FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE
腸骨筋リリース ── 股関節の深部を、連動する部位から間接的に緩める
こんな方へ:反り腰や長時間の座り姿勢で腰が張る / 股関節の付け根が詰まる・変形性股関節症と言われた / 膝のお皿の上の前面が痛む / ふくらはぎのしびれや首の張りも気になる方、および“腸骨筋・腸腰筋”を扱いたい治療家・トレーナー
腸骨筋(ちょうこつきん)は、骨盤の内側にある腸骨窩(ちょうこつか)という広いくぼみを扇状に埋めて起こり、大腰筋と束になって(腸腰筋として)鼠径部の下をくぐり、大腿骨の内側にある小転子(しょうてんし)に停止する、股関節前面の深部筋である。股関節を曲げる(屈曲する)主役のひとつで、姿勢や骨盤の傾きにも関わる。
監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-07-13
FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS
藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持
研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。
藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。
手技デモ(実演)
動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス
EVIDENCE
藤井式の技術を、査読論文5本で支持する
本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文5本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。
FUJII METHOD
論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性
評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする
研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。
この記事で学べること/結論を先に
この記事は、治療家・藤井翔悟による股関節まわりの実技解説動画の中身を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。主役は、骨盤の深部で股関節を曲げる筋 ── 腸骨筋(ちょうこつきん)です。扱う柱は4つ ── ①腸骨筋とはどんな構造か(解剖・機能) ②硬くなるとどんな症状が出るか ③どう触診・評価(疼痛誘発)して原因を絞り込むか ④どうやって緩めるか。この動画には大きな特徴があります。それは、『腸骨筋そのものを深く押し込むのではなく、大腿筋膜張筋・腹斜筋・大転子の結節間溝という“連動する部位”を緩めることで、腸骨筋をふわっと弛緩させる』という間接法の発想です。腸骨筋は骨盤の深部にあって直接触れにくく、すぐ前を血管・神経が通るため、この間接的な発想は理にかなった安全志向のアプローチとも言えます。
結論を先に言うと、この記事の骨組みは2本柱です。(A) 動画の手技=藤井先生の臨床経験に基づく評価(停止部・小転子に重圧をかけて痛みの反応を診る)と、独自の間接法(連動する部位を介して腸骨筋を緩める)。(B) その周辺を裏づける実在のエビデンス=腸骨筋の直上を覆う腸骨筋膜(fascia iliaca)を利用した区域麻酔ブロックが股関節手術後の痛みを和らげること、軟部組織療法・筋膜リリースが関節の痛みや可動域に良い影響を与えうること、そして関節の痛みには炎症や痛みの感じ方の変化が関わること。この2本を明確に分け、手技を科学で“裏づけられる範囲で”裏づけます。あらかじめ正直に言えば、(B) の研究はいずれも腸骨筋の徒手リリースだけに完全特化した強い証拠ではなく、まして『大腿筋膜張筋や結節間溝を押すと腸骨筋が緩む』という(A)の中核を直接支えるものではありません。
この記事の読み方
「動画の手技(藤井先生の臨床)」と「研究エビデンス」を、色分けするように分けて書いています。手技の説明は動画に忠実に、エビデンスは実在する系統的レビュー・メタ解析のみを引用し、腸骨筋に特化した強い証拠がない場合はその旨をはっきり書きます。自己流の強い圧迫は避け、痛みや不調が続く・悪化する場合は医療機関を受診してください。
