評価の判断基準は明確です。腓骨頭を上方にアシストすることで、膝屈曲時の外側の痛みが軽減・消失した場合、「腓骨の下方変位がこの患者の痛みに関与している可能性が高い」と評価します。逆に痛みに変化がない場合は、腓骨は主な原因ではないと考え、他の評価(半月板・IT band・LCL・膝窩筋など)に移行します。この「腓骨のアシストで痛みが変わるかどうか」というシンプルなテストは、治療の標的を絞り込むための臨床判断法として非常に明快です。藤井先生はこの評価こそが手技の成否を分けると強調しています。もし評価を省いてリリースを行っても、腓骨が原因でない患者には効果が出ません。
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疼痛誘発評価で「腓骨が原因」と判断されたら、同じ手法でリリースを行います。術者は腓骨頭を親指・示指で上方へ誘導しながら、患者に膝の屈曲・伸展を繰り返してもらいます。運動中に組織が徐々にゆるんでくるため、痛みが出なくなる可動域が広がるかを確認しながら行います。手技後に膝の屈伸を評価し、改善が確認できれば成功です。
評価で陽性(痛みが消えた)と確認されたら、そのままリリース手技に移行します。基本的には評価と同じ手法 ── 腓骨頭を上方に誘導しながら患者に膝の屈伸を繰り返してもらう ── を継続します。繰り返しの運動の中で、周囲の組織が徐々にゆるんでくると、アシストを維持しなくても痛みが出なくなる可動域が広がってきます。セッションの最後に再度評価を行い、アシストなしで膝を屈伸したときの痛みが改善していれば手技は成功です。重要な注意点は、腓骨頭の後方(総腓骨神経が走る部位)への直接の強い押し込みを行わないこと、そして無理に強い圧をかけないことです。組織の変化は軽い誘導の繰り返しで起こるものであり、強い圧は不要なだけでなく危険です。
症例の考え方・FAQ
Q. O脚と言われていますが、このリリースで O脚が治りますか? ── A. 腓骨リリースはO脚の骨格そのものを修正するものではありません。O脚は骨の形・靭帯の弛緩・筋肉のバランスなど複合的な要因によって生じており、徒手的なリリースで骨のアライメント自体を変えることは基本的にできません。このリリースの目的は、O脚に伴って生じている「腓骨頭の下方変位(位置の異常)」を一時的に上方へ誘導することで、膝屈伸時の外側の痛みを軽減することです。骨格の根本的な改善には、適切なエクササイズ・装具・場合によっては手術的介入が必要です。まずは整形外科で評価を受けることをお勧めします。
Q. 腓骨頭の後ろを押すと痺れが出ました。大丈夫ですか? ── A. 直ちに中止してください。腓骨頭の後方には総腓骨神経が走っており、この部位を強く押すと神経への刺激が生じます。痺れ(感覚異常)は神経への過度な刺激のサインです。多くの場合、圧を抜けば症状は消えますが、しびれが続く・足首や足趾が動きにくい・感覚が戻らないという場合は速やかに医療機関を受診してください。腓骨頭後方への直接の強圧は、このリリース手技では行わないことが原則です。安全な手技は「腓骨頭を後方から前方へ押すのではなく、上方へ誘導する」ことです。
Q. 変形性膝関節症(内側型)と診断されましたが、このリリースは効果がありますか? ── A. 変形性膝関節症(OA)は内側・外側・膝蓋大腿など複数の亜型があり、内側型が最も多いとされます。動画でも変形性膝関節症の患者における関節外(腓骨・結合組織)の関与について言及されています。近位腓骨骨切り術(PFO)という手術では、内側型膝OAの痛みと機能が有意に改善することがメタ解析で示されています(Jiang 2025)。ただし、藤井先生の徒手リリースとPFOは全く異なる介入であり、同じ効果を期待することはできません。徒手リリースによる改善がある患者もいるかもしれませんが、OAの病態そのものに影響を与えるものではありません。まずは整形外科で治療方針を確認した上で、補完的な施術として検討することをお勧めします。
Q. このリリースは自分でできますか? 自己施術の方法はありますか? ── A. 腓骨頭の触診は、解剖学の知識があれば自分でも試みることはできます。ただし、疼痛誘発評価・リリース手技は「腓骨頭を正確に触診し、上方への誘導の方向と強さを調整しながら同時に患者の動作を評価する」という複数の操作を同時に行うものであり、自己施術では精度が著しく低下します。特に腓骨頭後方の神経を誤って刺激するリスクがあります。自己施術で行う場合は、腓骨頭を確認するだけにとどめ、強い圧をかけることは避けてください。正確なリリースは理学療法士・柔道整復師・鍼灸師など専門職のもとで行うことを強くお勧めします。
Q. 膝の内側が痛い場合も同じ評価をするのですか? ── A. 動画のアプローチは膝の外側の痛みに対して腓骨を評価するというものです。膝の内側の痛みには内側半月板・内側側副靭帯(MCL)・大内転筋・伏在神経など異なる構造が関与することが多く、腓骨のリリースが主な介入にはなりません。ただし、膝は外側と内側の構造が互いに影響し合うため、外側(腓骨)の状態を確認することが内側痛の評価に全く役立たないとも言えません。評価は二分法ではなく、膝全体・下腿全体を包括的に見ることが重要です。膝の内側の痛みが主訴の場合は、内側型の問題に特化した評価を先に行うことをお勧めします。
安全・受診勧奨 ── この手技を行う前に確認すること
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腓骨頭の最大の注意点は、すぐ後方を総腓骨神経(common peroneal nerve)が巻きつくように走ることです。この神経を直接・強く圧迫すると、足首や足趾の下垂(foot drop)や感覚障害が起きる可能性があります。腓骨頭へのアプローチは、後方を強く押し込まず、上方へのやさしい誘導にとどめることが大原則です。下記の危険なサインが出たら即中止し、医療機関を受診してください。
