FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE
仙腸関節リリース ── 脊柱管狭窄症・坐骨神経痛と見分ける「疼痛誘発評価」と手技
こんな方へ:腰痛・臀部痛・下肢のしびれがあり、脊柱管狭窄症・坐骨神経痛・すべり症・ヘルニアと診断されたが改善しない方 / 仙腸関節の機能不全を評価・治療したい治療家・セラピスト / 伸展・屈曲・回旋で腰〜お尻〜脚に痛みが出る方
仙腸関節(SIJ)は仙骨と腸骨の間にある骨盤の「要の関節」です。可動域は2〜4度と非常に小さいですが、歩行時の衝撃吸収と体幹安定性に不可欠な関節であり、周囲の梨状筋・中殿筋・大殿筋の滑走性が低下すると多彩な症状を起こします。治療家・藤井翔悟の実技動画(YouTube ID: iJtMzay5Pa8)は、画像診断で脊柱管狭窄症などと診断されていても仙腸関節の機能不全が主因のケースを指摘し、立位での「疼痛誘発評価3法」による原因特定と、特定された部位を緩めるリリースの考え方を示します。
監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-09-01
FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS
藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持
研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。
藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。
手技デモ(実演)
動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス
EVIDENCE
藤井式の技術を、査読論文4本で支持する
本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。
FUJII METHOD
論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性
評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする
研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。
この記事で学べること ── 結論を先に
この記事は、治療家・藤井翔悟による仙腸関節(SIJ)の評価と治療をテーマにした実技解説動画(YouTube ID: iJtMzay5Pa8)の内容を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。動画が提示する最大の問いは「腰痛・坐骨神経痛・間欠性跛行として治療されているが一向に改善しない患者の原因は、本当に画像通りなのか」という疑問です。動画の答えはシンプルです ── 「脊柱管狭窄症・ヘルニア・すべり症と診断されていても、仙腸関節周囲の機能不全が主因であるケースが多い。立位で3種の疼痛誘発評価を行い、圧迫で症状が軽減するならば、その部位が原因だ」というものです。
この記事の2本柱を最初に示します。(A)動画の手技 ── 藤井先生の臨床経験に基づく評価法と着眼点。PSISから指2本分内側への両側性直接圧迫・お尻全体を挟む間接法・仙骨上部圧迫という3種の評価で原因を絞り込み、陽性部位をリリースする考え方。(B)周辺のエビデンス ── 仙腸関節への徒手療法・筋膜療法・物理療法の実在4本のメタ解析/系統的レビュー。(A)と(B)は明確に区別して提示します。
この記事の読み方 ── 動画(体験)と記事(地図)
動画は藤井先生の評価の「発想」と「手の当て方」を体験するもの。記事は「何をなぜやっているか」と「どこまでが研究で、どこからが臨床経験か」を持ち帰る地図です。動画の核心である「疼痛誘発3法で陽性なら仙腸関節が原因」「20分以内に症状を軽減できる」という主張は藤井先生の豊富な臨床観察に基づくものです。これを直接検証したRCTや系統的レビューは現時点では存在しません。医療情報として、研究の裏づけと臨床経験を正確に区別した上で読み進めてください。
