FUJII FASCIA INSTITUTE シンボルマークFUJII FASCIA INSTITUTE藤井翔悟 筋膜研究所

FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED SINGLE CASE STUDY

腸骨筋起始部の一点で、体幹伸展・足踏み・片脚立位がその場で変わった一例

体幹伸展制限(反り)腰痛(関連が語られた)膝痛(関連が語られた)疼痛誘発動作テスト腸骨筋リリースASIS(上前腸骨棘)触れて待つ

BEFORE

セミナー実技で体幹伸展を基準動作に設定。ASIS内側を保持すると反りやすさが変わる反応が繰り返し得られ、腸骨筋起始部の硬い一点を介入候補とした。

AFTER

ASIS内側の硬結へ持続的に触れて待った直後、立位での体幹伸展が拡大。足踏みと片脚立位でも、動きやすさと安定感の向上が確認された。

経過:セミナー内・単回介入/体幹伸展、足踏み、片脚立位を直後再評価

PEER-REVIEWED EVIDENCE

査読論文 2RCTSR/メタ解析

症例で起きた即時変化を、研究結果と照合

腸腰筋・横隔膜への筋膜リリースを検証したRCTでは、疼痛、脊柱可動性、胸郭拡張などの改善が報告されています。筋膜リリース全般のメタ解析も腰痛・身体機能への有益な変化を示しており、本実演の体幹伸展と立位機能の即時変化を支持します。

施術の動画

CASE

ASIS内側の一点が、立位動作を連続して変えた

体幹を反らす動きを基準にし、ASISの内側を保持すると可動域がその場で広がりました。同じ反応を繰り返し確かめてから、藤井翔悟は腸骨筋起始部の一点へ介入しました。

手技は強く押し込むのではなく、硬い一点を正確に捉え、組織の動きが戻るまで待つ方法です。

直後の再評価では、体幹伸展だけでなく足踏みと片脚立位にも変化が現れました。一点の反応を全身動作で検証した技術デモです。

この症例の読み方

本記事は、施術前の基準動作と施術直後の再評価を比較したシングルケーススタディです。評価で反応点を絞り、手技後に何がどう変わったかを中心に記録します。

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腸骨筋・大腰筋(腸腰筋)の解剖
腸骨筋 (腸骨窩を扇状に埋めて起こる) 大腰筋 (腰椎から下行) 小転子(停止・腸骨筋と大腰筋が合流) 腸骨筋(ちょうこつきん)と大腰筋 ── 合わせて腸腰筋 骨盤内側から起こり、腰椎からの大腰筋と合流して、大腿骨の小転子へ一緒に停止する。

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腸骨筋は骨盤内側の腸骨窩を扇状に埋めて起こり、腰椎から下行する大腰筋と合流して、大腿骨の小転子へ一緒に停止する。

STEP 1

腸骨筋とは何か ── 骨盤の内側から、小転子へ

藤井はまず、腸骨筋の走行を説明するところから実演を始めました。「骨盤の内からですね、こう、小転子に向かって走行していって、大腰筋とこう、交わる場所になってて」。つまり腸骨筋は、骨盤の内側にある腸骨窩(ちょうこつか)という広いくぼみを扇状に埋めるように起こり、腰椎から下行してくる大腰筋と合流し、大腿骨の小転子という場所に一緒に付着します。二つの筋がまとまって腸腰筋(ちょうようきん)と呼ばれる構造です。

1
腸骨筋・大腰筋(腸腰筋)の解剖
腸骨筋 (腸骨窩を扇状に埋めて起こる) 大腰筋 (腰椎から下行) 小転子(停止・腸骨筋と大腰筋が合流) 腸骨筋(ちょうこつきん)と大腰筋 ── 合わせて腸腰筋 骨盤内側から起こり、腰椎からの大腰筋と合流して、大腿骨の小転子へ一緒に停止する。

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腸骨筋は骨盤内側の腸骨窩を扇状に埋めて起こり、腰椎から下行する大腰筋と合流して、大腿骨の小転子へ一緒に停止する。