腓骨頭周辺へのアプローチを行う際の安全のポイントを整理します。①後方への強圧は絶対に行わない:腓骨頭の後方には総腓骨神経が巻きつきます。この神経を強く圧迫すると足首・足趾の下垂(foot drop)や感覚障害が起きる可能性があります。②誘導する方向は「上方」のみ:目的は腓骨頭を上方に誘導することです。後方・外側への強い押し込みは行いません。③痺れ・脱力が出たら即中止:施術中に足首から先に痺れや脱力が出た場合は即座に中止し、症状が続くようであれば医療機関を受診してください。④禁忌:腓骨頭の骨折・腫瘍・局所感染・深部静脈血栓症(DVT)疑い・急性の重篤な膝関節炎・凝固障害がある方には施術を行わないでください。⑤専門職のもとで行う:このリリース手技は正確な解剖学的知識と触診技術が必要です。一般の方が強い圧をかけることは危険です。専門職のもとで評価・施術を受けることを強くお勧めします。
動画では、疼痛誘発評価の重要性が繰り返し強調されています。「アシストで痛みが消えるかどうかを必ず確認してからリリースに進む」という原則は、無効な手技に時間をかけることを防ぐだけでなく、患者にとって「自分の膝の外側の痛みの原因が腓骨の位置にある可能性がある」という理解を提供する教育的な意味も持ちます。この評価の発想は、X線でOAが確認されても「関節外の問題」を見逃さないという臨床的な視点の転換を促すものであり、治療家・患者の双方にとって価値があります。
まとめ・参考文献
この記事のまとめ:①腓骨は下腿外側を走る細い骨で、腓骨頭が膝外側のLCL・腓骨頭前靭帯の起点となり、後方には総腓骨神経が巻きつく重要な解剖学的部位。②O脚(genu varum)では腓骨頭が下方に変位する傾向があり、これが膝屈伸時に外側の構造を不均一に引っ張って痛みを生じさせうると藤井先生は臨床的に観察している。③評価の核心は「腓骨頭を上方にアシストしながら膝を屈伸させて痛みが消えるかを確かめる」疼痛誘発テスト。④引用した4本の論文(Jiang 2025・de Ruvo 2022・Kużdżał 2025・Shan 2024)はいずれも動画の徒手リリースを直接検証するものではなく、腓骨周辺への介入の方向性・安全管理の根拠を間接的に示す周辺エビデンスである。⑤腓骨頭後方は総腓骨神経が走るため、強い後方押し込みは行わず、上方への軽い誘導にとどめることが安全の大原則。
限界と注意・受診の目安
- ▸腓骨頭の後方には総腓骨神経が走ります。この部位を強く押し込むと足首・足趾の下垂(foot drop)や感覚障害が起きる可能性があります。後方への強い押し込みは行わないでください。
- ▸施術中に足・足趾のしびれ・脱力・感覚消失が出たら即座に中止し、症状が続く場合は医療機関を受診してください。
- ▸禁忌:腓骨骨折・腫瘍・局所感染・DVT疑い・急性重篤な膝関節炎・凝固障害。
- ▸「腓骨の下方変位が膝の外側痛の原因である」「腓骨を徒手で上方誘導すると痛みが改善する」という動画の主張は藤井先生の臨床経験に基づくものであり、これを直接検証したRCTや系統的レビューは現時点では存在しません。効果には個人差があります。
- ▸一般の方が自己施術で腓骨頭に強い圧をかけることは危険です。専門職(理学療法士・柔道整復師・鍼灸師など)のもとで行ってください。
- ▸膝の強い痛み・腫脹・熱感・発赤・不安定感、または足趾の脱力がある場合は、まず整形外科での受診を最優先してください。
監修・参考文献
掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。
監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)
- [1] Jiang Y, Li J, Zhang L, Jia X, Wang T, Zhao X, Chen J, Xu K.(2025).「Clinical efficacy and radiological changes of proximal fibular osteotomy for medial compartment knee osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis」. Journal of orthopaedic surgery and research.
- [2] de Ruvo R, Russo G, Lena F, Giovannico G, Neville C, Turolla A, Torre M, Pellicciari L.(2022).「The Effect of Manual Therapy Plus Exercise in Patients with Lateral Ankle Sprains: A Critically Appraised Topic with a Meta-Analysis」. Journal of clinical medicine.
- [3] Kużdżał A, Trybulski R, Muracki J, Klich S, Clemente FM, Kawczyński A.(2025).「Dry Needling in Sports and Sport Recovery: A Systematic Review with an Evidence Gap Map」. Sports medicine (Auckland, N.Z.).
- [4] Shan L, Zhao B, Wang H, Zhao Y, Diao S, Xu X, Gao Y, Sun Q, Lu T, Zhou J, Liu Y.(2024).「Comparison of Inferior Extensor Retinacular Reinforcement Versus Nonreinforcement in Arthroscopic Isolated Anterior Talofibular Ligament Repair for Chronic Lateral Ankle Instability: A Systematic Review and Meta-analysis」. Orthopaedic journal of sports medicine.