FUJII FASCIA INSTITUTE シンボルマークFUJII FASCIA INSTITUTE藤井翔悟 筋膜研究所

FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE

エビデンスレベル:専門家意見

長掌筋リリース ── 肘の奥の痛みと手の使いすぎを、前腕中央の硬結から読み解く

こんな方へ:手の使いすぎ・手首の使いすぎで肘の奥や真ん中が痛む / テニス肘・ゴルフ肘と言われたが改善しない / スマートフォン・タイピング・調理など細かい手作業で前腕がだるくなる / 手首を掌屈(手のひら側に曲げる)と痛みや抵抗感がある / 前腕全体に重だるい疲労感が続いている / 長掌筋という筋肉を初めて知った方 / 手・前腕を扱う治療家・セラピスト

長掌筋(ちょうしょうきん)は、肘の内側にある内側上顆(ないそくじょうか)から起こり、前腕前面の中央をほぼ垂直に走行して手根管を越え、手のひらの掌腱膜(しょうけんまく)に停止する細長い筋肉である。手首の掌屈(パームフレクション)と4指の弱い屈曲、および掌腱膜の緊張を担う。隣接する尺側手根屈筋・橈側手根屈筋・浅指屈筋と同じ内側上顆(共通屈筋腱)から起こり、深部の筋膜で密接につながっているため、疲労しやすく、その疲労は浅指屈筋など隣接筋にも波及しやすい。治療家・藤井翔悟の実技動画は、肘の奥の痛みや手首の痛みという主訴に対して、長掌筋の硬結(筋硬結)を触診で特定し直接ゆるめるアプローチを示す。

監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-07-25

FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS

査読論文 4本と照合SR/メタ解析RCT専門家意見

藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持

研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。

藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。

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手技デモ(実演)

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動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス

EVIDENCE

藤井式の技術を、査読論文4本で支持する

本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。

FUJII METHOD

論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性

評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする

研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。

この記事で学べること/結論を先に

この記事は、治療家・藤井翔悟による長掌筋(ちょうしょうきん)の実技解説動画(YouTube ID: oMteDMrXJD4)の内容を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。テーマは4つ ── ①長掌筋とはどんな筋か(解剖・機能) ②硬い・疲労しているとどんな症状が出るか ③どう触診・評価するか ④どうやってリリース(ゆるめる)するか。あらかじめ正直にお伝えします。この動画は「長掌筋を直接ほぐす手順を教える」シンプルなハウツー動画です。動画の主軸は、前腕中央を走行する長掌筋の硬結(筋硬結)を触診で特定し、そこに直接圧をかけてゆっくりゆるめる、という評価と直接リリースの流れです。

この記事の2本柱を最初に示します。(A)動画の手技=藤井先生の臨床経験に基づく評価と手技。長掌筋の硬結を触診で特定し、直接ゆるめることで肘の奥の痛みや手首の掌屈痛を改善しようとするアプローチ。長掌筋と浅指屈筋の疲労連鎖という観察も提示されます。(B)周辺のエビデンス=筋膜性トリガーポイント理論の2024年レビュー・手の腱症への治療の系統的レビュー・前腕部の深層対浅層筋膜介入のRCT・慢性末梢疼痛(CRPS)の治療ナラティブレビューという実在4本の論文。(A)と(B)は明確に区別して提示します。

この記事の読み方 ── 動画(体験)と記事(地図)

動画は藤井先生の触診の当て方・硬結の見つけ方・リリースの考え方を『体験』するもの。記事は『いま何を、なぜやっているか』と『どこまでが研究で、どこからが臨床経験か』を持ち帰る地図です。この動画の核心である『長掌筋の硬結が肘の奥の痛みを起こしている』という主張は、藤井先生の豊富な臨床観察に基づくものであり、これを直接検証したRCTや系統的レビューは現時点では存在しません。医療情報として、研究の裏づけと臨床経験を正確に区別した上で読み進めてください。

