FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE
肩甲骨リリース ── 「腰痛の原因が肩甲骨にあるか」を見極める評価法と壁を使ったセルフケア
こんな方へ:整形外科・ペインクリニックで改善されない6ヶ月以上の腰痛がある / 腰だけ治療しても足のしびれが取れない / 肩こり・首の痛みと腰痛が同時にある / 肩甲骨まわりが常に張っている感じがある / 治療家・セラピストとして腰痛の原因評価の視点を広げたい
肩甲骨(けんこうこつ)は胸郭の後側面に位置する三角形の扁平骨で、上腕骨・鎖骨とともに肩複合体を構成します。整形外科で腰椎疾患が除外されても改善しない腰痛の一部に、肩甲骨 ── 特にその最下端「下角(かかく)」から内側(脊柱側)に走る「内側縁(ないそくえん)」の筋膜硬化 ── が関与していることがある、というのが藤井翔悟先生の臨床観察です。動画(YouTube ID: AEhNnX9X_WY)は、①肩甲骨の下角内側縁を壁のコーナーに当てながら腕を回す「セルフリリース」、②その部位を圧迫しながら腰をひねって痛みが変わるかを確認する「診断的評価テスト」、の2本柱で構成されます。
監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-09-07
FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS
藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持
研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。
藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。
手技デモ(実演)
動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス
EVIDENCE
藤井式の技術を、査読論文5本で支持する
本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文5本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。
FUJII METHOD
論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性
評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする
研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。
この記事で学べること/結論を先に
この記事は、治療家・藤井翔悟による動画(YouTube ID: AEhNnX9X_WY)の内容を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。タイトルになっている問いは「肩甲骨が原因で腰痛になっているかどうか」。これは多くの人にとって意外に感じられるかもしれません。腰痛の原因といえば腰椎・椎間板・仙腸関節・股関節など腰まわりの構造がまず思い浮かびます。しかし藤井先生が動画で提示するのは「整形外科やペインクリニックで改善されない6ヶ月以上続く腰痛に、肩甲骨が関与していることがある」という臨床観察です。この発想は、10月25日発売の書籍「8中学」の内容の一部でもあり、通常の腰痛診療の盲点になりやすいアプローチです。
この記事の2本柱を最初に明確にします。(A)動画の手技 = 藤井先生の臨床経験に基づく評価・リリース法。肩甲骨の下角の内側縁を壁のコーナーで圧迫しながら腕を回す「セルフリリース」と、「肩甲骨を圧迫しながら腰をひねって痛みが変わるか確認する」という評価テスト。(B)周辺のエビデンス = マイオファシャルペイン症候群(MPS)への徒手療法・上位交差症候群(UCS)への介入・上部僧帽筋トリガーポイントなどを扱った実在5本の論文。(A)と(B)は明確に区別して提示します。
この記事の読み方 ── 動画(体験)と記事(地図)