背景 ── なぜ“股関節の詰まり”や反り腰で腸骨筋を疑うのか
デスクワークや長時間の座り姿勢が続くと、股関節はずっと曲がった状態に置かれます。股関節を曲げる主役である腸腰筋(腸骨筋+大腰筋)は短縮位に慣れ、やがて硬く縮こまりやすくなります。立ち上がったときに骨盤が前へ引かれ(前傾し)、腰椎の反りが強まると、腰の後面の筋肉が過緊張して張り・重だるさが出る ── これが『前側の腸骨筋が硬いのに、腰(後面)が痛む』という一見不思議な現象の背景です。腸骨筋は体の前側にありますが、硬くなると腰痛を引き起こしやすい、という動画の指摘は、この骨盤・腰椎のつながりで理解できます。
腸骨筋を語るうえで欠かせないのが、双子のように並走する大腰筋との関係です。両者は下方で合流して腸腰筋という一つの機能単位を作り、共通の腱で小転子に停止します。そのため臨床では、腸骨筋と大腰筋をきっぱり分けて考えるより、腸腰筋というまとまりとして股関節の屈曲・骨盤の傾きに関わると捉えるのが自然です。動画で『大腰筋との関連が高い』と繰り返されるのは、この解剖的・機能的な一体性を指しています。
もう一つの視点が、股関節そのものの支持です。変形性股関節症などで関節の骨頭(大腿骨の丸い先端)と臼蓋(骨盤側の受け皿)の隙間が広がり、骨で体重を支えきれなくなると、周囲の筋肉が支持を肩代わりしようと働き続けます。動画では、そうして腸骨筋が過剰に緊張し硬くなり、痛みを引き起こすことがある、と説明されます。これは臨床でよく見る代償のパターンですが、変形性股関節症そのものは医療機関で診断・管理されるべき疾患であり、自己流の強い圧迫では対処できない点に注意が必要です。
そして本記事のもう一方の柱である研究の世界でも、腸骨筋の“ご近所”はよく登場します。股関節の手術後の痛みを抑えるために、腸骨筋の直上を覆う腸骨筋膜(fascia iliaca)の面に局所麻酔薬を流し込む『腸骨筋膜下ブロック(fascia iliaca compartment block)』という区域麻酔がそれです。これは徒手のリリースとは全く別物ですが、『腸骨筋膜という結合組織の面が、股関節まわりの痛みの伝わりに深く関与している』ことを、臨床の別角度から裏づける材料になります。第4章で具体的に見ていきます。
整理すると、腸骨筋が“重要”と言えるのは3つの層が重なるからです。第一に運動の層 ── 股関節を曲げる主役として、歩く・階段を上る・座位から立つといった日常動作に直結する。第二に姿勢の層 ── 大腰筋とともに骨盤の前傾・腰椎の反りを左右し、座り時間の長い現代の生活で短縮・過緊張を起こしやすい。第三に構造の層 ── 血管・神経に囲まれ、腸骨筋膜という結合組織のシートに包まれた深部にあるため、扱いには解剖の理解と安全への配慮が要る。この3層が、腸骨筋を『腰・股関節の不調でまず思い出したい筋』にしています。動画の手技も、この3層を踏まえて“直接押さずに緩める”方向へ設計されている、と読むとわかりやすくなります。
腸骨筋の解剖と機能 ── 腸骨窩を埋め、小転子へ集まる深部筋
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腸骨筋は骨盤の内側にある腸骨窩(ちょうこつか)という広いくぼみを扇状に埋めるように起こり、大腰筋と束になって(腸腰筋として)鼠径部の下をくぐり、大腿骨の内側にある小転子(しょうてんし)に停止します。すぐ前を大腿動脈(赤)・大腿静脈(青)が、外側寄りを大腿神経(黄)が下ります。血管・神経に囲まれた股関節の深部の筋です。
腸骨筋は、骨盤の内側にある腸骨窩(ちょうこつか)という大きなくぼみの全面を、扇を広げるように埋めて起こります。線維は下方外側へと集まり、大腰筋の腱と合流して腸腰筋となり、鼠径靭帯の下(筋裂孔)をくぐって、大腿骨の内側後方に突き出た小転子(しょうてんし)に停止します。起始が“面”で停止が“点”という扇状の構造が、股関節を強く曲げる力を生む土台です。
機能の中心は股関節の屈曲 ── 太ももを持ち上げる、階段を上る、走る際に脚を前へ振り出す、といった動作です。加えて、立位で骨盤を前へ倒す(前傾させる)働きや、上半身と骨盤をつなぐ姿勢の安定にも関わります。動画では、腹斜筋との近さから体幹の回旋や側屈への関与も示唆されますが、腸骨筋の主たる作用はあくまで股関節屈曲であり、回旋・側屈への寄与は補助的・間接的なもの、と控えめに理解しておくのが妥当です。
