FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE
屈筋群リリース ── 前腕内側上顆周辺の硬さが肩の痛みを起こしているケース
こんな方へ:肩関節周囲炎(五十肩)と診断されたがなかなか改善しない / 肩のMRI・X線に異常がないのに痛みが続く / 棘上筋断裂の術後でも肩の痛みが残っている / 手作業・デスクワーク・治療家など前腕を多く使う職業の方 / 前腕屈筋群(浅指屈筋・橈側手根屈筋・尺側手根屈筋等)と肩の関係を知りたいセラピスト
前腕の屈筋群(くっきんぐん)は、上腕骨の内側上顆(ないそくじょうか)から起始し、手指・手首を曲げるほぼすべての動作に関与する筋群である。治療家・藤井翔悟の実技動画(YouTube ID: 4AEl6WcZNoA)は、肩関節周囲炎の患者の多くに「肩自体」ではなく「内側上顆から指1本分遠位の屈筋群の硬結」が関与していることを指摘し、硬結部を圧迫しながら肩の挙上動作を評価する独自の間接評価法を示す。
監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-09-10
FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS
藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持
研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。
藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。
手技デモ(実演)
動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス
EVIDENCE
藤井式の技術を、査読論文4本で支持する
本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。
FUJII METHOD
論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性
評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする
研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。
この記事で学べること ── 結論を最初に
この記事は、治療家・藤井翔悟による実技解説動画(YouTube ID: 4AEl6WcZNoA)の内容を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。テーマは「肩関節周囲炎の患者の多くに、肩自体ではなく前腕の屈筋群(くっきんぐん)の硬さが関与しているケース」です。動画の最初に藤井先生が語るのは、「棘上筋断裂の術後患者でも、X線に異常がない患者でも、肩に痛みが残るケースが非常に多い」という臨床の現実です。そして西洋医学的なアプローチだけでは解決できないケースにおいて、前腕の屈筋群という意外な部位に着目することが突破口になりうるという観点を提示します。
この記事の2本柱を先に示します。(A)動画の手技=藤井先生の臨床経験に基づく評価法と考え方。内側上顆から指1本分遠位の屈筋群硬結を触診・評価し、圧迫しながら肩の挙上動作がどう変化するかを確認するアプローチ。(B)周辺のエビデンス=上半身の姿勢不良(UCS)や屈筋群への介入を扱った実在4本の論文。(A)と(B)は明確に区別して提示します。
この記事の読み方 ── 動画(体験)と記事(地図)
動画は藤井先生の触診の感覚・評価の発想・臨床的な気づきを『体験』するものです。記事は『いま何を・なぜやっているか』と『どこまでが研究・どこからが臨床経験か』を整理する地図です。重要な前置き:「前腕屈筋群の硬さが肩の痛みを直接引き起こす」というメカニズムを高品質の研究(RCT・系統的レビュー)で直接証明した論文は現時点では存在しません。藤井先生の主張は豊富な臨床経験と筋膜の連続性という考え方に基づくものです。
背景 ── なぜ前腕の屈筋群が肩の痛みに関係するのか
肩の痛みは整形外科・理学療法の臨床において最もよく遭遇する主訴の一つです。肩関節周囲炎(いわゆる「五十肩」)という診断がつくケースも多く、その多くがMRI・X線による画像診断・ヒアルロン酸注射・リハビリテーションを経るにもかかわらず、長期にわたって症状が残るケースも少なくありません。動画の冒頭で藤井先生が強調するのは、「肩関節周囲炎の患者さんで、肩自体に原因がないケースが非常に多い」という点です。例として挙げられるのは、棘上筋断裂の術後患者でも肩の痛みが残るケース、X線やMRIで異常がないにもかかわらず肩の可動域制限と痛みが続くケースです。