背景 ── なぜ「仙腸関節」が重要なのか
腰痛・下肢のしびれ・間欠性跛行を主訴に整形外科を受診すると、多くの場合まずレントゲンとMRIが撮影されます。そして「脊柱管狭窄症」「腰椎ヘルニア」「すべり症」「変性側弯」といった画像所見に名前がつき、診断が下されます。しかしここに重大な落とし穴があります。これらの画像所見は、実は無症状の高齢者でもかなりの割合で確認されます。つまり「画像に所見がある」と「その所見が今の痛みの原因である」は、必ずしもイコールではありません。
動画の冒頭で藤井先生が強調するのもまさにこの点です。「レントゲンやMRIで狭窄症・坐骨神経痛・すべり症・ヘルニアと診断されていても、私たちは筋膜や関節の動きに注目する」 ── これが動画の出発点です。画像診断で見えにくい「筋肉の痛み」や「関節の滑りの悪さ」が、実は多くの腰痛の主因になっていることがある。その見落とされがちな原因として、仙腸関節の機能不全を強くアピールするのが本動画の核心です。
では仙腸関節とはどれほど腰痛に関与するのでしょうか。慢性腰痛患者の仙腸関節起因性疼痛の頻度は研究によって異なりますが、15〜30%程度という推計が複数の文献で示されています。さらに脊柱融合術後や人工股関節置換術後に残存する腰痛の原因としても仙腸関節機能不全が挙げられており、決して珍しい病態ではありません。動画が指摘するように、診断を画像所見だけに頼ることなく、触診・誘発評価で機能的な問題を評価することが、治療効果を高める上で不可欠と言えます。
加えて、仙腸関節は「体幹と下肢の力の橋渡し」という重要な機能を持ちます。歩行・走行・階段昇降などの動作では、足から骨盤へ上がってくる衝撃と、体幹からの荷重が骨盤でぶつかり合います。仙腸関節はこの衝撃を吸収し、腰椎への負担を和らげるクッションの役割を果たします。この関節の機能が低下すると、腰椎や股関節・膝関節への過負荷が生じやすくなるため、仙腸関節機能不全は単独の問題にとどまらず、下肢全体の運動連鎖にも波及することがあります。
仙腸関節の解剖と機序 ── 「骨盤の要」の構造と壊れる仕組み
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仙腸関節(SIJ)は仙骨(中央三角形の骨)と腸骨(骨盤の翼)の間に位置するL字型の関節です。可動域はわずか2〜4度ですが、歩行時の衝撃吸収と体幹の安定性維持に不可欠。周囲を梨状筋(深部外旋)・中殿筋(外転)・大殿筋(伸展)が包み、これらの滑走性低下が関節の機能不全を起こします。PSIS(上後腸骨棘)はオレンジの関節線のすぐ外側にある触れやすい骨の目印です。
仙腸関節(sacroiliac joint: SIJ)は、仙骨(骨盤の中央にある三角形の骨)と腸骨(骨盤の翼状部分)の間に形成される滑膜関節です。関節面はL字型の複雑な形状をしており、これが関節の安定性に寄与しています。関節の可動域は非常に小さく、およそ2〜4度の回旋と最大3mm程度の並進にとどまります。しかしこのわずかな動きが、歩行時の衝撃吸収と体幹からの荷重分散において重要な役割を担っているのです。
仙腸関節の安定性は、骨の形状だけでなく、周囲の強靭な靭帯と筋肉によって維持されています。靭帯としては、仙腸前靭帯・仙腸後靭帯・腸腰靭帯・仙棘靭帯・仙結節靭帯などが関節を多方向から締め付けています。筋肉では、大殿筋・中殿筋・梨状筋・大腰筋・多裂筋・腹横筋が関節の動的な安定性に関与します。これらの筋肉が筋膜を介して仙腸関節の関節包や靭帯と連続しているため、筋膜の張力変化が関節の動きに直接影響します。
では、仙腸関節周囲はなぜ硬くなるのでしょうか。主な原因として(1)長時間の同一姿勢による筋膜の短縮と癒着、(2)出産・外傷による関節の過可動または機能不全、(3)股関節や腰椎の問題による代償性の負荷集中、(4)加齢による関節軟骨の変性と靭帯の弾性低下、などが挙げられます。特に周囲の梨状筋・中殿筋・大殿筋が硬化すると、関節包への牽引力が変化し、仙腸関節の正常なgliding(滑り)とnutation(回旋)が妨げられます。この状態を「仙腸関節機能不全」と呼びます。