背景 ── なぜ「長掌筋」が肘の痛みの見落とされた原因になりうるのか

手を酷使した後の肘の痛み ── デスクワークでタイピングを続けた翌日、スマートフォンを長時間操作した後、料理や手芸で細かい手作業を繰り返した後 ── こうした訴えは非常にありふれています。そのような「手の使いすぎによる肘の痛み」を医療機関で訴えると、外側上顆炎(テニス肘)・内側上顆炎(ゴルフ肘)・腱鞘炎などと診断されることが多いですが、なかなか改善しないケースも少なくありません。動画の冒頭で藤井先生が指摘するのが、そういう状況で見落とされがちな原因筋のひとつが「長掌筋(ちょうしょうきん)」だという点です。

長掌筋は筋肉の名前として一般にはあまり知られていません。解剖学を学んでいない人はほとんど聞いたことがない筋名でしょう。しかし手首を動かすたびに使われる筋のひとつであり、スマートフォンの操作・キーボードのタイピング・持ち上げる動作・繰り返す把持動作などで慢性的な過負荷にさらされやすい筋です。しかも、この筋は非常に疲労しやすい性質があると動画では説明されています。長掌筋が繰り返しの使用によって硬くなる(筋硬結・トリガーポイントが生じる)と、肘の奥や真ん中にじわじわとした鈍い痛みが現れてきます。これが「手の使いすぎによる肘の奥の痛み」の一因として見落とされやすい構造です。

さらに重要なのが、長掌筋が他の筋肉と密接につながっている点です。動画では「長掌筋は浅指屈筋(せんしくっきん)などと連結しているため、長掌筋の疲労が他の筋肉に波及しやすい」と説明されています。長掌筋・浅指屈筋・尺側手根屈筋・橈側手根屈筋はすべて肘の内側の内側上顆(共通屈筋腱)から起こります。これらの筋は深部の筋膜(深筋膜・筋間中隔)によって層状につながっており、ひとつの筋が疲労して硬くなると、その張力が筋膜を介して隣接する筋にも伝わりやすいのです。その結果として前腕全体の重だるさや、手指の屈曲力の低下といった症状が出てくることがあります。

動画が伝えるメッセージのひとつは「肘の奥の痛みが改善しないのであれば、長掌筋を確認してみてほしい」というものです。これは、長掌筋が肘の痛みの『唯一の原因』だということではありません。むしろ、手の使いすぎによる肘の痛みの原因が複数ある場合に、長掌筋という比較的知名度の低い筋を評価のリストに加えることで、それまで見落とされていたアプローチが可能になる ── という視点の提供です。この記事を通じて、長掌筋という筋を知り、自分の体への触れ方・評価の仕方を学んでいただければ幸いです。

長掌筋の解剖と機序

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長掌筋の解剖 ── 内側上顆から掌腱膜へ、前腕中央を走る細い筋
前面 / anterior 内側上顆(起始) 長掌筋 尺側手根屈筋(FCU) 掌腱膜(停止) 浅指屈筋(FDS) 橈側手根屈筋(FCR) 正中神経 外側上顆

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長掌筋(ちょうしょうきん)は、肘の内側にある内側上顆(ないそくじょうか)を起始とし、前腕前面の中央をほぼ垂直に走行して手首を越え、手のひらの掌腱膜(しょうけんまく)に停止する。隣接する尺側手根屈筋(FCU)・橈側手根屈筋(FCR)・浅指屈筋(FDS)と同じ内側上顆から起こり(共通屈筋腱)、深部の筋膜で密接に連結している。正中神経(黄)が長掌筋腱の橈側を伴走して手根管に向かう。

