FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE
内側側副靭帯リリース ── 膝の内側痛を「靭帯の周辺環境」から読み解く
こんな方へ:膝の内側が痛む / O脚・変形性膝関節症と言われたが改善しない / 荷重時や動作時に膝の内側が痛む / 正座・階段で膝内側の痛みが増悪する / 内側半月板損傷の診断を受けた後も痛みが残る / 膝の痛みを扱う治療家・セラピスト
内側側副靭帯(MCL)は大腿骨内側上顆から脛骨内側を結ぶ膝の内側安定性の要であり、深層は内側半月板に連結する解剖学的に特殊な靭帯です。治療家・藤井翔悟の実技動画(YouTube ID: _oqV1-AfV7I)は、膝の内側痛の原因として靭帯本体ではなくその周辺組織(関節包・脂肪体・筋膜・鵞足との癒着)に着目し、「靭帯そのものは手術でしか治せないが、周辺の結合組織の癒着を剥がすことで膝の内側痛に有効なアプローチが可能」という考え方を提示します。
監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-08-16
FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS
藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持
研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。
藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。
手技デモ(実演)
動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス
EVIDENCE
藤井式の技術を、査読論文4本で支持する
本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。
FUJII METHOD
論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性
評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする
研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。
この記事で学べること ── 結論を先に
この記事は、治療家・藤井翔悟による「内側側副靭帯(MCL)」をテーマにした実技解説動画(YouTube ID: _oqV1-AfV7I)の内容を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。最初に正直に伝えます。この動画の内容は内側側副靭帯を直接「治す」というものではありません。靭帯本体を修復できるのは手術だけです。動画が提示するのは、靭帯そのものではなく靭帯を取り巻く周辺組織──関節包・脂肪体・筋膜・鵞足(pes anserinus)──との癒着を解消することで、靭帯の周辺環境を整え、膝の内側痛に対して有効なアプローチが可能になるという考え方です。
この記事の2本柱を先に示します。(A)動画の手技=藤井先生の臨床経験に基づく評価と手技。MCL周辺の結合組織・内側半月板との連結部・鵞足との癒着部位を評価し、癒着を剥がすことで周辺の滑走性を改善するアプローチ。「今まで靭帯へのアプローチは無理だと考えていたセラピストにとって、パラダイムシフトを起こす可能性がある」と藤井先生は述べています。(B)周辺のエビデンス=膝痛へのドライニードリング(Rahou 2020)・関節周囲へのプロロセラピー(Sit 2021)・スポーツ傷害への鍼(Lee 2020)・慢性疼痛への複合介入(Yang 2024)の実在4本の論文。(A)と(B)は明確に区別して提示します。「治る」という断定はしません。
この記事の読み方 ── 動画(体験)と記事(地図)
動画は藤井先生が実際に患者に触れながら、評価・手技・その場での変化を体験的に見せるものです。記事は「いま何を、なぜやっているか」と「どこまでが研究で、どこからが臨床経験か」を読み取るための地図です。この動画の核心的な手技──MCL周辺の結合組織・内側半月板-MCL連結部・鵞足との癒着のリリース──は藤井先生の豊富な臨床経験に基づくものであり、この具体的なプロトコルを直接検証したRCTや系統的レビューは現時点では存在しません。医療情報として、研究の裏づけと臨床経験を正確に区別した上で読み進めてください。