これらは、痛みの真の原因が「関節内」や「腱板」にはなく、もっと離れた部位にある可能性を示唆しています。その「離れた部位」として藤井先生が注目するのが、上腕骨の内側上顆から遠位(指1本分程度)に位置する前腕屈筋群の硬結です。内側上顆は、前腕の屈筋群(浅指屈筋・深指屈筋・橈側手根屈筋・長掌筋・尺側手根屈筋・円回内筋など)が集約的に起始する骨の隆起部位であり、手指や手首を曲げるほぼすべての動作で繰り返しストレスを受ける「発火点」ともいえる解剖学的な要所です。
手作業を多くするセラピスト・治療家自身も含め、手を酷使する人にこの部位の硬結が生じやすいことを藤井先生は指摘しています。実際、藤井先生自身もこの部位が硬くなる経験があり、「職場の雑務より、まずこの練習を優先すべき」というほど重要なアプローチとして位置づけています。なぜ前腕の硬さが肩に影響するのか?藤井先生の考え方は、「筋膜の連続性(筋膜のつながり)」です。前腕から上腕にかけての筋膜は途切れることなく連続しており、前腕の硬化や癒着は筋膜を介して上腕・肩に張力を伝え、肩関節の動きを制限したり、痛みを引き起こしたりしうる、という考えです。
解剖と機序 ── 内側上顆から広がる屈筋群のネットワーク
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内側上顆(ないそくじょうか)は上腕骨遠位の内側(小指側)にある骨の突起で、前腕の屈筋群5筋がここから起始します。浅指屈筋(FDS)・橈側手根屈筋(FCR)・長掌筋(PL)・尺側手根屈筋(FCU)・円回内筋(PT)が集約する「発火点」です。尺骨神経(黄)はこの直後方の肘部管を通過します。手を多く使う職業では、内側上顆から指1本分遠位(矢印先端)に硬結が生じやすいと藤井先生は指摘します。
内側上顆(medial epicondyle)は、上腕骨(じょうわんこつ)の肘関節側の末端部にある内側(小指側)の骨の突起です。テニス肘やゴルフ肘の説明でよく登場する部位ですが、「ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)」という名が示すように、前腕の屈筋群全体の「発火点」ともいえる解剖学的な要所です。この内側上顆から起始する筋群は5つが主要なものです。①浅指屈筋(FDS: flexor digitorum superficialis)── 人差し指〜小指の中節骨に停止し、4本の指のPIP関節を屈曲させる前腕中層の大きな筋。手を使う動作ではほぼ常に活動します。②橈側手根屈筋(FCR: flexor carpi radialis)── 手根の橈骨側を屈曲させる筋で、物を掴む・書く動作で頻繁に使われます。
③長掌筋(PL: palmaris longus)── 手根を屈曲させる細い筋で、約10〜15%の人に欠如する変異もあります。④尺側手根屈筋(FCU: flexor carpi ulnaris)── 手首の尺側を屈曲・尺屈させる筋で、肘部管(ちゅうぶかん)の直近を走る尺骨神経に最も近い筋です。⑤円回内筋(PT: pronator teres)── 内側上顆と尺骨鈎状突起から起こり、前腕を回内(手のひらを下に向ける動き)させます。これらの筋は、内側上顆から指1本分(約1〜2cm)遠位の部位で集中して起始部を形成します。動画で藤井先生が触診の目標とするのがこの部位です。
反復的な手の使用(文字を書く・スマートフォン操作・器具を持つ等)が続くと、この起始部周辺に微細な炎症→線維化→筋硬結(きんこうけつ)が生じやすくなります。筋硬結とは、筋の局所的な収縮が持続し、結節状に硬くなった部位のことです。この硬結が形成されると、筋・筋膜の滑走性が低下し、前腕だけでなく筋膜を介して上腕・肩の動きにも影響が波及しうると考えられています。もう一つ重要なのが、尺骨神経(ちゅうこつしんけい)との位置関係です。尺骨神経は肘の内側を通る「肘部管」という骨と靭帯で囲まれたトンネルを通過します。内側上顆周辺への強い圧迫は尺骨神経を刺激するリスクがあるため、触診は「優しく、内側上顆のやや前面(掌側)、指1本分遠位」を心がけることが重要です。
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触診は右腕・左腕どちらでも行えます。肘の内側(小指側)で骨の突起(内側上顆)を触れ、そこから手首方向へ指1本分(約1〜2cm)移動した部位が目標です。この部位を指腹で軽く押し込んで、周囲と比べてやや硬い・押すと違和感があるポイント(硬結)を探します。尺骨神経が内側上顆の後ろを通るため、肘の「真後ろ」は避け、やや前面(掌側)を触れることが重要です。
