FUJII FASCIA INSTITUTE シンボルマークFUJII FASCIA INSTITUTE藤井翔悟 筋膜研究所

FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE

エビデンスレベル:SR/メタ解析

変形性股関節症と筋膜リリース ── 関節環境を整える筋調整アプローチ

こんな方へ:股関節の痛み・可動域制限が気になる方、変形性股関節症の保存療法に関心のある方

変形性股関節症では寛骨臼と骨頭の被覆率が低下し、周囲の筋肉が代償的に過緊張する。

監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-09-15

FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS

査読論文 2本と照合SR/メタ解析

藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持

研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。

藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。

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手技デモ(実演)

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動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス

EVIDENCE

藤井式の技術を、査読論文3本で支持する

本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文3本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。

FUJII METHOD

論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性

評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする

研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。

この記事で学べること ── 結論を先に

この記事は、治療家・藤井翔悟による変形性股関節症の治療方針を解説した動画の内容を、図解と研究で読み解くガイドです。動画のテーマは、①変形性股関節症の関節構造とその問題 ②硬い筋肉が引き起こす症状と可動域制限 ③治療のアプローチ(アライメント調整と筋スパズムの除去)④筋肉を調整することで骨の位置を変えるという考え方、の4点です。

結論を先に示すと、変形性股関節症への徒手アプローチには2つの柱があります。ひとつは「寛骨臼と骨頭の接触面(アライメント)を改善すること」、もうひとつは「周囲の筋肉の過緊張(筋スパズム)を除去すること」です。これら2つは表裏一体で、筋の状態を整えることで関節の環境が変わり、痛みの軽減や可動域の回復、靴下を履く・あぐらをかくといったADLの改善に繋がりうる、というのが藤井先生の臨床的な立場です。

この記事の役割は2つです。ひとつは動画の手順を図解して「いま何を、なぜやっているか」を分かるようにすること。もうひとつは「どこまでが研究で裏づけられ、どこからが臨床経験なのか」を正直に線引きすることです。医師の診断のもとで適切な治療を受けることが最優先であり、本記事の内容は理解のための補助情報として読み進めてください。

変形性股関節症とは ── 日本の罹患者は約160万人

変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう、Osteoarthritis of the hip、OA hip)は、股関節の軟骨が摩耗・変性し、骨のリモデリングや骨棘の形成が生じる慢性的な関節疾患です。日本における推定罹患者数は約160万人(症候性)ともいわれており、高齢化とともに増加しています。股関節は上半身の体重を全て受け止め、歩行・起立・着座・回旋などあらゆる動作の基点となる関節であるため、ひとたびその機能が損なわれると日常生活に直結する不便が生じます。

日本の変形性股関節症の特徴として、欧米と比べると「寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)」が多いことが挙げられます。寛骨臼が浅く骨頭を十分に包み込めない形態的な問題を持つ方が多く、この骨頭の被覆率の低さが変形をもたらす土台になります。そのため若い時期から軽度の股関節の痛みや違和感を抱えながら、中年以降に変形が進行するケースが少なくありません。症状は「立ち上がり時の痛み」「歩き出しの痛み」「脚の付け根の重だるさ」「外側のポキポキ感」から始まり、進行すると「安静時痛」「夜間痛」「著明な可動域制限」へと移行します。

保存療法としては、体重管理・筋力強化(特に股関節外転筋・内転筋・腸腰筋)・ストレッチ・水中歩行・装具療法・鎮痛薬などが広く行われています。進行すると人工股関節置換術が検討されますが、できるだけ長く自分の関節で生活の質(QOL)を維持するための保存療法が重要です。徒手療法・筋膜リリースはその選択肢のひとつとして注目されていますが、現状では変形性股関節症に特化した高品質な証拠はまだ蓄積の途上にあります。

股関節の解剖と機序 ── 被覆率が鍵

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股関節の解剖 ── 寛骨臼と骨頭の被覆率が体重分散を決める
前面 / anterior 大腿骨頭(骨頭) 寛骨臼(ソケット) 腸腰筋 中臀筋 大転子 大腿動脈 大腿静脈 坐骨神経 被覆率のポイント 高い → 体重分散 骨で広く支える 低い → 集中荷重 筋が代償的過収縮

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股関節は骨盤の寛骨臼(きゅうがい)と大腿骨頭が合わさってできます。骨頭が寛骨臼にしっかりと包まれている(被覆率が高い)ほど、体重が骨全体で広く分散されます。変形性股関節症では接触面が狭くなり不安定で、周囲の筋肉が代償的に過緊張しやすくなります。すぐ前を大腿動脈(赤)・大腿静脈(青)が走り、後方からは坐骨神経(黄)が下ります。

