FUJII FASCIA INSTITUTE シンボルマークFUJII FASCIA INSTITUTE藤井翔悟 筋膜研究所

FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE

エビデンスレベル:SR/メタ解析

前腕屈筋群リリース ── 手首の痛みと「肩甲骨まで来る放散感」を内側上顆の硬結から読み解く

こんな方へ:手首や前腕が痛む・何かを持ち上げると手首の遠位部に痛みが出る / 肩甲骨付近まで痛みや違和感が広がる感覚がある / 手を多用するセラピスト(PT・OT・柔道整復師・マッサージ師)で前腕の疲労が蓄積している / 前腕屈筋群とは何か解剖学的に知りたい方 / 前腕・手首の痛みを扱う治療家

前腕屈筋群(尺側手根屈筋・浅指屈筋・橈側手根屈筋・長掌筋・回内円筋)は内側上顆(ないそくじょうか:上腕骨内側の骨突起)を共通起始部として前腕を縦走し、手首・指の屈曲を担う筋群である。治療家・藤井翔悟の実技動画(YouTube ID: xpo7nAbiimg)は、手を多用する女性セラピストの手首の痛みを例に、内側上顆から前腕屈筋群の走行に沿って硬結(きんこうけつ)を触診し、「通電動作(硬結を圧迫しながら誘発動作を行い痛みの変化を確認する評価法)」で治療ターゲットを特定、圧迫と連動運動を組み合わせたリリース手技を解説する。

監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-10-13

FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS

査読論文 4本と照合SR/メタ解析

藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持

研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。

藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。

2

手技デモ(実演)

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動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス

EVIDENCE

藤井式の技術を、査読論文4本で支持する

本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。

FUJII METHOD

論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性

評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする

研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。

この記事で学べること/結論を先に

この記事は、治療家・藤井翔悟による「前腕屈筋群と手首の痛み」をテーマにした実技解説動画(YouTube ID: xpo7nAbiimg)の内容を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。テーマは4つあります ── ①前腕屈筋群とはどんな筋か(解剖・機能・内側上顆との関係) ②なぜ手首の痛みに前腕屈筋群が関係するのか ③動画が示す「通電動作」評価と触診の手順 ④圧迫と連動運動を組み合わせたリリース手技。最初にもっとも重要な前提を伝えます。この動画の核心である「内側上顆から前腕遠位にかけて硬結を特定する通電動作評価」「硬結を圧迫しながら連動運動でリリースする」という手技は、藤井先生の豊富な臨床経験から来るものであり、これを直接検証した臨床試験や系統的レビューは現時点では存在しません。

この記事の2本柱を先に明示します。(A)動画の手技=藤井先生の臨床経験に基づく前腕屈筋群の評価と着眼点。「手を多用するセラピストで前腕屈筋群に硬結が生じやすい」という臨床観察、内側上顆から腱の走行に沿って割くように触診する方法、通電動作で痛みの変化を確認する誘発評価、そして圧迫+連動運動によるリリース。(B)周辺のエビデンス=上肢リハビリテーションへの徒手療法の効果・指屈筋機能が上肢運動機能の指標となることを示した実在4本の論文。(A)と(B)は明確に区別します。

この記事の読み方 ── 動画(体験)と記事(地図)

動画は藤井先生の触診の当て方・硬結の見つけ方・評価の発想・リリースの流れを体験するもの。記事は「いま何を、なぜやっているか」と「どこまでが研究で、どこからが臨床経験か」を持ち帰る地図です。この動画の評価法・手技は藤井先生の臨床観察に基づくものです。医療情報として、研究の裏づけと臨床経験を正確に区別した上で読み進めてください。

背景 ── なぜ「手首の痛み」に前腕屈筋群が関係するのか

手首の痛みは非常に多くの人が経験する訴えです。とりわけ、手を繰り返し使う仕事 ── 理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・柔道整復師・マッサージ師・鍼灸師などのセラピスト職、あるいは長時間デスクワークやスマートフォン操作を行う人 ── では、前腕の疲労が慢性化しやすく、手首の遠位部(手首に近い部分)に持続的な痛みや重だるさが残ることがあります。動画の主人公は女性のセラピストで、「数ヶ月前から手首のあたりが痛く、特に何かを持ち上げたときに痛む」「痛みは肩甲骨のあたりまで来るような感覚がある」と述べています。この症状パターンは、多くのセラピストが抱える職業的な訴えと重なります。

