治療院がこの助成金に注目すべき理由
室谷さん、最近「スタッフがすぐ辞めちゃうんです」っていう院長先生の相談、増えてません?正直、残業続きで有給も取れない職場だと、そりゃ疲れちゃいますよね。
すごくわかります!整骨院や鍼灸院って予約が集中する時間帯があるので、気づけば毎日残業、有給休暇はほぼ取得ゼロという院、実はかなり多いんです。
それでスタッフさんが疲弊して、離職につながっちゃうと。悪循環ですね…。
そうなんです。だからこそ今日紹介したいのが働き方改革推進支援助成金の労働時間短縮・年休促進支援コースです。時間外労働の削減や年次有給休暇の取得促進に向けて、勤怠管理システムの導入や就業規則の整備などに取り組んだ中小企業事業主に対して、その費用の一部を国が助成してくれる制度なんですよ。
「一部」ってどれくらいなんですか?正直そこが一番気になります(笑)
上限だけ言うと成果目標によって最大150万円、助成率は3/4(条件によっては4/5)です!しかも加算制度を使うとさらに上乗せもできます。
150万円!それは本気で調べたくなる金額ですね。実施機関はどこになるんですか?
実施機関は厚生労働省(都道府県労働局)です。窓口は事業所の所在地を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)、または各地の働き方改革推進支援センターになります。
国の制度なんですね、それなら安心して調べられそうです。じゃあまず、制度の全体像から教えてください!
労働時間短縮・年休促進支援コースの特徴
このセクションでは、まず制度の骨組みから説明しますね。この助成金には5つのコースがあって、労働時間短縮・年休促進支援コースは業種を問わず申請できる基本コースという位置づけです。
業種を問わないなら、整骨院・鍼灸院・整体院みたいな予約制サービス業でもふつうに対象になりそうですね。
そのとおりです!対象になるのは労働者災害補償保険の適用を受ける中小企業事業主で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて、年休管理簿や就業規則等を整備していることが前提になります。
年休管理簿ってなんですか?聞いたことはあるけど、正直あいまいです。
スタッフごとに、年5日の年次有給休暇をいつ取得したかを記録しておく帳簿のことです。労働基準法で作成・保存が義務づけられているものなので、まだ整備していない院はこの機会に見直すのがおすすめです。
なるほど、これを機に台帳を整えるのもアリですね。ちなみに、雇っているスタッフが数名しかいない小さな院でも対象になりますか?
もちろんです!スタッフを1人でも雇用している整骨院・鍼灸院・整体院であれば申請の土台に乗ります。院長おひとりだけの完全個人事業だと労働時間短縮の対象労働者がいないので難しいですが、受付やアシスタントを雇っている院ならほぼ間違いなく候補になります。
うちみたいな体制でも大丈夫そうですね!じゃあ次は、一番気になる金額の話にいきましょうか!
助成率・助成上限額
お待たせしました、金額の話です!成果目標ごとに金額が違うって聞いたんですけど、実際どうなんですか?
そうなんです。まず助成率からいきますね。対象経費の合計額に助成率3/4を掛けた金額と、成果目標ごとの上限額のうち、いずれか低いほうの金額が実際に支給されます。
3/4だと結構手厚いですね!4/5になる条件もあるんでしたっけ?
はい。常時使用する労働者数が30人以下で、なおかつ労務管理用ソフトウェア・機器の導入や労働能率増進設備の導入(後で説明する改善事業の⑥・⑦)にかかった費用が30万円を超える場合は助成率4/5になります。スタッフ数名の院なら、この4/5に該当するケースがけっこう多いと思います。
4/5ってことは実質8割ですもんね、ありがたい!上限額のほうも教えてください。
上限額は成果目標ごとに決まっていて、いちばん金額が大きいのが成果目標①(時間外・休日労働時間の削減)です。実施前と実施後の36協定の設定時間数の組み合わせで、上限額が変わる表になっています。
| 実施前の設定時間数 | 実施後を月60時間以下に設定 | 実施後を月60時間超〜80時間以下に設定 |
|---|---|---|
| 月80時間超だった | 150万円 | 50万円 |
| 月60時間超〜80時間以下だった | 100万円 | ― |
一番シビアな条件(月80時間超から月60時間以下)を達成すると、150万円になるんですね。
そのとおりです。これがDBの概要にはなかった、もっとも重要な数字なんです。ちなみに成果目標②(年次有給休暇の計画的付与制度の新規導入)と成果目標③(時間単位年休・特別休暇の新規導入)は、それぞれ上限25万円です。
上限額は成果目標ごと・実施前の実態次第で変わる
成果目標①の上限額は、36協定を届け出た時点の「実施前」の設定時間数によって大きく変わります。もともと月60〜80時間で36協定を結んでいた院が月60時間以下まで引き下げても100万円までしか対象になりません。「うちは150万円もらえるはず」と思い込まず、必ず自院の現在の36協定の設定時間数を確認してから計画を立ててください。
この表、めちゃくちゃ重要ですね。じゃあ次は、実際にどんな取組にお金を使えるのか教えてください!