図1は右前腕の前面(掌側)からの解剖図です。肘の内側に突出している内側上顆(ないそくじょうか)が、長掌筋・尺側手根屈筋・橈側手根屈筋・浅指屈筋・円回内筋という前腕屈筋群の共通の起始点(共通屈筋腱)となっています。このうち長掌筋は、前腕のほぼ中央を縦に走行し、手首を越えて、手のひらの中央に扇状に広がる「掌腱膜(しょうけんまく)」に停止します。骨に停止しない珍しい筋のひとつで、骨ではなく筋膜性の組織(掌腱膜)が停止部となっています。

長掌筋の働きは、主に3つです。①手首の掌屈(手のひら側に曲げる動き)。②4指の弱い屈曲への補助(浅指屈筋などと協調して)。③掌腱膜を引き上げて緊張させることで、手のひらの皮膚を固定し、把持(つかむ)動作を安定させる。重要なのは③で、道具をしっかり握る・持ち上げる・書く・タイピングするといった日常の手の動作で、長掌筋は掌腱膜を介して手のひらの安定化に貢献しています。この働きのために、手を繰り返し使うほど長掌筋は累積疲労を受けやすい筋となっています。

解剖学的に興味深い事実があります。欠如しても日常生活や運動能力への大きな影響はないとされ、これは正常な解剖学的変異のひとつです。触診でPLの腱が確認できない場合、この欠如変異の可能性も考慮する必要があります。欠如している人では、代わりに浅指屈筋や橈側手根屈筋が掌屈に貢献する比重が高くなっていると考えられます。

正中神経(せいちゅうしんけい)との関係も重要です。正中神経は、長掌筋腱の橈側(親指側)を走行して手根管(手首の骨の通路)へと向かいます。手根管の中を正中神経が通るため、手根管が狭くなったり周囲組織が腫れると、正中神経が圧迫されて手根管症候群(親指・人差し指・中指のしびれ)を生じます。長掌筋のリリースを行う際は、この正中神経の走行を念頭に置き、強く速く押し込まないことが安全上の基本です。

なぜ長掌筋の硬結が「肘の奥の痛み」を生じさせるのか、という機序を整理します。筋肉の過使用や疲労によって「トリガーポイント(筋硬結)」という局所の過感受性点が生じることがあります。このトリガーポイントが活性化すると、そこから離れた場所に「関連痛」と呼ばれる鈍い放散痛を生じさせることがあります。長掌筋の場合、筋腹(前腕中央から肘よりの部分)のトリガーポイントが肘の奥・真ん中に関連痛を放散させることが、臨床的に観察されているのです。これは「長掌筋に問題があるのに、痛みが肘に出る」というメカニズムで、痛みの場所=原因の場所とは限らない、というトリガーポイント理論の核心的な考え方です。

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長掌筋と浅指屈筋の連結 ── 疲労が伝播するメカニズム
内側上顆(共通屈筋腱) 長掌筋 (PL・浅層) 筋膜 連結 浅指屈筋 (FDS・深層) 掌腱膜へ 中節骨(指の中段)へ 疲労の伝播 PLが過負荷で硬化 ↓ 筋膜を介して張力伝達 FDSにも硬さ・疲労感 ↓ 結果として 手指の屈曲力↓ 前腕全体の重だるさ

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動画で言及される「浅指屈筋との連結」。長掌筋(PL)と浅指屈筋(FDS)は、内側上顆の共通屈筋腱を介して起始が近接し、前腕中央では筋膜(深筋膜・筋間中隔)によって層状につながっている。PL が過疲労で硬くなると、その張力が筋膜を介してFDSに伝わり、FDS自体も硬くなりやすい。これが「長掌筋の疲労が他の筋に波及する」理由であり、FDSを介した指・手首の屈曲力の低下や、前腕全体の重だるさとして症状が広がりうる。ただし、この連結の詳細な機序は藤井先生の臨床的観察であり、強い研究の裏づけはまだない。

動画の手技 ── 触診・評価・リリース(図解)

