FUJII FASCIA INSTITUTE シンボルマークFUJII FASCIA INSTITUTE藤井翔悟 筋膜研究所

FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE

エビデンスレベル:専門家意見

仙骨多裂筋リリース ── 深層の安定筋を座位で解放する徒手アプローチ

こんな方へ:腰仙部の痛み・重だるさが続く方 / 長時間の座位後に立ち上がりにくい方 / 回旋動作で腰が引っかかる感じがある方 / 腰椎の安定感が低下していると感じる方 / 仙骨多裂筋にアプローチしたい治療家・セラピスト

仙骨多裂筋は仙骨上面・後面を縦走する多裂筋の最深部線維であり、腰椎の節間安定・回旋制御を担う重要な深層筋である。棘突起の直ぐ外側、PSIS(上後腸骨棘)との中間に位置し、ホットパックやマイクロ波では届きにくい深部のため過緊張・筋スパズムが見落とされやすい。治療家・藤井翔悟の実技動画(YouTube ID: gfPB3EcNH2o)は、座位での触診・回旋評価を用いてこの部位の硬さを確認し、「電気リリーステクニック」的な持続圧迫+股関節外転の組み合わせで多裂筋スパズムを解放する独自の手技を解説する。

監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-09-23

FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS

査読論文 4本と照合SR/メタ解析RCT

藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持

研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。

藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。

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手技デモ(実演)

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動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス

EVIDENCE

藤井式の技術を、査読論文4本で支持する

本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。

FUJII METHOD

論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性

評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする

研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。

この記事で学べること ── 結論を先に

この記事は、治療家・藤井翔悟による仙骨多裂筋リリースをテーマにした実技解説動画(YouTube ID: gfPB3EcNH2o)の内容を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。テーマは4つ ── ①仙骨多裂筋とはどんな筋か(解剖・機能・位置の特定)②なぜこの筋が腰痛に深く関係するのか③藤井先生が動画で示す触診・評価・リリースの具体的な手順④どこまでが研究で裏づけられていて、どこからが臨床経験の知見か。最初に正直にお伝えします。この動画は「腰をほぐすだけ」のシンプルなハウツー動画ではありません。動画の最大の価値は、腰痛の原因として見落とされやすい「仙骨上の深部筋・仙骨多裂筋」に焦点を当て、その硬さを座位で評価し、股関節外転という動作を利用して精細にリリースする、という評価と手技の考え方を提示する点にあります。

この記事の2本柱を最初に示します。(A)動画の手技=藤井先生の臨床経験に基づく評価・手技の考え方。棘突起とPSIS(上後腸骨棘)の中間に位置する仙骨多裂筋を座位で触診し、回旋動作による誘発評価を行い、持続的な深部圧迫+股関節外転でリリースするという流れ。(B)周辺のエビデンス=多裂筋の機能不全と慢性腰痛の関係・筋膜リリースの多裂筋への効果を扱った実在4本の論文。(A)と(B)は明確に区別して提示します。

この記事の読み方 ── 動画(体験)と記事(地図)

動画は藤井先生の触診の当て方・硬結の見つけ方・リリースの感覚を『体験』するもの。記事は『いま何を、なぜやっているか』と『どこまでが研究で、どこからが臨床経験か』を持ち帰る地図です。この動画の核心である『棘突起とPSIS中間への持続圧迫+股関節外転でリリースする』という具体的な組み合わせは、藤井先生の豊富な臨床観察に基づくものであり、この手法を直接検証したRCTや系統的レビューは現時点では存在しません。ただし多裂筋機能不全と腰痛の関係・筋膜リリースの筋厚改善効果については実在する研究があります。医療情報として、研究の裏づけと臨床経験を正確に区別した上で読み進めてください。