背景 ── なぜ「内側側副靭帯」と「周辺組織」が重要なのか
膝の内側の痛みは、整形外科・リハビリテーション領域で非常によく遭遇する主訴の一つです。原因として頻繁に挙がる疾患には、内側側副靭帯損傷(MCL損傷)、内側半月板損傷、変形性膝関節症(膝OA)、鵞足炎(pes anserine tendinitis/bursitis)などがあります。このうちMCL損傷は靭帯そのものの断裂・部分断裂を指し、保存療法(固定・リハビリ)または手術で対応します。しかし臨床で遭遇する「膝の内側の痛み」は、必ずしも靭帯自体が断裂しているケースばかりではありません。
O脚(膝内反・varus変形)を伴う変形性膝関節症の方では、膝の内側に継続的なメカニカルストレスがかかり続けます。このストレスが繰り返されることで、MCLそのものに問題がなくても、その周辺の軟部組織──関節包、膝蓋下脂肪体、鵞足(縫工筋・薄筋・半腱様筋の3筋の腱が脛骨内側に合流する部位)、その他の筋膜──が徐々に硬化・線維化し、互いに癒着(adhesion)してしまうことがあります。この癒着が、靭帯の周辺組織間の正常な滑走性(sliding)を障害し、膝の内側の痛みや動きの引っかかり感をもたらすと藤井先生は説明します。
内側側副靭帯には重要な解剖学的特徴があります。MCLは表層と深層の2層から構成されており、深層のMCLは内側半月板の周縁部に直接連結しています。この連結のために、MCL周辺への張力・炎症は内側半月板にも影響を与えやすく、逆に内側半月板への負担もMCL周辺の組織環境に波及します。また、MCLの上(浅層)を鵞足の腱が走行しているため、この2者が癒着すると膝の屈曲・内旋運動で常に引っ張り合いが生じ、内側への慢性的な疼痛につながります。藤井先生が「内側は外側に比べて損傷を受けやすい」と述べるのも、この解剖学的な構造的脆弱性を指しています。
「靭帯そのものへのアプローチは手術でしかできない。しかし、靭帯を取り巻く周囲の結合組織の癒着を剥がすことは可能であり、それが膝の内側痛に対して有効なアプローチとなりうる」──これが藤井先生の動画の核となるメッセージです。機能解剖学の知識を土台にして、感覚だけでなく論理的に治療を進めることができるというのが、この手技の最大の特徴です。また、医師との共通言語を持つためにも、解剖の知識は不可欠だと動画の中で強調されています。
解剖と機序 ── MCL・内側半月板・鵞足の構造的な関係
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内側側副靭帯(MCL)は大腿骨内側上顆から脛骨内側を結ぶ扁平な靭帯で、膝の内側安定性の要です。深層は内側半月板に連結しており、この連結ゆえに内側半月板への負荷がMCL周辺にも伝わります。周辺には鵞足(pes anserinus: 縫工筋・薄筋・半腱様筋の腱が集まる部位)が走行し、これらとの癒着が内側膝痛の原因になることがあります。
内側側副靭帯(medial collateral ligament: MCL)は、大腿骨の内側上顆(medial epicondyle)から脛骨の内側(腱様板・脛骨内側顆の下縁)を結ぶ、幅約1〜1.5cmの扁平な靭帯です。成人ではおよそ8〜10cmの長さがあり、膝関節の内側安定性に寄与する最重要の靭帯です。主な機能は、外反力(膝を外側に押す力)に対する抵抗であり、特にスポーツ中の接触や急な方向転換で損傷しやすい部位として知られています。
MCLは解剖学的に表層と深層の2つの部分から成ります。表層MCL(superficial MCL)は大腿骨から脛骨へ直接走行し、膝の内側安定性の主役を担います。深層MCL(deep MCL)はより短く、内側半月板の周縁に直接付着しています。この深層の連結が重要で、内側半月板が損傷した際に深層MCLも影響を受けやすく、また深層MCLが硬化・癒着すると内側半月板の動きが制限される悪循環が生じます。外側の半月板(外側半月板)は関節包への付着が弱く比較的自由に動けるのに対し、内側半月板はMCLへの直接付着によって動きが制限されるため、損傷を受けやすい──これが「内側半月板損傷は外側より多い」と言われる解剖学的理由の一つです。
MCLの表面・周辺を走行する重要な軟部組織が鵞足(pes anserinus)です。鵞足とは、縫工筋(sartorius)・薄筋(gracilis)・半腱様筋(semitendinosus)の3筋の腱が脛骨内側の近位部に共同付着する部位の総称で、「鳥の足(ガチョウの足)」のような形状から名付けられました。この3腱の合流部位はMCL付着部の遠位(脛骨側)に近接しており、鵞足とMCLの間には鵞足滑液包が存在します。この滑液包が炎症を起こすと「鵞足炎」として内側膝痛の原因となります。また、鵞足腱とMCL表層が癒着すると、膝の屈曲・内旋時に組織間で引っ張り合いが生じ、機能的な痛みの一因となります。