動画は藤井先生の触診・評価・リリースを「体験」するもの。記事は「いま何をなぜやっているか」と「どこまでが研究で、どこからが臨床経験か」を持ち帰る地図です。この動画の核心である「肩甲骨の下角を圧迫しながら腰をひねったとき腰の痛みが変わるかどうかを見る」評価法、および「肩甲骨の硬さが腰痛の原因になっていることがある」という観察は、藤井先生の豊富な臨床観察に基づくものです。この評価法・手技を直接検証したRCT(ランダム化比較試験)や系統的レビューは現時点では存在しません。医療情報として、研究の裏づけと臨床経験を正確に区別した上で読み進めてください。
背景 ── なぜ腰痛に「肩甲骨」という視点が必要なのか
腰痛は日本人が最も多く抱える運動器の不調のひとつで、その生涯有病率は50〜70%とも言われます。整形外科を受診してX線・MRIを撮影し、腰椎椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・変形性腰椎症などの器質的診断を受けた上で治療を行っても、なかなか改善しない「難治性の慢性腰痛」は臨床上の大きな問題です。藤井先生が動画の冒頭で対象として挙げているのは「整形外科やペインクリニックで改善されない、半年以上続く腰痛」を抱える人々です。このような腰痛は、投薬・注射・ブロック療法では必ずしも原因が取り除けないケースがあり、身体の別の場所に問題が潜んでいることがあります。
従来の腰痛診療では、腰椎周辺の構造(椎間板・椎間関節・仙腸関節・腸腰筋)の評価が中心です。しかし近年の臨床研究が明らかにしているのは、腰痛の60〜80%が「特異的原因を同定できない非特異的腰痛(non-specific low back pain)」であるという事実です。これは言い換えれば、X線やMRIで見える構造的異常だけでは腰痛の全てを説明できないことを意味します。そのため、整形外科的アプローチの外にある「姿勢・筋膜・運動連鎖」という観点が臨床的に注目されています。藤井先生のアプローチはまさにこの立場から、「腰の外」にある肩甲骨を評価の対象として持ち込む試みです。
肩甲骨と腰痛の関係を考えるとき、重要な概念が「上位交差症候群(Upper Crossed Syndrome: UCS)」です。UCSとは、デスクワークやスマートフォン使用が多い現代人に多く見られる筋の不均衡パターンで、前胸部筋(大胸筋・小胸筋)と首後ろ側の筋(上部僧帽筋・肩甲挙筋)が短縮・緊張する一方、深部頸屈筋群と肩甲骨安定筋(下部僧帽筋・前鋸筋・菱形筋)が弱化・延伸するパターンです。この筋の不均衡は頭部前方変位姿勢と肩甲骨の外転・前傾を引き起こし、肩甲骨の位置が崩れると胸椎・腰椎の姿勢にも影響が波及し、腰への負担が増大する可能性があります。
さらに筋膜の観点から見ると、肩甲骨周囲の筋膜(僧帽筋・菱形筋・前鋸筋を包む筋膜)は、胸腰筋膜(thoracolumbar fascia)を通じて腰部の筋膜と連続的につながっています。胸腰筋膜は腰背部全体を包む強靭な結合組織で、多裂筋・腸腰筋・腹横筋の腱膜として機能するとともに、広背筋の腱膜を介して肩甲骨下角付近とつながります。この筋膜の連続性が、肩甲骨周囲の緊張が腰部に伝わるメカニズムの解剖学的背景として考えられます。ただしこれはあくまで解剖学的な連続性であり、「肩甲骨が硬い→腰痛が起きる」という因果関係を直接証明したものではありません。
解剖と機序 ── 肩甲骨の構造と「なぜ下角が重要か」
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右肩甲骨を背面から見た図。肩甲骨の最下端「下角(かかく)」から内側(脊柱方向)にのびる縁が「内側縁(ないそくえん)」で、藤井先生がリリースの標的とするポイントです(★)。下角周辺には僧帽筋下部・菱形筋(大・小)・前鋸筋が合流します。この交差点が硬くなることで肩甲骨の滑走性が低下し、遠隔の症状(肩こり・腰痛)へ波及しうると藤井先生は説明します。
肩甲骨(scapula)は胸郭の後側面に位置する三角形の扁平骨で、鎖骨・上腕骨とともに肩複合体を構成します。骨としての最大の特徴は「肋骨の上を滑走する」という独特の機能で、肩甲胸郭関節(scapulothoracic articulation)と呼ばれる「真の関節ではない滑走面」を持ちます。この滑走面によって、腕を挙げるたびに肩甲骨は上方回旋・傾斜・外転という複合的な動きを行い、上腕骨頭が肩峰に衝突しないよう機能します。肩甲骨の主な骨性の目印は、最上部内側の「上角(じょうかく)」、最下端の「下角(かかく)」、内側縁(脊柱側)・外側縁、後面を横切る骨性隆起「肩甲骨棘(けんこうきょく)」、その外端の膨らみ「肩峰(けんぽう)」です。
