FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE
僧帽筋上部繊維リリース ── 膝の痛みを「首の付け根」から読み解く筋膜連鎖アプローチ
こんな方へ:膝の痛みが他の治療でVAS10→3程度まで改善したが、そこから先が変わらない / 肩こりがひどく同時に膝の痛みも長引いている / 変形性膝関節症・スポーツ膝・術後残遺痛に悩む患者を抱える治療家・セラピスト / 筋膜連鎖・全身的なアプローチに興味がある / 「首(肩)に触れると膝が楽になるのはなぜか」を知りたい方
僧帽筋上部繊維(そうぼうきんじょうぶせんい)は後頭骨と頸椎(C1〜C5)の棘突起・項靱帯から起こり、鎖骨外側1/3・肩峰・肩甲棘に停止する、肩こりの代名詞ともいえる筋。しかし治療家・藤井翔悟の実技動画(YouTube ID: FKWs7DctIyw)が明かすのは、この筋の「硬結(きんこうけつ)」が大臀筋(だいでんきん)とのつながりを介して膝の痛みにまで波及しているケースがある、という臨床観察です。肩甲骨上角付近の筋硬結を「横圧評価」で確かめ、同時に患者に膝の痛みが出る動作をさせることで、『その硬結が膝の痛みに関与しているかどうか』を確認する評価手順は、藤井先生独自の臨床判断法です。
監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-08-03
FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS
藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持
研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。
藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。
手技デモ(実演)
動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス
EVIDENCE
藤井式の技術を、査読論文4本で支持する
本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。
FUJII METHOD
論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性
評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする
研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。
この記事で学べること/結論を先に
この記事は、治療家・藤井翔悟による僧帽筋上部繊維と膝の痛みの関係をテーマにした実技解説動画(YouTube ID: FKWs7DctIyw)の内容を、7枚の図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。学べることは4つです。①僧帽筋上部繊維とはどんな筋か(解剖・機能・周辺構造)。②なぜ「首の付け根の硬結」が膝の痛みに関係するのか(藤井先生の臨床観察・筋膜連鎖の考え方)。③その関与を確認する「横圧評価」の手順。④横圧評価で関与が確認できたときのリリース手技。この記事を読む前に、最も大切な前提を正直に述べます。『肩甲骨上角の硬結が大臀筋を介して膝の痛みを引き起こし、横圧評価でそれを識別できる』という核心的な主張は、藤井先生の豊富な臨床経験に基づくものです。この仮説を直接検証したRCT(ランダム化比較試験)や系統的レビューは現時点では存在しません。この記事が引用する論文はいずれも、上部僧帽筋のトリガーポイント治療の周辺を照らす間接的なエビデンスです。研究の裏づけと臨床経験を正確に区別した上で読み進めてください。
この記事の2本柱を最初に確認しておきます。(A)動画の手技=藤井先生の臨床経験:VAS10から3程度まで改善した膝の痛みの残存分の原因として、僧帽筋上部繊維の筋硬結が関与しているケースがある。肩甲骨上角付近を横圧しながら膝の動作をさせることで、その関与を評価する。(B)周辺のエビデンス=実在する4本の論文:頸部・うなじの筋膜疼痛に対するMET・ドライニードリング・虚血圧迫・鍼の系統的レビュー・メタ解析。(A)と(B)は明確に区別して提示します。
この記事の使い方 ── 動画(体験)と記事(地図)
動画は藤井先生の触診の感覚・評価の発想・リリースの当て方を体験するもの。記事は『今何を、なぜやっているか』と『どこまでが研究で、どこからが臨床経験か』を持ち帰る地図です。動画の核心である『僧帽筋上部繊維の硬結が大臀筋を介して膝の痛みに波及する』および『横圧評価で膝の痛みの変化を見て関与を判断する』という主張は、藤井先生の臨床観察に基づくものです。医療情報として、この2点を研究の裏づけと混同しないよう読み進めてください。