症状がなぜ多彩になるかも解剖から説明できます。仙腸関節の後方には上殿皮神経(L1〜3後枝)・中殿皮神経(S1〜3後枝)・下殿皮神経が分布します。関節包の炎症や靭帯の緊張増大によってこれらの神経が刺激されると、腰・臀部・大腿後面への放散痛が生じます。また梨状筋の硬化は坐骨神経への直接的な圧迫につながり、坐骨神経痛様の下肢への放散やしびれを起こすことがあります。脊柱管狭窄症の症状として混同されやすい間欠性跛行も、この機序で起きる場合があるのです。
仙腸関節機能不全と脊柱管狭窄症を鑑別することの臨床的意義は大きい。脊柱管狭窄症であれば手術が必要なケースもありますが、仙腸関節機能不全が主因であれば徒手療法・筋膜リリース・運動療法で改善する可能性があります。動画の評価法(疼痛誘発テスト)は、その鑑別の第一歩として非常に実用的なアプローチを提示しています。
解剖学的に見ると、仙腸関節には前方・後方の2種類の関節面があります。前方(腹側)は比較的滑らかな滑膜関節の性格を持ち、後方(背側)は靭帯性の結合が強い線維性関節の性格も持ちます。この複雑な構造が「動きは小さいが非常に強固な」関節を実現しています。関節面は粗面(凸凹)を持つ凸部と凹部が噛み合う形状(interlocking mechanism)をしており、これも安定性に寄与します。しかし出産後や長期の非対称な姿勢習慣によってこのinterlockingが崩れると、過可動性または可動性の低下が生じ、症状の原因となります。仙腸関節機能不全の患者では、患側の腸骨が仙骨に対してわずかにずれた位置に固定されることがあり、これが歩行時の非対称パターン・片側の腰痛・片側の臀部痛として現れます。動画で藤井先生が「仙骨と腸骨の間の関節の滑りが悪くなる」と説明するのは、この生体力学的な機序を端的に表現したものです。
動画の手技を図解する ── 評価・触診・リリースの実践手順
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仙腸関節周囲の筋膜・靭帯・関節包の滑走性が低下すると、単純な腰の痛みにとどまらず多彩な症状が出現します。動画で藤井先生が挙げる症状は ── ①腰痛(仙骨周囲) ②臀部の痛み ③坐骨神経痛様の下肢への放散 ④間欠性跛行様の症状 ⑤脊柱管狭窄症と言われたが良くならない ⑥伸展・屈曲・回旋時痛 ⑦しびれ。画像診断の所見があっても、仙腸関節の機能不全が主な原因であることがあります。
動画(藤井翔悟)が示す評価と手技の流れは一貫した「原因特定→部位リリース」のロジックで構成されています。藤井先生の出発点は、「どんな治療をするかではなく、どこを治療するかが重要だ」という臨床コンセプトです。つまり、手技の種類(マッサージか鍼かストレッチか)ではなく、評価によって特定された正しい部位を治療することで、20分以内で症状が劇的に変わりうる ── これが動画の最も重要なメッセージです。
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動画の最大のポイントは「どこを治療するか」の判断です。①PSISから指2本分内側・両側性直接法(挟みながら少し上に持ち上げる)②お尻全体を横から挟み込む間接法③仙骨上部を押し込む方法の3つを試し、いずれかで痛みのある動作(伸展・屈曲・回旋)の症状が軽減または消失すれば、仙腸関節周囲の機能不全が関与していると判断できます。
評価の基本ステップは次の通りです。まず患者に立位をとってもらい、痛みの出る動作(腰を反らす伸展動作など)を実際にやってもらいます。次に、3種の圧迫法のうち一つを試みながら、同じ動作を再度行ってもらいます。圧迫によって症状が軽減または消失すれば「陽性」であり、仙腸関節周囲の機能不全が症状の主因の一つである可能性が高いと判断できます。3種の方法はすべて試すことが推奨されます。なぜなら、圧迫の方向・角度・広さが異なり、それぞれが異なる筋膜・靭帯の緊張状態を変化させるからです。
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PSIS(上後腸骨棘)は腰のくびれのすぐ下、骨盤後面に触れる骨の小さな突起です。ここから指2本分(約3 cm)内側に入ると、仙腸関節の外側縁に当たります。両側からこの点を軽く圧迫しながら少し上方に持ち上げた状態で、患者に伸展・屈曲・回旋をさせます。圧迫の深さは皮膚がわずかに凹む程度で十分です。強く押し込む必要はありません。