臨床で最も重要なのは、腸骨筋が“危険な隣人”に囲まれた深部にあることです。図のように、筋の前面には大腿動脈(赤)・大腿静脈(青)が、やや外側には大腿神経(黄)が走り、鼠径部でこれらが束になって大腿へ下ります。さらに腸骨筋の直上は腸骨筋膜(fascia iliaca)という丈夫な結合組織のシートに覆われています。だからこそ、腸骨筋を『真正面から深く押す』のは難しく、リスクも伴います。動画が連動する部位からの間接的なアプローチを選ぶのは、この解剖的な事情と表裏一体です。
小転子という“停止のランドマーク”
小転子は大腿骨の内側後方に突き出た骨の隆起で、腸腰筋(腸骨筋+大腰筋)が停止する場所です。仰向けで股関節を曲げ、外側に開く(外旋させる)と、小転子が前方に回ってきて触れやすくなります。動画の評価で小転子に重圧をかけるのは、この停止部の反応から腸骨筋の状態を推し量るためです。
硬い・過緊張で出る症状 ── 腰・股関節から、膝・ふくらはぎ・首まで
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動画で藤井先生が臨床経験から挙げる関連症状。腸骨筋は体の前側・股関節の深部にありますが、硬くなると ── ①腰痛(大腰筋との関連) ②ふくらはぎのしびれ ③首の痛み(胸鎖乳突筋との連動) ④膝のお皿の上あたりの前面の痛み(前面の筋膜連鎖) ⑤股関節の痛み(変形性股関節症など)── と幅広く関わりうる、という見立てです。あくまで臨床的な見立てで、症状には個人差があります。
動画で藤井先生が臨床経験から挙げる、腸骨筋の硬さと関わりうる症状は主に5つです。①腰痛 ── 前側の筋なのに、骨盤前傾を介して腰(後面)の張り・痛みにつながる。大腰筋との関連も指摘される。②ふくらはぎのしびれ ── 腸骨筋の硬さがしびれの背景になることがある。③首の痛み ── 腸骨筋の硬さは胸鎖乳突筋の硬さと比例する(連動する)ため、腸骨筋を緩めると首が軽くなることがある。④膝の前面の痛み ── お皿の上あたりの痛みは、腸骨筋と大腿直筋のつながり、いわゆる体の前側の筋膜連鎖によって引き起こされることが多い。⑤股関節の痛み ── 変形性股関節症などで関節の支持が落ち、腸骨筋が代償的に硬くなって痛む。
ここで正直にお伝えしたいのは、これらの“離れた場所への関連”の多くは、藤井先生の臨床経験と筋膜連続性の理論に基づく見立てであり、腸骨筋を対象に検証した強い研究があるわけではない、ということです。しびれや強い痛みは、まず医療機関で原因を確認することが優先されます。
一方で、腰痛・股関節痛と腸腰筋の関わり自体は、姿勢・骨盤アライメントの観点から一定の説明がつきます。座位中心の生活で腸腰筋が短縮し、骨盤前傾・反り腰が強まると、腰部・股関節前面にストレスが集中します。腸骨筋の柔軟性を取り戻すこと自体は、こうした力学的なストレスを和らげる方向に働きうる ── ただし『緩めれば必ず良くなる』という単純な話ではなく、原因の切り分けと全身のバランスが前提になります。
動画の核心①
評価・触診 ── 停止部の小転子に重圧をかけて反応を診る
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動画の評価。腸骨筋の停止部である大腿骨の小転子を触診し、そこへ重圧をかけて痛みなどの反応を見ます。仰向け(仰臥位)で股関節を屈曲・外旋させたポジションだと小転子が触れやすくなります。上前腸骨棘(ASIS)の近くでも誘発をかけられます。深部の筋なので、力任せに押さず反応を確かめながら行います。
動画の評価は、腸骨筋の停止部である大腿骨の小転子を触診し、そこへ重圧をかけて痛みなどの反応を確かめる、という疼痛誘発から始まります。ポジションが大切で、仰向け(仰臥位)で股関節を屈曲+外旋させると、小転子が前方に回ってきて触れやすくなります。停止部に圧を加えたときの反応(痛み・つっぱり)を、腸骨筋が過緊張しているかどうかの手がかりとして読み取ります。
もう一つの誘発ポイントとして、上前腸骨棘(ASIS)の近くでも反応を確かめられる、と動画では触れられます。ASISは骨盤の前で手を当てたときに触れる骨の出っ張りで、腸骨筋の起始する腸骨窩の外縁にあたります。停止部(小転子)と起始側(ASIS付近)の両方から反応を診ることで、腸骨筋が関与しているかの当たりをつける、という考え方です。
ここで重要なのは、小転子や鼠径部の近くには大腿動静脈・大腿神経が通るため、力任せに深く押し込まないことです。拍動(血管の脈打ち)を感じたら圧をずらす・離す、しびれや脚に響く感覚が出たらすぐ中止する ── これは評価の段階から守るべき原則です。深部の筋を扱う以上、『反応を確かめる』ことと『強く押す』ことは別物だと意識してください。
動画の核心②
リリース ── 連動する部位を緩め、腸骨筋を間接的にゆるめる
