FUJII FASCIA INSTITUTE シンボルマークFUJII FASCIA INSTITUTE藤井翔悟 筋膜研究所

FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE

エビデンスレベル:SR/メタ解析

距腿関節と変形性股関節症 ── 足首の角度が股関節の痛みを変える理由

こんな方へ:変形性股関節症による股関節痛がある方・その評価に取り組む理学療法士・医師

足首(距腿関節)の背屈・底屈位置が、変形性股関節症の痛みにどう影響するか。藤井翔悟の多関節評価法を図解し、エビデンスと臨床経験の線引きを誠実に示す。

監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-10-10

FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS

査読論文 4本と照合SR/メタ解析

藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持

研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。

藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。

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手技デモ(実演)

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動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス

EVIDENCE

藤井式の技術を、査読論文4本で支持する

本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。

FUJII METHOD

論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性

評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする

研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。

この記事で学べること

この記事は、藤井翔悟の実技動画(変形性股関節症の痛みに対するヒント解説)の内容を、図解と研究で読み解くガイドです。動画の核心は「股関節の痛みは、足首・脊柱・肩の状態と連動している」という視点であり、単に股関節そのものを施術するのではなく、痛みに最も影響を与えている部位を評価で突き止めてから介入するというアプローチです。

動画で「体験」し、この記事で「意味」を持ち帰ってください。

動画の内容について

この動画は変形性股関節症の痛み管理を主テーマとし、足関節・脊柱・肩の状態が股関節の痛みに影響するという複合的な評価視点を紹介しています。距腿関節そのものの解剖・触診・直接リリース手技の詳細な解説は動画内にありませんが、足関節の役割を理解することがこの評価の出発点となるため、本記事では距腿関節の解剖から丁寧に説明します。

距腿関節とは ── 下肢連鎖の「要」

図1
距腿関節の解剖 ── 脛骨・腓骨が距骨を挟む「モーティス(ほぞ穴)」構造
前面 / anterior 底背屈 総ROM≈70° 脛骨 腓骨 内果 (内くるぶし) 外果 (外くるぶし) 距骨 踵骨 距腿関節腔 三角靱帯 前距腓靱帯

図は横にスワイプして拡大表示できます

距腿関節は、脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)が形成する「モーティス(ほぞ穴)」に距骨(きょこつ)が嵌まりこむ構造です。脛骨の内果(内くるぶし)と腓骨の外果(外くるぶし)が距骨の両側を挟み込み、関節の安定性を保ちます。外果は内果より約1cm遠位(低い位置)にあるため、足は内側に内返りしやすく、外側の靱帯(前距腓靱帯など)が損傷を受けやすい構造です。内側は三角靱帯が扇状に安定性を担います。

距腿関節(きょたいかんせつ)は、一般に「足首の関節」と呼ばれる関節です。脛骨(けいこつ=すねの骨)と腓骨(ひこつ=外くるぶしの骨)が下方で形成する「モーティス(ほぞ穴)」に、距骨(きょこつ)が嵌まり込む構造をしています。この「ほぞ穴」構造が、足首の主要な動き──背屈(つま先を上に向ける)と底屈(つま先を下に向ける)──を担います。

脛骨の内果(ないか=内くるぶし)と腓骨の外果(がいか=外くるぶし)が距骨の両側を挟み込み、関節の安定性を保ちます。解剖学的な特徴として、外果は内果より約1cm遠位(より低い位置)にあるため、足首は生まれつき内側に倒れやすく(内反)、外側の靱帯(前距腓靱帯・踵腓靱帯など)が捻挫の際に損傷を受けやすい構造になっています。内側の三角靱帯は広く扇状に広がり、内側の安定性を担います。

背屈の制限は特に重要で、しゃがみ動作・階段昇降・ランニングの着地動作で足首が十分に曲がらないと、膝が前に出なくなり骨盤前傾・股関節の内旋が増大するという代償が現れやすくなります。これが「運動連鎖」を通じて股関節に及ぶメカニズムの基本です。