背景 ── なぜ「肩こりの筋」が膝の痛みに関係するのか
肩こりといえば僧帽筋。多くの方がこの筋を「肩が重い・首が張る」症状の代名詞として知っています。しかし動画の冒頭で藤井先生が提示するのは、この僧帽筋上部繊維の「硬結」が、はるかに遠い部位である膝の痛みとつながっているかもしれない、という一見意外な視点です。この視点の背景にあるのは「筋膜のつながり」という考え方です。身体を単一の筋・関節の集合体としてではなく、筋膜という結合組織のネットワークで全身がつながった一つのシステムとして捉えると、首の付け根の硬さが股関節・膝に影響する、という発想が生まれてきます。
動画が特に着目するのは「VAS10から3まで改善した後の残存痛」です。臨床の現場では、ある治療法で膝の痛みをVAS10(最大の痛み)からVAS3程度まで下げることができる。しかしそこから先、痛みが0に近づかない状態で止まってしまうケースが少なくありません。この「最後の30%」の残存痛の原因として、通常の評価では見落とされがちな僧帽筋上部繊維の硬結が関与していることがある、というのが藤井先生の臨床的な気づきです。膝の関節や周辺の筋だけを見ていては改善できない部分が、首の付け根を評価・治療することで改善する、という逆転の発想です。
この考え方を理解するには「大臀筋(だいでんきん)」との関係が鍵になります。藤井先生の動画では、前回(膝の痛みに関する別動画)で大臀筋と僧帽筋上部繊維のつながりについて解説されていることが前提として語られています。大臀筋は臀部(お尻)の最大の筋であり、股関節の伸展・外旋を主な機能として持ちます。この大臀筋が適切に機能しないと、膝の動きのメカニクスに影響が生じ、膝の痛みの原因になりうる。そして大臀筋が「うまく働かない」背景の一因として、頸部・僧帽筋上部繊維の筋硬結が関与している可能性がある、というのが連鎖の考え方です。
動画のもう一つの重要なポイントは、「共通治療のヒント」という言葉で表現されるように、膝以外の痛みにも応用できる可能性を示唆していることです。僧帽筋上部繊維の硬結が「遠い部位の痛み」に関与するというコンセプトは、腰痛・股関節痛・肩関節痛など、様々な部位の痛みの評価に応用できるかもしれない。藤井先生はこの「着眼点の変え方」こそが、行き詰まった治療を突破する鍵になると指摘します。ただし、あらゆる痛みの原因が僧帽筋上部繊維にあるという誤解は避ける必要があります。あくまでも評価で確認してから判断するのが正しい手順です。
僧帽筋上部繊維の解剖と機序 ── 硬結が生まれるまで
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僧帽筋上部繊維は後頭骨(後頭隆起・上項線)と頸椎(C1〜C5)の棘突起・項靱帯から起こり、鎖骨外側1/3・肩峰・肩甲棘(外側端)に停止します。肩甲骨上角の付近には肩甲挙筋(けんこうきょきん、深層)も走行しており、この部位は「筋硬結」が最も生じやすい場所の一つです。
僧帽筋(trapezius)は背中の表層を広くおおう、ひし形をした大きな筋です。その上部繊維は、後頭骨(こうとうこつ)の後頭隆起と上項線(じょうこうせん)から始まり、頸椎(けいつい)C1〜C5の棘突起(きょくとっき)と項靱帯(こうじんたい:首の後ろ側の強力な靱帯)を起始とします。ここから斜め外下方に走行し、鎖骨の外側1/3・肩峰(けんぽう)・肩甲棘(けんこうきょく)に停止します。上部繊維の主な働きは肩甲骨の挙上(肩をすくめる動き)・上方回旋(腕を上げる際の肩甲骨の回転)で、頸部を側屈させる(片側収縮時)・頭部を後屈させる(両側収縮時)機能もあります。
動画で特に注目されるのが「肩甲骨上角付近」という解剖学的なポイントです。肩甲骨上角(けんこうこつじょうかく)とは、肩甲骨の最も上内側のコーナー部分です。ここは僧帽筋上部繊維だけでなく、肩甲挙筋(けんこうきょきん:C1〜C4の横突起から起こり、肩甲骨上角に停止)も走行しており、2つの大きな筋が重なり合う「交差点」のような場所です。この交差する部位は、慢性的な姿勢不良(猫背・頭が前に出る姿勢)や、デスクワーク・スマートフォン操作による持続的な収縮、心理的なストレス(筋緊張亢進)によって筋硬結(きんこうけつ)が生じやすいことが知られています。
筋硬結(トリガーポイント)とは、筋内の局所的な硬化帯(たった帯)の中にある圧痛を持つ点で、圧迫すると特徴的な「関連痛(かんれんつう)」が生じます。動画では、この肩甲骨上角付近の硬結が東洋医学でいう「牽制(けんせい)」穴や「肩井穴(GB-21)」とも重なる場所であることが言及されています。東洋医学でも古くから治療点として認識されてきたこの部位が、現代の筋膜・トリガーポイント理論の視点からも「硬結が生じやすい解剖学的ポイント」として一致していることは、臨床的に興味深い点です。なお、肩井穴(GB-21)は肩の表面の最も高い場所(肩峰と第7頸椎の中点付近)に相当し、厳密には肩甲骨上角とは異なります。動画での「牽制穴」という表現は複数の鍼穴の複合的な表現と解釈されます。
