FUJII FASCIA INSTITUTE シンボルマークFUJII FASCIA INSTITUTE藤井翔悟 筋膜研究所

FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE

エビデンスレベル:専門家意見

母指球筋群リリース ── 腱鞘炎・CM関節症を「筋スパズム」から読み解く

こんな方へ:親指の付け根(CM関節)が痛い・腫れている / 腱鞘炎・ドケルバン病と言われたが改善しない / 整形外科で『骨に異常なし』と言われた / 育児・スマートフォン・精密作業で親指を使いすぎている / 手首の橈側(親指側)の痛み・ひっかかり感がある / 腱鞘炎の患者を担当する治療家・セラピスト

母指球(ぼしきゅう)とは母指の付け根の膨らみを指す解剖学的な用語で、短母指外転筋(APB)・短母指屈筋(FPB)・母指対立筋(OP)・母指内転筋(AP)の4筋が層状に重なる領域です。これらの筋群はCM関節(第1手根中手関節)周囲から起始し、母指の対立・屈曲・外転・内転という精密な動作を担います。治療家・藤井翔悟の実技動画(YouTube ID: GyOwLcA6UAY)では、腱鞘炎・CM関節症の根本原因として母指球筋群の筋スパズム・トーン亢進・可動域制限を挙げ、CM関節の根元の硬結を触診・誘発評価でターゲットにするアプローチを解説しています。

監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-08-09

FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS

査読論文 4本と照合SR/メタ解析

藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持

研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。

藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。

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手技デモ(実演)

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動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス

EVIDENCE

藤井式の技術を、査読論文4本で支持する

本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。

FUJII METHOD

論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性

評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする

研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。

この記事で学べること ── 結論を先に

この記事は、治療家・藤井翔悟による母指球筋群と腱鞘炎・CM関節症をテーマにした実技解説動画(YouTube ID: GyOwLcA6UAY)の内容を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。テーマは4つ ── ①母指球筋群とはどんな筋か(解剖・機能・CM関節との関係) ②なぜ過使用で腱鞘炎・CM関節症が起きるのか(筋スパズムのメカニズム) ③藤井先生が示す評価・触診・誘発評価の手順 ④どのようにリリース(ゆるめる)するか。この記事を読むことで、腱鞘炎の本質的なメカニズムと、手術に頼らない保存療法のアプローチが整理されます。

この記事の2本柱を最初に示します。(A)動画の手技=藤井先生の臨床経験に基づく評価と着眼点。腱鞘炎・CM関節症の根本原因は、骨・腱鞘だけでなく母指球筋群の筋スパズム・トーン亢進にある。CM関節の根元を触診して硬結を見つけ、誘発動作で症状を確認してからリリースを行うことで改善が見込める。(B)周辺のエビデンス=手根管症候群(CTS)の保存療法・侵襲的治療・筋ストレッチと神経に関する実在4本の論文。(A)と(B)は明確に区別して提示します。この記事で『必ず治る』という表現は一切使いません。

この記事の読み方 ── 動画(体験)と記事(地図)

動画は藤井先生の触診の当て方・硬結の見つけ方・評価・リリースの発想を『体験』するもの。記事は『いま何を、なぜやっているか』と『どこまでが研究で、どこからが臨床経験か』を持ち帰る地図です。動画の核心主張である『母指球の硬結が腱鞘炎の本態』および『CM関節根元の誘発評価・リリース』は、藤井先生の豊富な臨床観察に基づくものであり、これを直接検証したRCTや系統的レビューは現時点では存在しません。医療情報として、研究の裏づけと臨床経験を正確に区別した上で読み進めてください。