距腿関節の周囲には、運動に重要な多数の腱が走ります。前面には前脛骨筋腱・長母趾伸筋腱、後面にはアキレス腱(腓腹筋・ヒラメ筋の腱)、外側には腓骨筋群の腱(短腓骨筋・長腓骨筋)、内側には後脛骨筋腱・長趾屈筋腱・長母趾屈筋腱が走行します。これらの腱が正常に機能することで、足首の安定性と運動性のバランスが保たれます。

変形性股関節症と「足首」の関係 ── なぜ運動連鎖が重要か

図2
足から股関節へ ── 下肢の「運動連鎖」と距腿関節の役割
足首の背屈制限あり 骨盤前傾 内旋↑ 制限 足首の背屈スムーズ 背屈OK 安定 vs 連鎖の経路 足首(距腿)↓膝関節↓股関節↓骨盤・体幹

図は横にスワイプして拡大表示できます

足底から股関節まで、骨と関節は力学的な連鎖でつながっています。距腿関節の背屈制限(足首が上に曲がりにくい状態)があると、歩行・しゃがみ動作で膝が前に出なくなり、代わりに骨盤が前傾・股関節が内旋する代償が生まれやすくなります。この「連鎖」の視点が、藤井先生の変形性股関節症評価の出発点です。

変形性股関節症(OA)は、関節軟骨の変性・摩耗と周囲の骨・筋・軟部組織の変化を特徴とする慢性疾患です。国内での患者数は推計100万人を超え、中高年女性に多く、痛みと可動域制限により日常生活の質(QOL)を大きく損ないます。変形が進んだ段階では人工股関節置換術が根本的な治療となりますが、術前・術後のリハビリ、あるいは保存療法の段階では、痛みを管理し機能を維持することが治療の中心的な課題になります。

従来の保存療法では、筋力強化・可動域訓練・体重管理が中心でした。これらは意義ある介入ですが、「痛みを積極的に軽減する」という視点では一歩踏み込んだアプローチが必要なことがあります。藤井先生が動画で提唱するのは、股関節の痛みを単独で評価するのではなく、「今日の痛みに最も影響している部位はどこか」を足首・脊柱・肩の評価テストで絞り込むというアプローチです。

運動連鎖の観点では、足首の背屈可動性は股関節の機能と深く関わっています。足首が背屈不足になると、歩行・立ち座り・階段動作において骨盤の前傾・股関節の相対的な負荷増大が生じやすくなります。逆に、足首の状態を改善することで股関節への機械的ストレスが分散し、痛みが変化する場合があります。これが「足首を評価することで股関節の痛みに手がかりが得られる」という発想の理論的背景です。

ただし重要なのは、この「運動連鎖」の考え方自体は多くの研究者が支持するものの、「足首の角度を変えると股関節OA患者の痛みが変わる」という特定の評価手順を直接検証した質の高い研究は、現時点では限られているという点です。動画の評価法は理学療法士として長年にわたる藤井先生の臨床経験に基づいており、その個別の手順については「有望な臨床知」として受け取ることが適切です。

エビデンス:下肢治療と変形性股関節症の研究

この記事では、この動画の内容に関連する4本の実在論文を引用します。いずれも変形性股関節症・下肢の疼痛管理・神経筋機能に関するものです。動画の特定の評価法を検証したものではありませんが、「下肢全体を対象にしたアプローチが下肢痛に影響しうる」という文脈の周辺エビデンスとして使います。

まず、変形性股関節症・膝OAを対象としたドライニードリングの有効性を調べた2022年の系統的レビュー&メタ解析があります。Jiménez-Del-Barrioらは7つの無作為化比較試験(291名)を対象に、ドライニードリングが短期的な痛み強度(SMD = -0.76)と身体機能(SMD = -0.98)を統計的に有意に改善することを報告しました。研究の質は「適切から高い」と評価されましたが、中・長期的な効果では有意差はなく、効果は短期に限られると結論しています。この研究は「股関節OAに対して筋膜・トリガーポイントへのアプローチが短期的に有効でありうる」というエビデンスとして参照できます。