股関節は球関節(ボール&ソケット関節)の典型で、大腿骨の先端にある球状の骨頭(骨の球)が、骨盤の寛骨臼(お椀型のソケット)にはまり込む構造をしています。このとき「骨頭がソケットにどれだけ包まれているか」を被覆率(coverage ratio)と呼び、高いほど荷重が広く分散されます。正常では骨頭の約75〜80%が寛骨臼に覆われているとされており、この被覆があるからこそ体重の集中を骨が受け止めてくれます。

変形性股関節症、特に寛骨臼形成不全を背景とするケースでは、この被覆率が低く、骨頭の一部にしか荷重が分散されません。接触面が狭いと関節は不安定になります。体はこの不安定を補うために周囲の筋肉——腸腰筋・大腿筋膜張筋・梨状筋・外閉鎖筋・内閉鎖筋などの深層外旋筋群——を常に緊張させて関節を締め付けようとします。しかし筋が締め付けることで骨頭は逆により強くソケットに押しつけられ、一点に圧力が集中し、局所的な摩耗が進むという悪循環が生まれます。

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被覆率が低いと起こること ── 不安定 → 筋の過緊張 → 関節の摩耗
正常(高被覆率) 体重が広く分散 筋の代償収縮は最小 変形性(低被覆率) 一点に集中荷重 → 摩耗 周囲筋が過緊張(代償) 悪循環 不安定(低被覆率) ↓ 筋の過緊張 ↓ 集中荷重増大 → 摩耗・痛みの悪化

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変形性股関節症では寛骨臼と骨頭の接触面が狭く、不安定です。体はこの不安定さを補うため周囲の筋肉を過収縮させ関節を締め付けます。その結果、接触部への圧力がさらに集中し、局所的な摩耗が進みやすくなる悪循環が生まれます。

この「不安定→筋の過緊張→集中荷重→摩耗進行」という悪循環は変形性股関節症の臨床において非常に重要な概念です。藤井先生は動画の中で「寛骨臼と骨頭の被覆率に着目し、関節の環境を変えること」をアプローチの第一軸に据えています。被覆率そのものを骨手術なしに大きく変えることは難しいですが、周囲の筋肉の状態を整えることで骨頭の位置や傾きが微細に変化し、接触面の分布が改善しうる、というのが動画で語られる治療の考え方です。

可動域制限は患者の生活に直結する問題です。股関節の屈曲(前に曲げる)・外転(外に開く)・外旋(外にひねる)の複合運動が制限されると、靴下を履く・和式トイレに座る・あぐらをかくといった動作が困難になります。動画でも「足が曲がらない」「靴下が履けない」「和式トイレに座れない」「あぐらがかけない」といった具体的なADL制限が列挙されています。

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可動域制限が日常生活(ADL)に出る ── 靴下・和式・あぐらが難しくなる
1 靴下を履く 屈曲+外旋が必要 制限で足が届かない 2 和式トイレ 深い股関節屈曲 痛み・不安定感 3 あぐら 外転+外旋が必要 かけない・痛い

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股関節の硬さ・可動域制限は靴下を履く・和式トイレに座る・あぐらをかくといった日常動作に直結します。藤井先生がADL制限として挙げるこれらの動作は、それぞれ屈曲+外旋・深い屈曲・外転+外旋という股関節複合運動の制限を反映しています。

股関節の滑走性が低下するしくみをさらに詳しく見ると、筋の過緊張による関節内圧の上昇が関節液の循環を妨げること、関節包の拘縮が可動域の機械的制限になること、痛みによる防御的な筋スパズムがさらに緊張を強めることが挙げられます。こうして「痛みが筋スパズムを呼び、スパズムがさらに痛みを増す」という二重の悪循環に陥りやすいのが変形性股関節症の臨床的な難しさです。

エビデンス ── 研究は何を示しているか(正直に整理)

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どこまでが研究で、どこからが臨床経験か
研究の裏づけがある SR/メタ解析 RCT 観察研究 基礎研究・理論 ← 筋膜リリースのRCT(膝OA等) ← 梨状筋・股関節周囲の介入研究 臨床経験・理論の領域 ・筋調整でアライメントが変わる ・即座の変化が得られる ・特定筋の連動パターン → 有望だが、強い研究の  裏づけはこれから 正直に区別して提示します

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誠実さのために線を引きます。筋膜リリース技術(MRT)が筋骨格系疾患の痛み・可動域に良い影響を与えうることは、系統的レビューで示唆されています。一方、変形性股関節症に特化した「筋調整でアライメントが変わる・すぐに改善する」という主張は藤井先生の臨床経験に基づくもので、強い研究の裏づけはまだ限定的です。