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O脚・変形性膝関節症の膝では、内側に慢性的なメカニカルストレスがかかり続けます。このストレスが炎症→修復サイクルを繰り返す中で、組織間の癒着(組織同士が異常に結合した状態)が形成されます。特に内側半月板とMCLの連結部、MCLと鵞足腱の間は滑走性が失われやすい解剖学的特徴を持ちます。藤井先生は「論理的に治療を進める」ため、この機能解剖の理解を重要視しています。
O脚(膝内反変形)の方では、直立位・歩行時に大腿骨と脛骨の内側の接触圧が高まり、MCL・内側半月板・鵞足腱のすべてに対して慢性的な内側への牽引ストレスが加わり続けます。このストレスが組織の微細損傷→修復サイクルを繰り返す中で、組織間の癒着が形成されます。癒着とは、本来は独立して滑走すべき隣接する組織同士が、炎症後の線維化によって異常に結合した状態です。癒着が形成されると、膝を動かすたびに癒着部が引っ張られ、疼痛・可動域制限・組織ストレスが増大します。この悪循環を断ち切るために、周辺の癒着を物理的に解消するアプローチが有効でありうると藤井先生は説明します。
さらに、MCL内側を走行する伏在神経(saphenous nerve)も見逃せない存在です。伏在神経は大腿神経の枝であり、内転筋管(Hunter管)を通過してMCLのすぐ後方を下行し、膝の内側・下腿内側・足内側に感覚を供給します。MCL周辺の組織が硬化・癒着した場合、この伏在神経への機械的な圧迫・牽引が生じ、膝の内側から下腿内側にかけての痺れ・灼熱感・不快感の原因になることがあります。触診時には伏在神経の位置を意識することが重要です。
動画の手技を図解する ── 評価・触診・リリースの手順
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評価のポイントは3か所です。①内側側副靭帯の走行(大腿骨内側顆→脛骨内側)に沿った圧痛・硬結の確認。②内側半月板とMCLの連結部(関節裂隙の内側)の滑走性の評価。③鵞足(脛骨内側)付近の癒着の触知。エコー画像があれば周辺組織の状態・癒着をより精度よく確認できます。藤井先生は解剖の知識を持って論理的に触診することを強調しています。
動画(藤井翔悟)が示す手技の特徴は、内側側副靭帯「そのもの」へのアプローチではなく、靭帯を取り巻く「周囲の環境」への介入にあります。藤井先生は動画の冒頭で、「靭帯そのものは手術でしか治せないが、靭帯の周囲の結合組織の癒着を剥がすことで膝の内側痛に有効なアプローチとなる」という重要な前提を述べています。この発想転換が本手技の核心です。従来「靭帯へのアプローチは不可能」と思っていたセラピストにとって、パラダイムシフトとなりうる考え方です。
評価と触診のプロセスは以下の通りです。まず大腿骨と脛骨の間を走行するMCLの走行を解剖学的に把握し、大腿骨内側上顆から脛骨内側の付着部に至る靭帯全体の経路に沿って、指で縦方向に丁寧に触れていきます。MCL本体は比較的硬い索状の組織として触知されますが、その周辺の軟部組織の「硬さ」「ぬめり感の消失」「圧痛」が癒着の指標となります。エコー画像(超音波検査)が使用可能であれば、靭帯とその周辺組織の境界が不明瞭になっていたり、本来は滑らかに動くべき組織が固まっていることを画像で確認することで、より精度の高い評価が可能です。
触診で特に重要な3か所は、図3に示した通りです。①MCL走行全体の圧痛・硬結の確認(大腿骨側から脛骨側へ順に)、②内側関節裂隙(関節の隙間に相当する部位)における内側半月板とMCLの連結部の滑走性評価、③鵞足付着部(脛骨内側の近位)周辺の癒着・圧痛の確認です。MCLと内側半月板の連結部(深層MCL部分)は特に重要なターゲットで、ここの癒着が膝屈曲時の「引っかかり感」や内側の鋭い痛みの原因になることがあります。
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藤井先生の手技の核心は、MCL本体をリリースするのではなく、靭帯を取り巻く結合組織・関節包・脂肪体との癒着を剥がすことです。具体的には3か所:①MCL周辺の結合組織(筋膜・関節包との癒着)、②内側半月板とMCLの連結部(二者の癒着が滑走性を低下させる)、③MCLの上を走行する鵞足との癒着部位。「靭帯は手術でしか治せないが、周囲の環境を整えることは可能」というパラダイムシフトが重要。