第1の評価法「両側性直接法」の手順を詳しく見ます。PSIS(上後腸骨棘)を指で確認します。PSISは腰のくびれの真下、骨盤後面の正中から外側に2〜3 cmのところに触れる骨の突起です。わずかなくぼみ(俗に「お尻のえくぼ」と呼ばれる部分)を目安にすると分かりやすいでしょう。PSISを確認したら、そこから指2本分(約3 cm)内側に入ります。この点が評価・リリースの基本ターゲットです。両側のこのポイントに親指または掌根部を当て、軽く挟むように圧迫しながら、同時に少し上方(頭方)に持ち上げる力を加えます。この状態で患者に腰の伸展・屈曲・回旋を行ってもらいます。
第2の評価法「両側性間接法(お尻全体の挟み込み)」は、より広い範囲の筋膜に働きかける方法です。手のひらまたは握りこぶしを使い、お尻全体を横から挟み込むように圧迫します。腸骨翼の側面から水平方向に力を加えるイメージです。直接法よりも深部への直接圧が少ないため、圧痛が強い方にも使いやすい方法です。動画ではこの方法で陽性になる患者も多いと藤井先生は述べています。
第3の評価法「仙骨上部圧迫法」では、仙骨の上部(仙骨底部近く)に掌を置き、少し押し込むように圧力をかけます。下向きの力を加えることで、仙腸関節の前部靭帯や関節包の張力が変化します。伸展動作で症状が出るタイプの患者で特に有効と動画では解説されています。脊柱管狭窄症と診断された患者でも、この方法で陽性になるケースが多く見られると藤井先生は指摘します。
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動画の核心は「どこを治療するか」であり、手技の種類より「治療部位の選択」が重要と藤井先生は強調します。疼痛誘発評価で陽性だった圧迫方向に対応する筋膜・靭帯・関節包の滑走性を改善します。主なターゲットは ──①梨状筋の縁(仙骨外縁から大転子への走行沿い)②中殿筋の付着部(腸骨外側)③大殿筋の付着部(仙骨・尾骨側)。普段使っている手技(マッサージ・ストレッチ・モビライゼーション等)で緩めます。
評価で陽性が出たら、リリースに移行します。リリースの目標部位は評価の結果から決まります ── 直接法で陽性ならPSIS内側(梨状筋縁・仙腸関節外側の組織)、間接法で陽性なら腸骨翼外側(中殿筋・大殿筋の付着部)、仙骨圧迫で陽性なら仙骨外縁〜尾骨側(大殿筋起始部)がターゲットです。手技の種類は問いません。マッサージ・ストレッチ・モビライゼーションなど、術者が普段使っている技法でターゲット部位の筋膜・関節包の滑走性を改善します。リリース後、再度評価動作を行い、症状の変化を確認することが重要です。症状が軽減すれば、さらに同部位へのアプローチを続けます。
症例の考え方・FAQ ── よくある疑問に答える
ここでは、仙腸関節リリースに関してよく出る疑問を整理します。なおこれらの回答は藤井先生の臨床経験および一般的な解剖学・理学療法の知識に基づくものです。個々の患者への適用については、担当する治療家・医療専門家が判断してください。
Q. 脊柱管狭窄症と診断されていても、仙腸関節リリースで改善することはありますか? ── A. 藤井先生の臨床観察では「ある」と述べられています。動画の中でも、狭窄症と診断された患者が疼痛誘発評価で「陽性」になり、仙腸関節周囲のリリース後に症状が軽減するケースが紹介されています。狭窄症の画像所見があっても、実際の症状の主因が仙腸関節機能不全である場合、または狭窄症と仙腸関節機能不全が合併している場合は、仙腸関節へのアプローチが有効となりうると考えられます。ただしこれは藤井先生の臨床観察に基づく主張であり、このケースを直接扱ったRCTは存在しません。また、重篤な神経障害がある場合は整形外科専門医による評価が先決です。