背景 ── 腱鞘炎はなぜ『骨に異常なし』なのに治らないのか

腱鞘炎(けんしょうえん)は、日本の整形外科外来でもっとも頻繁に目にする手・手首の愁訴の一つです。『親指の付け根が痛い』『手首の橈側(親指側)に痛みがある』『親指を動かすとひっかかる』という訴えを持って来院する患者さんは非常に多く、整形外科ではX線撮影を行って骨の状態を確認します。しかし多くの場合、X線では目立った異常が見つからず、『骨に異常はありません』と伝えられる ── この言葉は患者さんにとっては安心を与えるようで、実は大きな混乱の源になります。なぜなら、『骨が正常』は『問題がない』を意味しないからです。

一般的な整形外科での対応は、安静・消炎鎮痛剤・サポーター・温熱・電気療法・コルチコステロイドの局所注射といった対症療法が中心です。動画の冒頭で藤井先生が指摘するのは、まさにこの点です。保存療法を繰り返しても改善しない腱鞘炎の患者さんに対して、治療家として何ができるかを考えることの重要性。そして、腱鞘炎の本質を『腱鞘の炎症』だけでなく、その背後にある『筋スパズム(筋の局所的な痙攣・緊張)とトーン(張力)の亢進』という視点から見ることの必要性です。

腱鞘炎・CM関節症(第1手根中手関節炎)・ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)は、解剖学的には異なる診断名ですが、いずれも共通しているのは母指の使いすぎに由来する慢性的な組織への負荷という点です。育児(赤ちゃんの抱き上げ・移動)・ピンセットや精密工具を使う仕事・スマートフォンのフリック・電卓やキーボードの操作 ── これらはすべて、母指を繰り返し動かす動作パターンで、日常的に行っている場合、母指球筋群に慢性的な過負荷がかかり続けます。筋スパズムが形成され、筋のトーンが上がり、可動域が制限される。これが腱鞘炎の本質的なメカニズムの一部、という藤井先生の主張です。

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母指球筋群の過使用パターン ── 腱鞘炎になりやすい日常動作
母指過使用パターン(腱鞘炎・CM関節症の原因) 1 育児 赤ちゃんの抱き上げ・移動 2 精密作業 ピンセット・細かい道具 3 スマートフォン フリック・スワイプ操作 4 電卓・キーボード 繰り返しのキー入力 ↓ 繰り返すと 筋スパズム → トーン亢進 → 可動域制限 これが腱鞘炎の本質(腱鞘だけでなく筋の問題) ↓ 保存療法の目標 母指球筋群をゆるめて悪循環を断つ (保存療法・徒手療法・セルフケア)

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腱鞘炎・CM関節症は母指の慢性的な過使用が積み重なって起こります。藤井先生が動画で挙げる典型的なパターンは①育児(赤ちゃんの抱き上げ・移動)②ピンセット等を使う精密作業③スマートフォン操作(フリック・スワイプ)④電卓・キーボード入力の4つ。これらに共通するのは母指を繰り返し動かす動作で、筋スパズム・トーン亢進・可動域制限という悪循環が形成されます。悪循環を断つことが保存療法の目標です。

ここで重要なもう一つの概念が、動画の中で藤井先生が用いる『ノーマンズランド(no man's land)』という表現です。元々は手の外科の領域で使われる言葉で、手術による介入が特に困難な解剖学的ゾーンを指します。第1CM関節周辺がまさにそのような領域で、橈骨動脈・橈骨神経浅枝・正中神経の返回枝が密集しているため、侵襲的な処置には細心の注意が必要です。だからこそ保存療法 ── 徒手療法・エクササイズ・患者教育 ── が第一選択として重要視されます。この領域に積極的に介入する治療家の役割は大きいのです。

解剖と機序 ── 母指球筋群とCM関節の構造

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母指球筋群の解剖 ── CM関節の根元を覆う4つの筋
掌側 / palmar CM関節 短母指外転筋(APB)★ 短母指屈筋(FPB) 母指対立筋(OP) 第1中手骨(停止) 大菱形骨(trapezium) 母指内転筋(AP) 正中神経返回枝 橈骨動脈 有頭骨(capitate) 舟状骨(scaphoid)