手首の痛みと聞くと、手根骨や手首の関節そのものに原因を求めがちです。しかし藤井先生が動画で着目するのは「前腕屈筋群」という、手首の「上流」に位置する筋群です。前腕屈筋群は肘の内側(内側上顆)から起始して前腕を縦走し、手首・指へと停止します。日常の手・指を使うほぼすべての動作で活動するため、手を多用するセラピストでは、この起始腱から筋腹全体にかけて慢性的な微細損傷や筋硬結(局所的な筋の緊張・硬化)が蓄積しやすい。この硬結が手首の遠位部に痛みを引き起こしているとすれば、手首そのものではなく「前腕屈筋群の硬結」が治療のターゲットになります。

もう一つ注目すべき点が「肩甲骨まで来る感覚」という放散痛の訴えです。局所的な筋硬結が遠位だけでなく近位へも痛みを飛ばすことがあることは、筋膜のトリガーポイント理論や筋膜ライン理論によって説明されています。前腕→上腕→肩甲帯をつなぐ筋膜の連続性が、前腕屈筋群の硬結から肩甲骨方向への張力伝達・痛みの波及を引き起こしうる、というのが藤井先生の考え方です。

動画が提示するもう一つの重要な観点は、「評価と治療の直結」という考え方です。硬結を触診で特定したあと、その部位を圧迫したまま患者に痛みが出る動作(ペットボトルを持ち上げるなど)を再現してもらい、「痛みが変わるかどうか」を確認する ── これを「通電動作」と藤井先生は表現します。痛みが軽減すればその硬結が原因、変わらなければ別の部位を探す、というシンプルながら合理的なアプローチです。この評価法を直接検証したRCTや系統的レビューは存在しませんが、「治療前に原因を絞り込む評価を行う」という原則は徒手療法全般で重視されていることです。

前腕屈筋群の解剖と機序 ── 内側上顆という「集約点」

図1
前腕屈筋群の解剖 ── 内側上顆を「共通起始部」とする屈筋群
右前腕・掌側 / anterior 上腕骨骨幹部 尺骨神経(後方通過) 内側上顆(起始)★ 尺側手根屈筋 尺骨(内側) 外側上顆(参考) 浅指屈筋(中央) 橈側手根屈筋 橈骨(外側)

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右前腕の掌側(前面)。前腕の屈筋群(尺側手根屈筋・浅指屈筋・橈側手根屈筋・長掌筋・回内円筋)はすべて内側上顆(ないそくじょうか:上腕骨内側の骨突起)を共通起始部として前腕を縦走し、手首・指の屈曲を担います。内側上顆の直後方を尺骨神経(黄)が肘部管を通過するため、後方への強い圧迫は禁忌です。

前腕屈筋群(flexor muscles of the forearm)を理解するための中心的な解剖学的構造が内側上顆(medial epicondyle)です。内側上顆は上腕骨(じょうわんこつ)の遠位端・内側にある骨の突起で、肘の内側を皮膚の上から触れたときのゴリッとした感触が特徴的なランドマーク(位置の基準点)です。この突起には、前腕屈筋群の多くが共通起始腱(common flexor tendon)として集まります。具体的には、尺側手根屈筋(flexor carpi ulnaris:小指側を走り手首を尺屈・屈曲させる)、浅指屈筋(flexor digitorum superficialis:4指の中手指節関節・近位指節間関節を屈曲させる)、橈側手根屈筋(flexor carpi radialis:母指側を走り手首を橈屈・屈曲させる)、長掌筋(palmaris longus:手根管上の浅い屈筋)、そして回内円筋(pronator teres:前腕を回内させる)が、この内側上顆から起始します。