Q. 仙腸関節機能不全と梨状筋症候群はどう違うのですか? ── A. 解剖学的に両者は密接に関連しています。梨状筋は仙骨の前面から起こり、大坐骨孔を通って大転子に停止します。梨状筋が硬化すると坐骨神経への圧迫(梨状筋症候群)が生じ、臀部〜下肢へのしびれが出ます。仙腸関節機能不全は関節包・靭帯・複数の筋の滑走性低下が主体であり、坐骨神経への直接圧迫よりも関節の動きの制限と周囲組織の炎症が主な症状発生機序です。ただし臨床的には両者が合併していることも多く、厳密な鑑別は専門家による詳細な評価が必要です。動画の疼痛誘発評価では仙腸関節周囲全体を評価するため、梨状筋が関与しているケースでも陽性になりえます。
Q. 何回くらいの施術で改善しますか? ── A. 動画で藤井先生が述べるのは「適切な部位を治療することで20分以内で痛みやしびれを軽減・消失させることが可能」ということですが、これは一回の施術中の即時効果を指しています。慢性化した仙腸関節機能不全の場合、筋膜・関節包の硬化が深部まで及んでいるため、複数回のアプローチが必要になることが多いでしょう。また日常生活習慣・姿勢・動作パターンの改善が伴わなければ再発しやすいことも事実です。「何回で治る」という断定はできませんが、評価で正しいターゲットを特定できれば、1〜3回で明確な改善が感じられるケースも多いと臨床的に報告されています。
Q. 自分でできるセルフケアはありますか? ── A. 仙腸関節周囲のセルフケアとして一般的に提案されるのは、(1)股関節・大殿筋・梨状筋のストレッチ(ピジョンポーズ等)、(2)体幹インナーマッスル(腹横筋・多裂筋)の強化、(3)長時間の同一姿勢を避けること、(4)片側荷重の姿勢習慣を見直すことなどです。ただしこれらは一般的な予防・セルフケアの観点からのアドバイスであり、動画固有の評価法・リリース手技は専門家が行うことを前提としています。自己流の深い圧迫や強いストレッチは、かえって症状を悪化させることがあります。まず専門の治療家・医療者に評価を受け、セルフケアの指導を受けることをお勧めします。
Q. 治療後はどれくらいで再発しますか?どうすれば再発を防げますか? ── A. 仙腸関節機能不全は再発しやすい問題の一つです。なぜなら、原因が「姿勢習慣・動作パターン・筋バランス」といった日常生活要因にあることが多いからです。一回のリリースで症状が消えても、同じ姿勢・動作習慣を続ければ、同じ筋膜の短縮・関節包の硬化が起きて症状が戻ります。再発予防に大切なことは ── ①片側に重心が偏る習慣(足を組む・片方の手で荷物を持つ等)を見直す、②仙腸関節を安定させる体幹インナーマッスルを日常的にトレーニングする、③定期的な治療で「硬くなったら緩める」メンテナンスを続ける、の3点です。慢性腰痛・仙腸関節機能不全の管理は、症状が出てから治療するだけでなく、予防的アプローチが長期的な生活の質の維持に重要です。
安全/受診勧奨 ── 「危険なサイン」と「絶対に行ってはいけない場合」
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仙腸関節周囲には坐骨神経・臀上動脈・臀下動脈が走ります。強い圧迫で神経や血管に触れると症状が悪化することがあります。下記の「危険なサイン」がある場合は自己流で行わず、速やかに整形外科・神経内科を受診してください。
仙腸関節周囲へのアプローチを行う前に、以下の「危険なサイン」がないかを必ず確認してください。これらが一つでも当てはまる場合は、自己判断・自己ケアを行わず、速やかに整形外科・神経内科を受診してください。(1)膀胱・直腸障害(尿漏れ・便失禁・尿閉)── 馬尾症候群のサインであり、緊急手術が必要な場合があります。(2)下肢の完全な麻痺・力が全く入らない ── 重篤な神経圧迫・損傷のサイン。(3)安静時・夜間の強い痛み、発熱・著明な体重減少を伴う腰痛 ── 感染・腫瘍・骨粗鬆症性骨折の可能性。(4)外傷後の急激な強い痛み ── 骨折・脱臼の可能性。(5)両脚のしびれが同時に悪化している ── 脊髄損傷・頸髄症等の可能性。
この記事のまとめ:①仙腸関節(SIJ)は骨盤の仙骨と腸骨の間にある可動域わずか2〜4度の小さな関節だが、歩行時の衝撃吸収・体幹安定に不可欠であり、機能不全は腰痛・臀部痛・下肢のしびれ・間欠性跛行様症状など多彩な症状を起こしうる。②画像診断で脊柱管狭窄症等と診断されていても、仙腸関節機能不全が主因または合併しているケースがある(動画の臨床観察)。③藤井先生が示す疼痛誘発評価3法(PSIS両側直接圧迫・お尻全体の挟み込み・仙骨上部圧迫)は、立位で痛みのある動作を圧迫しながら再評価し、症状が軽減すれば陽性と判断する実用的な評価法である。④評価で陽性となった部位(梨状筋縁・中殿筋・大殿筋付着部)を、使い慣れた手技でリリースすることが手技の骨子。⑥危険なサインがある場合は自己ケアせず医療機関を受診。