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母指球(ぼしきゅう)は「筋」の名称ではなく、母指の付け根の膨らみ全体を指す解剖学的な用語です。この領域には4つの筋が層状に重なっています。最表層に短母指外転筋(APB)、その深部に短母指屈筋(FPB)と母指対立筋(OP)、そして第1・2中手骨の間を占める母指内転筋(AP)。これら4筋はCM関節(第1手根中手関節)周囲から起始し、母指の対立・屈曲・外転・内転を担います。正中神経の返回枝(黄)が母指球の3筋を支配し、母指内転筋のみ尺骨神経支配です。

母指球(thenar eminence)は筋の名前ではなく、母指の付け根にある膨らみ全体を指す解剖学的用語です。この膨らみを形成しているのは4つの筋群で、浅層から深層に向かって理解していきましょう。最も表層にあるのが短母指外転筋(APB: abductor pollicis brevis)です。舟状骨・大菱形骨・屈筋支帯を起始として、母指の基節骨橈側に停止し、母指を手掌面から遠ざける外転動作を担います。触診で最も触れやすい筋で、母指球の膨らみの大部分を形成します。

APBのやや深部・内側に位置するのが短母指屈筋(FPB: flexor pollicis brevis)です。屈筋支帯・大菱形骨(浅頭)と小菱形骨・有頭骨(深頭)から起始して母指基節骨底に停止し、母指MP関節の屈曲を主に担います。さらに深部に母指対立筋(OP: opponens pollicis)があり、大菱形骨・屈筋支帯を起始として第1中手骨の橈側に停止します。母指を手掌に対して対立させる(小指と向かい合わせる)動作の主動筋です。つかむ・持つという日常動作のすべてに関わる重要な筋です。

4つ目の母指内転筋(AP: adductor pollicis)は、他の3筋とは起始が異なります。斜頭は有頭骨・小菱形骨・第2〜3中手骨底から、横頭は第3中手骨の掌面から起始して母指基節骨尺側に停止します。母指を示指方向に引き寄せる内転動作と、つかむ動作における安定化を担います。支配神経も異なり、他の3筋(APB・FPB・OP)が正中神経の返回枝に支配されるのに対して、母指内転筋のみ尺骨神経の深枝に支配されます。この神経支配の違いは、診断的に重要な意味を持ちます。

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「ノーマンズランド」── CM関節周辺の複雑な解剖
背側〜掌側 / oblique 第1区画腱鞘(APL・EPB) 橈骨動脈(嗅ぎたばこ入れ) 橈骨神経浅枝(感覚) 評価ポイント (CM関節の根元) ノーマンズランド 保存療法優先の領域 構造が複雑なため外科的介入が難しく、保存療法が第一選択となりやすい

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第1CM関節(親指の付け根の関節)周辺は、腱・血管・神経が密集した『ノーマンズランド』です。母指外転筋腱(APL)と母指短伸筋腱(EPB)が第1区画の腱鞘内を走り、橈骨動脈が解剖学的嗅ぎたばこ入れ(anatomical snuffbox)を通り、橈骨神経浅枝が皮膚感覚を担います。この複雑さが外科的介入を困難にし、保存療法を優先する理由の一つです。星印(★)が藤井先生の評価ポイント(CM関節の根元)です。

CM関節(第1手根中手関節)は大菱形骨と第1中手骨底の間にある鞍(くら)型の関節で、母指が人差し指や他の指に向かって対立できる ── つまり「物をつかむ」動作が可能になる ── 人類特有の進化的な構造です。この関節は6自由度の動きを持つため、解剖学的に非常に複雑です。動画で藤井先生が指摘する『ノーマンズランド』のポイントは、このCM関節の周囲に解剖学的に重要な構造が密集しているという事実です。橈骨動脈は橈骨茎状突起の橈側から解剖学的嗅ぎたばこ入れ(anatomical snuffbox)を通過し、橈骨神経浅枝は感覚神経として同領域を走り、正中神経の返回枝(recurrent branch)は手根管を出た直後に母指球の3筋へ向かいます。