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長掌筋が硬いと出る症状 ── 肘の奥の痛みと手・手首のだるさ
1 2 3 長掌筋が硬いときに出やすい症状 1肘の奥・真ん中の鈍痛(最典型)2手首を曲げると痛い(掌屈痛)3手全体のだるさ・疲労感 ※ これらはほかの疾患(外側上顆炎・内側上顆炎・   尺骨神経障害など)でも起こります。   自己判断せず、悪化時は受診を。

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動画で藤井先生が示す症状の分布。①肘の奥・真ん中(主訴:深部の鈍痛・重だるさ)が最も典型的。②手首の掌屈痛(手を手のひら側に曲げると痛い)。③手全体のだるさ・使いすぎ感。これらは長掌筋そのものの痛みだけでなく、硬結(トリガーポイント)から放散する関連痛として現れることが多い。なお、これらの症状はほかの原因でも生じるため、長掌筋が唯一の原因とは限らない。

動画(藤井翔悟)が対象とする症状を整理します。最も典型的な主訴は「肘の奥・真ん中が痛む」という深部の鈍痛・重だるさです。これは外側上顆炎(テニス肘:肘の外側の痛み)や内側上顆炎(ゴルフ肘:肘の内側の痛み)とは、痛みの場所が少し異なります。テニス肘は肘の外側、ゴルフ肘は肘の内側なのに対して、長掌筋が関与する肘の痛みは「奥・真ん中」という深部の感覚が特徴です。加えて、手首を手のひら側に曲げると痛い(掌屈痛)、前腕全体がだるく疲れやすい、といった症状もあります。動画では、術者自身の前腕を例に「この辺りが非常に痛い」と実際の触診を示しながら、硬結の実在を確認する場面があります。

これらの症状は、長掌筋以外の原因でも生じることを忘れてはなりません。外側上顆炎・内側上顆炎・腱鞘炎・尺骨神経障害(肘部管症候群)・手根管症候群・頸椎由来の神経症状など、類似した症状をきたす疾患は多くあります。動画で示すアプローチは、こうした疾患の除外診断後に長掌筋の関与を評価する、という文脈で理解するのが適切です。しびれ・脱力・症状の急激な悪化がある場合は、まず医療機関を受診してください。

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触診・評価 ── 長掌筋を「浮かせて」硬結を探す
STEP 1 ── 対立テスト 長掌筋腱が浮き出す (※約14%の人は欠如) STEP 2 ── 前腕中央の触診 硬結を探す (グリグリした部分) 押して痛みがあれば トリガーポイントの可能性 ← 肘方向へ触診

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長掌筋の評価は2ステップ。【STEP 1】親指の先端と小指の先端をくっつける(対立)と、手首の中央に細い腱が浮き上がる ── これが長掌筋の腱。この腱が見える人・見えない人は正常変異で、約14%の人は先天的にこの筋がない。【STEP 2】その腱を遡るように、前腕の前面中央を肘方向に触診し、「硬くグリグリした部分(硬結)」を探す。押すと痛みを感じる場合は長掌筋のトリガーポイントの可能性がある。

動画で示される触診・評価の手順は2ステップです。まず【STEP 1】として、長掌筋腱を視覚的に確認します。患者または自分の親指の先端と小指の先端をくっつける(対立させる)と、手首の中央に細い腱が浮き上がります。これが長掌筋の腱です。「この腱が見えない人もいますが、それは先天的に長掌筋がない正常な変異です。約14%の人がこれにあたります」と動画でも示唆されるような認識が重要です。腱が確認できたら、その腱を辿るように前腕の前面を肘の方向へ触診します。これが【STEP 2】の筋腹の触診です。触診しながら「硬くグリグリした部分(硬結)」を探します。動画では術者が自分の前腕を触診しながら「この辺りが非常に痛い」と言っており、その部位が硬結(トリガーポイント)にあたります。

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リリース手技 ── 硬結を直接ゆるめる
1 2 3 リリースの手順 1最も痛みの強い硬結を特定する2母指などで硬結に垂直に圧を加える3じっくり押したまま10〜30秒待つ4組織がゆるむ感覚を感じたら圧を抜く5手首・肘を動かして変化を確認する 藤井先生のポイント 「硬くてグリグリしている部分を しっかりと緩める」(動画より)