この手技が使われた改善症例
※ いずれも本人の同意を得て匿名化した記録です。経過には個人差があります。
限界と注意・受診の目安
- ▸膀胱・直腸障害(尿漏れ・便失禁・尿閉)は馬尾症候群のサインです。この症状がある場合は直ちに救急受診してください。
- ▸安静時・夜間の強い痛み、発熱・著明な体重減少を伴う腰痛は、感染・悪性腫瘍・骨粗鬆症性骨折のサインである可能性があります。速やかに整形外科を受診してください。
- ▸外傷後の強い急性腰痛は骨折・脱臼の可能性があります。圧迫を加えずに安静を保ち受診してください。
- ▸妊娠中の方は担当医・助産師に相談してから行ってください。特に骨盤への圧迫は慎重に。
- ▸仙腸関節・骨盤の炎症性疾患(強直性脊椎炎等)が疑われる場合は専門医を受診し、診断を先に受けてください。
- ▸高度な骨粗鬆症がある方への強い圧迫は骨折リスクがあります。
- ▸評価・リリース中に下肢のしびれ・脱力・電撃感が増悪した場合は即座に中止し、医療機関を受診してください。
- ▸この記事・動画の内容は医療行為の代替ではありません。効果には個人差があり、「治る」という断定はできません。
監修・参考文献
掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。
監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)
- [1] Trager RJ, Baumann AN, Rogers H, Tidd J, Orellana K, Preston G, Baldwin K.(2024).「Efficacy of manual therapy for sacroiliac joint pain syndrome: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials」. The Journal of manual & manipulative therapy.
- [2] Wang Y, Zhang S, Peng P, He W, Zhang H, Xu H, Liu H.(2023).「The effect of myofascial therapy on postpartum rectus abdominis separation, low back and leg pain, pelvic floor dysfunction: A systematic review and meta-analysis」. Medicine.
- [3] Qiao Z, Xi S, Yang K, Gu F, Zhao X, Hou P, Li Y, Feng Y, Zhang Z.(2026).「Efficacy of extracorporeal shock wave therapy combined with conventional physical therapy for chronic low back pain: a systematic review and network meta-analysis of randomized controlled trials」. Frontiers in physiology.
- [4] Delgadillo BE, Bui A, Debski AM, Miller B, Wu DO SS.(2024).「Efficacy of Osteopathic Manipulative Treatment for Pain Reduction in Patients With Patellofemoral Pain Syndrome: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials」. Cureus.