次に、スポーツ選手を対象としたドライニードリングの効果を包括的に調べた2025年の系統的レビューがあります。Kużdżałらは24研究・580名のアスリートを分析し、ドライニードリングが特に下肢に集中して行われており(全体の58.3%)、痛みに関しては比較的ポジティブな効果を示す一方、筋力・パフォーマンスへの効果は一貫しないと報告しています。アスリートの下肢を対象とした手技研究において、足首周囲の筋への介入も含まれることから、下肢の連鎖的なアプローチの文脈として参照できます。

膝周囲の疼痛(膝蓋大腿痛・膝OA・術後疼痛)に対するドライニードリングを検討した2020年のメタ解析では、短期的に痛み(SMD -0.53)と機能障害(SMD -0.58)の改善が報告されています(Rahouら)。この研究が示すのは「隣接関節である膝の痛み管理においても、筋膜・トリガーポイントへのアプローチが有効でありうる」ということです。股関節OAにおいて、足首・膝の状態が股関節痛に関与するという運動連鎖の考えと整合性があります。ただし証拠の質は「低〜中程度」と評価されています。

さらに、経皮的神経調節法(percutaneous neuromodulation: PNM)が神経筋骨格系疾患の痛みと身体機能に与える効果を調べた2022年の系統的レビューでは、痛みの強度・圧痛閾値・バランス・筋持久力・機能スコアの有意な改善が報告されています(Fidalgoら)。PNMは電気刺激を加えた鍼を使った神経筋への介入法で、足首周囲の神経筋機能にも適用されます。この知見は「下肢の神経筋系へのアプローチが痛みと機能に影響する」という文脈で参照できますが、変形性股関節症に特化した研究ではない点に注意が必要です。

動画の核心

3段階評価:足首→脊柱→肩で「今日の主因」を探す

動画で藤井先生が提示するのは、変形性股関節症の股関節痛に対する「多関節評価フロー」です。股関節屈曲時に痛みが出る患者に対して、足関節の角度・脊柱の回旋・肩の挙上の3つの条件で痛みの変化を確認し、どこが「今日の痛みの主因」かを絞り込みます。施術の出発点を決める評価の手順です。

図3
評価①:足関節の角度で股関節痛が変わるか(動画の核心テスト)
底屈位(つま先下) つま先↓ 痛み ↑ vs 背屈位(つま先上) つま先↑ 軽減 ↓ 評価の解釈(藤井先生の臨床経験より) 底屈位で痛み↑ → 底屈筋(腓腹筋など)の緊張が股関節に影響している可能性 背屈位で痛み↓ → 背屈を制限していた構造(前脛骨筋ほか)の弛緩が股関節に影響 変化がない場合は足関節の関与が少ないと推定。次に脊柱・肩を評価へ。

図は横にスワイプして拡大表示できます

藤井先生が紹介する評価法。仰向けで股関節を曲げた時の痛みを、足首を「つま先上げ(背屈位)」にした場合と「つま先伸ばし(底屈位)」にした場合で比較します。どちらの角度にしたとき痛みが軽減するかによって、足関節が股関節の痛みに与える影響の方向性を推定できます。これは筋肉の収縮・伸張状態が変わり、運動連鎖を通じて股関節への負荷が変化するためと考えられています(藤井先生の臨床経験に基づく評価法)。