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動画で藤井先生が示すリリース法。触診で見つけた硬くグリグリした硬結(筋硬結)に対して、母指などで直接圧を加えてゆっくりとほぐす直接法。「強く速く押す」のではなく、「じっくり押し込んで、組織がゆるむのを待つ」のが基本。硬結が複数ある場合は、最も押して痛みが強い部位(最大圧痛点)から順に行う。施術後に手首を動かして、可動域や痛みの変化を確認する。

リリース手技の手順は、動画では「硬くてグリグリしている硬結をしっかりと緩める」というシンプルな説明です。具体的には、母指(または示指)を硬結に垂直に当て、ゆっくりと押し込みます。「強く速く押す」のではなく「じっくり押し込んで組織がゆるむのを待つ」というアプローチです。10〜30秒ほど圧を維持していると、組織がゆるんでくる感覚が感じられるタイミングがあります。そのタイミングで圧を解放し、手首を動かして可動域や痛みの変化を確認します。改善が感じられれば、長掌筋の関与が確認されたことになります。硬結が複数ある場合は、最も圧痛が強い部位(最大圧痛点)から順に対応します。動画では浅指屈筋との連結についても触れており、PL のリリース後に浅指屈筋も確認することが示されています。

症例の考え方・よくある質問

Q. 長掌筋が原因かどうか、どうやって確認しますか? ── A. 動画の評価手順を使います。①手首の中央に腱が浮き上がるか確認(対立テスト)。②前腕前面中央を肘方向へ触診し、硬結(グリグリした部分)があるかを調べる。③硬結を押したときに肘の奥・真ん中に痛みが再現されるかを確認する。この「硬結を押すと肘の奥の痛みが再現される」という手順は、トリガーポイント理論における「誘発痛(エリシテッドペイン)」の確認であり、Zhaiら 2024のレビューでも触れられているトリガーポイント同定の基本的な手順です。ただし、同じ症状は他の疾患でも出るため、強い痛み・しびれ・脱力があれば先に医療機関を受診してください。

Q. セルフケアとして自分でリリースしても大丈夫ですか? ── A. 自己触診・セルフリリース自体は比較的安全ですが、守るべき原則があります。①強く速く押さない。正中神経が長掌筋腱の橈側を走行しており、過度な圧迫で神経症状(手のしびれ・ピリピリ感)が出ることがあります。②しびれ・電気が走る感覚・症状の増悪がある場合は即中止する。③内側上顆の後方(尺骨神経が通る肘部管付近)を強く押さない。尺骨神経の刺激により、小指・環指のしびれが出ることがあります。④骨折後・外傷後・炎症がある場合(腫れ・熱感・発赤を伴う痛み)は自己流で行わず、医療機関に相談してください。これらの点を守れば、前腕前面中央の触診と軽い圧迫リリースは家庭で試みる余地があります。

Q. なぜ前腕の筋肉(長掌筋)の問題が、「肘の奥の痛み」として感じられるのですか? ── A. これはトリガーポイント(筋硬結)による「関連痛(referred pain)」というメカニズムで説明されます。筋肉が過使用や疲労によって過感受性を持つ局所点(トリガーポイント)を生じると、その部位から神経系を介して離れた場所に痛みを放散させることがあります。これは「痛みを感じる場所=痛みの原因がある場所」とは限らない、ということを意味します。Zhaiら 2024のレビューでは、この放散痛(Referred Pain)は筋膜性疼痛の3種類の痛みのひとつとして整理されており、的を絞ったトリガーポイントへの介入が疼痛軽減に有効でありうるとされています。長掌筋の場合、前腕中央〜肘よりの筋腹のトリガーポイントが肘の深部に関連痛を飛ばすことが、臨床的に観察されています。この機序があるため、「肘の奥が痛い」という主訴に対して、肘そのものでなく前腕の長掌筋へのアプローチが奏功するケースがあるのです。