動画のリリースターゲットは「肩甲骨の下角の内側縁」です。下角はTh7〜Th8(第7〜第8胸椎)の高さに相当し、肩甲骨全体の中で最も下方にある頂点です。内側縁は下角から上方に向かって走る縁で、脊柱の棘突起から4〜7cmほど外側を走ります。この縁に沿って、大菱形筋(だいりょうけいきん)が第2〜第5胸椎棘突起から付着し、小菱形筋が第7頸椎〜第1胸椎にかけて付着します。また下角を中心として、僧帽筋の下部線維(下部僧帽筋)が胸椎棘突起から扇状に停止し、前鋸筋(ぜんきょきん)が第4〜第9肋骨から起こって内側縁の前面全体に停止します。これらの筋が合流する「交差点」がまさに下角です。
下部僧帽筋は肩甲骨を内転・下制し、腕を挙げる際の肩甲骨の上方回旋にも寄与します。前鋸筋は肩甲骨を前方に押しつけ「翼状肩甲(よくじょうけんこう)」を防ぐとともに、腕の挙上に伴う肩甲骨の上方回旋・外転を担います。菱形筋は肩甲骨を内転・下方回旋させ、姿勢維持のために常時活動しています。UCSではまさにこれらの肩甲骨安定筋が弱化・延伸し、肩甲骨が適切な位置に保てなくなります。その結果、肩甲骨は外転・前傾し、胸郭上での滑走が制限され、下角の内側縁に局所的な筋膜の硬化(筋硬結・トリガーポイント)が形成されやすくなります。
肩甲骨の滑走性が低下すると、腕の挙上・回旋といった日常動作のたびに、本来肩甲骨が担うべき動きを胸椎が代償しなければなりません。胸椎の過剰な代償は胸腰椎移行部に負担を集中させ、腰部の筋膜・関節への慢性的なストレスの一因となりうると考えられます。また広背筋は上腕骨に停止し、腸骨稜・仙骨・胸腰筋膜を経由して腰背部と連続するため、肩甲骨周囲の緊張が広背筋を通じて腰部筋膜緊張を増大させる可能性もあります。ただしこれらはあくまで解剖学的連続性・理論的推論であり、「肩甲骨の硬さが腰痛を起こす」という直接的な因果関係を証明した研究は現時点では存在しません。
藤井先生が「肩甲骨の中で唯一、指が侵入できる場所が下角だ」と強調するのは解剖学的に根拠があります。肩甲骨の本体は肋骨面に密着していますが、下角の先端だけがわずかに浮いており、ここから肩甲骨と肋骨の間のスペース(肩甲胸郭スペース)に指先・器具・壁のコーナーを差し込むことができます。このスペースに圧を入れることで、下角周囲に付着する菱形筋・前鋸筋・僧帽筋下部の筋膜に直接アプローチできます。壁のコーナーを使ったセルフケアはこの解剖学的「入り口」を活用した実用的な手技です。図1で解剖を確認しながら、自分の肩甲骨下角の位置を把握することが手技の精度を高める第一歩です。
動画の手技を図解する ── 触診・評価・リリースの手順
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壁のコーナーに肩甲骨の下角内側縁を押し当て、腕を大きく10回回す。左右で腕の長さ・動きやすさ・肩の軽さを比較する。腰痛がある人はこの動作で腰痛の変化も確認する ── 症状が変わった側が、肩甲骨が関与している可能性がある側。
(図3)評価・リリースの出発点は「肩甲骨の下角の内側縁」の場所を正確に把握することです。下角の位置を自分で確認する方法:まず対側の手で肩甲骨を外側から触れ、一番下のとがった部分(下角)を見つけます。下角はTh7〜Th8(第7〜8胸椎)の高さに相当し、肩甲骨の中で最も明確に触れやすい部分です。次にその内側(脊柱方向)へ向かう縁が内側縁で、ここに菱形筋・前鋸筋の停止部があります。自分で触るのが難しい場合は、家族やパートナーに確認してもらい、場所を体で覚えてから実施してください。図3は壁のコーナーに肩甲骨下角を当てながら腕を回す評価・リリースの体勢を示しています。
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壁の出っ張り(ドアの角・柱の角等)に肩甲骨の下角内側縁を当て、「痛気持ちいい」程度(10段階の7〜8)の圧をかけながら腕を大きく10回回す。息を吐きながら行う。左右両方実施する。自分では見えない場所なので、一度家族に場所を確認してもらうか、強く当てて場所を覚えてから実施する。