対象となる取組・対象経費
ここからは実際にお金を使える「改善事業」の中身です。7つの項目があって、この中から1つ以上を選んで実施する必要があります。
| 番号 | 改善事業(対象となる取組) |
|---|---|
| ① | 労務管理担当者に対する研修(勤務間インターバル制度に関するものや業務研修も含む) |
| ② | 労働者に対する研修、周知・啓発 |
| ③ | 外部専門家によるコンサルティング |
| ④ | 就業規則・労使協定等の整備 |
| ⑤ | 人材確保に向けた取組 |
| ⑥ | 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新 |
| ⑦ | 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新 |
⑥の「労務管理用機器」って、具体的にはどんなものが入るんですか?予約管理システムとか、シフト管理アプリって対象になります?
対象になりますよ!タイムカードや勤怠管理システム、シフト管理システム、ICカード式の打刻機器などがここに含まれます。手書きの出勤簿からICカード打刻に切り替えて、始業・終業時刻を正確に把握できるようにする、というのはまさに典型的な活用パターンです。
それ、うちの近くの整骨院がまさにやってました!始業・終業をタブレットで打刻するようになったって。
そういう院、増えてますね!⑦の「労働能率の増進に資する設備・機器」も、施術業務の効率を上げる機器であれば対象になり得ます。パソコンやタブレット、スマートフォンは原則対象外なので、そこだけ注意してください。
え、パソコンは対象外なんですか!普通に買いそうなものなのに(笑)。
そうなんです、そこはよくある誤解ポイントです。単体のパソコン・タブレット・スマートフォンは原則対象外で、あくまで勤怠管理機能や労務管理機能を持つソフトウェア・専用機器とセットで考える必要があります。導入前に労働局や働き方改革推進支援センターに相談するのが確実です。
なるほど、パソコン単体はNGでも、勤怠管理システムやコンサルティング費用ならOKってことですね。じゃあ次は、その取組を実施するだけじゃダメで「成果目標」の達成も必要なんですよね?
成果目標の要件(取組の実施だけでは不支給)
そこ、本当に大事なポイントです!この助成金は「改善事業を実施する」だけでは支給されません。選んだ成果目標を実際に達成することが支給の条件になります。
つまり「システムは導入したけど残業は減ってません」だと、お金はもらえないってことですか?
残念ながらそのとおりです。成果目標は3つのうちどれか1つ以上を選びます。①月60時間を超える36協定の時間外・休日労働時間数の削減、②年次有給休暇の計画的付与制度の新規導入、③時間単位の年次有給休暇制度と特別休暇の新規導入です。
②の「計画的付与制度」って何なんですか?
会社側があらかじめ有給休暇を取得する日を計画して割り振る制度です。「お盆の期間は交代で必ず有給を消化する」というようなルールを就業規則に新規で盛り込むイメージですね。すでに導入済みの院は対象外で、あくまで新規導入が条件です。
特別休暇っていうのも聞き慣れないんですけど。
病気休暇のように、法定の年次有給休暇とは別に会社が独自に設ける休暇のことです。③はこの特別休暇と時間単位年休を、セットでどちらも新規導入する必要があります。
成果目標は無理のない水準を選ぶのがコツ
成果目標①で「月80時間超」から一気に「月60時間以下」を狙うと上限150万円と魅力的ですが、達成できなければ助成金自体が支給されません。現状の残業時間を正確に把握したうえで、確実に達成できる成果目標を選ぶほうが、結果的に受給の近道になります。
背伸びしすぎず、確実に達成できるラインを狙うのが大事なんですね。じゃあ次は、実際の申請の流れを教えてください!