背景 ── なぜ仙骨多裂筋が腰痛の「盲点」になりやすいのか

腰痛は整形外科・リハビリテーション領域で最も頻繁に遭遇する訴えの一つです。椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄・変形性脊椎症などの画像所見が腰痛の原因として注目されることが多い一方で、実は腰痛の約85%は非特異的腰痛(specific causeが特定されない腰痛)と言われています。つまり、X線やMRIで異常が確認されないにもかかわらず腰が痛い、あるいは画像所見はあっても症状の重さが画像と一致しない、というケースが非常に多いのです。この「説明のつかない」腰痛において、深層の安定筋=特に多裂筋の機能不全が重要な役割を果たしている可能性が、近年の研究から示唆されています。

多裂筋(multifidus)は脊柱の両側を縦走する深層筋群であり、表層の腸肋筋・最長筋とは異なる機能を担います。多裂筋は隣接する椎骨と椎骨の間の「節間安定(segmental stability)」を担う、いわば脊柱の小さなジョイントスタビライザーです。一つ一つの椎間関節の微細な位置制御を担うこの筋が機能不全を起こすと、腰椎全体の動的安定性が低下し、動作時の痛み・疲れやすさ・回旋動作時の引っかかり感が生じやすくなります。

その中でも「仙骨多裂筋」は、多裂筋の中で特に仙骨上面・仙骨後面に密着する部分を指します。仙骨は腰椎の最下部に位置する扇型の骨であり、左右の腸骨と仙腸関節を形成して骨盤の中心を構成します。仙骨多裂筋はこの仙骨の後面から起こり、L5〜L2の棘突起に向かって斜めに走行します。この部位が硬化・筋スパズムを起こすと、単純な腰痛だけでなく、仙腸関節の動きの制限、骨盤の左右バランスの崩れ、さらには長時間座位後に立ち上がりにくいという症状として現れることがあります。

動画で藤井先生が強調するのは、この仙骨多裂筋が「ホットパックやマイクロ波では届きにくい」という点です。腰部への温熱療法は表在筋には有効ですが、深部の多裂筋線維にまで温熱が到達するのは難しく、また電気療法(干渉波・TENS)も多裂筋の特定の線維に焦点を当てることは容易ではありません。これが仙骨多裂筋の問題が見落とされやすい理由の一つです。指による精細な触診と徒手的な圧迫アプローチは、この「届きにくい」部位へのアクセス手段として臨床的な意義があると藤井先生は説明します。

解剖と機序 ── 仙骨多裂筋の位置・機能・スパズムのメカニズム

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仙骨多裂筋の解剖 ── 棘突起の真横を縦走する深層の腰椎安定筋
後面 / posterior 仙骨多裂筋(右) 仙骨(sacrum) L5棘突起 PSIS(右) 仙骨多裂筋(左) PSIS(左) L3〜L4棘突起

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後面から見た腰仙椎と仙骨多裂筋(サーモン色)。多裂筋は棘突起(L3〜仙骨)の直ぐ外側、PSIS(上後腸骨棘)との間を縦走します。仙骨上では特に深層に密着し、腰椎・仙椎の安定・伸展・回旋を担う重要な深層筋です。

仙骨多裂筋の解剖学的な位置を正確に理解することが、触診と手技の精度に直結します。多裂筋(musculus multifidus)は脊柱起立筋の最深部に属し、仙骨・腰椎・胸椎・頸椎の後面全体に分布しますが、腰仙部における密度が最も高いとされています。各線維は1〜4椎骨を飛び越えて斜めに走行し、下位の棘突起または横突起に起始し、上位の棘突起に停止するパターンをとります。仙骨レベルでは、仙骨の後面・仙骨稜(外側仙骨稜)から起こる線維がL5〜L2にかけて広がります。

触診上の重要なランドマークは2つです。一つは棘突起(spinous process)──腰を触ると正中線に感じるゴリゴリとした骨の出っ張りの列。もう一つはPSIS(posterior superior iliac spine/上後腸骨棘)── 腸骨後上端の突起で、日本語では「上後腸骨棘」と呼びます。腰に手を当てると両側に感じるディンプル(くぼみ)の奥にある骨の突起がPSISです。仙骨多裂筋は、この棘突起とPSISの「ちょうど中間」付近に密集して存在します。