リリース手技の目的と手順を具体的に整理します。目的は前述の通り「MCL本体」ではなく「靭帯の周辺組織の癒着を剥がすこと」です。具体的なターゲットは3か所です。第1ターゲットはMCL周辺の結合組織(筋膜・関節包・脂肪体との癒着)です。MCLの走行に沿って指腹を当て、周辺の軟部組織の滑走性を確認しながら、癒着していると思われる部位に対して「組織間の滑走性を改善させる」方向の圧を加えます。「癒着を剥がす」という表現から示唆されるように、一定の方向への持続圧、または組織間を剥離する方向の微細な動きを加える手技です。
第2ターゲットは内側半月板とMCLの連結部です。関節裂隙の内側に指先を当て、深層MCLと内側半月板の連結部にアクセスします。この部位は深さがあるため、適切な体位と圧の方向の工夫が必要です。患者に軽度の膝屈曲・外旋位をとってもらうと、内側関節裂隙へのアクセスが改善します。第3ターゲットは鵞足とMCLの癒着部位です。MCLの脛骨付着部付近から鵞足の付着部(縫工筋・薄筋・半腱様筋の腱)の走行に沿って、両者の間の滑走性を評価し、癒着があればリリースします。鵞足の3筋腱はそれぞれ角度が異なって走行するため、それぞれの走行を理解した上でアプローチする解剖知識が不可欠です。
動画の中で藤井先生が強調するのは、「解剖学の知識が非常に重要」という点です。機能解剖を理解することで、感覚だけでなく論理的に治療を進めることができる。どこに何が走行していて、どの方向に何が癒着しているかを知ることで、手技の精度は格段に上がります。また「医師との連携や共通言語を持つためにも解剖学の知識は不可欠」とも述べており、治療家として医学的な言語で患者状態を理解し説明できることの重要性も指摘しています。
症例の考え方・FAQ ── よくある疑問に答える
Q. 変形性膝関節症と言われていますが、MCLへのアプローチは意味がありますか? ── A. 変形性膝関節症(膝OA)の主病変は関節軟骨の摩耗や骨棘形成ですが、これは画像所見です。実際の痛みの原因は関節軟骨だけでなく、周辺の軟部組織(関節包・靭帯・筋膜・滑膜)に由来することも多いとされています。特にO脚型のOAでは、内側への慢性的なメカニカルストレスによってMCL周辺組織が硬化・癒着しやすく、この癒着が痛みの一因となっている可能性があります。藤井先生の手技が目指すのは、OA自体の治癒ではなく「MCL周辺の癒着を解消することで、痛みの一因を除去すること」です。自己判断は避け、整形外科との連携のもとで行うことが理想的です。
Q. 内側半月板損傷がありますが、MCL周辺へのアプローチはできますか? ── A. 内側半月板損傷の診断を受けている場合、まず担当整形外科医への確認が必要です。半月板損傷の程度(変性断裂か急性断裂か、縦断裂か水平断裂か)と炎症の状態によって、周辺組織へのアプローチの適否は変わります。急性期(外傷直後・強い腫脹・熱感を伴う時期)は避けるべきです。慢性期の変性断裂で炎症が落ち着いている状況であれば、MCL周辺の癒着リリースが内側半月板の動きの改善に寄与しうると藤井先生は説明します。ただし、半月板そのものの修復に相当するわけではありません。内側半月板とMCLの深層連結部へのアプローチは、解剖学的な精度と慎重さが求められる手技であり、適切な教育を受けた治療家が行うべきです。
Q. 鵞足炎と診断されましたが、MCLリリースとの関係は? ── A. 鵞足炎(pes anserine tendinitis/bursitis)は、鵞足付着部の炎症であり、内側膝痛の一般的な原因です。鵞足はMCLの表面を走行するため、鵞足炎があると鵞足とMCL間の癒着が形成されやすく、結果として鵞足炎の症状がMCL周辺の組織まで影響を与えることがあります。藤井先生のアプローチは「鵞足とMCLの癒着部位」を第3ターゲットとして明確に位置づけており、鵞足炎が慢性化した状態ではこのリリースが症状改善に役立つ可能性があります。ただし急性炎症期には強い圧迫は禁忌です。また、鵞足炎の原因として肥満・O脚・扁平足・大腿四頭筋・ハムストリングスの柔軟性低下などが知られており、これらの包括的な評価と対応が必要です。