(図4)リリースの手順は明快です。壁のコーナー ── ドアの角、廊下の角、柱の出っ張りなど ── を探し、肩甲骨の下角の内側縁をその角に当てます。圧の強さは10段階評価で「7〜8」程度、「痛いけれど気持ちいい」と感じる強さを目安とします。この圧を維持したまま、腕を大きく円を描くように10回回します。藤井先生は「腕を大きく回す」と説明しており、腕の回転によって肩甲骨が動き、下角が壁の角にこすれるような刺激が入ります。呼吸は吐きながら行うと組織がゆるみやすく効果的です。圧を当てている間に痛みが強くなりすぎる場合は、圧を弱めるかいったん中止してください。左右の肩甲骨について、それぞれ同じ手順を行います。
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他動法:施術者が患者の肩甲骨下角内側縁に母指を当て、前方に押し込みながら、患者に腰を左右にひねってもらう。腰の痛みや足のしびれが軽減すれば、肩甲骨がその症状の一因である可能性が高い。自動法では自分の拳を下角に当てながら行う。左右両側で評価する。
(図5)動画のもう一つの核心が「腰痛の原因が肩甲骨かどうかを見極める評価テスト」です。他動法(施術者が行う場合):患者が立位または座位で、施術者が患者の肩甲骨の下角内側縁に母指を当てます。骨を後ろから前(肋骨側)へ押し込む方向に圧を入れながら、患者に腰を左右にひねってもらいます。施術者は同時に患者の肩を内側に押し込むように補助することもできます。このとき「腰の痛みが軽くなった」「足のしびれが和らいだ」という変化が現れた場合、その患者の症状に肩甲骨の硬さが関与していると判断できます。自動法(一人で行う場合):自分の拳を下角に当てながら、腰を左右にひねったり前屈・後屈したりして、痛みの変化を確認します。
重要なのは「左右両側で評価を行う」ことです。人間の身体は左右非対称に使われることが多く、特定の側の肩甲骨がより硬くなっていることはよくあります。評価テストで一方の肩甲骨を圧迫したときに腰の痛みが変化した場合は、その側の肩甲骨が症状に関与している可能性が高く、そちら側のリリースを重点的に行うことが推奨されます。また評価はリリース前後で繰り返し行うことで、介入の即時効果を確認できます。リリース後に再度同じ評価テストを行い、症状の変化(腰の痛みが軽減した・体の動かしやすさが改善した等)を確認することが、このアプローチの重要なステップです。
症例の考え方・FAQ ── よくある疑問に答える
Q. 肩甲骨が腰痛の原因になるというのは本当ですか?動画で藤井先生が示すのは「整形外科・ペインクリニックで改善されない6ヶ月以上続く腰痛」の場合に、肩甲骨の硬さが関与していることがあるという臨床観察です。このような腰痛の一部では、腰部への治療アプローチでは改善しない原因が肩甲骨周囲の筋膜・筋緊張にある可能性があります。ただし「肩甲骨が硬い人は全員腰痛になる」「腰痛の人は必ず肩甲骨が原因」という意味ではありません。動画の評価テスト(肩甲骨を圧迫しながら腰をひねる)を試して症状の変化が現れた場合に初めて「自分の腰痛に肩甲骨が関与している可能性がある」と判断できます。この評価法自体の感度・特異度を検証した研究は現時点では存在しておらず、判断には臨床的な文脈が必要です。
Q. 自分では下角の場所がよく分かりません。どうすれば見つけられますか? ── A. 肩甲骨の下角は多くの人が自分で確認できる部位ですが、体型や脂肪の量によって触れにくい場合があります。見つけ方のヒント:①背中を丸める(猫背にする)と、肩甲骨が外側に広がり下角が後面に突出しやすくなり触れやすくなります。②対側の手を反対側の肩越しに回し、背中の下の方を触ると下角に届く場合があります。③家族・パートナーに後ろから肩甲骨の最も下のとがった部分を確認してもらうのが最も確実です。④壁のコーナーを使って探る場合は、下角よりやや上から始めて徐々に位置を調整し、「痛気持ちいい」場所を探します。重要なのは「感触」を大切にすることで、その場所で腕を回して気持ちよければリリースになっています。