ここでは提供されている実在の論文3本を用いて、研究が現時点で示していることを整理します。これらの論文は変形性股関節症そのものに特化したものではなく、筋膜リリース技術(MRT)やトリガーポイント治療全般を扱った研究であることをあらかじめ明示します。「その筋や関節に特化した強い証拠」ではなく、周辺領域の知見として読んでください。

まず、筋膜リリース技術(MRT)を変形性膝関節症(KOA)の補助療法として評価した2025年の系統的レビュー(Farshchi et al.)を取り上げます。この研究ではPubMed・Scopus・Web of Science等から検索した789件の文献のうち12件のRCTおよび準RCTを対象に解析しています。MRTは2〜6週間・3〜12セッションという範囲で実施され、痛み・膝関節屈曲可動域・機能障害・筋力・生活の質などが評価項目でした。

この知見を変形性股関節症に直接適用することはできませんが、「筋膜の拘縮や筋スパズムが関節機能に悪影響を及ぼし、それを解除することが機能回復に役立ちうる」という基本的なメカニズムは共通していると考えられます。ただし股関節と膝関節では解剖・力学・周囲筋の関与の仕方が大きく異なるため、KOAのエビデンスをそのままHOAに援用することには慎重さが必要です。

次に、筋筋膜トリガーポイント(MTrPs)を持つ患者に対するフリクションマッサージの効果を評価した2025年の系統的レビュー(Sadeghnia et al.)を参照します。このレビューでは12研究が対象とされ、フリクションマッサージの疼痛強度(VAS)・圧痛閾値(PPT)・関節可動域(ROM)への効果が検討されました。群内(治療前後)の比較ではVAS・PPT・ROMのいずれも有意な改善が見られましたが、コントロール群との比較では疼痛強度・PPTの優位性は明確ではなく、可動域については研究間で結果にばらつきがありました。

変形性股関節症の周囲筋にも多数のトリガーポイントが存在しうることは臨床的に知られています。腸腰筋・梨状筋・大腿筋膜張筋・外閉鎖筋などにトリガーポイントが形成されると、股関節の鼠径部・大転子周囲・臀部・大腿前内側への関連痛が生じます。上記レビューは上部僧帽筋のトリガーポイントを中心としたものですが、「トリガーポイントへの手技的介入が症状を改善しうる」という基本的な知見は股関節周囲のアプローチを考える上でも参考になります。

最後に、梨状筋症候群に伴う腰痛への理学療法介入を評価するためのプロトコルとして2026年に登録された系統的レビュー計画書(Deshmukh)を取り上げます。梨状筋症候群は深部の股関節外旋筋である梨状筋が坐骨神経を圧迫または刺激することで生じる状態で、臀部痛・下肢放散痛・腰痛といった症状を呈します。変形性股関節症でも梨状筋を含む深層外旋筋群が過緊張しやすく、症状が重なることがあります。

この論文は系統的レビューの計画書(プロトコル)であり、まだ結果は得られていません。しかし「梨状筋を含む深層外旋筋への理学療法が研究対象として注目されている」という点は、股関節周囲の筋介入の重要性を示しています。変形性股関節症の保存療法において深層筋へのアプローチを評価する質の高い研究が今後増えることが期待されます。

動画の核心

動画の手技解説 ── 2本柱の治療アプローチ

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治療の2本柱 ── アライメント調整と筋スパズムの除去
① アライメント調整 Before: 接触面が狭い After: 筋調整で接触面改善 筋肉を変えることで 関節面の環境を変える (骨自体を動かすのでなく 筋張力を通じて位置を変える) ※臨床経験に基づく考え方 ② 筋スパズムの除去 硬い筋(スパズム) リリース後 痛み軽減・可動域回復 ADL(日常生活動作)の改善

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変形性股関節症への徒手アプローチの軸は2つです。①筋肉を調整して寛骨臼と骨頭の接触面(アライメント)を改善する ②過剰に収縮した筋(筋スパズム)を取り除いて関節の滑走性を回復する。この2点は表裏一体で、筋の状態を変えることで骨位置が変わるという考え方です(藤井先生の臨床経験に基づく)。

動画で藤井先生が示す変形性股関節症への治療方針の核心は「アライメントの調整」と「筋スパズムの除去」の2つに集約されます。まず「アライメントの調整」から説明します。変形性股関節症の患者では寛骨臼と骨頭の接地面が狭く不安定であり、この不安定性が周囲筋の過収縮につながっています。アライメント調整とは、この関節の環境そのものを変えることを目指すアプローチです。

