FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE
長腓骨筋リリース ── しびれを、腓骨神経の“すべり”からとらえ直す
こんな方へ:すね〜足の外側・足の甲のしびれが気になる / 立っているとき・動いたときに足の外側がピリピリする / 腓骨頭(ひざ下の外側の出っぱり)のあたりが硬い・押すと響く / 足首を外に返す動きが弱い・つまずきやすい / “しびれ=神経”を筋膜・筋の視点から考えたい方、および足まわりを扱う治療家・トレーナー
長腓骨筋(ちょうひこつきん/腓骨筋・peroneus longus)は、すねの外側の骨である腓骨の上端(腓骨頭)とその近くから起こり、外側を下って長い腱となり、外くるぶし(外果)の後ろを回り込んで足の裏をくぐり、内側の骨に停止する筋である。足首を外へ返す(外反)・下に蹴る(底屈)・足のアーチを支える働きを持つ。臨床でとりわけ重要なのは、この筋の起始のすぐそば=腓骨頭の後方を、総腓骨神経が骨に沿って皮下を回り込むことだ。
監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-07-09
FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS
藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持
研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。
藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。
手技デモ(実演)
動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス
EVIDENCE
藤井式の技術を、査読論文5本で支持する
本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文5本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。
FUJII METHOD
論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性
評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする
研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。
この記事で学べること/結論を先に
この記事は、治療家・藤井翔悟による長腓骨筋(ちょうひこつきん)の実技解説動画の中身を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。テーマの中心は“しびれ”。腕や指のしびれと同じように、すねから足の外側・足の甲にかけてのしびれに悩む人は少なくありません。動画は、このしびれに対して長腓骨筋という筋を扱いますが、そのねらいは筋を強く揉んで潰すことではなく、腓骨頭のすぐ後ろを通る腓骨神経が“なめらかに動ける環境”を取り戻すことにあります。この記事では、①長腓骨筋とはどんな筋か(解剖・機能)②硬いと出る症状(しびれ)③どう触診・評価するか④どう緩めるか、を順に整理します。
結論を先に言うと、この記事の骨組みは2本柱です。(A) 動画の手技=藤井先生の臨床経験に基づくアプローチ。すなわち『腓骨頭後方を直接押すと神経を刺激してしまうので、反対側の前脛骨筋を介して長腓骨筋を間接的に緩める』という一手です。(B) その周辺を裏づける実在のエビデンス=足関節への徒手療法が痛みや可動域に短期的な良い影響を与えうること、筋どうしが運動連鎖でつながって働くこと、そして長腓骨筋(腓骨筋腱)が整形外科の移植片として使われるほど機能的に無視できない筋であること。この2本を明確に分け、手技を“裏づけられる範囲で”科学と結びつけます。
この記事の2本柱 ── 体験(動画)と地図(研究)
動画=体験、記事=地図。動画は藤井先生の触り方・圧の向き・間接法の組み立てを“体験”するもので、記事は『いま何を、なぜやっているか』と『どこまでが研究で、どこからが臨床経験か』を持ち帰る地図です。動画独自の主張(前脛骨筋を介すと長腓骨筋が緩む、腓骨神経の滑走が改善してしびれが減る、等)は藤井先生の臨床経験として明記し、研究の裏づけと区別します。あわせて読むと、見よう見まねではなく意味の分かった一手になります。