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動画のリリース手技。深部にある腸骨筋を直接強く押すのではなく、連動する部位を緩めて間接的にゆるめます ── ①大腿筋膜張筋(股関節の外側)をグッと押し込む ②腹斜筋(脇腹ではなく腹部の側面)をグッと掴む ③大転子の結節間溝(大腿二頭筋長頭腱が走る部位)を垂直に押し込む。いずれも「腸骨筋がふわっと弛緩する」と解説されます。※連動は筋膜連続性・臨床経験に基づく考え方です。
動画のリリースは、腸骨筋そのものを深く押すのではなく、連動する部位を緩めて間接的に腸骨筋を弛緩させる、という一貫した発想でできています。①大腿筋膜張筋のリリース ── 股関節の外側にある大腿筋膜張筋をグッと押し込むと、腸骨筋がふわっと弛緩します。動画では『初めて筋膜リリースを行う人でも効果を実感しやすい』と紹介されます。②腹斜筋のリリース ── 脇腹ではなく、腹部の側面をグッと掴むと、腸骨筋がすっと緩み出します。③大転子・結節間溝のリリース ── 大転子にある結節間溝(大腿二頭筋長頭腱が走る部位)を、長頭腱を押し込むイメージで垂直に力を加えると、腸骨筋が緩み出します。
補足として、側頭筋(こめかみ)を触りながら、胸鎖乳突筋の停止部あたりで緩める方法も紹介されます。これは、腸骨筋の硬さが胸鎖乳突筋の硬さと比例する(連動する)という動画の見立てに対応した、上半身側からのアプローチです。いずれの手技も、『離れた部位を介して腸骨筋がゆるむ』という筋膜連続性の考え方が土台になっています。
誠実にお伝えすると、これらの連動(大腿筋膜張筋・腹斜筋・結節間溝・胸鎖乳突筋を緩めると腸骨筋がゆるむ)は、藤井先生の臨床経験と理論に基づくもので、その因果を腸骨筋で直接検証した質の高い研究は確認できていません。次章では、この手技の“周辺”を裏づける実在の研究を、区別しながら見ていきます。
直接法か間接法か
動画では直接法/間接法や両側性についての明確な言及はありませんでしたが、実際に行われているのは、腸骨筋を直接押さず連動部位を介してゆるめる“間接法に近い”アプローチです。深部で血管・神経に囲まれた腸骨筋を、外側や腹部側面など触れやすく安全な場所から扱う、という点で理にかなっています。
症例の考え方・よくある質問(FAQ)
Q. 腸骨筋が硬いと、本当に腰まで痛くなるのですか? ── A. 前側の腸骨筋(腸腰筋)が短く硬くなると、骨盤が前傾し腰の反りが強まって、腰の後面の筋肉に負担が集中しやすくなります。この骨盤・腰椎のつながりを通じて、前側の筋の硬さが後ろ側の腰の張り・痛みに関わりうる、というのが考え方です。ただし腰痛の原因は多様(椎間板・関節・神経など)で、腸骨筋だけで説明できるわけではありません。強い痛みや長引く痛みは受診して原因を確認してください。
Q. なぜ腸骨筋を直接押さず、大腿筋膜張筋やお腹の横を緩めるのですか? ── A. 腸骨筋は骨盤の深部にあり、直接強く押すのは難しいうえ、すぐ前を大腿動静脈・大腿神経が通るため安全面のリスクもあります。そこで動画では、筋膜・運動連鎖でつながる大腿筋膜張筋(股関節の外側)や腹斜筋(腹部の側面)など、触れやすく安全な場所を介して間接的に緩めます。これは臨床経験と筋膜連続性の理論に基づく発想で、遠隔リリースそのものの効果を腸骨筋で直接検証した強い研究はまだ限られる点は正直にお伝えします。
Q. 変形性股関節症と言われています。自分で腸骨筋を緩めても大丈夫ですか? ── A. 変形性股関節症は関節の構造そのものの問題で、医療機関での診断・管理が前提の疾患です。周囲の筋が代償で硬くなることはありますが、鼠径部を自己流で強く押すのは血管・神経の観点からも勧められません。まずは主治医や理学療法士に相談し、運動療法や生活指導の一環として、専門家の指導のもとで行うのが安全です。痛みが強い時期の無理な圧迫は避けてください。
Q. 動画では首やふくらはぎとの関連も出てきますが、信じていいですか? ── A. 腸骨筋の硬さが胸鎖乳突筋(首)と比例する、ふくらはぎのしびれと関わる、といった話は、藤井先生の臨床経験に基づく見立てで、腸骨筋で検証した強い研究はありません。全身の筋膜がつながっているという考え方自体は興味深いものですが、しびれや首の痛みには別の原因(神経の圧迫など)が隠れていることもあります。『腸骨筋を緩めれば首やしびれが必ず治る』とは考えず、症状が続く・悪化するなら医療機関で原因を確認してください。