申請の流れ(交付申請と支給申請の2段階)
ここは絶対に押さえてほしいところです。この助成金は「交付申請」と「支給申請」の2段階で進みます。
2段階ってことは、先にお金をもらってから取り組むわけじゃないんですね。
そうなんです、順番がすごく大事です。流れを並べるとこうなります。
- 交付申請 — 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に「交付申請書」を提出します。令和8年度の交付申請期限は令和8年11月30日(月)午後5時までです。電子申請システム「Jグランツ」でも申請できます。
- 取組(改善事業)の実施 — 交付決定の通知を受け取ったあと、提出した計画に沿って労務管理用ソフトウェアの導入やコンサルティングなどを実施します。事業実施は令和9年1月31日(日)までに終える必要があります。
- 成果目標の達成 — 選んだ成果目標(残業時間の削減、年休の計画的付与制度導入など)を、計画どおりに達成します。
- 支給申請 — 事業実施予定期間が終了した日から起算して30日後の日、または令和9年2月5日(金)のいずれか早い日までに、雇用環境・均等部(室)へ支給申請を行います。
交付決定より前に勤怠管理システムを買っちゃったらどうなるんですか?
それは対象外になってしまいます。交付決定の通知が届く前の契約・購入・支払いは一切助成の対象になりません。見積りも原則2社以上から取るのが基本ルールなので、慌てて発注しないよう気をつけてください。
予算の都合で早期に締め切られることがある
交付申請期限は令和8年11月30日(月)ですが、本助成金は国の予算額に制約されるため、予告なく11月30日より前に受付を締め切る場合があります。「まだ11月だから大丈夫」と油断せず、導入を決めたら早めに交付申請の準備を進めるのが安全です。
早め早めの行動が大事なんですね、肝に銘じます!次は審査で見られるポイントを教えてください!
審査のポイント・攻略法
実際に申請してみて、ここでつまずく院が多いみたいな落とし穴ってあります?
よくあるのは、就業規則や労使協定の整備が中途半端なまま交付申請を出してしまうケースですね。年休管理簿がなかったり、36協定の届出内容と申請書の記載がズレていたりすると、審査で差し戻されることがあります。
交付申請前にそろえておきたい書類
- 36協定の届出控え — 現在の時間外・休日労働の設定時間数が確認できるもの
- 年休管理簿・就業規則 — 年5日の年次有給休暇取得の記録・規定が整っているもの
- 見積書2社以上 — 導入予定のソフトウェア・機器・コンサルティング費用の比較見積り
見積りは2社以上、これ忘れそうです(笑)
実務でもかなり多い漏れなんです。あと成果目標①を選ぶ場合、令和8年4月1日以前の2年間に月45時間を超える時間外労働の実績が求められる場合があるので、現状の勤怠データを事前に整理しておくと審査がスムーズです。
過去の残業実績も見られるんですね。支給申請の段階ではどんなところをチェックされるんですか?
支給申請では、導入した労務管理用ソフトウェア・機器の領収書や契約書、そして成果目標が実際に達成されたことを示す36協定の届出控えや年休取得記録を確認されます。計画と実態がズレていると、減額や不支給になることもあります。
計画どおりにきっちり実行することが大事なんですね。ちなみに賃金を上げるとさらにお金がもらえるって聞いたんですけど、本当ですか?
賃金引上げ加算・割増賃金率引上げ加算
はい、本当です!成果目標に加えて、賃金引上げ加算と割増賃金率引上げ加算という2つの上乗せ制度があります。
まず賃金引上げ加算から教えてください。
常時使用する労働者が30人を超える院ではあまり多くないと思いますが、賃上げした人数と引上げ率に応じて加算額が決まる仕組みです。参考までに、労働者30人超の場合の加算上限をまとめました。
| 賃上げ率 | 1〜3人 | 4〜6人 | 7〜10人 | 11〜30人(上限) |
|---|---|---|---|---|
| 3%以上 | 6万円 | 12万円 | 20万円 | 60万円 |
| 5%以上 | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 240万円 |
| 7%以上 | 36万円 | 72万円 | 120万円 | 360万円 |
治療院だと従業員10人未満のところも多そうですけど、その場合はどうなるんですか?
