FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED SINGLE CASE STUDY
15年続いた股関節のつまりが、大腰筋停止部の精密リリースでその場でほぼ消失した一例
BEFORE
サーフィン外傷後約15年、右股関節の深い痛みとつまり感が持続。側臥位・仰臥位の股関節外転終盤で痛みが出て、可動域も制限されていた。
AFTER
骨盤への力の方向と強さを評価し、鼠径部の三点を押し比べて大腰筋停止部を特定。直接リリース直後、側臥位の開排痛はほぼ消失し、仰臥位の可動域も大きく拡大した。
経過:セミナー内・単回介入/側臥位と仰臥位で股関節開排を直後再評価
PEER-REVIEWED EVIDENCE
症例で起きた即時変化を、研究結果と照合
腸腰筋への筋膜リリースを検証したRCTでは疼痛と脊柱可動性の改善が報告されています。アスリートの筋膜リリースと関節可動域を統合したメタ解析も即時のROM改善を支持しており、本症例の大腰筋停止部介入後の股関節可動域変化と一致します。
施術の動画
CASE
同じ手技名ではなく、力の方向と一点の精度が結果を変えた
約15年続く股関節のつまりに対し、藤井翔悟は側臥位の外転を基準動作にし、骨盤圧迫の方向と強さを細かく調整しました。
さらに鼠径部の近接する三点を押し比べ、痛みが最も減る大腰筋停止部を特定しました。隣の点では増悪、別の点では不変という差から、介入点を一つに絞っています。
その一点を直接リリースした直後、側臥位の痛みはほぼ消失し、仰臥位の可動域も大きく広がりました。手技の名称より精度が結果を左右することを示した症例です。
この症例の読み方
本記事は、施術前の基準動作と施術直後の再評価を比較したシングルケーススタディです。評価で反応点を絞り、手技後に何がどう変わったかを中心に記録します。
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側臥位の疼痛誘発動作テスト→伏臥位での大腰筋停止部リリース→仰臥位での再評価という順で進んだ。
STEP 1
主訴と経緯 ── サーフィン中の外傷から、約15年
本人が訴えたのは、右の股関節の痛みと“つまり感”だった。この日はすでに、セミナー内の別の受講生による骨盤の調整と、藤井による背骨への施術が行われた後の状態で、痛みは自覚的にやや軽くなっていた。しかし、股関節を開く動き(外転)そのものには、まだ制限と痛みが残っていた。
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側臥位の疼痛誘発動作テスト→伏臥位での大腰筋停止部リリース→仰臥位での再評価という順で進んだ。
問診の中で藤井が尋ねたのは「股関節はいつからですか?」という質問だった。答えは「15年ぐらい」。きっかけを聞かれると、本人は「波乗りしてて、足を、なんか予想不可能な方向に持っていかれた感じ」と語った。サーフィン中に、足が想定外の方向へ強く引っ張られるような外傷を負い、そこから右股関節の痛みが続いている、という経過である。
しかし、本人の発言をそのまま受け取るなら、痛みのきっかけはサーフィン中の外傷とはっきりしており、期間も「15年ぐらい」である。当研究所は、動画のタイトルではなく、実際に交わされた会話の内容にもとづいてこの記事を記述する。
STEP 2
同じ「骨盤を押す」動作が、なぜ結果が違ったのか
「どうですか?何がしんどい?」。藤井翔悟がそう尋ねると、セミナー参加者の女性は「股関節」と答えた。会場ではすでに、別の受講生による骨盤の調整と、藤井自身による背骨への施術が行われたあとで、本人は「少し楽になりました」と話している。実際に股関節を開く動き(外転)を確認すると、藤井も「結構さっきよりいいっすね。背骨で変わりましたね」と一定の変化を認めた。それでも、股関節そのものの痛みと“つまり感”は、まだこの時点で残っていた。
本記事が扱う約9分の映像は、ここから先の場面である。藤井は、痛みが出る動作を確かめながら身体のどこかに力を加え、反応の変化を探す「疼痛誘発動作テスト」を行っていく。印象的なのは、先に別の受講生が行った骨盤の調整では変化がなかった股関節の痛みが、藤井が『評価で見つけた力をそのまま再現する』ことで大きく変わったという場面だ。同じ名前の手技のはずなのに、なぜ結果が違ったのか——この症例の核心は、実はここにある。
以下では、動画に映る問診・評価・施術・再評価を、発言に忠実に追っていく。あわせて、本人が語った「サーフィン外傷から約15年」という経過と、施術者が語った解剖学的な解釈・臨床的な予測を区別し、どこまでが動画から確認できる事実で、どこからが施術者の見解・予測なのかを整理する。
STEP 3
なぜ股関節の奥なのか ── 大腰筋と小転子の解剖
股関節の深部で“つまり感”を生みやすい構造のひとつが、大腰筋(だいようきん、腸腰筋の一部)である。大腰筋は腰椎の椎体・横突起から起こり、骨盤の内側を通過して、大腿骨の内側にある小さな骨の突起——小転子(しょうてんし)——に停止する。股関節を屈曲させる主要な筋であり、立つ・歩く・座るといった日常のあらゆる動作に関わる。
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大腰筋は腰椎から骨盤内を通り、大腿骨の小転子に停止する。ここに強い癒着様の硬さがあった。
一般に、股関節屈筋群(大腰筋・腸骨筋)の短縮は、外傷がなくても長時間の座位や特定のスポーツ動作の繰り返しで生じうることが知られている。藤井が『これまで直接ほぐされたことがなかったと思う』と述べた背景には、大腰筋という筋が身体の深部に位置し、体表からの触診が難しい筋であるという解剖学的な事情も関係していると考えられる。