なぜ仙骨多裂筋はスパズム(筋痙攣・過緊張)を起こしやすいのか。理由は複数あります。①長時間の座位姿勢(特に骨盤後傾位)での慢性的なストレス、②繰り返される腰椎の非対称な負荷(片側に重心が偏る動作)、③急性腰痛エピソードの後に残る保護的な筋緊張(guarding)、④腰椎不安定性に対する代償的な過活動(co-contraction)。これらの要因によって、仙骨多裂筋が慢性的な過緊張状態に陥ると、腰仙部の重だるさ・回旋時の制限・仙腸関節の動きの悪さとして現れます。

仙骨多裂筋の機能不全のもう一つの重要な側面は、「筋の萎縮(atrophy)」です。急性腰痛のエピソードの後、多裂筋は痛みに対する神経学的な反射として抑制・萎縮することが知られています。この筋萎縮は自然回復しにくく、腰痛が慢性化する一因とされています。Bess ら(2025)の系統的レビュー・メタ解析はこの点を詳しく分析しており、多裂筋機能不全が慢性腰痛の独立した原因因子として認識されてきていることを示しています。筋スパズムと筋萎縮は一見矛盾するように見えますが、「一部の線維が過緊張でスパズムを起こしている一方、他の線維は萎縮している」という混在した状態が実際の臨床像であることが多いのです。

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仙骨多裂筋が硬いと現れる主な症状
後面 1 仙骨多裂筋が硬くなると出る症状 1腰仙部の痛み・重だるさ2回旋動作での腰の引っかかり3長時間坐位後に立ちにくい4腰椎安定性の低下・ぐらつき ※ これらは臨床経験に基づく観察です

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仙骨多裂筋が硬化・筋スパズムを起こすと、主として腰仙部(①)に痛みが生じます。深部の安定筋であるため、動作中の腰のぐらつき・重だるさとして現れることが多く、回旋動作で増悪します。

動画の手技を図解する ── 評価・触診・リリースの詳細手順

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触診・評価の手順 ── 棘突起とPSISの中間を座位で確認
後面拡大 棘突起(正中) PSIS(左) 触診ターゲット 棘突起とPSISの中間 = 仙骨多裂筋 評価の方法 ◎ 触診しながら  体幹回旋させる → 痛み誘発を確認

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仙骨多裂筋の触診ポイントは、仙骨上の棘突起とPSIS(上後腸骨棘)のちょうど中間。患者を座位にし、この部位を触れながら体幹回旋を行わせて、硬さ・痛みの変化を評価します。

動画(藤井翔悟)が示す評価と手技の流れを段階的に解説します。まず準備として、患者は椅子に座った「座位」をとります。立位や腹臥位(うつ伏せ)ではなく座位を選ぶ理由は、座位では骨盤が固定されやすく、仙骨多裂筋が相対的にゆるんで深部に触れやすい状態になるためです。また座位では患者自身が股関節を外転させる動きを取り入れやすく、手技中の動的アプローチが行いやすいという利点もあります。

触診のポイントは、仙骨上の棘突起とPSISの「ちょうど中間」です。まず正中の棘突起(L5あたいが仙骨上縁)を確認し、次に同側のPSISを確認します。PSISは腰の後ろに手を当てたときに感じるくぼみ(ディンプル)の奥にある骨の突起です。棘突起とPSISを結ぶ線の中間点付近に指を当てると、仙骨多裂筋の走行域に触れることができます。

この部位を触診すると、仙骨多裂筋に問題がある場合、指先に「グリグリ」とした硬い線維状の感触(筋硬結)が確認できることがあります。硬さの左右差・圧を加えたときの痛みの有無・圧痛の強さを比較することが評価の基本です。