Q. このセルフケアはどれくらいの頻度で行えばいいですか? ── A. 動画の中に明確な推奨頻度は示されていませんが、一般的な筋膜リリースの考え方から「1日1〜2回、1回あたり両側各10回転(の腕の円運動)」程度が始めやすい目安です。リリース直後に症状(腰痛・肩こり)が軽減する感覚があれば、継続的に行う価値がある可能性が高いです。一方、リリース後に痛みが増悪したり翌日に強い筋肉痛・炎症の症状(熱感・腫れ)が続く場合は、圧を弱める・頻度を落とすことを検討してください。また、このセルフリリースで改善が得られない・症状が悪化する場合は自己流を続けず、理学療法士・整形外科医・有資格の徒手療法士に相談することを強く推奨します。
Q. 壁を使って実施したら逆に肩が痛くなりました。これは大丈夫ですか? ── A. リリース直後に軽い筋肉痛(遅発性筋肉痛:DOMS)が翌日〜2日後に出ることはよくあります。これは筋膜・筋に適度な刺激が入った反応で、通常は数日で落ち着きます。しかし以下のような症状は「中止・受診」のサインです:電撃痛・激痛が走った場合、手・指のしびれや脱力が出た場合、痛みが1週間以上消えない・悪化し続ける場合、安静にしていても続く夜間痛がある場合。特に肩甲骨周辺を強く圧した後に手のしびれが出た場合は、胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome)の可能性や神経根への圧刺激を疑う必要があります。骨粗鬆症・肋骨骨折歴のある方が強く圧迫した場合の骨折リスクも念頭に置いてください。このような症状が出た場合は直ちに中止し、整形外科・神経内科を受診してください。
安全・受診勧奨・まとめ
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肩甲骨下角への圧迫は比較的安全な手技ですが、以下のサインが出た場合は直ちに中止し医療機関を受診してください。骨粗鬆症・肋骨骨折歴・肩や肩甲骨の手術歴がある方は必ず医師に相談してから実施してください。
肩甲骨の下角・内側縁のリリースについて、7層構成でエビデンスと臨床的な考え方を解説しました。この記事のまとめを正直に述べます。MPSへの徒手療法の有効性(Liu 2024)・上部僧帽筋TrPへの物理療法の圧痛閾値改善(Geri 2022)・UCSの治療概観(Chang 2023)・UCS矯正運動の姿勢改善効果(Khorramroo 2026)・METの頸部痛への有効性(Lin 2023)は、それぞれ研究による裏づけがあります。一方で「肩甲骨の下角を圧迫しながら腰をひねって痛みの変化を見る」という藤井先生の評価法、および「この評価で陽性の患者に肩甲骨リリースを行うと腰痛が改善する」という因果関係は、直接検証した質の高い研究がまだ存在せず、藤井先生の豊富な臨床観察の蓄積に基づくものです。これは「効かない」ことを意味せず、「まだ臨床研究の蓄積が必要な段階」です。
この動画・記事から持ち帰ってほしいメッセージは2つです。第一に「腰痛の評価に肩甲骨を含める視点」 ── 6ヶ月以上続く腰痛・整形外科的アプローチで改善しない腰痛では、通常見落とされがちな「肩甲骨」を評価の視野に入れることで、問題の所在を特定できる場合がある。第二に「変化するかどうかを確認しながら介入する」というアプローチ ── 肩甲骨を圧しながら症状の変化を確認する疼痛誘発動作テストによって、その患者固有の原因にアプローチできる。これは特定の手技そのもの以上に価値のある「評価の発想」です。症状が改善しない・悪化する場合は自己流を中断し、必ず医療機関を受診してください。この記事は教育的情報の提供を目的としており、個別の医療アドバイスではありません。診断・治療方針の決定は必ず医師・有資格の医療専門職が行います。
この記事の情報は、藤井翔悟の動画(YouTube ID: AEhNnX9X_WY)の内容と、Europe PMCで実在が確認された5本の論文(Liu 2024 / Geri 2022 / Chang 2023 / Khorramroo 2026 / Lin 2023)に基づきます。各論文はDOI・著者・掲載誌をそのまま記載し、捏造・改変は一切行っていません。
この手技が使われた改善症例
※ いずれも本人の同意を得て匿名化した記録です。経過には個人差があります。
限界と注意・受診の目安