STEP 4
3点の疼痛誘発動作テストと施術 ── 大腰筋停止部への直接リリース
藤井は続けて、股関節内側・鼠径部に近い領域で、3つの点を押し比べる、より詳細な疼痛誘発動作テストを行った。1点目を押しながら開排すると、痛みが最も大きく減った。2点目では逆に痛みが強まり、3点目では変化がなかった。本人に「どれが一番好きでした?」と尋ね、「一番目」という回答を得て、この1点目を治療対象として選んでいる。
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近接する3点を押し比べ、痛みが最も軽減する点(大腰筋停止部)だけを介入対象として選んだ。
藤井はこの1点目を「大腰筋の停止部の小転子」と説明した。伏臥位(うつ伏せ)になってもらい、評価のときと同じ強さでこの部位を圧迫していく。「これ緩んでくた」「めっちゃ緩みますね」「めちゃくちゃ緩みますね」という発言のとおり、施術者の触診上、強い癒着様の反応があったとされる。藤井は「彼女、ここ多分やられたことなかったと思う」とも述べ、この部位がこれまで直接ほぐされてこなかった可能性を指摘した。
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大腰筋のほかにも、梨状筋とハムストリングス内側の起始部に硬さが残っていた。
あわせて藤井は、大腰筋のほかにも梨状筋(りじょうきん)とハムストリングス内側の起始部に硬さが残っているとし、これらも今後緩めていく対象になると説明した。股関節まわりの症状が、単一の筋肉だけでなく、複数の筋の短縮・癒着が重なって生じているという見立てである。
STEP 5
結果 ── 側臥位の開排痛がほぼ消失
大腰筋停止部への施術のあと、側臥位での開排を再評価すると、痛みはほぼ消失していた。
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画像検査は行われていない。
藤井はこの痛みを「伸張性疼痛」——短縮した筋肉が引き伸ばされることで生じる痛み、という趣旨の説明概念で捉え、「筋肉ちゃんとやっていったら取れますよ」「多分2、3回で取れる感じ」と、その場で見通しを述べた。あわせて、日常でのセルフストレッチを2〜3か月続ければ「卒業」(症状の解消)が見込めるとも語っている。
STEP 6
この症例がもっとも伝えたいこと ── 技術ではなく、精度の違い
藤井はこの場面のあと、参加者に向けて重要な指摘をしている。「柴田先生は、評価が甘いか、もしくは骨盤の詰め方がずれてたから」変化が出なかった。つまり、この症例で結果を分けたのは、手技の知識量や、解剖学の知識そのものではなく、「痛みが取れる方向に、正確な力で誘導できたかどうか」という、評価と治療の一致精度だったという主張である。
藤井はさらに、「触診とか骨標本、もしくは筋肉が触れてるだけでは足りない」「痛みが取れるための誘導の仕方を知っているか」が問われる、とも述べている。この種の感覚的なフィードバックは、動画やオンライン学習だけでは伝わりにくく、実際に相手の身体に触れ、変化を感じ取れる人からその場でフィードバックを受ける経験が必要だ、というのが藤井の立場である。
この視点に立つと、本症例は『股関節が治った物語』であると同時に、『技術の伝わりにくさを可視化した授業』でもある。同じ教室で、同じ講師から同じ理論を学んだはずの受講生どうしでも、実際に手を当てたときの結果には差が出る。だからこそ藤井は、この差を隠さずに見せ、『どこが違ったのか』を言語化することに時間を割いていた。症例記事としては地味な場面だが、手技の再現性という、施術者教育における本質的な課題を扱っている点で、記録する価値があると考える。
VISUAL
図解で追う、評価から即時変化まで
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先に行われた骨盤調整では変化がなかったが、評価で見つけた力・方向をそのまま再現すると痛みがほぼ消失した。
RESULT
大腰筋停止部への介入直後、側臥位の開排痛がほぼ消失
同じ骨盤圧迫でも、力の方向と強さを症状が消える条件へ合わせると、側臥位の外転痛が変化しました。
近接する三点を比較し、最も痛みが減る大腰筋停止部だけをリリースしました。
直後、側臥位の開排痛はほぼ消失。仰臥位でも開始時より可動域が大きく広がり、15年来の制限に明確な即時変化が得られました。
RESEARCH
この即時変化を支える査読論文
腸腰筋への筋膜リリースを検証したRCTでは疼痛と脊柱可動性の改善が報告されています。アスリートの筋膜リリースと関節可動域を統合したメタ解析も即時のROM改善を支持しており、本症例の大腰筋停止部介入後の股関節可動域変化と一致します。
CLINICAL VALUE
数センチの違いを、同じ動作の結果で選別する
鼠径部を一括して扱わず、三点を同条件で押し比べ、軽減・増悪・不変を区別しました。
介入点だけでなく、骨盤へ加える力の方向と強さも症状反応から決めています。
評価で見つけた条件を施術で正確に再現し、側臥位と仰臥位の両方で再評価したことが結果の明確さにつながりました。
論文と臨床を統合する藤井式
論文は腸腰筋介入と可動域改善を支持します。藤井式はさらに、近接三点を実際の開排痛で比較し、力の方向・強さまで個別に選びます。解剖学的ターゲットを数センチ単位で精密化する評価が、15年来の制限へ即時結果を出した核心です。
Single Case Study
これは、目の前の一人に対して評価と手技を行い、その場で得られた即時変化を記録した臨床報告です。藤井式の特徴である「痛む場所だけを追わず、症状が変わる反応点を探して再評価する」過程をご覧ください。