図3で示したように、触診の際は内側上顆の後面(真裏)には尺骨神経が走行しているため、触れるのは「少し前面(掌側)寄り、指1本分遠位」が安全です。このポイントを指腹で軽く押し込み、周囲と比べてやや硬い・押すと違和感がある「硬結」を探します。硬結はすぐに見つかる場合も、じっくり触れることで初めて気づく場合もあります。圧迫後に小指・薬指へのしびれや電気感が出た場合は、即座に圧を抜くことが鉄則です(安全章で詳述)。藤井先生は自分の前腕で試してみることを強く推奨しており、多くのセラピストでこの部位に硬さが見つかるといいます。
STEP 1〜3
動画の手技 ── 評価から触診・確認まで(STEP by STEP)
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動画の核心的な評価法。STEP1:まず通常の肩の挙上(屈曲)を評価する。STEP2:内側上顆から指1本分遠位の硬結を指で軽く圧迫する。STEP3:圧迫した状態で再度肩を上げる。圧迫しながらの方が「楽に上がる・痛みが減る」場合、この部位の硬さが肩の痛みや制限に関与している可能性があります。この評価法を直接検証した研究は現時点では存在せず、藤井先生の臨床経験に基づく評価です。
この章では、藤井先生が動画で示す評価・触診のプロセスを図解を交えて詳しく解説します。このアプローチは「間接法に近い評価」であり、動画では具体的なリリース(ほぐし)の詳細な手順は示されていませんが、「硬さを取ることで肩の痛みが軽減する」という考え方が示されています。
STEP 1:肩の挙上動作を評価する。まず、患者(または自分自身)の肩の挙上動作(腕を上に上げる動き、屈曲・外転)を評価します。評価のポイントは3点です。①どの角度で痛みが出るか(例:挙上60度で詰まる)。②どの程度まで上がるか(可動域)。③上げたときの「詰まり感・引っかかり感」の有無。この評価が「ベースライン(基準値)」となります。藤井先生は「まず挙上を確認する」ことをすべての出発点としており、次のステップで見る変化との比較が重要です。
STEP 2:内側上顆から指1本分遠位の硬結を触診する。肘の内側(小指側)を触れると、硬い骨の突起(内側上顆)を感じることができます。そこから手首方向へ指1本分(約1〜2cm)移動した部位が触診のターゲットです。この部位を指腹(指の腹の部分)で軽く押し込み、周囲と比べてやや硬い・押すと違和感がある「硬結」を探します。触診のコツは「優しく、しかし確実に」です。急いで強く押す必要はなく、筋線維の走行に沿って指をゆっくり動かしながら、硬さの違いを感じ取ります。藤井先生が特に強調するのは、「前腕の筋線維の塊・筋硬結がある部分」を確認することです。セラピスト自身も自分の前腕で試してみることができます。
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藤井先生の臨床観察:内側上顆から指1本分遠位の屈筋群硬結(①)が硬くなると、筋膜の連続性を介して上腕内側・肩の動きに影響しうる(②肩の挙上制限・痛み)。これは藤井先生の豊富な臨床経験に基づく考え方であり、この特定の経路を直接証明した高品質の研究は現時点では存在しません。肩を上げる前後で「楽になるか」を確認する評価で、関与を推定します。
STEP 3:圧迫しながら肩を挙上させて変化を見る。これが動画の核心的な評価法です。STEP 2で特定した硬結部位を指で軽く圧迫した状態で、STEP 1と同じ肩の挙上動作を再度行います。ここで重要なのは、「圧迫しながら挙上した方が楽に上がる(痛みが軽減する・可動域が改善する)かどうか」を確認することです。もし圧迫しながらの方が明らかに楽に上がる場合、この部位の硬さが肩の痛み・制限に関与している可能性が高いと藤井先生は判断します。これは「組織を圧迫することで筋膜の張力が一時的に変化し、肩への影響を一時的に除去する」という原理に基づいた評価です。
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藤井先生が考える筋膜の連続性の経路。前腕屈筋群(FDS・FCU等)→上腕内側筋膜→三角筋・肩甲帯→肩の動きへの影響。この「アナトミー・トレイン」的な考え方は理論・臨床経験に基づくものであり、この特定経路を直接証明した研究はまだ限定的です。一方、UCS(上半身姿勢不良)の研究(Khorramroo ら 2026)は、上肢の屈筋群優位のパターンが肩甲帯の機能に影響しうることを示唆します。