【評価①:足関節テスト】仰向けで股関節を屈曲させた時の痛みを、足首を背屈位(つま先を上に向けた状態)と底屈位(つま先を下に向けた状態)で比較します。背屈位にした時に痛みが軽減する場合は「足関節の影響が強い」と判断し、足周囲の筋(前脛骨筋・腓腹筋ほか)の状態を介入ターゲットとして検討します。底屈位で軽減する場合はその逆です。変化がない場合は、足関節の関与は少ないと推定し、次の評価へ進みます。

藤井先生の解説によれば、足関節の背屈・底屈位置では、周囲の筋(腓腹筋・ヒラメ筋・前脛骨筋など)の伸張・収縮状態が変わります。これが下腿〜膝〜股関節へと筋膜・腱の張力を変え、股関節への荷重・筋緊張のパターンを変化させるメカニズムであると考えられています。理学療法士や作業療法士としての解剖学・運動学知識を応用した評価法であると強調されています。

図4
評価②:脊柱の回旋が股関節痛に影響するか
右回旋しながら股関節屈曲 左回旋しながら股関節屈曲 体幹→右 痛み? ↑↓ 脊柱右回旋状態で評価 ↔ 体幹→左 変化? ↑↓ 脊柱左回旋状態で評価 脊柱回旋テストの読み取り どちらかの回旋で痛みが明らかに変わる → 脊柱の回旋可動性・周囲筋が関与 回旋の左右差がない → 脊柱より他の部位(足関節・肩)の関与を優先的に評価 足関節テスト・肩テストとあわせ、最も影響が大きい部位を特定して介入の優先順位を決める

図は横にスワイプして拡大表示できます

動画で紹介する評価の第2段階。仰向けの状態で体幹を右にひねりながら股関節を曲げた時と、左にひねった時の痛みを比較します。脊柱の回旋状態(どちらに向いているか)によって股関節屈曲時の痛みが変わる場合、脊柱の可動性・筋の状態が股関節の痛みに貢献していると推定されます。足関節・肩関節と並べて評価することで、「どこが今日の股関節痛の主因か」を絞り込む臨床的なロジックです。

【評価②:脊柱回旋テスト】仰向けで体幹を右にひねった状態で股関節を屈曲した時の痛みと、左にひねった状態での痛みを比較します。どちらかの回旋方向で痛みが明らかに変わる場合は、脊柱の回旋可動性または周囲筋の状態が股関節痛に関与していると推定します。脊柱の回旋制限は、股関節の動きに代償的な負荷を与えることがあります。特に腰椎の回旋制限がある場合、股関節が代わりにより大きく動こうとする動態が観察されることが臨床的に知られています。

図5
評価③:肩関節の挙上が股関節痛に影響するか
通常の仰臥位 基準痛 ±0 肩≈160°挙上位 ≈160° 痛み変化 ↑↓? → 肩テストの意義(動画から) 肩挙上で股関節痛が変わる → 肩周囲筋・三角筋の状態が股関節の痛みに連動している可能性 変わらない → 肩の関与は少ないと推定。他の関与部位を探す 3つのテストで「今日の主因」を絞る 足関節テスト + 脊柱テスト + 肩テストの結果を重ねて どこが最も痛みの変動に関与しているかを見極め、介入部位の優先順位を決める ※ これらのテスト手順は藤井先生の臨床経験に基づくもので、単独のRCTによる検証はまだありません

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動画で紹介する評価の第3段階。仰向けで股関節を曲げた時の痛みを、肩を約160度挙上(屈曲または外転)した状態と、通常の状態で比較します。肩の位置によって股関節痛が変わる場合、肩周囲の筋・筋膜の状態が股関節の痛みに関与していると推定されます。「距腿関節→脊柱→肩関節」という多関節評価の発想は、藤井先生の臨床経験に基づくもので、体の各部位が痛みに連動するという見立てに立ちます。

【評価③:肩関節テスト】仰向けで肩を約160度挙上(屈曲または外転)させた状態で、股関節屈曲時の痛みが変化するかを確認します。肩の位置によって痛みが変わる場合、肩周囲の筋(三角筋・肩甲帯の筋群)の状態が股関節の痛みに連動していると推定します。藤井先生はこれを「肩と股関節の繋がり」として、今後さらに詳しく解説していく予定であると述べています。