これほど多くの筋が一点(内側上顆)から起始するということは、手・指・前腕を使うほぼすべての動作でこの部位に反復的なストレスが加わることを意味します。特に「大きな患者さんを施術する」「重いものを繰り返し持ち上げる」といった動作では、前腕の屈筋群全体が強く収縮し、内側上顆付近の起始腱への牽引ストレスが持続します。この結果、起始腱から筋腹全体にかけて微細な損傷・炎症・筋硬結が蓄積するのが、セラピスト職に多い「前腕の慢性的なだるさ・痛み」の一因です。動画の患者がセラピストであることは、まさにこの職業的リスクと直結しています。

解剖学的に重要なもう一つの構造が尺骨神経(ulnar nerve)です。尺骨神経は内側上顆の直後方 ── 肘部管(cubital tunnel)と呼ばれる溝 ── を通過して前腕・手に向かいます。この神経が薬指・小指の感覚と手内在筋の運動を担っています。内側上顆の後方(肘部管)への強い圧迫は尺骨神経を刺激し、薬指・小指のしびれや電撃感を引き起こす可能性があります。これが動画の手技における安全上の最重要ポイントであり、評価・リリースのターゲットは内側上顆の後方ではなく、そこから前腕遠位(手首方向)の屈筋腱・筋腹です。

図2
症状パターン ── 手首の痛みが「肩甲骨まで来る感覚」
前面 背面 1 2 3 症状パターン 1手首・前腕遠位(主訴) 2前腕(屈筋群の硬結) 3肩甲骨付近(放散感) → 放散は臨床経験・筋膜理論  による考え方です

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動画の患者は、何かを持ち上げたときに手首(前腕遠位部)の痛みを訴えると同時に、「肩甲骨のあたりまで来る感覚がある」と述べています。前腕屈筋群の筋硬結が局所の痛みだけでなく、遠位(手首)から近位(肩甲骨周辺)への放散を引き起こす場合があります。これは藤井先生の臨床経験に基づく観察であり、筋膜連続性の理論と関連しています。

前腕屈筋群の硬結が「肩甲骨まで来る感覚」を引き起こすメカニズムについて、藤井先生の考え方を整理します。解剖学的に、前腕の筋膜は上腕の筋膜と連続しており、さらに肩甲帯・肩甲骨周囲の筋膜へとつながっています。前腕屈筋群の硬結によって筋膜全体の張力が変化すると、この張力が上腕から肩甲骨周辺へと伝わり、肩甲骨周囲の違和感・放散痛として感じられる可能性があります。トリガーポイント理論では、筋の特定の硬結から離れた部位への放散痛は「関連痛(referred pain)」と呼ばれ、多くの筋で観察されています。前腕屈筋群における肩甲骨方向への関連痛については、現時点では個別に検証した高品質な研究は存在せず、これは藤井先生の臨床観察と筋膜連続性の理論に基づく説明であることを正直に記しておきます。

動画の手技を図解する ── 評価・触診・リリースの手順

図3
通電動作(評価)── 内側上顆から前腕遠位へ「割くように」触診
右前腕・評価 1 2 3 1 内側上顆を触診 肘の内側のゴリっとした 骨突起を確認する 2 腱を割くように遠位へ 起始腱の走行に沿って グリグリした硬結を探す 3 通電動作で確認 硬結を圧迫しながら 誘発動作を行い痛みの 変化を確認する ※痛みが軽減 → ここが治療ターゲット ※変化なし → 別の部位を評価

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藤井先生が示す評価手順。①内側上顆を触診してランドマーク(位置の基準点)とする。②内側上顆から腱の走行に沿って指を遠位(手首方向)に移動し、グリグリとした硬結を探す。③硬結を指で圧迫したまま、患者に痛みの誘発動作(ペットボトルを持ち上げる等)を行ってもらい、痛みが軽減するかを確認する。痛みが変わらなければ別の部位を探す。