圧迫で楽になった場合は、この部位の硬さを取ることが肩の症状改善につながりうると判断し、リリースのアプローチを優先します。圧迫しても変化がない場合は、別の原因(肩峰下滑液包の炎症・腱板断裂・肩甲上神経麻痺・頸椎疾患由来の放散痛等)を検討します。藤井先生は「全員に当てはまるわけではないが、肩関節周囲炎と診断された患者の多くに有効である可能性が高い」と述べており、評価でまず確認することが重要と位置づけています。また、患者だけでなく、セラピスト自身でも試してみることで効果を実感できる場合があると述べています。このアプローチが重要なのは、単に「どこかをほぐす」というハウツーにとどまらず、「なぜこの部位が肩の痛みに関係するのか」という発想の転換を促す点にあります。西洋医学的な診断で「異常なし」とされた患者でも、こうした視点から評価し直すことで、改善の糸口が見つかることがある ── この気づきこそが、藤井先生がセラピストに伝えたいメッセージの本質です。
症例の考え方・よくある質問(FAQ)
Q. この方法はすべての肩の痛みに有効ですか?── A. いいえ。藤井先生自身が「全員に当てはまるわけではない」と動画で明言しています。有効かどうかはSTEP 3(圧迫しながら挙上)を試してみて、「楽に上がる」かどうかで判断します。楽に上がらない場合は前腕屈筋群の硬さが主な原因ではなく、別の部位が関与している可能性を考えます。肩の痛みの鑑別診断(腱板断裂・石灰沈着性腱炎・肩甲上神経麻痺・インピンジメント症候群・頸椎疾患等)は必ず医師・有資格の医療専門職が行う必要があります。
Q. どれくらいの強さで圧迫すればよいですか?── A. 皮膚が白くなるほど強く押す必要はありません。「少し押した感じ」「軽い圧」でも、硬結部では違和感・痛みが誘発されやすいものです。圧を強くしすぎると、①尺骨神経(肘の内側を走る神経)への刺激でしびれが出る、②組織への不必要なダメージ、③痛みの増強、というリスクがあります。藤井先生のデモンストレーションでも圧は控えめで、じんわりとかける様子が見受けられます。大切なのは「どこが硬いか」「どこで症状が変化するか」の特定であり、力任せの圧迫は必要ありません。
Q. セルフケアとして自分でやってよいですか?── A. 「どこが硬いか」を自分で触って確認する程度は可能です。しかし本格的な治療・リリースは有資格の医療専門職(理学療法士・作業療法士・柔道整復師・鍼灸師など)が行うことを推奨します。肘の内側周辺には尺骨神経・尺骨動脈・尺骨静脈が走行しており、誤った圧迫や強すぎる操作は神経・血管への刺激を引き起こすリスクがあります。また肩の痛みには様々な原因があり、自己判断で根本原因を誤ることで適切な治療が遅れるリスクがあります。
Q. なぜセラピスト自身もこの部位が硬くなるのですか?── A. セラピスト・治療家は施術中に手指・手首を屈曲させた状態での力の使用・把持動作・細かい操作を長時間反復します。これにより前腕屈筋群の持続的な収縮が生じ、内側上顆周辺の筋膜に微細な炎症・線維化が蓄積しやすいと考えられています。藤井先生が「職場の雑務より、まずこの練習を優先すべき」と言う背景には、セラピスト自身のメンテナンスとしての重要性もあります。自分で触れてみること、同僚と練習することが、評価技術と自己ケアの両方につながります。
安全と受診勧奨 ── 絶対に止めるサイン
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内側上顆の後ろ側(肘の内側後方)には尺骨神経が肘部管(ちゅうぶかん)を通過します。ここを強く押すと「小指・薬指への電気感・しびれ」が生じます(いわゆる「ぶつけると電気が走る」経験)。これは尺骨神経刺激のサインであり、即座に圧を抜く必要があります。触診は「内側上顆から少し前面(掌側)、指1本分遠位」を優しい圧で行います。肘の強い腫れ・変形・安静時痛のある場合は医師への相談を優先してください。
この手技を行う際には、以下の点に注意してください。内側上顆の後ろ側(肘の内側後方)には尺骨神経が肘部管を通過します。ここを強く押すと「小指・薬指への電気感・しびれ」が生じます。これは尺骨神経刺激のサインであり、即座に圧を抜く必要があります。触診は「内側上顆から少し前面(掌側)、指1本分遠位」を優しい圧で行います。また、肘の強い腫れ・変形・安静時痛のある場合、骨折や脱臼・急性の炎症・腫瘍を疑う場合は、自己流での操作をせず医師に相談してください。糖尿病性神経障害・関節リウマチ・骨粗鬆症がある方、妊娠中の方も同様です。
肩の痛みの鑑別で特に注意が必要なのは以下のケースです。安静時にも強い肩の痛みがある(夜間痛を伴う)ケースでは、腱板断裂・肩峰下腱板炎・石灰沈着性腱板炎・感染性関節炎等の可能性を医師が除外する必要があります。腕のしびれ・筋力低下を伴う肩の痛みは、頸椎椎間板ヘルニア・脊髄症等の神経症状の可能性があります。原因不明の急激な体重減少・全身倦怠感を伴う痛みは悪性疾患の可能性を除外してください。これらは自己判断で対処せず、必ず医師への受診を優先してください。動画のアプローチを実際の臨床に取り入れる際も、こうした医師による除外診断が前提となります。セラピストと医師が連携し、それぞれの専門性を活かした包括的なアプローチが、患者にとって最善の選択肢です。