筋スパズムのメカニズムについて整理します。母指球筋群に過使用が続くと、局所的な筋繊維の微細損傷と代謝産物(乳酸・ブラジキニン等)の蓄積が起こります。これが筋紡錘の感受性を高め、筋の反射的な収縮(スパズム)を誘発します。スパズムは血流を低下させ、さらに代謝産物の蓄積を促進する ── この悪循環が慢性的な筋緊張とトーン亢進として固定化します。母指球筋群がトーン亢進状態になると、第1区画腱鞘内を走る長母指外転筋腱(APL)と母指短伸筋腱(EPB)の滑走スペースが狭まり、腱と腱鞘の摩擦が増大してドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)の状態が生まれやすくなります。

動画の手技 ── 評価・触診・リリースの考え方

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腱鞘炎・CM関節症の典型的な痛みの分布
前面 / anterior 1 2 3 腱鞘炎・CM関節症の痛みの場所 1 CM関節周辺(親指の付け根) 最も多い・特徴的な圧痛 2 母指IP・MP関節 ひっかかり・伸ばすと痛い 3 手首橈側(茎状突起付近) ドケルバン病の好発部位 共通の根本原因:母指の使いすぎ → 筋スパズム → トーン亢進 ※ 痛みの場所は個人差があります ※ 他の原因でも同様の痛みが出ます

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母指球筋群が硬くなり筋スパズムが生じると、①CM関節周辺(親指の付け根)②母指全体(IP・MP関節)③手首の橈側(橈骨茎状突起付近=ドケルバン病の好発部位)に痛みが集中します。整形外科で「骨に異常なし」と言われた場合でも、この領域の筋スパズム・トーン亢進・可動域制限が痛みを維持していることがあります。ただし、これらの痛みは腱鞘炎以外の原因でも起こります。

動画の中で藤井先生が最初に強調するのは、腱鞘炎・CM関節症の患者さんへの評価の視点です。整形外科でX線を撮り『骨に異常なし』と言われた患者さんは、安静・サポーター・シップという対症療法の繰り返しになりがちです。しかし治療家として積極的に介入することで、変化を出すことができる ── これが動画全体のメッセージの核心です。患者さんは『様子を見ましょう』と言われるだけでは不満を感じることが多く、所見に基づいた具体的な介入ができるかどうかが、治療家としての価値を決めます。

評価のプロセスは、まず患者さんの腱鞘炎の症状と母指球筋群の硬さが本当に関連しているかどうかを確認することから始まります。ただやみくもに母指球をほぐすのではなく、誘発評価によって症状との連動を確認することが前提です。動画で藤井先生が特に注目するのは、母指球の中でも『母指の付け根・CM関節の根元の部分』です。この部位には高頻度で硬さや塊(硬結)が形成されており、触診すると患者さんが『痛い』と感じることが多いと述べています。

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触診と誘発評価 ── CM関節の根元を圧迫して症状を確認する
掌側 / palmar 評価手順(藤井先生の臨床経験) 母指球の付け根(CM関節の根元)を 視診・触診して硬結を探す 硬結が見つかったら軽く圧迫する 圧迫した状態で誘発動作を行う (例:母指の外転・対立) 痛みが再現されれば陽性 → ここがリリースのターゲット ★ 多くの患者で誘発陽性(藤井先生の臨床観察) この評価法を検証したRCTは現時点では存在しない

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藤井先生が動画で示す評価の核心:母指球の『付け根の部分(CM関節の根元)』を触診して硬結・塊を探し、圧迫した状態で誘発動作を行います。この部位を押さえると多くの腱鞘炎患者で痛みが再現(誘発)されます。誘発が確認できた部位がリリースのターゲットです。これは藤井先生の臨床経験に基づく評価法であり、この評価法自体を検証したRCTは現時点では存在しません。