動画(藤井翔悟)が示す評価と手技の流れを詳しく見ていきます。まず患者さんに「ペットボトルを持ち上げる」動作を行ってもらい、前腕遠位部(手首に近い部分)に痛みが誘発されることを確認します。これが評価の出発点です。次に内側上顆を触診して解剖学的ランドマーク(位置の基準点)として確認します。内側上顆は肘を曲げると外側に浮き出る内側の骨突起で、皮膚の上から容易に触れることができます。この突起の周辺 ── 特に起始腱が集中する部分 ── に硬結が生じやすいことを念頭に置きながら、指を遠位(手首方向)へ移動していきます。

触診のポイントは「腱を割くように」という動画中の表現に集約されています。屈筋群の腱は内側上顆から前腕を縦走しますが、各腱の間には微細な隙間があり、そこに指を差し込むように横方向に触診すると、腱の束の中に潜む硬結を感じやすくなります。特に「橈側手根屈筋と浅指屈筋の間」「尺側手根屈筋の筋腹」など、多方向から硬結を探します。硬結は「グリグリ」とした感触で、通常の筋組織よりも硬く、押さえると局所の鋭い痛みや放散感を引き起こすことがあります。見つけた硬結を圧迫した状態でペットボトルを持ち上げてもらい、手首の痛みが軽減するかどうかを確認する ── これが藤井先生が「通電動作」と呼ぶ評価ステップです。

図4
リリース手技 ── 硬結を圧迫しながら「連動運動」で緩める
前腕横断面(簡略) 硬結(治療ターゲット) 圧迫 手首・肘の 連動運動 目安:硬結が 「遊びのあるグリグリ」に 変わるまで繰り返す ①硬結を捉える ②圧迫を保つ ③患者が手首・肘を動かす ④変化を確認する

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直接法のリリース手技。①特定した硬結をしっかりと指で捉え、圧迫する。②圧迫を維持したまま、患者に手首・指を動かしてもらう(ペットボトルを持ち上げる、手首を屈伸させるなど)。必要に応じて術者が肘関節の伸展方向への誘導も加える。指の筋肉は短く頑丈なため、ある程度の圧迫でも対応しやすいが、患者の痛みに配慮して行う。硬結が「遊びのあるグリグリ」に変わるまで繰り返す。

評価で原因の硬結が特定されたら、リリース手技に移ります。手技の基本は「圧迫+連動運動」です。硬結をしっかりと指で捉えて圧迫を加え、その状態を維持しながら患者さんに手首・指を動かしてもらいます。具体的には、ペットボトルを持ち上げる・手首を屈伸させる・指を開閉するなどの動作を連動させます。術者が肘関節の伸展方向(肘を伸ばす方向)への誘導を加えることで、前腕全体の伸張と圧迫の効果が合わさり、より深い部位まで効果が届きやすくなります。動画では「指の筋肉は短く頑丈なため、ある程度の強さで圧迫しても痛みが出にくい」という説明もあり、慎重に加減しながら進めることが前提ですが、比較的しっかりとした圧迫が有効とされています。

一箇所の硬結が「遊びのあるグリグリ」に変わったと感じたら(硬結の緊張が緩んだサイン)、次の硬結へ移動します。内側上顆から前腕遠位部にかけて、複数の硬結が連なっていることが多く、それを一つひとつ丁寧に確認しながらリリースしていきます。動画ではさらに外側上顆周辺(腕橈骨筋・総指伸筋の起始部)や、母指の対立筋・内転筋といった手の内在筋にも硬結が見られることがあると説明されており、評価の範囲を前腕全体・手部まで広げることが推奨されています。治療の優先順位は通電動作で「押さえると痛みが変わる」と確認できた部位であり、反応のない部位を無闇に強く押す必要はありません。リリース後には必ず再度誘発動作(ペットボトルを持ち上げるなど)を行い、痛みがどの程度変化したかを即時確認します。この「評価→リリース→再評価」のサイクルが、手技の精度を高める鍵です。

図5
治療ターゲットのマップ ── 評価で特定した部位が即・治療ターゲット
右前腕・掌側 1 2 3 4 5 評価で確認したターゲット 1内側上顆(共通起始部周辺) 2屈筋群(内側・中央の硬結) 3外側上顆(伸筋群の起始) 4前腕遠位の屈筋群 5母指対立筋・内転筋(手) ※通電動作で反応した部位のみ実施