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回旋での動的評価 ── 触診しながら体幹をひねって痛みを確認
① 静的触診 静的な硬さを確認 ② 動的評価(回旋) 回旋 痛みの変化・硬さの変化を確認

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仙骨多裂筋の評価は「静的触診」と「動的誘発」の2段階。棘突起とPSIS中間を触れた状態で患者に体幹を回旋(ひねる動作)させると、硬さ・痛みの変化を動的に確認できます。両側の違いも重要な評価情報になります。

動的評価として、触診しながら患者に体幹の回旋(ひねる動作)を行わせます。棘突起とPSISの中間を触れた状態で、患者が体幹を左または右にひねると、仙骨多裂筋への伸長ストレスが加わります。このとき、触診部位の硬さが増す・痛みが誘発される・逆に痛みが和らぐといった変化を確認します。両側の比較も重要な情報です。痛みを誘発するかどうかの確認は診断的情報となり、どちらの回旋方向でより問題があるかを把握することで、介入の方向性が明確になります。

リリース手技の具体的な手順は以下の通りです。患者は座位のまま。術者は触診で確認した硬結部位(棘突起とPSISの中間)に指を当て、「電気リリーステクニック」のような感覚で、丁寧に、しかしゆっくりと深部に向かって圧をかけます。重要なのは「グリグリと動かしながら強く押す」のではなく、「ゆっくりと静かに深部へ圧を届かせる」ことです。圧は患者の表情・呼吸・筋緊張の変化を観察しながら調整します。痛みの表情が強く出る場合は圧を弱め、逆に「これ以上圧をかけても変化がない」という感触になったら圧を維持しながら次のステップへ移ります。

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リリース手技の手順 ── 座位・圧迫+股関節外転
外転 リリース手技のポイント ① 患者:座位(椅子)② 棘突起とPSISの中間に指を当てる③ 丁寧に深部へゆっくり圧をかける④ 「グリグリ」でなく持続的な圧⑤ 圧を保ちながら股関節外転を促す⑥ 両側を評価・リリースする

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患者は座位。棘突起とPSISの中間に指を当て、「電気リリーステクニック」のように丁寧に深部へ圧をかけます。その圧を保ちながら患者に股関節を外転させることで、多裂筋の異なる線維にアプローチします。

圧を維持した状態で、患者に股関節の外転(脚を横に開く動作)を促します。これにより、多裂筋の起始部である仙骨・腸骨後面に微細な動きが加わり、多裂筋の異なる線維へのアプローチが可能になります。股関節外転によって仙腸関節に動的なストレスが入り、静的な圧迫だけでは届かない深部の線維にまで刺激が伝わります。藤井先生はこの組み合わせ(持続圧+動的外転)が単純な静的圧迫よりも有効であると臨床的に観察しています。

手技の後、仙骨多裂筋の筋スパズムが取れてくると、腰仙部の重だるさが軽減され、回旋可動性が改善する感覚が患者に現れることがあります。ただし一度の介入で完全に解消することは少なく、両側を評価・リリースし、複数回のセッションを積み重ねることが多いと藤井先生は臨床経験から述べています。

症例の考え方とよくある質問(FAQ)

Q. 仙骨多裂筋のリリースは誰に向いていますか? ── A. 特に以下のような方に有益な可能性があります。①長時間の座位後に腰仙部に重だるさ・痛みを感じる方②回旋動作(振り返り・ゴルフのスイング・ひねりを伴う作業)で腰が「引っかかる」感じがある方③腰痛の原因として椎間板や骨の異常は画像で確認されていないが腰の調子が悪い方④仙腸関節の動きが悪いと指摘されたことがある方。逆に、強い痛み・下肢への神経症状(しびれ・脱力)を伴う場合は自己判断でのリリースより先に専門医の評価が必要です。