背景 ── なぜ“しびれ”で長腓骨筋の名前が挙がるのか
しびれは、痛みとはまた違う独特のつらさを持つ症状です。ピリピリ、ジンジン、正座のあとのようなあの感覚が、すねの外側や足の甲、足の外側に続くと、日常の立ち居振る舞いから気分まで重くのしかかります。しびれと聞くと多くの人が“神経の問題”を思い浮かべますが、その神経がどこを通り、どんな環境に置かれているかは、まわりの筋・筋膜の状態と切り離せません。今回の主役である長腓骨筋は、まさにその“神経の通り道”のすぐそばに位置する筋であり、だからこそしびれの話題で名前が挙がるのです。
鍵になるのは、ひざの少し下・外側にある骨の出っぱり、腓骨頭(ひこつとう)です。自分の膝の外側を触ると、コリッとした硬い出っぱりが感じられます。これが腓骨(すねの外側の細い骨)の上端で、長腓骨筋はこの腓骨頭とその近くから始まります。そして、この腓骨頭のすぐ後ろを、総腓骨神経(そうひこつしんけい)という神経が、骨に沿うようにして皮膚のすぐ下を回り込んでいきます。総腓骨神経は、体表からもっとも触れやすい神経の一つとして知られ、ここで圧迫や刺激を受けやすい“弱点”でもあります。つまり長腓骨筋と総腓骨神経は、腓骨頭の後ろという狭い場所で、ごく近くに同居しているのです。
神経は、ただそこに置かれているのではなく、まわりの組織の中を少しずつ“すべって”動いています。関節を曲げ伸ばしし、筋が伸び縮みするたびに、神経もそれに合わせて滑走します。この滑走がスムーズなうちは問題になりませんが、まわりの筋・筋膜が硬くなり、神経が動ける“遊び”が減ると、動作のたびに神経が引っぱられたり圧迫されたりして、しびれや違和感が出やすくなる ── これが、動画が前提としている考え方です。長腓骨筋を扱うのは、この筋そのものが痛みを出しているというより、すぐ隣を通る総腓骨神経のすべりを取り戻すため、という文脈で理解すると腑に落ちます。
ここで一つ、正直に断っておくべきことがあります。しびれの原因は実にさまざまで、腰(腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄)から来るもの、糖尿病などの全身の病気から来るもの、腓骨頭のところで神経がはっきり圧迫される腓骨神経麻痺(足首が上がりにくくなる下垂足を伴うことがある)など、医療機関での評価が必要なものが含まれます。動画で扱うのは、そうした重い原因が除外されたうえでの、筋・筋膜由来と考えられるしびれへのアプローチです。この記事も同じ立場に立ち、危険なサインがある場合はまず受診を、という原則を最後まで崩しません。
もう一つ背景として押さえたいのが、長腓骨筋が“見た目より働き者”だということです。足首を外へ返し(外反)、地面を下に蹴り(底屈)、歩くたびに足の外側から内側へと荷重を受け渡す動きを支え、土踏まずのアーチを下支えします。捻挫を繰り返す足首の安定や、片脚で立ったときのぐらつきの抑制にも関わります。後述するように、整形外科では前十字靭帯や後十字靭帯の再建手術で、この長腓骨筋の腱(腓骨筋腱)を移植片として採取することがあるほど、丈夫で機能的に意味のある筋です。“外側のわき役”に見えて、実は足の安定の要 ── この認識が、なぜこの筋のケアが語られるのかの土台になります。
長腓骨筋の解剖と機序 ── 腓骨頭の後ろで、筋と神経が同居する
図は横にスワイプして拡大表示できます
長腓骨筋(ちょうひこつきん)は、すねの外側の骨=腓骨のいちばん上のふくらみ(腓骨頭)とその近くから始まり、外側を下って、長い腱になって外くるぶし(外果)の後ろを回り込み、足の裏をくぐって内側の骨に停止します。働きは足首を外へ返す(外反)と下に蹴る(底屈)、そして足のアーチを支えること。臨床でとりわけ大切なのは、起始のすぐ内側=腓骨頭の後ろを、総腓骨神経(黄)が骨に沿って回り込むことです。動画はこの神経の“すべり(滑走性)”に注目します。
長腓骨筋(ちょうひこつきん)は、すねの外側の骨である腓骨の上端(腓骨頭)と、その下の腓骨外側面の上部から起こります。動画でも、触診の起点として『腓骨頭のすぐ後方』が繰り返し示されます。ここから筋は外側を下り、下腿の下1/3あたりで長い腱に移行して、外くるぶし(外果)の後ろを回り込みます。腱はそこからさらに足の裏側へと向きを変え、足底を斜めに横断して、内側の骨(内側楔状骨と第1中足骨の底)に停止します。外側から始まった腱が、足の裏をくぐって内側に着く ── この“足裏を横断する”走行が、長腓骨筋の大きな特徴です。