誘発評価の手順は以下の通りです(藤井先生の臨床経験に基づくもので、この評価法を検証した研究は現時点では存在しません)。まず触診によってCM関節の根元に硬結・圧痛点を見つけます。次にその部位を軽く圧迫した状態を維持しながら、患者さんに問題の動作(例:母指の外転・対立・つまみ動作)を行ってもらいます。この状態で患者さんが訴える症状(痛み・ひっかかり感)が誘発・増悪されれば、その硬結部位が症状の原因の一つである可能性が高いと評価します。藤井先生の経験では、多くの腱鞘炎患者でこの評価が陽性になると述べています。

リリースの手順については、動画の字幕から具体的な手技の細かい動作方向や圧の強さを読み取ることは難しいですが、基本的な考え方は以下の通りです。誘発評価で陽性だった部位(CM関節根元の硬結)をターゲットに、ゆっくりとした圧をかけながら組織の変化(軟化)を待ちます。患者さんの反応(痛みの軽減・可動域の改善)を確認しながら進めることが重要で、急激な力や過度な圧迫は避けます。特にCM関節周辺は橈骨動脈・神経が密集する『ノーマンズランド』であるため、解剖学的知識に基づいた丁寧なアプローチが必須です。

治療家へのメッセージとして、動画の最後に藤井先生が強調するのは次の点です。腱鞘炎・CM関節症の患者さんに対して、安静・薬・経過観察だけでなく、具体的な所見に基づいた積極的な介入ができるセラピストでいることの価値。患者さんはただ待つよりも、『ここに硬さがあります。これが今の症状に関係しています』という具体的な説明と変化を求めています。母指球筋群という評価・治療の視点を持つことで、これまで改善しなかった患者さんに新たなアプローチができる可能性があります。

症例の考え方・FAQ

Q. 腱鞘炎は安静にするだけで治りますか? ── A. 急性期の炎症に対して安静は重要ですが、それだけでは根本原因である筋スパズムやトーン亢進が解消されないため、再発を繰り返すことが多いです。安静によって症状が落ち着いても、同じ過使用パターンが続く限り症状は戻りやすい。特に育児・仕事上の精密作業など、原因となる動作を完全に避けることが難しい場合は、筋の状態を評価・治療しながら日常生活の動作を工夫することが重要です。安静で改善しない場合は放置せず、治療家や医師に相談してください。

Q. 整形外科で『骨に異常なし』と言われたのに痛みが続いています。これは何ですか? ── A. X線は骨の変化を見る検査ですが、筋スパズム・腱鞘の肥厚・軟部組織の状態は映りません。骨に異常がなくても、筋の硬さ・腱鞘の炎症・正中神経や橈骨神経浅枝への影響が痛みを起こしていることは十分あります。また、超音波検査やMRIでは軟部組織の状態が確認できることがあるため、症状が続く場合は手外科専門医や超音波を用いた診察が可能な施設に相談することをお勧めします。整形外科での診断はあくまで骨・靭帯の重篤な損傷を除外するためのステップと考えてください。

Q. 「ノーマンズランド」とは何ですか?なぜ手術が難しいのですか? ── A. ノーマンズランドは本来、戦場で誰も支配していない危険な中間地帯を指す軍事用語ですが、手の外科では「手術操作が特に困難でリスクが高い解剖学的ゾーン」を比喩的に表します。CM関節周辺では橈骨動脈・橈骨神経浅枝・正中神経の返回枝が密集しており、手術の際には細心の注意が必要です。この複雑さは外科的介入の敷居を上げると同時に、保存療法(徒手療法・患者教育・エクササイズ)をより重要な位置付けにします。だからこそ治療家がこの領域に精通した保存療法を提供できることが、患者さんにとって大きな意味を持つのです。