まとめ:前腕の屈筋群(内側上顆から起始する筋群)の硬さが、肩関節周囲炎の原因または増悪因子となりうる ── これが藤井先生の動画の核心的なメッセージです。評価は「内側上顆から指1本分遠位の硬結を圧迫しながら肩を挙上させ、楽になるかどうかを確認する」というシンプルなものです。この評価で「楽になる」という結果が得られた場合、この部位の硬さを取ることで肩の痛みが改善しうる可能性があります。この手技の研究上の裏づけは現時点では限定的であり、藤井先生の豊富な臨床経験に基づくアプローチです。研究の裏づけが充実するまでの間は、評価(STEP 3)で「楽になる」という客観的な変化を確認してから適用することが、安全で誠実な臨床実践の第一歩となります。
限界と注意・受診の目安
- ▸内側上顆の後ろ側(肘の内側後方)には尺骨神経が肘部管を通過します。この部位への強い圧迫は小指・薬指へのしびれ・電気感を引き起こす可能性があります。圧迫中に電気感・しびれが出た場合は即座に圧を抜き、その日の操作を中止してください。
- ▸「前腕屈筋群の硬さが肩関節周囲炎を引き起こす」という動画の核心的な主張を直接検証したRCT・系統的レビューは現時点では存在しません。藤井先生の臨床経験に基づくアプローチであり、効果には個人差があります。
- ▸肩の痛みには多様な原因(腱板断裂・石灰沈着性腱炎・肩峰下インピンジメント・肩甲上神経麻痺・頸椎椎間板ヘルニア等)があります。自己判断での根本原因の特定には限界があり、診断・治療方針の決定は必ず医師・有資格医療専門職が行う必要があります。
- ▸安静時の強い肩の痛み・夜間痛・腕のしびれ・筋力低下・原因不明の体重減少を伴う肩の痛みは、早急に医師の診察を受けてください。これらは重篤な疾患の可能性を示すレッドフラッグです。
- ▸肘の腫れ・変形・熱感・強い安静時痛のある場合、骨折・脱臼・感染・腫瘍等の可能性があります。自己流での操作をせず医師に相談してください。
- ▸妊娠中・関節リウマチ・糖尿病性神経障害・重度の骨粗鬆症のある方は、この部位への操作を自己判断で行わないでください。
監修・参考文献
掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。
監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)
- [1] Khorramroo F, Rostami M, Bafrouei MJ.(2026).「Corrective exercises strongly improve posture but fail to produce consistent clinical or functional benefits in patients with upper crossed syndrome: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials」. BMC sports science, medicine & rehabilitation.
- [2] Chaudhuri S, Chawla JK, Phadke V.(2023).「Physiotherapeutic Interventions for Upper Cross Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis」. Cureus.
- [3] Nazwar TA, Bal'afif F, Wardhana DW, Mustofa M.(2024).「Impact of physical exercise (strength and stretching) on repairing craniovertebral and reducing neck pain: A systematic review and meta-analysis」. Journal of craniovertebral junction & spine.
- [4] Yang A, Lin R, Xia M, Su H, He Y.(2024).「The effectiveness of dry needling for plantar fasciitis: a systematic review and meta-analysis」. Frontiers in neurology.