藤井が注目したのは、ASIS(上前腸骨棘・じょうぜんちょうこつきょく)と呼ばれる、骨盤前面の骨の出っぱりです。「ちょうどこのASISという場所があるんですけど、そこからこう交わるんですけど、そこの部分で、いわゆる、この筋膜間の癒着みたいなものが起こりやすい」。ASISは腸骨筋の起始部に近く、股関節を頻繁に屈曲・伸展させる中で、周囲の筋膜どうしの滑りが悪くなりやすい場所だ、というのが藤井の臨床的な見立てです。ここで言う「癒着」は、画像検査で確認された所見ではなく、触診で感じられる硬さ・引っかかりを表す臨床表現である点は、本記事全体を通じて念頭に置いてください。

腸骨筋は股関節を曲げる(屈曲する)主働筋の一つであり、股関節を伸ばす動き(伸展)に対しては、短縮・過緊張していればブレーキのように働く可能性があります。今回の実演で基準動作に選ばれたのが「体幹を反らす」動き(伸展)だったのは、腸骨筋・大腰筋という股関節屈筋群の状態が、この動きの制限に関わりうるという発想に基づいています。

腸腰筋はまた、歩行や片脚立位のような、股関節を軸に体重を支える動作にも深く関与します。

STEP 2

評価① ── ASISを内側へ圧迫すると、反りが変わるか

最初に行われたのは、体幹を反らす動き(伸展)を基準にした評価です。まずASISの探し方が説明されました。「探す時は手で大きくグリグリ触った時に、ポコンと骨が1つ出ているので、それがASIS」。見つけたASISを「内側にこう、入れてからこう、ぎゅって入れる感じ」で保持し、その状態を保ったまま反ってもらいます。

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疼痛誘発動作テスト(ASIS圧迫→体幹伸展)
疼痛誘発動作テスト ── ASIS内側を圧迫すると、反りが繰り返し変わるか 基準動作 何も押さない反り 反りは途中で止まる ASIS内側を圧迫 つまむように保持して反る ASIS圧迫 大きく反れる(1回目) 同条件で再試行 3回目でも同じ圧迫で反る ASIS圧迫 同様に反れる(再現) 読み方:ASISを内側へ圧迫した状態で反ると、その場で可動域が広がり、3回とも同様の変化が確認された。 → ASIS付近の状態が、体幹伸展の制限に関与している可能性を示す評価(対照条件・盲検化はなし)。

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ASIS内側を圧迫した状態で体幹を反ると、その場で可動域が拡大し、3回とも同様に再現された。

結果は即座に表れました。「あー、すごい反れます」「すごく反れます、びっくりした」。藤井自身が驚くほど、ASISへの圧迫を保った状態での体幹伸展は、大きく可動域が広がりました。同じ手順をその場で2回、3回と繰り返し、いずれも同様に大きな変化が確認されています。「もう1回行きましょうか」「結構変わりますね」という発言からも、単発のまぐれではなく、繰り返し再現される反応として扱われていたことが分かります。

ここで重要なのは、この段階はまだ「治療」ではなく「評価(疼痛誘発動作)」だという点です。ASISを圧迫した状態と、圧迫しない状態とで、体幹伸展の可動域がどう変わるかを比べることで、この部位が反りの制限に関与している可能性を探っています。藤井は「これが誘発動作で変化が出るかを見ます」と述べたうえで、次のリリースの工程へ進みました。

STEP 3

触診 ── 「グリグリ」を見つけ、触れて待つ

評価のあと、モデルには仰向け(仰臥位)になってもらい、股関節を曲げ伸ばしする動きを使って、あらためてASISの位置を確認します。藤井は「基本的には曲げまして、伸ばしましょうか。大腰筋の触り方に似てはいるんですけど」と述べ、大腰筋の触診と共通する感覚があることに触れました。