3つの評価テストを経て「今日の主因」が足関節にあると特定されれば、まず足周囲の筋・筋膜への施術(例:腓腹筋・前脛骨筋のリリース)を行い、その後再評価で変化を確認します。脊柱が主因であれば腰椎周囲、肩が主因であれば肩甲帯・三角筋への介入を優先します。この「評価→介入→再評価」のフローが、藤井先生のアプローチの核心です。

理学療法士・医師が実践する際のポイントとして、藤井先生は「筋骨格の起始停止・解剖学・走行・生理学・運動学の知識を統合して考えること」を繰り返し強調します。

研究でどこまで言えるか ── 正直な線引き

図6
どこまでが研究の裏づけで、どこからが臨床経験か
研究の裏づけがある SR/メタ解析 RCT 観察研究 基礎研究・理論・臨床経験 ← 変形性股関節症への筋膜アプローチ ← 下肢ドライニードリング 臨床経験・理論の領域 ・足関節角度テストで  股関節痛が変わる評価 ・脊柱・肩のテスト手順 → 有望だが検証は今後の課題 正直に区別して提示します 効果には個人差があります

図は横にスワイプして拡大表示できます

誠実さのために線を引きます。「変形性股関節症に対して下肢の筋膜・トリガーポイントへのアプローチが痛みに影響する」という大枠は、系統的レビュー・メタ解析の知見があります。一方、「足関節の角度を変えると股関節痛が変わる」「肩を挙上すると股関節痛が変わる」という多関節評価法は、藤井先生の臨床経験と運動連鎖の理論に基づくもので、この特定の評価法を検証した質の高い研究はまだ限られます。

この記事で引用した4本の論文(Jiménez-Del-Barrio 2022、Kużdżał 2025、Rahou 2020、Fidalgo 2022)はいずれも、ドライニードリング・経皮的神経調節法といった下肢への筋膜・神経筋アプローチが疼痛に有効でありうることを支持するものです。特に変形性股関節症・膝OAに対しては短期的な効果を示すRCTのメタ解析があり、「股関節OAに対して周辺組織へのアプローチが有効でありうる」という点はエビデンスで支持されています。

引用した論文が支持するのは「下肢の筋膜・神経筋への介入が痛みに影響する」という大枠であり、「足首の角度(背屈vs底屈)を変えることで股関節痛を評価・管理できる」という動画固有の評価プロトコルを検証したものではありません。脊柱回旋テスト・肩挙上テストも同様です。これらの評価手順は藤井先生の豊富な臨床経験と解剖学的知見に基づく「臨床知」の段階にあります。

これは「その評価法が無効だ」という意味ではありません。臨床経験から生まれた知見が、その後の研究で支持されていく歴史は医学に多数あります。評価プロトコルとして有望であると判断する専門家もいますが、患者に「これで必ず治ります」と断言できる根拠にはなりません。この記事はその正直な立場をとります。

症例の考え方とよくある質問

Q. 足首の評価テストは、どんな変形性股関節症患者にも使えますか? ── A. 基本的な禁忌はありませんが、急性期の強い炎症、骨折、腱断裂の疑いがある場合は先に医師の診察を受けてください。また、このテストは「痛みが足首の影響を受けているか」を確認する評価ツールであり、足首だけが原因であることを証明するものではありません。テスト結果はあくまで介入の優先順位を決める情報の一つとして使います。

Q. 足首を背屈位にしたら股関節痛が減った場合、何をすればよいですか? ── A. 足関節の背屈を制限している構造(腓腹筋の硬さ・アキレス腱の短縮・距腿関節の可動域制限など)を評価し、必要に応じてストレッチ・筋膜リリース・関節モビライゼーションを検討します。ただし介入前後で股関節痛の変化を必ず確認し、期待した変化が得られない場合は再評価を行います。