働きは主に3つです。①足首を外へ返す外反、②足首を下に蹴る底屈(補助的に)、③足のアーチ、とくに外側と、足裏を横断する腱による横アーチ・内側アーチの下支えです。歩くとき、私たちは足の外側で着地し、そこから母趾側へ荷重を受け渡していきますが、長腓骨筋はこの荷重の受け渡しと、第1中足骨を地面へ押しつける動きを助けます。片脚立ちで足首が外側にぐらつくのを抑える、いわば“外側の支柱”のような役割です。動画内では機能の詳しい説明は省かれていますが、一般的な解剖学ではこうした働きが知られています。
そして、この記事の機序の中心が、神経との位置関係です。ひざの裏で坐骨神経から分かれた総腓骨神経は、大腿二頭筋腱に沿って外側へ向かい、腓骨頭の後ろから外側へと、骨に沿うようにして回り込みます。この部分では神経が皮膚のすぐ下・骨の上を通るため、外から圧迫を受けやすく、実際に腓骨頭付近は神経が障害されやすい代表的な部位として知られています。総腓骨神経はその後、浅腓骨神経(すね〜足の外側・足の甲の感覚と外反に関与)と深腓骨神経(足首を上げる前脛骨筋などを支配し、足の甲の一部の感覚に関与)に分かれます。長腓骨筋の起始のすぐ内側を、この重要な神経が通っている ── これが、腓骨頭後方を強く押してはいけない解剖学的な理由です。
機序として整理します。①長腓骨筋やその周囲(前方の前脛骨筋なども含む下腿の筋膜)が硬くなる。②腓骨頭後方を回り込む総腓骨神経の“すべる余地”が減る。③足首の動きや体幹・下肢の動作のたびに、神経が引っぱられたり局所で圧迫されたりする。④結果として、神経の支配領域であるすね〜足の外側・足の甲にしびれや違和感が出やすくなる ── というのが、動画が前提とするストーリーです。ここで大切なのは、これが“筋が神経を物理的に絞扼している”と断定するものではなく、あくまで滑走性という機能面からの見立てだという点です。だから介入も、神経を避けながら周囲の環境を整える、という穏やかな方向を向きます。
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動画がいちばん大切にするのは、しびれの症状です。腓骨頭のすぐ後ろを回り込む総腓骨神経は、本来まわりの組織の中をなめらかに“すべって”動きます。長腓骨筋やその周囲が硬くなると、このすべり(滑走性)が落ち、動作時・安静時のしびれにつながるのではないか ── というのが動画の見立てです。だから狙いは「筋をただ潰す」ことではなく、神経が動ける環境を取り戻すこと。※これは藤井先生の臨床経験に基づく考え方で、この特定の見立てを検証した強い研究はまだ限られます。
図2は、動画の主題である“すべり”の考え方を模式化したものです。健康な状態では神経はまわりの中をなめらかに動きますが、周囲が硬くなるとその動きが妨げられる。長腓骨筋を含む周囲を緩めることで、神経が再び動ける環境を取り戻し、しびれが和らぐ可能性がある ── という流れです。繰り返しになりますが、この“長腓骨筋を緩めると腓骨神経の滑走性が改善してしびれが減る”という具体的な因果は、藤井先生の臨床経験に基づく見立てであり、この見立てそのものを検証した質の高い研究はまだ見当たりません。有望な仮説として受け止めつつ、次章で研究が実際に言えている範囲を確認します。
動画の核心
動画の手技 ── 触診・誘発で絞り込み、神経を避けて間接的に緩める
ここからは、動画で実演される手技の中身を図解します。全体の流れは、①腓骨頭後方を触診して長腓骨筋の起始をとらえる → ②同部位を圧迫しながら動作でしびれの変化を見る(誘発テスト) → ③しびれが軽くなった人にだけ、神経を避けた間接法でリリースする、という3ステップです。動画がくり返し強調するのは“神経を直接刺激しない”という一点。触る場所が総腓骨神経のすぐそばだからこそ、強さで押し切るのではなく、丁寧に確かめながら進めます。