Q. ホットパックや電気治療で腰痛が改善しないのはなぜですか? ── A. 仙骨多裂筋のような深部筋へのアプローチとして、表面温熱療法(ホットパック)は皮膚・皮下組織への温熱効果が主であり、深部の多裂筋まで十分な温熱が到達するかどうかは解剖学的に疑問があります。また電気療法(TENS・干渉波)も、深部の特定の筋線維にピンポイントで作用させることは一般的な設定では難しいことがあります。藤井先生が指による徒手的アプローチを重視する理由の一つは、この「届きにくさ」の問題を徒手の繊細な感触と圧で補うという臨床的な観察に基づいています。ただし温熱・電気療法が全く効果なしというわけではなく、組み合わせて用いることで相乗効果が期待される場合もあります。

Q. 座位リリース中に足へしびれが出た場合はどうすればよいですか? ── A. 直ちに手技を中止してください。仙骨周辺には仙骨孔(S1〜S4)を通じた神経根があり、手技中の過度な圧迫によって一時的な神経症状が誘発されることがあります。これは手技の禁忌サインです。しびれが持続する場合は専門医(整形外科・神経内科)の診察を受けてください。また足へのしびれがすでに術前から存在する場合(脊柱管狭窄・椎間板ヘルニアによる神経根症状など)は、仙骨多裂筋リリースの適否を慎重に判断する必要があります。

Q. 治療家として、多裂筋のリリースをどう臨床に取り入れればよいですか? ── A. まず正確な触診によるランドマーク確認(棘突起とPSIS)が基本です。回旋評価での動的確認を介入前後で行うことで、客観的な変化を捉えやすくなります。リリース前後で腰椎の回旋可動域・VAS(疼痛視覚的アナログスケール)・患者の主観的感覚を記録する習慣が、手技の効果検証につながります。また、仙骨多裂筋リリースを単独で使うのではなく、腰椎の安定化運動・股関節周囲のリリースとの組み合わせ(コンビネーション)が、持続的な効果のためには重要と考えられます。なお、この手技のすべての患者への適用可能性は不明であり、個々の臨床的判断が不可欠です。

Q. セルフケアとして仙骨多裂筋のリリースはできますか? ── A. セルフで棘突起とPSIS中間を自分で押すことはある程度可能ですが、深部に圧を届かせることは自己施術では難しい場合があります。壁やフォームローラーを用いた圧迫では位置の精度が限られます。より有効なセルフケアとしては、仙骨多裂筋を間接的にゆるめる「猫牛のストレッチ」「回旋ストレッチ(supine rotation)」「股関節外転運動(サイドライイングアブダクション)」などの運動療法との組み合わせが、腰椎安定化の観点からも推奨されます。ただし腰痛が強い場合は専門家による評価が優先です。

安全・受診勧奨とまとめ

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安全マップと中止サイン ── 注意が必要な部位
後面 上殿皮神経 アプローチ範囲 中止のサイン ・強い痛み・不快感が増す・足へのしびれ・放散痛が出る・腫れ・熱感を伴う・安静時痛・夜間痛がある

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仙骨多裂筋は深部の筋ですが、ホットパックやマイクロ波では届きにくい精細な部位です。皮膚近くには上殿皮神経(黄)が走ります。過剰な圧は避け、痛みが強い・しびれが出る場合は必ず中止してください。

この記事の内容をまとめます。①仙骨多裂筋は棘突起とPSISの中間に位置する深層の安定筋で、腰椎の節間安定・回旋制御を担います。深部ゆえに表面的な温熱療法・電気療法では届きにくく、徒手アプローチが有効な可能性があります。②硬化・筋スパズムを起こすと腰仙部の重だるさ・回旋時の制限・長時間座位後の立ち上がり困難といった症状として現れることがあります(藤井先生の臨床観察)。③多裂筋機能不全と慢性腰痛の関係はSR/メタ解析レベルで支持されており(Bess 2025)、筋膜リリースが多裂筋厚を改善するRCT(Javaid 2025)・多裂筋への標的アプローチのRCT(Kużdżał 2025)・腰部筋膜性疼痛へのドライニードリングSR(Dach 2023)という周辺的なエビデンスが存在します。④動画の「棘突起・PSIS中間への持続圧迫+股関節外転」という具体的な組み合わせ手技は藤井先生の臨床経験に基づくものであり、この特定の手法を直接検証した質の高い研究は現時点では存在しません。⑤「治る」という断定はできません。改善しない・悪化する場合は医療機関へ相談してください。