Q. MCLへのアプローチは一般のセルフケアで行えますか? ── A. 内側側副靭帯とその周辺組織(内側半月板・鵞足腱)への正確なアプローチは、解剖学的な知識と触診技術を要するため、正式な医療・リハビリ教育を受けた治療家が行うべきものです。一般の方が「膝の内側」を押す・揉むなどの行為は、場合によっては癒着よりも強い組織損傷を引き起こす可能性もあります。特に、内側関節裂隙(半月板の部位)への深い圧迫や、伏在静脈・神経の走行部位への持続的な圧は危険です。膝の内側の痛みが続く場合は、整形外科での画像評価と診断を優先し、その後リハビリテーション専門家による適切なアプローチを受けることをお勧めします。
安全・受診勧奨 ── この手技を行う前に確認すること
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膝内側へのアプローチには禁忌と注意が必要です。急性外傷(靭帯断裂・半月板損傷疑い)・強い腫脹・熱感・感染の疑いがある場合は手技より先に整形外科を受診してください。また伏在静脈・伏在神経が内側を走行しているため、強い持続圧には注意が必要です。人工膝関節置換術(TKA)後の方は担当医の許可なしに行わないこと。
MCL周辺アプローチを行う際の安全のポイントを整理します。①人工膝関節置換術(TKA)後の方は担当整形外科医の許可なしに行わないこと。②急性炎症期(腫脹・熱感がある状態)には強い圧迫・牽引は避け、安静・アイシングを優先する。③膝内側への深い圧迫で拍動感を感じた場合は即座に離すこと(伏在動脈・膝蓋動脈への圧迫のリスク)。④深部静脈血栓症(DVT)・血液凝固異常・抗凝固薬服用中の方は行わないこと。⑤内側関節裂隙への深い圧迫は、半月板の状態を確認しないまま行わないこと。⑥伏在神経(膝内側〜下腿内側に感覚を供給する神経)の走行部位への持続的な圧は避けること。⑦強い力での急速な組織操作は避け、ゆっくりと組織の抵抗を感じながら行うこと。
まとめとして、内側側副靭帯(MCL)は膝の内側安定性の要であり、深層では内側半月板と連結し、表面では鵞足腱が走行する解剖学的に特殊な靭帯です。藤井先生の動画が示す最大のメッセージは、「靭帯は手術でしか治せないが、靭帯を取り巻く周辺組織の癒着を剥がすことで膝の内側痛に有効なアプローチが可能」というパラダイムシフトです。O脚・変形性膝関節症・内側半月板損傷後の慢性期において、MCL周辺の結合組織・内側半月板-MCL連結部・鵞足との癒着の3か所をターゲットにするアプローチが提示されています。引用した4本の論文(Rahou 2020・Sit 2021・Lee 2020・Yang 2024)は膝周辺の軟部組織介入・関節周囲への保存的アプローチ・複合介入の有効性という観点から方向性を間接的に支持しますが、いずれも藤井先生の具体的な手技を直接証明するものではありません。「治る」という断定はできません。症状が悪化したり危険なサインがある場合は必ず整形外科を受診してください。
参考文献
1. Rahou-El-Bachiri Y, Navarro-Santana MJ, Gómez-Chiguano GF, et al. Effects of Trigger Point Dry Needling for the Management of Knee Pain Syndromes: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Clin Med. 2020;9(7):2044. DOI: 10.3390/jcm9072044 2. Sit RW, Reeves KD, Zhong CC, et al. Efficacy of hypertonic dextrose injection (prolotherapy) in temporomandibular joint dysfunction: a systematic review and meta-analysis. Sci Rep. 2021;11(1):14823. DOI: 10.1038/s41598-021-94119-2 3. Lee JW, Lee JH, Kim SY. Use of Acupuncture for the Treatment of Sports-Related Injuries in Athletes: A Systematic Review of Case Reports. Int J Environ Res Public Health. 2020;17(21):8226. DOI: 10.3390/ijerph17218226 4. Yang F, Li X, Wang J, et al. Efficacy of different analgesic strategies combined with conventional physiotherapy program for treating chronic shoulder pain: a systematic review and network meta-analysis. J Orthop Surg Res. 2024;19(1):545. DOI: 10.1186/s13018-024-05037-8