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触るのは腓骨頭のすぐ後ろ。ここを軽く圧迫しながら、体幹を反らす(伸展)などの動作をしてもらい、しびれや痛みが強くなる/弱くなるかを確認します(誘発テスト)。ただし、この場所は総腓骨神経が骨に沿って回り込むところ。強くグリグリ押すと神経を直接刺激して、ピリピリした痛みが出ることがあります ── これは緩んだのではなく神経を刺激したサイン。誘発で症状が軽くなった人にだけ、次の手技へ進みます。
まず触診です。触るのは腓骨頭のすぐ後方。膝の外側のコリッとした出っぱり(腓骨頭)を見つけ、その後ろに指を当てます。ここが長腓骨筋の起始部の目安です。次に評価。動画では、この腓骨頭後方を軽く圧迫しながら、体幹を後ろに反らす(伸展)などの動作をしてもらい、しびれや痛みが強くなるか・弱くなるかを確認します。圧迫と動作の組み合わせで症状が変化すれば、この領域が関与している手がかりになる、という考え方です。逆に何も変わらなければ、原因は別のところにある可能性を考えます。
この触診・評価で決定的に重要なのが、動画が繰り返す注意点です。腓骨頭の後方は総腓骨神経が骨に沿って回り込む場所なので、グリグリと強く圧迫すると、神経を直接刺激してピリピリした電気の走るような痛みが出ることがあります。これは筋が緩んだサインではなく、神経を押してしまったサインです。だから圧はあくまで軽く、そして“症状が軽くなること”を確認しながら進めます。ピリピリが出たら、それ以上押さない。誘発テストで痛みやしびれが軽減した人にだけ、次のリリースへ進む ── この選別が安全の要です。
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動画で推奨される手順。①腓骨頭後方に指を置き、長腓骨筋の起始部を触れておく。②反対側にある前脛骨筋(すねの前)を軽く圧迫する。③すると、腓骨側の長腓骨筋がふっと緩む感覚が得られる。④その状態のまま腓骨頭後方の長腓骨筋をやさしく操作して緩めていく。前脛骨筋を“経由”することで、腓骨神経への直接刺激を避けられるのが利点です。※前脛骨筋を介すと長腓骨筋が緩むという連動は、藤井先生の臨床経験に基づく考え方です。
そしてリリースの核心が、間接法です。動画で推奨される手順は次の通り。①まず腓骨頭後方に指を置き、長腓骨筋の起始部を触れておきます。②次に、反対側にあたる前脛骨筋(すねの前面、脛骨のすぐ外側にある筋)を軽く圧迫します。③すると、腓骨側の長腓骨筋がふっと緩む感覚が得られる、と動画は説明します。④その緩んだ状態を保ちながら、腓骨頭後方の長腓骨筋をやさしく操作して緩めていきます。ポイントは、緩めたい長腓骨筋そのものを強く押すのではなく、前脛骨筋という“別の入口”を経由することで、神経のすぐそばを直接刺激せずに済ませる点です。
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腓骨頭のすぐ後ろを直接グリグリ強く圧迫すると、そこを回り込む総腓骨神経に刺激が加わり、ピリピリとした電気が走るような痛みが出ることがあります。これは筋が緩んだのではなく、神経を押してしまったサイン。だから動画は、この直接法ではなく、前脛骨筋を介した間接法(図4)を勧めます。強さ・速さで押し切るのではなく、神経を避けて“環境を整える”という発想です。
なぜ直接法(腓骨頭後方を直接グリグリ押す)を避けるのか。理由は繰り返し述べた通り、そこが神経の通り道だからです。図5に示すように、直接法は神経を刺激してピリピリを生みやすく、患者さんに不快感を与えるうえ、緩めているのか神経を刺激しているのか区別がつきにくい。対して間接法は、前脛骨筋を介することで神経への直接刺激を避けられ、不快感が少ない ── これが動画の主張です。ここで正直に線を引いておきます。『前脛骨筋を圧迫すると長腓骨筋が緩む』という連動は、解剖学的には両者が下腿で拮抗的・協調的に働く関係にあることと矛盾はしませんが、この具体的な手技の効果を検証した研究はありません。藤井先生の臨床経験に基づく方法として受け止め、効果を過度に期待せず、まず“神経を刺激しない安全な入口”という利点に注目するのが誠実な向き合い方です。
動画では、両側同時に行うかといった細かな運用や、この手技だけで完結するのかといった点は明言されていません。また、しびれが軽くなったかどうかは、施術の前後で本人の感覚を確かめること(リリース後に緩む感覚・しびれの変化をチェックする)で判断します。この“やってみて、変化を確かめる”という姿勢は、手技そのもの以上に持ち帰る価値のある部分です。効果を決めつけず、反応を見て続けるか切り替えるかを判断する ── 誘発テストと事後チェックをセットで使う誠実さこそ、この動画から学べる骨格だと言えます。