参考文献(実在確認済み):① Bess S, et al. Multifidus Dysfunction and Chronic Low Back Pain: Systematic Review and Meta-analysis of the Supporting Data for Accurate Diagnosis and Successful Treatment Outcomes Associated With Restorative Neurostimulation. International journal of spine surgery. 2025. DOI: 10.14444/8814 ② Kużdżał A, et al. Impact of Intramuscular Electrical Stimulation on Multifidus Muscle Function in Chronic Low Back Pain: A Randomized Controlled Trial. Medical science monitor. 2025. DOI: 10.12659/msm.949677 ③ Javaid HMW, et al. The Effects of Joint Mobilization and Myofascial Release on Muscle Thickness in Non-Specific Low Back Pain: A Randomized Clinical Trial. Journal of clinical medicine. 2025. DOI: 10.3390/jcm14082830 ④ Dach F, Ferreira KS. Treating myofascial pain with dry needling: a systematic review for the best evidence-based practices in low back pain. Arquivos de neuro-psiquiatria. 2023. DOI: 10.1055/s-0043-1777731

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限界と注意・受診の目安

  • 「棘突起とPSIS中間への持続圧迫+股関節外転でリリースする」という藤井先生の具体的な手技は臨床経験に基づくものです。この手法を直接検証したRCT・系統的レビューは現時点では存在しません。
  • 手技中に足・下肢へのしびれ・放散痛が出た場合は直ちに中止してください。仙骨周辺の神経根(S1〜S4)への過度な刺激が生じている可能性があります。
  • 安静時・夜間に増す強い腰仙部の痛み、発熱・腫れを伴う症状、外傷後の急激な痛みは医療機関を受診してください。
  • 排尿・排便のコントロールが困難になった場合は馬尾症候群の疑いがあります。直ちに救急受診してください。
  • 本記事は医療行為の代替ではありません。症状が改善しない・悪化する場合は中止して医療機関にご相談ください。
  • 効果には個人差があります。すべての腰痛・腰仙部の症状に本アプローチが有効とは限りません。
  • 下肢静脈瘤・腰部の感染・骨粗しょう症・妊娠中・脊椎腫瘍の疑いがある方は自己判断で行わず専門家に相談してください。
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監修・参考文献

掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。

監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)

  1. [1] Bess S, Lafage V, Lorio M, Diebo BG, Schwab F.2025).「Multifidus Dysfunction and Chronic Low Back Pain: Systematic Review and Meta-analysis of the Supporting Data for Accurate Diagnosis and Successful Treatment Outcomes Associated With Restorative Neurostimulation」. International journal of spine surgery.
  2. [2] Kużdżał A, Olaniszyn G, Clemente FM, Piwowar R, Smoter M, Trybulski R.2025).「Impact of Intramuscular Electrical Stimulation on Multifidus Muscle Function in Chronic Low Back Pain: A Randomized Controlled Trial」. Medical science monitor : international medical journal of experimental and clinical research.
  3. [3] Javaid HMW, Rehman SSU, Kashif M, Bashir MS, Zia W.2025).「The Effects of Joint Mobilization and Myofascial Release on Muscle Thickness in Non-Specific Low Back Pain: A Randomized Clinical Trial」. Journal of clinical medicine.
  4. [4] Dach F, Ferreira KS.2023).「Treating myofascial pain with dry needling: a systematic review for the best evidence-based practices in low back pain」. Arquivos de neuro-psiquiatria.