Q. 長掌筋が先天的にない(欠如変異)場合、このアプローチは使えますか? ── A. 長掌筋が欠如している場合、対立テスト(親指と小指をくっつける)で手首中央に腱が浮き上がらず、長掌筋腱自体の触診もできません。ただし、「手の使いすぎによる肘の奥の痛み」の原因が長掌筋だけとは限りません。PL が欠如している場合でも、浅指屈筋・橈側手根屈筋・尺側手根屈筋など他の前腕屈筋群が過負荷になり、同様の症状を生じる可能性があります。PL が触診で確認できない場合は、前腕前面の他の筋群を同様に触診・評価し、硬結がないかを確認するアプローチへ切り替えることが現実的です。欠如変異は約14%とされており、決してまれではありません。

この手技が使われた改善症例

#右肩痛#肩挙上制限#腋窩痛

右肩の挙上が、尺側前腕・腋窩・胸椎への連続評価でその場で大きく広がった一例

成人女性。右腕を上げる途中で肩周囲に痛みが出て、挙上が止まっていた。施術前に同じ挙上動作を繰り返し、痛む位置と動作範囲を基準として確認した。

#前腕の硬さ#手指の使いすぎ#肩痛

前腕屈筋群を二点で捉えると、硬い筋線維がその場で緩んだ一例

成人女性。手指を動かしながら前腕前面を触診すると、浅指屈筋を含む屈筋群に硬い線と動きにくい範囲が確認された。

#手首の痛み#前腕の疲労#肩甲骨周囲のこわばり

セラピスト自身の手首の痛みが、前腕屈筋の起始部で変わった ── ペットボトルを使った疼痛誘発動作テストの一例

治療家向けセミナーの受講生である女性セラピスト。日々の施術で患者の腕を持ち上げたり回したりする中で、手首のあたりに痛みを感じるようになった。自己流のケアを続けていたが、痛みは手首だけでなく肩甲骨のあたりまで広がっている感覚があった。肩の挙上・肘の屈伸には制限がなく、重い物を持ち上げる動作でのみ痛みが再現された。

#野球肘#テニス肘#ゴルフ肘

野球肘・テニス肘・ゴルフ肘は「一撃で治る」のか ── 炎症か筋膜かを見分け、肩甲骨まで診る藤井翔悟の評価法

動画のタイトルは「野球肘、一撃で治します」。しかし文字起こしを確認すると、実際の内容は理学療法士・作業療法士向けに肘の痛み(野球肘・テニス肘・ゴルフ肘)への考え方を教える約6分の講義であり、特定の患者を撮影した施術デモは含まれていない。藤井翔悟自身の若い頃の肘の痛み(外側か内側かも本人が失念)と、『知り合いが最近肘を痛がっていて、3分ほどで痛みが取れた』という一文だけの、映像のない逸話が語られる。

※ いずれも本人の同意を得て匿名化した記録です。経過には個人差があります。

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限界と注意・受診の目安

  • この記事で紹介する長掌筋リリースは、藤井先生の臨床経験に基づく手技です。肘の奥の痛みや手首の掌屈痛を改善すると断定するものではなく、効果には個人差があります。
  • 前腕前面には正中神経・尺骨神経・尺骨動脈が走行しています。強く速く押し込まない・しびれや電気感が出たら即中止してください。
  • 内側上顆の後方(肘部管付近)の強い圧迫は尺骨神経を刺激し、小指・環指のしびれを誘発することがあります。
  • 手・指に持続的なしびれ・脱力がある、または骨折後・外傷後・腫れや熱感を伴う痛みがある場合は自己流で行わず医療機関(整形外科・手外科)を受診してください。
  • この記事の内容は診断や治療の代替ではありません。症状が続く・悪化する場合は自己判断せず専門家に相談してください。
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監修・参考文献

掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。

監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)

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