症例の考え方・よくある質問(FAQ)
臨床での使い方を、架空の一般的なケースで考えてみます。『デスクワークが続き、最近すねの外側から足の甲にかけて、動いたときにピリピリするしびれが出る。腰に強い痛みはなく、足首はちゃんと上がる』という訴え。まず、しびれである以上、腰由来や全身の病気、はっきりした神経麻痺(下垂足など)でないかを確認するのが先決です。足首が上がる・感覚の大きな欠落がない・排尿排便の異常がない、などを確認したうえで、腓骨頭後方を軽く圧迫しながら体幹伸展をしてもらい、しびれが変化するかを見ます。ここで“軽くなる”反応があれば、動画の間接法(前脛骨筋を介したリリース)を穏やかに試す、という組み立てです。少しでも下垂足や進行するしびれ、腰から下肢に広がる強い痛みがあれば、手技より受診を優先します。あくまで考え方の例であり、実際の対応は個別の評価と医療者の判断によります。
Q. しびれなのに、なぜ神経ではなく“筋”を触るのですか? ── A. 神経そのものを治療するのではなく、神経が通る“環境”を整えるという発想だからです。腓骨頭の後ろを回る総腓骨神経は、まわりの組織の中をなめらかにすべって動いています。長腓骨筋を含む周囲が硬いと、そのすべりが妨げられ、しびれにつながりうる ── だから筋・筋膜側を緩めて神経の動ける余地を戻そう、という考え方です。ただし、これは藤井先生の臨床経験に基づく見立てで、この因果を証明した研究はまだありません。しびれの原因が腰や全身の病気にある場合は、いくら筋を触っても解決しません。だからこそ、危険なサインの除外が前提になります。
Q. 腓骨頭の後ろを自分で強く押してほぐしてもいいですか? ── A. おすすめしません。腓骨頭のすぐ後ろは、総腓骨神経が皮膚のすぐ下・骨の上を回り込む、体でもっとも神経が浅く通る場所の一つです。強く・速く・長く押し込むと、神経を直接刺激してピリピリした痛みを生んだり、かえって神経に負担をかけたりしかねません。動画がわざわざ“直接法は非推奨”とし、前脛骨筋を介した間接法を勧めているのは、まさにこの理由からです。セルフケアをするなら、腓骨頭そのものをグリグリ押すのではなく、すねの前(前脛骨筋)や下腿の外側を、痛みやしびれの出ない範囲でやさしくほぐす程度にとどめてください。
Q. 動画の『前脛骨筋を押すと長腓骨筋が緩む』は本当に効くのですか? ── A. 正直にお答えすると、これは藤井先生の臨床経験に基づく方法で、この特定の手技の効果を検証した研究はありません。前脛骨筋と長腓骨筋が下腿で関わり合って働くこと自体は不自然ではありませんが、“片方を圧迫すればもう片方が緩む”という因果がその場の変化として起きるのか、起きたとして何によるのかは、この動画だけでは断定できません。試すこと自体を止めはしませんが、効果を過度に期待せず、まず『神経を直接刺激しなくて済む、安全な入口』という利点に注目するのが賢明です。本記事はこれを“証明された事実”としては扱いません。
Q. これでしびれは治りますか? ── A. 『治る』とは言えません。しびれの原因はさまざまで、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄などの腰由来、糖尿病性の神経障害などの全身性、腓骨頭での明らかな神経麻痺(下垂足を伴うことがある)など、医療機関での評価・治療が必要なものが含まれます。動画の手技が対象にするのは、そうした重い原因が除外されたうえでの、筋・筋膜由来と考えられるしびれです。研究の面でも、確実に言えるのは足首への徒手療法が痛みや可動域に短期的な良い影響を与えうるといった控えめな範囲で、しかもしびれや長腓骨筋に特化した強い証拠ではありません。症状が続く・強い・広がる・足首が上がらないといった場合は、自己判断で対処し続けず、整形外科や神経内科などで評価を受けてください。
Q. 誘発テストでしびれが変わらなかったら、どうすればいいですか? ── A. それは大切な情報です。腓骨頭後方を圧迫しても、体幹の動作を加えてもしびれが変わらないなら、しびれの主因はこの領域の筋・筋膜ではない可能性が高まります。腰から来るもの、より中枢の問題、全身性のものなど、候補は他にもあります。動画が示すのは『触って、動かして、変化を見る』という検証の姿勢です。一つの仮説に固執せず、反応を見て考えを更新する ── この柔軟さこそが誘発テストを使う本当の意味であり、変わらなかったという結果は“ここではない”という前進です。判断に迷うしびれは、医療機関での評価につなげてください。