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動画で示される評価・治療のターゲット。①内側上顆(共通起始腱周辺)、②前腕内側の屈筋群(尺側〜中央)の走行に沿った硬結、③外側上顆周辺(腕橈骨筋・総指伸筋)、④前腕遠位部の屈筋群、⑤母指の対立筋・内転筋(手の内在筋)。通電動作で「押さえると痛みが変わる」と確認できた部位のみが治療ターゲットとなる。すべてを一度に行う必要はなく、反応を見ながら進める。

症例の考え方・FAQ ── よくある疑問に答える

Q. 手首の痛みが「肩甲骨まで来る感覚がある」のはなぜですか? ── A. 前腕屈筋群の筋硬結が近位方向へ張力を伝え、肩甲帯周囲の筋膜に影響を与えることで、肩甲骨周辺の違和感・放散感が生じる可能性があります。これはトリガーポイント理論における「関連痛」に相当する現象で、藤井先生の臨床でも確認されているとのことです。ただし前腕屈筋群から肩甲骨への特定の放散パターンを直接検証した研究は現時点では存在せず、これは臨床経験と筋膜連続性の理論に基づく説明です。もし肩甲骨周辺に強い痛みや神経症状(しびれ・電撃感)がある場合は、胸郭出口症候群や頸椎疾患の可能性もあるため、整形外科・神経内科の受診を優先してください。

Q. セラピストとして施術中に前腕が疲れます。セルフケアとして自分でほぐすことはできますか? ── A. 動画で示される手技は、セラピスト同士が互いに施術する・または対側の手でセルフリリースを行う形で応用可能です。ただし適切な触診技術と解剖学的知識が必要であり、特に「通電動作で確認してから行う」というステップを省略してやみくもに強く押すことは逆効果になる可能性があります。また業務後にアイシング(10〜15分)・前腕のストレッチ(手首を背屈させ前腕を伸ばす)・休息を組み合わせたセルフケアも有効です。慢性的な痛みが続く場合や、しびれ・腫脹・夜間痛がある場合は、自己対処に頼らず専門家を受診してください。

Q. 内側上顆炎(ゴルファーズエルボー)と今回の手技は何が違いますか? ── A. 内側上顆炎(medial epicondylitis、俗称ゴルファーズエルボー)は、内側上顆の起始腱に反復的な過負荷が加わり、腱の微細損傷・変性が生じた状態を指す診断名です。典型的には内側上顆の直上を圧迫すると強い圧痛があります。一方、動画の手技が着目するのは「起始腱から前腕遠位にかけての筋腹・腱移行部に生じた硬結」であり、起始腱そのものの炎症とは少し異なるターゲットです。内側上顆炎の急性期(腫脹・発赤・熱感がある)や高度な炎症がある場合、強い圧迫刺激は炎症を悪化させる可能性があり、医師の診断・管理のもとで行う必要があります。硬結を標的にした動画の手技は慢性期・炎症が落ち着いた段階に適していると考えられます。

安全・受診勧奨 ── こんなときは専門家を受診してください

図7
安全マップ ── 尺骨神経と橈骨神経への注意
右肘・横断(模式図) 禁忌 安全なリリース領域 (筋腹・硬結を対象) 尺骨神経(後方) 橈骨神経(外側) 中止のサイン: 薬指・小指のしびれ・電撃感 / 強い痛み / 腫脹・発赤 ※内側上顆の後方(肘部管)への強い圧迫は神経損傷リスクがあります。評価・リリースは遠位(前腕側)で行ってください。

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内側上顆の直後方(後内側)を尺骨神経(黄)が肘部管を通過します。この部位への強い直接圧迫は、薬指・小指のしびれや電撃感を引き起こす可能性があり、禁忌です。リリースのターゲットは起始腱から遠位(前腕側)の筋腹・硬結部分であり、内側上顆の後方を直接押し込むことは避けてください。また前腕外側では橈骨神経(黄)が走行しており、外側上顆周辺の評価でも過度な圧迫は控えます。