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動画で示される評価ポイントは「肩甲骨上角付近」。僧帽筋上部繊維と肩甲挙筋が重なるこの部位は、疲労・姿勢不良・慢性ストレスで筋硬結が生じやすく、東洋医学でいう「牽制(けんせい)」「肩井穴(GB-21)」とも重なる治療ポイントです。
僧帽筋上部繊維に硬結が生じると、局所の痛み・肩こりにとどまらず、様々な部位への関連痛が出現することが臨床的に知られています。緊張型頭痛(けんちょうがたずつう:日本で最もよくみられる頭痛)では、後頭部〜側頭部への痛みに上部僧帽筋の硬結が関与している例が多く見られます。また肩関節周辺の痛み・頸部の可動域制限、さらに藤井先生の観察では大臀筋を介した膝の痛みとの関連も報告されています。重要なのは、この「硬結から離れた場所に出る痛み」が、局所の治療だけでは改善しにくい理由の一つになっているという視点です。
動画の手技を図解する ── 評価・触診・リリースの手順
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藤井先生の動画の核心。僧帽筋上部繊維の硬結が大臀筋(だいでんきん)とつながりを持ち、その機能異常が膝の痛みに波及するという臨床観察です。この「つながり」は後方筋膜連鎖の理論と藤井先生の臨床経験に基づきます。この連鎖を直接証明したRCT・系統的レビューは現時点では存在しません。
動画(藤井翔悟)が示す評価と手技の流れには、明快な論理があります。出発点は「膝の痛みがVAS10から3まで改善したが、そこから先が変わらない」という臨床的な行き詰まりです。そこで視点を変え、筋膜のつながりで上部僧帽筋を評価する、というのが動画の流れです。まず治療家は、肩甲骨上角付近(図3で示した部位)を触診します。肩甲骨上角は、肩の後ろ上方に手を当て、肩甲棘(横に走る骨の突起)を内側(背骨側)へたどっていくと、最後に突き当たる骨の角(コーナー)です。この付近にグリグリ・ゴリゴリと感じる硬結があるかどうかを確認します。
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触診で硬結を確認したら「横圧」(水平方向の圧)を加えながら、患者にいつも膝が痛くなる動作をさせます。横圧を維持しながら膝の痛みが変化(軽減・消失)すれば、その硬結が膝の痛みに関与していると判断し、リリースに進みます。変化がなければ別の部位を評価します。
触診で硬結が確認できたら、次は「横圧評価(誘発テスト)」です。確認した硬結に対して、治療家は指先・母指・手の平などを当て、横方向(水平方向)への圧 ── すなわち「横圧」 ── を加えます。この横圧を維持したままの状態で、患者に「普段、膝が痛くなるときの動作」をしてもらいます。動画では「膝を100度くらい曲げると痛い」というような例が挙げられています。横圧を加えながら膝を曲げたとき、それまで感じていた膝の痛みが軽減する・または消失する、という変化が見られれば、「その硬結が膝の痛みに関与している」と判断できます。逆に痛みに全く変化がなければ、その硬結は主因ではないと考え、評価を別の部位に移行します。この横圧評価は、治療を行う前に「本当にこの硬結が今の膝の痛みの原因の一つになっているか」を確認するための臨床判断法です。
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評価で関連が確認できたら、その硬結を「いつもの手技」(動画表現)でリリースします。過度な強さは避け、組織の抵抗感に従いながらゆっくり圧を入れ、硬結がじわじわとゆるむのを感じながら行います。リリース後に再度評価動作をして即時効果を確認することが重要です。
評価で関与が確認できたら、次にリリース(ゆるめる)を行います。動画では「いつもの手技」と表現されており、特定の手技名は明言されていません。一般的なトリガーポイントへの徒手アプローチの原則として、以下のような手順が参考になります。①過度な強さや速さは避け、ゆっくりと圧を加える。②患者が「痛いけど気持ちいい」と感じる圧の強さを目安にする(強い痛みを我慢させる圧は逆効果になることがある)。③硬結がじわじわとゆるんでいく感覚を感じながら、圧を維持する(一定の時間 ── 数秒から数十秒 ── をかける)。④圧が組織に沈み込む感覚・硬結が崩れていく感覚を確認したら、徐々に圧を解放する。リリース後は再度、評価動作(膝の屈曲など)を行い、痛みの変化を即時確認します。改善が乏しければ反対側や他の部位を評価し、「どの硬結が膝の痛みに関与しているか」を絞り込む過程を繰り返します。動画では、実際に臨床で試してみることの重要性が強調されています。業務後にセラピスト同士で練習し、患者に実践することを藤井先生は推奨しています。