常時使用する労働者数が10人未満の場合、5%以上・7%以上の引上げ区分については上表の2.5倍の上限額が加算されます。10人以上30人以下の場合は2倍です。小規模な院ほど、賃上げによる加算のインパクトが大きくなる設計になっているんです。
それはうれしい設計ですね!割増賃金率引上げ加算のほうはどんな内容なんですか?
こちらは残業代の割増率を引き上げると加算される制度です。月60時間以内の時間外労働の所定割増賃金率を5%以上引き上げると25万円、さらに月45時間超60時間以内の割増賃金率を50%以上とし、かつ労働者1人あたり月10時間以上の残業削減も実現すると75万円が加算されます。
残業を減らしつつ割増率も上げると、二重でお得になるんですね。
そうなんです。賃上げや割増率の見直しをちょうど検討していた院なら、このタイミングで合わせて実施するとかなりお得になりますよ!ここまでの内容を、まとめの表で確認させてください。
基本情報まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)2026年度・令和8年度 |
| 実施機関 | 厚生労働省(都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)) |
| 助成上限額 | 成果目標①で最大150万円(実施前後の設定時間数の組み合わせによる)、成果目標②③は各25万円 |
| 助成率 | 対象経費の合計額×3/4(常時使用労働者30人以下かつソフトウェア・機器導入費が30万円超の場合は4/5) |
| 加算制度 | 賃金引上げ加算(最大360万円、10人未満は2.5倍)、割増賃金率引上げ加算(25万円・75万円) |
| 交付申請期限 | 令和8年11月30日(月)午後5時(予算消化により早期締切の場合あり) |
| 事業実施期限 | 令和9年1月31日(日)まで |
| 支給申請期限 | 事業実施予定期間終了日から30日後、または令和9年2月5日(金)のいずれか早い日 |
| 対象地域 | 全国 |
| 問い合わせ先 | 働き方改革推進支援センター、または事業所を管轄する都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) |
| 公式ページ | 厚生労働省 働き方改革推進支援助成金 |
こう見ると全体像がスッキリしますね。11月30日が期限とはいえ、早めに動いたほうがよさそうです。
よくある質問
スタッフが2〜3人しかいない小さな整骨院でも申請できますか?
できます。スタッフを1人でも雇用していて労災保険が適用されている中小企業事業主であれば対象です。ただし院長おひとりだけの完全個人事業の場合、労働時間短縮の対象となる労働者がいないため対象外になります。
予約管理システムやシフト管理アプリの導入費用は対象になりますか?
はい、労務管理用ソフトウェア・機器の導入・更新として対象になり得ます。ただしパソコン・タブレット・スマートフォン単体の購入費は原則対象外なので、システム利用料やライセンス費用を中心に計画するのが確実です。
交付申請と支給申請、両方とも書類を出す必要があるんですよね?
そのとおりです。交付申請で計画を提出し、事業実施後に成果目標の達成を確認してから支給申請という2段階です。交付決定前に契約・購入してしまうと対象外になるので、順番を守ってください。
過去に他のコースでこの助成金を使ったことがある院でも、また申請できますか?
基本的には申請できますが、コースや年度ごとに要件が変わるため、過去の実績があっても改めて最新の交付要綱を確認することをおすすめします。不明な点は働き方改革推進支援センターに相談するのが確実です。
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関連書類・リンク
最後に、申請前にチェックしておきたい公式情報をまとめておきますね。
お願いします!
交付要綱・支給要領やパンフレット、申請様式は厚生労働省 働き方改革推進支援助成金の公式ページにまとまっています。電子申請はJグランツからも可能です。
相談窓口
不明な点は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)、または各地の働き方改革推進支援センターに問い合わせるのが確実です。就業規則の見直しなど、専門家によるコンサルティングも無料で受けられる場合があります。
設備投資や賃上げをセットで考えるなら、他の助成金もあわせて見ておきたいですよね。
そうですね。賃上げと設備投資の組み合わせなら業務改善助成金、勤怠管理システム以外のITツール導入まで幅を広げるならデジタル化・AI導入補助金2026もあわせて検討する価値があります。それぞれ対象経費や申請時期が違うので、組み合わせられないか一度確認してみてください。
残業を減らして、有給も取れて、スタッフの定着にもつながる。治療院にとって心強い制度だとわかりました!今日はありがとうございました!
こちらこそありがとうございました!交付申請期限の令和8年11月30日に向けて、就業規則の見直しと勤怠管理システムの選定を早めに進めておいてくださいね。