「アライメントを変えるなんて無理だ」と思われるかもしれません。しかし動画の中で藤井先生は「筋肉を調整することで骨の位置や関節面を変えることは可能で、すぐに変化が出る」と述べています。骨には多くの筋肉が起始・停止しており、筋が収縮することで骨は引っ張られます。逆に、特定の筋の過剰な収縮を解除することで骨の位置が微細に変化し、接触面の分布が変わる可能性があります。これは理論的には筋膜連続性と運動連鎖の観点から説明可能ですが、あくまで臨床経験に基づく考え方であり、変形性股関節症への直接的な研究的検証はまだ行われていません。

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筋肉が骨格位置を変えるしくみ ── 付着点を通じた関節環境の変化
筋のバランスが 骨の位置を決める 筋肉から関節を変える3ステップ Step 1 硬くなった周囲筋のスパズムを特定する Step 2 筋の長さ・張力を変えるアプローチ Step 3 関節面の位置・被覆率が改善し症状軽減 ※ 臨床経験に基づくアプローチ(研究的検証はこれから)

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骨には多くの筋肉が付着しており、筋が収縮・弛緩することで関節面の向きや骨頭の位置が変化します。動画で藤井先生は「アライメントを変えるなんて無理と思われるかもしれないが、筋肉を調整することで骨の位置や関節面を変えることは可能で、すぐに変化が出る」と述べています。骨を直接引っ張るよりも筋組織を介したアプローチのほうが変化を得やすい、という臨床経験に基づく考え方です。

もうひとつの柱「筋スパズムの除去」については、より直接的なメカニズムが説明できます。変形性股関節症患者の股関節周囲には、腸腰筋・大腿筋膜張筋・梨状筋・内転筋群などの過緊張した筋肉が多数見られます。これらの筋が硬結(トリガーポイント)を形成し、関節の滑走性を低下させます。筋スパズムを取り除くことで関節の摩擦が減り、可動域が改善し、ADLが回復するという経路は、前述の系統的レビュー(Farshchi 2025, Sadeghnia 2025)が示す筋膜リリースやトリガーポイント治療の知見と一致する部分があります。

動画でも強調されているのは「骨を直接引っ張ったりモビライゼーションを行っても、周囲の筋組織が硬いままでは効果が薄い」という点です。関節モビライゼーションは確かに即時的な可動域改善をもたらすことがありますが、筋スパズムが解消されていなければすぐに元の状態に戻ります。だからこそ「まず筋肉を調整する」ことが重要で、筋の長さや硬結はすぐに変化が出やすく、関節面を直接操作するよりもリスクが少なく、患者にとって心地よく、大きな変化が期待できる、と説明されています。

具体的な手技の手順については動画本編を参照してください。動画内では股関節周囲の主要な筋群を一つひとつ評価し、硬結を見つけてはゆっくりとリリースするアプローチが示されています。施術前後で靴下を履く動作・股関節の可動域・痛みの強度を必ず比較し、変化を確認することが推奨されています。

この手技の位置づけ

動画で示される手技は、変形性股関節症の「治癒」を目的とするものではなく、症状の緩和・可動域の改善・ADLの向上を目的とした保存療法の一つです。骨の構造的な問題(寛骨臼形成不全・関節裂隙の消失など)は手技で変えることはできません。手術適応の判断は整形外科専門医に委ねてください。この手技は保存療法として他の介入(運動療法・生活指導・装具療法など)と組み合わせることで意義を持ちます。

症例の考え方・よくある質問(FAQ)

Q. 変形性股関節症でも筋膜リリースは効きますか? ── A. 「効く」と断定することはできませんが、症状の緩和・可動域の改善に役立つ可能性はあります。前述の系統的レビュー(Farshchi 2025)では、筋膜リリース技術を補助として加えることで膝OA患者の痛み・可動域に良い影響が示されました。股関節OAへの直接のエビデンスはまだ限定的ですが、「周囲筋のスパズムを解除することが関節機能の改善に繋がりうる」というメカニズムは理論的に説明可能です。

Q. 「アライメントが変わる」というのは本当ですか? ── A. 藤井先生の臨床経験では「筋の調整で骨の位置が変わり、すぐに変化が出る」とのことですが、これを直接検証した研究はまだ存在しません。機能解剖学的には「筋張力が骨頭の位置・傾きに微細な影響を与える可能性」は否定できませんが、X线画像で確認できるほどの構造的な変化が徒手療法で生じるかどうかは不明です。「アライメントが変わる」という表現は、X線レベルの構造変化ではなく、「筋の状態が変わることで関節の使われ方・荷重分布が変化する」という機能的な意味として理解するのが適切かもしれません。