動画の最後のポイントとして、この手技は「共通治療のヒント」として位置づけられている点に触れておきます。つまり、膝の痛みだけでなく、腰痛・肩痛・股関節痛など他の部位の痛みにも、同様の発想(上部僧帽筋の硬結が遠い部位の痛みに関与していないか評価する)を応用できる可能性があります。この全身的・筋膜的なアプローチの視点が、動画全体を通じた藤井先生のメッセージです。ただし、どの痛みにもこのアプローチが有効というわけではなく、まず評価で確認することが大前提です。評価せずに一律に行うことは避けてください。
症例の考え方・FAQ ── よくある疑問に答える
Q. 肩こりが全くない患者でも、僧帽筋上部繊維の硬結が膝の痛みに関与することはありますか? ── A. あります。肩こりは主観的な感覚であり、筋硬結(トリガーポイント)が存在していても「こりを感じない」という患者は少なくありません。潜在性トリガーポイント(latent trigger point)と呼ばれる状態で、圧迫しない限り痛みや違和感を感じないものの、触診では硬結が確認でき、圧迫すると痛みが誘発されます。藤井先生の動画で示される評価の出発点は「本人の肩こりの主訴」ではなく、「触診で硬結があるか」「横圧で膝の痛みが変化するか」の確認です。患者が肩こりを訴えなくても、評価を行うことに意味があります。
Q. 横圧評価で「膝の痛みが減った」と患者が言うのは、プラセボ効果ではないですか? ── A. プラセボの可能性は否定できません。これは重要な科学的疑問です。患者が「肩を押さえてもらったら膝が楽になった」と感じるとき、それが①硬結を介した筋膜緊張の変化による実際の痛みの変化なのか、②期待・注意転換・皮膚刺激による感覚変容(プラセボ)なのかを、この評価法単独で区別することは困難です。現時点では、「横圧評価で膝の痛みが変化した=その硬結が真の原因」と断定する研究的根拠はありません。あくまでも「この評価で変化があれば、リリースを試みる価値があるかもしれない」という臨床的な判断材料として使うのが適切です。
Q. 肩甲骨上角の硬結を触診しようとすると、どこを触れているのか分かりにくいです。どうすればいいですか? ── A. 肩甲骨上角は骨のランドマークとして確認できます。まず手を背中に回し、肩甲棘(肩の後ろ・横に走る骨の突起)を確認します。肩甲棘を内側(脊椎側)へたどっていくと、最後に上方へ方向が変わる角(コーナー)があります。これが肩甲骨上角です。ここを基準に、僧帽筋上部繊維の「ハリ」や「グリグリ感」を触れて探します。肩甲骨上角付近は比較的浅い位置にあるため、最初は軽い圧で触れ、患者が過度な痛みを感じない深さで確認してください。慣れない段階では、セラピスト間でお互いの肩甲骨上角を確認し合う練習(ペア練習)が非常に有効です。動画でも藤井先生が、練習によるスキル習得の重要性を強調しています。
Q. この評価・リリースは両側行うべきですか、それとも片側だけですか? ── A. 動画では両側性についての明確な言及はありませんが、臨床的には両側を評価することを勧めます。筋硬結はしばしば両側性に生じ、また膝の痛みが片側であっても、反対側の上部僧帽筋の硬結が関与しているケースもあります。まず痛みのある膝と同側を評価し、変化が乏しければ反対側も試みる、というアプローチが実践的です。また同じ側でも、片側で改善が止まった場合に反対側を追加することで、さらに改善が得られることもあります。評価を行い、変化を確認しながら進めることが基本姿勢です。
安全・受診勧奨 ── この手技を行う前に確認すること
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肩甲骨上角付近の施術では、頸神経・腕神経叢・椎骨動脈(脊椎内を走行)への影響に注意が必要です。電撃様のしびれ・腕の脱力・めまい・視覚変化が出たら即座に施術を中止し、患者を安静にさせてください。頸椎に問題がある方への深い圧は特に慎重に行ってください。
肩甲骨上角付近へのアプローチを安全に行うための注意点を整理します。①電撃様のしびれ・腕への放散痛が出たら即中止:これは頸神経または腕神経叢への刺激が過度な状態です。圧を解除し患者を安静にさせ、しびれが継続するようであれば医療機関に相談してください。②めまい・視覚変化・意識が遠のく感覚が出たら即中止:椎骨動脈への影響の可能性があります。これは特に頸椎に問題がある場合に起きやすく、一般的な僧帽筋の表層への圧ではまず起きませんが、深部への不用意な圧迫は避けてください。③首を極端に曲げた状態で行わない:頸部の血管・神経に影響しやすくなります。患者の頸部は中間位または軽度屈曲位を保ってください。④禁忌に相当する状態:頸椎の骨折・脱臼、頸椎ヘルニアの急性期(上肢しびれ・脱力を伴う)、悪性腫瘍の疑い、活動性感染症、重篤な骨粗鬆症(圧迫骨折リスク)、妊娠中(頸部・肩への圧迫が誘発する筋収縮が問題になる可能性)などは禁忌です。