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ASIS内側の触診ポイント
ASIS付近 (上前腸骨棘のすぐ内側) 「グリグリ」とした硬結 (施術者が触診で感じた解釈・画像所見ではない) ASIS内側 ── 腸骨筋と大腰筋が交わる触診ポイント 動画では、この付近を「触れて→わずかに引く→待つ」ことで緩める手技が示された。

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腸骨筋と大腰筋が交わるASIS付近に、施術者が触診で「グリグリ」とした硬結を感じ取り、そこへ働きかけた。

ここからの触診は、率直な試行錯誤として描写されています。「これで触れて、中、違うと、これなんすよ。このグリね、グリグリ」「これは間違えてるんすよ、もうこれ。違う、違うんすよ。このグリ」。藤井は、狙っている“グリグリ”とした硬結に当たるまで、何度か触れる位置を修正しました。「これがわかるかどうかがポイントで」という発言は、この技術の再現性が、触診で正しい一点を見分ける感覚に強く依存していることを率直に示しています。

「グリを見つけて、食って触れます。触れてから引く。こうなる。で、待ってあげてて、ちょっと緩まないんで、ちょっとこう、揺らしてあげたりとかしてると、これ緩んでくるんで」。つまり、①硬結をとらえる ②わずかに引いた状態を保つ ③すぐに緩まなければ軽く揺らす(オシレーション)④緩むまで待つ、という手順です。「基本触れて、待ってあげるっていう感じで」という言葉に、この手技の姿勢が集約されています。

しばらくして、藤井は「グリグリやったんが、フッと抜ける感覚が私の手のひらに来て、それで終わり」と述べました。触れている手の下で、硬さが急に緩むような感覚があったということです。

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リリースの手順 ── 触れて、待つ
リリースの手順 ── 「触れて、待つ」で緩める ① 触れる 「グリグリ」とした硬結を探し当てる ② わずかに引く 強く押し込まず引いた状態を保つ ③ 待つ/揺らす 呼吸に合わせて待ち緩まなければ軽く揺らす ④ フッと抜ける 手のひらに感じる緩みの感覚で終了 「痛みが出る状態のままリリースすると、絶対緩まない」── 藤井の説明。強い力ではなく、呼吸に合わせて持続的に関わる。 この感覚は施術者自身の手の感覚に基づく報告であり、圧センサーや画像で裏づけられたものではない。 この後、立位・足踏み・片脚立位という3つの機能チェックへ進む。

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強く押し込むのではなく、わずかに引いた状態を保ち、呼吸に合わせて待つことで、手のひらに緩みの感覚が生じた。

藤井はこの手技の要点を、次のように整理しました。「押して、ちょっと引いた状態で待ってあげて。痛みが出る状態でリリースしちゃうと、絶対緩まない」「1回ぶつけてから引いて待ってあげる。それでちょっと滑走させてあげるっていうので緩んでくる」。強い力で押し込むのではなく、痛みの反応が強く出ている状態を避け、相手の呼吸に合わせて持続的に関わることが、緩みを引き出す条件だという説明です。

さらに藤井は、「相手の呼吸とか、痛みのアルセイド(反応)とかに対して、こちらがいいイメージを作って、合わせてあげるみたいな感覚でどんどん緩んでくる」とも述べています。これは、施術者が一方的に組織を押し込むのではなく、患者の呼吸・痛みへの反応を観察しながら関わり方を調整する、という対人的な側面を含む説明です。この“合わせる”という感覚は、動画を見るだけでは再現しづらく、藤井自身も「詳しくは会場とかでフィードバックする」と、対面での指導が前提であることを明言しています。

STEP 4

再評価 ── 立位・足踏み・片脚立位の3点チェック

リリースのあと、藤井は「よくある質問」を考える前に、まず可動域の変化を確かめようと、モデルに立ってもらいました。最初に確認したのは立位での反り(体幹伸展)です。「どうだったっけ?あ、こうした。すごいね。やばい、やばい、やばい、やばい。上がりましたね。ブリッジいけそう」と、仰向けでの評価と同様、立った状態でも明確な変化が見られたと述べています。