Q. 痛いほど効きますか?強く押した方がいいですか? ── A. いいえ。強い痛みを伴う施術は逆効果になることが多く、筋防御収縮を引き起こしてさらに硬くなることがあります。変形性股関節症では関節自体が脆弱になっていることも多く、強い圧力や急激な操作は関節への負担になります。目安は「痛気持ちいい」程度。強さではなく持続・方向・タイミングが重要です。変化が出なくても「もっと強く押せば出る」とは考えないでください。

Q. 一度やれば長く続きますか? ── A. 通常、一度の施術で得られる変化は一時的なものです。変形性股関節症の根本にある骨・軟骨の変化は変わりませんし、生活習慣(長時間の座位・体重・片側荷重など)が変わらなければ筋スパズムは再び戻ります。継続的なケアと、日常生活における荷重の工夫(杖の使用・体重管理・適切な運動)を組み合わせることが長期的な効果につながります。一回の施術で永続的な改善を保証するものではありません。

Q. 人工股関節の手術は避けられますか? ── A. 保存療法の目的は「できるだけ長く自分の関節で快適に生活すること」であり、手術を「避ける」ための唯一の手段ではありません。手術の適応判断は整形外科専門医が行うものです。保存療法と手術療法は対立するものではなく、病期と患者の状態に応じて最善の方法を選ぶことが重要です。

Q. 自分でセルフケアできますか? ── A. 股関節周囲筋の穏やかなストレッチ・フォームローラーなどを使った大腿筋膜張筋・大腿四頭筋のセルフリリース・水中歩行といった方法は、専門家の指導のもとで取り組む価値があります。セルフケアを始める前に整形外科・理学療法士に相談し、自分の関節の状態と適切な運動負荷を確認することを強くお勧めします。

まとめ ── この記事で伝えたかったこと

変形性股関節症は寛骨臼と骨頭の被覆率低下から始まり、不安定→筋の過緊張→集中荷重→摩耗の悪循環を生む疾患です。藤井先生が提示する治療の2本柱は「①筋調整によるアライメント改善」と「②筋スパズムの除去による可動域・ADL回復」であり、動画ではこの視点から股関節周囲の筋にアプローチする手技が示されています。

研究面では、筋膜リリース技術(MRT)が変形性関節症(主に膝OA)の補助療法として有益な効果をもたらしうることが系統的レビュー(Farshchi 2025)で示されています。トリガーポイントへの手技的介入が短期的に症状を改善しうることも示唆されています(Sadeghnia 2025)。しかし変形性股関節症そのものに特化した高品質なRCTはまだ不足しており、「筋調整でアライメントが変わる・すぐに改善する」という動画の主張は藤井先生の臨床経験と機能解剖学に基づくものであって、強い研究の裏づけはこれからです。

変形性股関節症の治療は整形外科専門医の診断と方針のもとで進めるべきものであり、本記事の内容は理解のための補助情報です。危険なサインがある場合は必ず医療機関を受診してください。動画の詳しい手の使い方や評価の具体的手順は、ぜひ本編とあわせてご確認ください。動画で「体験」し、この記事で「意味」を持ち帰っていただければと思います。

参考文献

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限界と注意・受診の目安

  • 変形性股関節症の治療方針は整形外科専門医の診断のもとで決定してください。本記事は医療行為の代替ではありません。
  • 安静時痛・夜間痛・発熱を伴う症状・脚の脱力・強い腫脹・感覚異常がある場合はすぐに医療機関を受診してください。
  • 「筋調整でアライメントが変わる」という考え方は藤井先生の臨床経験に基づくものです。X線等による構造的変化を保証するものではなく、効果には個人差があります。
  • 人工股関節術後の方は執刀医・担当理学療法士の許可なしに股関節への手技を受けないでください。
  • 妊娠中・骨粗鬆症が高度の方・急性炎症期の方は専門家への相談のうえで行動してください。
  • 強い圧力・急激な操作は禁忌です。施術は「痛気持ちいい」範囲内で行ってください。
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監修・参考文献

掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。

監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)

  1. [1] Farshchi F, Farshchi N, Kalayi RAH2025).「The Role of Myofascial Release Techniques as an Adjunct to Other Therapies in Knee Osteoarthritis: A Systematic Review」. Health Science Reports, 8:e71507.
  2. [2] Sadeghnia M, Kajbafvala M, Shadmehr A.2025).「The effect of friction massage on pain intensity, PPT, and ROM in individuals with myofascial trigger points: a systematic review」. BMC musculoskeletal disorders.