Q. ドケルバン病とCM関節症の違いは何ですか? ── A. ドケルバン病(De Quervain病、狭窄性腱鞘炎)は第1背側区画(長母指外転筋腱・母指短伸筋腱)の腱鞘が狭窄・炎症を起こし、手首橈側の痛みとひっかかりを生じる病態です。フィンケルシュタインテストで診断されます。一方CM関節症(第1CM関節症)は大菱形骨と第1中手骨底の関節軟骨が磨耗・変性する変形性関節疾患で、親指の付け根の深部痛・握力低下が特徴です。ただし両者は同一領域(親指の付け根周辺)の問題として合併することも多く、藤井先生の動画で示す母指球筋群のアプローチは、両者の背景にある筋スパズムにアプローチするものと位置付けられます。いずれにせよ、正確な診断は専門医で受けることが重要です。

安全上の注意・受診勧奨・まとめ

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安全マップ ── 母指球周囲の重要な構造と受診すべきサイン
掌側 / palmar 橈骨動脈(拍動に注意!) 橈骨神経浅枝(感覚) 正中神経返回枝(運動) 受診すべきサイン ・拍動を感じる部位への圧迫は禁止・強いしびれ・電気が走る感覚・腫脹・熱感・発赤・母指の急激な筋力低下・夜間痛・安静時痛の増悪・腫瘤(しこり)の触知 整形外科・手外科への受診を優先してください

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CM関節・母指球周囲には、橈骨動脈(橈骨茎状突起の橈側を通る)・橈骨神経浅枝(感覚枝)・正中神経の返回枝(運動枝)が密集しています。強い圧迫・急激な操作は禁忌です。拍動を感じる部位への圧迫は避け、しびれや電気が走る感覚が出たら即時中止。腫脹・熱感・急激な筋力低下・夜間痛の増悪は整形外科・手外科への受診が優先されます。

この記事のまとめです。腱鞘炎・CM関節症は『骨に異常なし』と言われることが多い一方で、その背後に母指球筋群の筋スパズム・トーン亢進という問題が存在する可能性があります。治療家・藤井翔悟が動画で示したのは、CM関節の根元の硬結を触診・誘発評価でターゲットにし、それをリリースすることで症状を改善するというアプローチの発想です。

母指球筋群という視点は、これまで改善しなかった腱鞘炎・CM関節症の患者さんに新たな可能性を開くかもしれません。強い症状・急性期の炎症・神経症状を伴う場合は、必ず専門医の診察を受けた上で治療家へのアプローチを併用してください。この記事で扱ったのはあくまで動画の内容の解説と周辺エビデンスの整理であり、特定の治療法を推奨するものではありません。

参考文献:Tang F ら(2025)Medicine DOI:10.1097/md.0000000000044158、Hernández-Secorún M ら(2021)Int J Environ Res Public Health DOI:10.3390/ijerph18052365、Di Dio E ら(2026)Medical sciences DOI:10.3390/medsci14020264、Thomas E ら(2021)J Sports Sci Med DOI:10.52082/jssm.2021.258

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限界と注意・受診の目安

  • この記事は医療情報であり、特定の治療法を推奨するものではありません。効果には個人差があります。
  • 安静時痛・夜間痛の増悪・母指の筋力低下・腫脹・熱感・しびれがある場合は、まず整形外科・手外科を受診してください。
  • 母指球周囲(CM関節周辺)は橈骨動脈・橈骨神経浅枝・正中神経返回枝が密集する解剖学的に複雑な領域です。拍動を感じる部位への強い圧迫・急激な操作は避けてください。
  • 急性期(受傷後数日以内の強い炎症・腫脹)・感染症疑い・骨折の可能性がある場合は施術禁忌です。
  • 動画の手技は藤井先生の臨床経験に基づくものであり、この評価法・リリース手順を直接検証したRCTや系統的レビューは現時点では存在しません。
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監修・参考文献

掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。

監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)

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