Q. セルフケアとして自分で腸骨筋にアプローチするなら、何に気をつければいいですか? ── A. まず、鼠径部を強く深く押し込まないことです。腸骨筋の前面には大腿神経・大腿動静脈が通るため、拍動を感じたり脚にしびれが響いたりしたら、すぐに手を離してください。動画の発想に沿うなら、深部の腸骨筋を直接狙うより、股関節の外側(大腿筋膜張筋)や腹部の側面といった触れやすく安全な部位をやさしく緩め、あわせて股関節前面を伸ばすストレッチ(後ろに脚を引いて骨盤を立てる姿勢など)を無理のない範囲で行うのが現実的です。痛みを我慢して押すほど効くわけではなく、心地よい範囲・短時間から、体の反応を見ながら行ってください。持病がある方や妊娠中の方、痛みが強い方は、始める前に専門家へ相談を。
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この手技が使われた改善症例
※ いずれも本人の同意を得て匿名化した記録です。経過には個人差があります。
限界と注意・受診の目安
- ▸腸骨筋の前面〜鼠径部には大腿神経・大腿動静脈が走り、自己流の強い圧迫は避けてください。
- ▸変形性股関節症は医療機関で診断・管理されるべき疾患で、この手技が代わりになるものではありません。痛みが強い時期の無理な圧迫は避けてください。
- ▸動画で語られる『腸骨筋が首・膝・ふくらはぎに関わる』『連動部位を緩めると腸骨筋がゆるむ』は藤井先生の臨床経験に基づく見立てで、腸骨筋に特化した強い研究の裏づけはまだ限定的です。
- ▸引用した研究は腸骨筋膜ブロック(麻酔)や膝の軟部組織療法・筋膜リリースが中心で、腸骨筋の徒手リリースそのものを検証したものではありません。
- ▸しびれ・脱力・外傷後の強い痛み・歩行困難・夜間痛・発熱があるときは、手技より先に医療機関を受診してください。
- ▸効果には個人差があり、『治る』ことを保証するものではありません。
監修・参考文献
掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。
監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)
- [1] La Via L, Raciti F, Guarneri G, Rosa O, Vasile F, Perna F, Sapienza M, Calvagna C, Testa G, Pavone V(2026).「Pericapsular Nerve Group Block Versus Fascia Iliaca Compartment Block for Hip Arthroplasty: An Updated Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials With Trial Sequential Analysis」. Anesthesiology research and practice.
- [2] Shakeri A, Alinejadfard M(2025).「The quadro-iliac plane block: a systematic review of a promising novel technique」. BMC surgery.
- [3] Jurecka A, Papież M, Skucińska P, Gądek A(2021).「Evaluating the Effectiveness of Soft Tissue Therapy in the Treatment of Disorders and Postoperative Conditions of the Knee Joint-A Systematic Review」. Journal of clinical medicine.
- [4] Farshchi F, Farshchi N, Kalayi RAH(2025).「The Role of Myofascial Release Techniques as an Adjunct to Other Therapies in Knee Osteoarthritis: A Systematic Review」. Health Science Reports, 8:e71507.
- [5] Dainese P, Mahieu H, De Mits S, Wittoek R, Stautemas J, Calders P(2023).「Associations between markers of inflammation and altered pain perception mechanisms in people with knee osteoarthritis: a systematic review」. RMD open.