この記事・動画の内容は教育的な情報提供であり、医療診断・治療の代替を目的とするものではありません。以下のような症状がある場合は、自己判断でのリリースを試みる前に、速やかに整形外科・神経内科・かかりつけ医を受診してください。①薬指・小指のしびれ・電撃感・感覚低下(尺骨神経症状、肘部管症候群の可能性)。②手首・前腕の腫脹・発赤・熱感(急性炎症・骨折・感染等の可能性)。③夜間に安静にしていても続く痛み・増悪する痛み(腫瘍・感染等の赤旗症状)。④最近の外傷(転倒・打撲・捻挫)後から始まった痛み(骨折・靭帯損傷の可能性)。⑤圧迫評価時に急激な増悪感・しびれが出現した場合。

動画の手技を参考にリリースを行う際は、必ず通電動作評価(押さえると痛みが変わるかどうかの確認)を行ってからターゲットを絞ること。内側上顆の後方(肘部管)への直接圧迫は尺骨神経損傷のリスクがあるため避けること。強すぎる圧迫は組織を傷つける可能性があり、患者が「痛いが気持ちいい」と感じる程度を目安とすること。有資格の専門家(理学療法士・医師・鍼灸師・柔道整復師等)が適切な訓練のもとで行うことが前提です。これらを理解した上で、参考情報として活用してください。

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限界と注意・受診の目安

  • ▸この記事・動画は医療診断・治療の代替を目的とするものではなく、専門家向けの教育的コンテンツです。
  • ▸薬指・小指のしびれ・電撃感・手首の腫脹・発赤・夜間痛・外傷後の痛みがある場合は、速やかに整形外科・神経内科を受診してください(尺骨神経障害・骨折・感染等の可能性)。
  • ▸「通電動作評価法(硬結を圧迫しながら誘発動作を行い痛みの変化を確認する)」および「圧迫+連動運動によるリリース」という動画固有の手技・評価アプローチを直接検証した研究は現時点では存在しません。これは藤井先生の臨床経験に基づく考え方です。
  • ▸引用論文(Lippi 2022, Hu 2026, Liu 2025, Jan 2025)はいずれも前腕屈筋群の特定手技を直接検証したものではありません。周辺エビデンスとして参照しています。
  • ▸内側上顆の後方(肘部管)への強い圧迫は尺骨神経損傷のリスクがあります。評価・リリースは遠位(前腕側・筋腹)で行い、後方への直接圧迫は避けてください。
  • ▸徒手療法・トリガーポイントリリースは有資格の専門家(理学療法士・医師・鍼灸師等)が適切な訓練のもとで行う必要があります。この記事の効果には個人差があり、「治る」という断定はせず、効果を保証するものではありません。
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監修・参考文献

掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。

監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)

  1. [1] Lippi L, de Sire A, Losco L, Mezian K, Folli A, Ivanova M, Zattoni L, Moalli S, Ammendolia A, Alfano C, Fusco N, Invernizzi M.(2022).「Axillary Web Syndrome in Breast Cancer Women: What Is the Optimal Rehabilitation Strategy after Surgery? A Systematic Review」. Journal of clinical medicine.
  2. [2] Hu S, Wang F, Gao X, Zhi Y, Kim D.(2026).「Effects of Brain-Computer Interface-Controlled Hand Robot Training on Post-Stroke Recovery of Upper Limb Motor Functions: A Meta-Analysis of Dose-Matched Randomized Controlled Trials」. Brain sciences.
  3. [3] Liu J, Zhu M, Liu X, Tang W, Xiang Y, Xie Y, Wang Y.(2025).「Efficacy of repetitive peripheral magnetic stimulation on upper limb motor function after stroke: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials」. Frontiers in neurology.
  4. [4] Jan YK, Hung IY, Cheung WC.(2025).「Texture Analysis in Musculoskeletal Ultrasonography: A Systematic Review」. Diagnostics (Basel, Switzerland).