- ▸この手技(肩甲骨下角を評価・リリースすることで腰痛が改善する)が有効であるという藤井先生の主張は臨床経験に基づくものです。この評価法・手技を直接検証したRCT・系統的レビューは現時点では存在しません。「治る」という断定はできません。効果には個人差があります。
- ▸肩甲骨まわりの突然の電撃痛・激痛、腕・手のしびれ・脱力が出た場合は、神経根圧迫・頸椎疾患・胸郭出口症候群の可能性があります。自己流の施術は直ちに中止し、整形外科・神経内科を受診してください。
- ▸安静時の強い痛み・夜間痛・発熱を伴う背部痛は、感染・骨折・悪性腫瘍の可能性があり、徒手療法の禁忌となりえます。医療機関への受診を優先してください。
- ▸骨粗鬆症がある方・肋骨骨折歴がある方・肩や肩甲骨の手術歴がある方は、強い圧迫により骨折・インプラントへの影響のリスクがあります。自己流では行わず医師・理学療法士に相談してください。
- ▸妊娠中の方・産後まもない方は、体への圧迫を伴うセルフケアは担当医に相談してから実施してください。
- ▸この記事は医療行為の代替ではありません。診断・治療方針の決定は必ず医師・有資格の医療専門職が行います。
監修・参考文献
掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。
監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)
- [1] Liu C, Wang Y, Yu W, Xiang J, Ding G, Liu W.(2024).「Comparative effectiveness of noninvasive therapeutic interventions for myofascial pain syndrome: a network meta-analysis of randomized controlled trials」. International journal of surgery (London, England).
- [2] Geri T, Botticchio A, Rossettini G, Pournajaf S, Pellicciari L, Di Antonio S, Castaldo M.(2022).「Pressure Pain Threshold of the Upper Trapezius Trigger Point: A Systematic Review with Meta-Analysis of Baseline Values and Their Modification after Physical Therapy」. Journal of clinical medicine.
- [3] Chang MC, Choo YJ, Hong K, Boudier-Revéret M, Yang S(2023).「Treatment of Upper Crossed Syndrome: A Narrative Systematic Review」. Healthcare (Basel, Switzerland).
- [4] Khorramroo F, Rostami M, Bafrouei MJ.(2026).「Corrective exercises strongly improve posture but fail to produce consistent clinical or functional benefits in patients with upper crossed syndrome: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials」. BMC sports science, medicine & rehabilitation.
- [5] Lin LH, Lin TY, Chang KV, Wu WT, Özçakar L.(2023).「Muscle energy technique to reduce pain and disability in cases of non-specific neck pain: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials」. Heliyon.