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この手技が使われた改善症例
※ いずれも本人の同意を得て匿名化した記録です。経過には個人差があります。
限界と注意・受診の目安
- ▸腓骨頭のすぐ後方は総腓骨神経が皮下を回り込む場所です。強く・速く・長く押し込むのは避け、ピリピリ・電気が走る感じ・足の甲へ広がるしびれが出たらすぐ中止してください。
- ▸『反対側の前脛骨筋を介すと長腓骨筋が緩み、腓骨神経の滑走性が改善してしびれが減る』は藤井先生の臨床経験に基づく仮説で、この手技そのものを検証した研究はありません。
- ▸引用した研究は、腓骨筋腱の移植片研究(この筋の機能的重要性)・足関節の徒手療法(周辺領域)・運動連鎖(つながりの一般論)で、いずれもしびれや長腓骨筋リリースの効果を直接示すものではありません。
- ▸足首が上がりにくい(下垂足)・足に力が入らない・感覚が明らかに鈍い・しびれが急に強くなった/広がる・腰から下肢に強い痛みが放散する場合は、自己流で続けず整形外科・神経内科などを受診してください。糖尿病などで足の感覚が鈍い方も強い圧は避けてください。
- ▸効果には個人差があります。『治る』と断定するものではありません。
監修・参考文献
掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。
監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)
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- [2] Kumar K, Rao V, Panda AK, Joshi D(2025).「Peroneus Longus Tendon Versus Hamstring Tendon Autograft for Primary Anterior Cruciate Ligament Reconstruction: A Systematic Review and Meta-analysis of Comparative Studies」. Orthopaedic journal of sports medicine.
- [3] Yousif Mohamed AM, Salih M, Mohamed M, Abbas AE, Elsiddig M, Abdelsalam M, Elhag B, Mohamed N, Ahmed S, Omar D, Ahmed S, Mohamed D(2025).「Functional outcomes of peroneus longus tendon autograft for posterior cruciate ligament reconstruction: A meta-analysis」. World journal of orthopedics.
- [4] ElMeligie MM, Abdeen HA, Atef H, Marques-Sule E, Karkosha RN(2025).「The effectiveness of mulligan mobilization with movement (MWM) on outcomes of patients with ankle sprain: a systematic review and meta-analysis」. BMC sports science, medicine & rehabilitation.
- [5] Adeel M, Lin BS, Chaudhary MA, Chen HC, Peng CW(2024).「Effects of Strengthening Exercises on Human Kinetic Chains Based on a Systematic Review」. Journal of functional morphology and kinesiology.