膝の痛みについての受診勧奨サインも確認しておきます。以下に該当する場合は、まず整形外科・リウマチ科・医療機関を受診し、必要な診断・治療を受けてから、補完的な手技を検討してください。①膝が著しく腫れている(関節内に液体が貯留している可能性)②安静時にも持続する強い痛み(炎症の強い状態・骨の問題)③発熱を伴う膝の痛み(化膿性関節炎・リウマチの可能性)④外傷(捻挫・転倒)後の膝の痛み(靭帯・半月板損傷の可能性)⑤夜間痛・体重減少を伴う(腫瘍・骨壊死の可能性)⑥下肢のしびれ・感覚異常を伴う(神経由来の問題)。これらは整形外科的な精査が優先される状態です。僧帽筋上部繊維リリースはあくまでも保存的な補完的アプローチとして位置づけてください。
まとめ・参考文献
この記事のまとめです。①僧帽筋上部繊維は後頭骨・頸椎から肩峰・肩甲棘に停止する大きな筋で、肩甲骨上角付近(肩甲挙筋との交差部位)に筋硬結が生じやすい。②藤井先生の動画は、膝の痛みがVAS10→3まで改善した後の残存痛の原因の一つとして、この硬結が大臀筋を介して関与しているケースがあるという臨床観察を示す。③評価手順は:硬結を触診→横圧を維持したまま患者に膝の痛みが出る動作をさせ→痛みが変化すれば関与あり、と判断してリリースへ進む。⑤肩甲骨上角付近への施術では、電撃様のしびれ・めまい・強い放散痛が出たら即中止。頸椎疾患・急性期炎症・悪性腫瘍疑い・骨折は禁忌。⑥膝の強い腫れ・安静時痛・発熱・外傷後は整形外科受診を優先してください。
限界と注意・受診の目安
- ▸この記事は教育・情報提供目的であり、医療診断・治療行為の代替ではありません。
- ▸効果には個人差があります。「必ず改善する」という保証はできません。
- ▸「上部僧帽筋の硬結が大臀筋を介して膝の痛みを起こす」という主張は藤井先生の臨床経験に基づくものです。この連鎖を直接検証したRCT・系統的レビューは現時点では存在しません。
- ▸横圧評価で膝の痛みが変化した場合、プラセボ効果・感覚変容の可能性を除外することはできません。
- ▸電撃様のしびれ・腕への放散痛・めまい・視覚変化・意識が遠のく感覚が出たら即中止してください。
- ▸頸椎ヘルニア・脊柱管狭窄症の急性期・頸椎骨折・悪性腫瘍疑い・活動性感染症・妊娠中は禁忌です。
- ▸膝の強い腫れ・安静時痛・発熱・外傷後・下肢のしびれ・感覚異常がある場合は整形外科を受診してください。
- ▸人工膝関節置換術(TKA)後・重篤な骨粗鬆症の方は担当医に相談してからにしてください。
監修・参考文献
掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。
監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)
- [1] Lin LH, Lin TY, Chang KV, Wu WT, Özçakar L(2023).「Muscle energy technique to reduce pain and disability in cases of non-specific neck pain: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials」. Heliyon.
- [2] Alhakami AM, Sahely A, Alshami AMY.(2025).「Deep Versus Superficial Dry Needling for Neck Pain: A Systematic Review of Randomised Clinical Trials」. Medicina (Kaunas, Lithuania).
- [3] Lu W, Li J, Tian Y, Lu X.(2022).「Effect of ischemic compression on myofascial pain syndrome: a systematic review and meta-analysis」. Chiropractic & manual therapies.
- [4] Zhang P, Zhang Y, Guo M.(2025).「Efficacy of Acupuncture in Treating Nape Back Myofascial Pain Syndrome: a Comprehensive Systematic Review and Meta-Analysis」. Journal of pain research.