Q. 脊柱・肩のテストも同時に行うべきですか? ── A. 動画では足関節→脊柱→肩の順に評価することを推奨しています。各テストで「今日の痛みを最も変化させる部位」を見極め、介入の優先順位を決めます。すべての部位が関与する場合もあれば、一つの部位が圧倒的に影響している場合もあります。評価の精度を上げるには解剖学的知識と経験の蓄積が必要であり、初学者には動画を繰り返し見て、実際の患者での実践を積み重ねることをすすめます。

Q. 変形性股関節症の患者に自己ケアとして足首のストレッチを教えても良いですか? ── A. 一般的にアキレス腱ストレッチ・足首の円運動など穏やかな可動域運動は安全に実施できます。ただし「これをすれば股関節が良くなる」という保証はなく、痛みが増悪する場合は中止し、医師・理学療法士に相談するよう指導してください。自己流の強い圧迫・過度な負荷は避けるべきです。

Q. 理学療法士でない一般の方がこの評価を自己評価として使えますか? ── A. 基本的な「足首を上に向けた/下に向けたときに股関節の感覚が変わるか」という確認は自己観察として行えますが、診断・治療の根拠には使えません。変形性股関節症の診断・治療方針は整形外科での画像診断(X線・MRI)が必須です。痛みの強化・新たな症状の出現があれば必ず医師に相談してください。

まとめ

距腿関節(足首)は下肢運動連鎖の最も遠位にある関節であり、その背屈・底屈位置が膝・股関節の荷重分散・筋緊張パターンに影響を与えます。変形性股関節症の痛みに対して、藤井先生が動画で提唱するのは「足関節の角度・脊柱の回旋・肩の挙上」という3段階評価で痛みの主因を絞り込み、最も影響の大きい部位から介入するというアプローチです。

引用した4本の論文(変形性股関節症・膝OAへのドライニードリング、下肢アスリートへの針治療、経皮的神経調節法のSR)は、下肢の筋膜・神経筋アプローチが疼痛に有効でありうることを示す周辺エビデンスです。ただし、動画固有の3段階評価プロトコルそのものを検証した研究はまだなく、これは臨床経験と運動連鎖理論に基づく「有望な臨床知」の段階にあります。

「治る」という断定はしません。危険なサインがある場合は手技より先に受診を。そのうえで、動画で示された多関節評価の視点は、理学療法士・医師が「今日の痛みの主因を探す」ための実践的なヒントになります。動画で「体験」し、この記事で「意味」を持ち帰っていただければと思います。

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この手技が使われた改善症例

※ いずれも本人の同意を得て匿名化した記録です。経過には個人差があります。

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限界と注意・受診の目安

  • ▸この記事・動画は医療診断・治療の代替を目的とするものではなく、専門家向けの教育的コンテンツです。
  • ▸変形性股関節症の治療方針は整形外科医と協議して決定してください。自己判断での施術継続は推奨しません。
  • ▸強い痛み・腫脹・しびれ・夜間痛・発熱を伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。
  • ▸動画の評価法(足関節・脊柱・肩テスト)は藤井先生の臨床経験に基づくものであり、この特定の評価プロトコルを検証したRCTは現時点では存在しません。
  • ▸この記事で示す内容の効果には個人差があります。「治る」という断定はせず、効果を保証するものではありません。
  • ▸ドライニードリング・経皮的神経調節法などの侵襲的手技は、有資格者が適切な訓練のもとで行う必要があります。
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監修・参考文献

掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。

監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)

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  2. [2] Kużdżał A, Trybulski R, Muracki J, Klich S, Clemente FM, Kawczyński A(2025).「Dry Needling in Sports and Sport Recovery: A Systematic Review with an Evidence Gap Map」. Sports medicine (Auckland, N.Z.).
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