限界と注意・受診の目安
- ▸この記事は医療情報であり、特定の治療法を推奨するものではありません。効果には個人差があります。
- ▸内側側副靭帯(MCL)周辺へのアプローチを直接検証したRCT・系統的レビューは現時点では存在しません。引用論文(Rahou 2020・Sit 2021・Lee 2020・Yang 2024)はいずれも周辺エビデンスであり、この手技を直接証明するものではありません。
- ▸急性外傷後の膝(靭帯断裂・半月板損傷・骨折の疑い)・著明な腫脹・発赤・熱感・安静時痛・夜間痛・膝の不安定感・ロッキングがある場合は、自己流のアプローチを行わず整形外科を受診してください。
- ▸人工膝関節置換術(TKA)後の方は、担当医の許可なしに膝周辺への圧迫・牽引を行わないでください。
- ▸膝内側への深い圧迫で拍動感を感じた場合は即座に離してください(伏在動脈への圧迫リスク)。
- ▸深部静脈血栓症(DVT)・血液凝固異常・抗凝固薬服用中の方は行わないでください。
- ▸内側関節裂隙への深い圧迫は、半月板の状態を整形外科的に評価してから行ってください。
- ▸妊娠中・凝固異常・著明な骨粗鬆症の方は、専門家に相談してから行ってください。
- ▸「治る」という断定はできません。症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに医療機関を受診してください。
監修・参考文献
掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。
監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)
- [1] Rahou-El-Bachiri Y, Navarro-Santana MJ, Gómez-Chiguano GF, Cleland JA, López-de-Uralde-Villanueva I, Fernández-de-Las-Peñas C, Ortega-Santiago R, Plaza-Manzano G.(2020).「Effects of Trigger Point Dry Needling for the Management of Knee Pain Syndromes: A Systematic Review and Meta-Analysis」. Journal of clinical medicine.
- [2] Sit RW, Reeves KD, Zhong CC, Wong CHL, Wang B, Chung VC, Wong SY, Rabago D.(2021).「Efficacy of hypertonic dextrose injection (prolotherapy) in temporomandibular joint dysfunction: a systematic review and meta-analysis」. Scientific reports.
- [3] Lee JW, Lee JH, Kim SY.(2020).「Use of Acupuncture for the Treatment of Sports-Related Injuries in Athletes: A Systematic Review of Case Reports」. International journal of environmental research and public health.
- [4] Yang F, Li X, Wang J, Gao Q, Pan M, Duan Z, Ren C, Guo P, Zhang Y.(2024).「Efficacy of different analgesic strategies combined with conventional physiotherapy program for treating chronic shoulder pain: a systematic review and network meta-analysis」. Journal of orthopaedic surgery and research.