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リリース後の3点チェック
リリース後の3点チェック ── その場の変化 ① 立位の反り 「やばい、やばい、上がりましたね」 ② 足踏み 「軽いですね」 ③ 片脚立位(左右) 右・左とも 「乗るね、安定感が」 体幹伸展・足踏み・片脚立位の三つで、施術直後の変化を確認。

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立位の反り・足踏み・片脚立位のいずれにも、施術直後の主観的な軽さ・安定感の向上が報告された。

続けて、「あちら向いていただいて、ちょっと足踏みもしていただけてよろしいですか」と、軽い歩行動作(足踏み)を確認しました。モデルの反応は「軽いですね」というものでした。さらに「片足立ちをしてみて、右と左の乗りやすさをちょっと確かめる」という片脚立位のテストも行われ、「乗るね、安定感が」「そうそう、増すんですよ、これ」と、左右とも安定性が増したという反応が得られています。

ここで一つ、正直に記しておくべき点があります。それにもかかわらず片脚立位は右脚・左脚の両方で安定感の向上が報告されました。

藤井は片脚立位の変化について、「立脚期のこの安定性がぐっと出るから、パフォーマンスがその場ですぐ上がる」と、スポーツ選手への応用にも言及しました。

VISUAL

図解で追う、評価から即時変化まで

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確認できたこと/施術者の一般論の切り分け
この実演で確認できたこと / 施術者が「印象的には」と述べた一般論 確認済み:ASIS圧迫で体幹伸展が拡大 確認済み:片脚立位の安定感(左右とも) 即時評価(腰痛):一般論として言及のみ 即時評価(首の痛み):一般論として言及のみ 即時評価(膝痛):「印象的には」の一言のみ teal(実線)=この動画で直接確認された変化 / グレー(破線)=施術者の臨床経験にもとづく一般論(この実演では未検証)

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体幹伸展と片脚立位の変化は動画で直接確認できたが、膝痛・腰痛・首の痛みへの関連は「印象的には」と留保された一般論である。

RESULT

反りやすさだけでなく、足踏みと片脚立位まで向上

ASIS内側を保持した状態で体幹伸展が広がる反応は、実演中に複数回再現されました。

その反応点へ持続的に触れて待つと、施術後は保持なしでも体幹を反らしやすくなりました。

足踏みと片脚立位でも動きやすさ・安定感が高まり、腸骨筋起始部への単回介入が立位機能へ波及した即時結果が得られました。

RESEARCH

この即時変化を支える査読論文

腸腰筋・横隔膜への筋膜リリースを検証したRCTでは、疼痛、脊柱可動性、胸郭拡張などの改善が報告されています。筋膜リリース全般のメタ解析も腰痛・身体機能への有益な変化を示しており、本実演の体幹伸展と立位機能の即時変化を支持します。

CLINICAL VALUE

一点の変化を、三つの機能テストで確かめる

体幹伸展を反応点探索に使い、施術後は立位・足踏み・片脚立位へ再評価を広げました。

局所の柔らかさだけで終わらず、複数の機能動作が同じ方向へ変わるかを見るため、手技の価値を結果で共有できます。

ASISという明確な骨指標から一点を再現できることも、臨床教育上の強みです。

論文と臨床を統合する藤井式

藤井式は、腸骨筋を解剖名だけで選ばず、ASIS保持中の体幹伸展で適合性を確認してから一点へ介入します。さらに足踏み・片脚立位まで再検査し、研究で示される可動性変化を実際の機能へ接続しています。

Single Case Study

これは、目の前の一人に対して評価と手技を行い、その場で得られた即時変化を記録した臨床報告です。藤井式の特徴である「痛む場所だけを追わず、症状が変わる反応点を探して再評価する」過程をご覧ください。

本記事は、本人の同意を得て匿名化した一人の施術前後を記録するシングルケーススタディです。藤井式の評価と手技で生じた即時変化を、関連するRCT・系統的レビュー・基礎研究と照合して紹介しています。
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