FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE
側頭筋リリース ── こめかみの「一番硬い点」を押して頭痛の原因を特定する
こんな方へ:こめかみ・前頭部・頭頂部の頭痛が続く / デスクワークや頭を使う仕事の後に頭が重くなる / 生理前後に頭痛が出やすい / 肩こり・首の痛みに頭痛が重なる / 薬に頼らず頭痛を改善したい / 側頭筋・顎関節周囲を扱う治療家・セルフケア実践者
側頭筋(そくとうきん)は頭蓋骨外側の側頭窩を扇状に覆い、頬骨弓の下を通って下顎骨の冠状突起に停止する咀嚼筋の一つ。主作用は下顎の挙上(口を閉じる)と後退で、浅側頭動脈がその表面を走る。治療家・藤井翔悟の実技動画では、側頭筋の過緊張がこめかみ・前頭部・頭頂部の頭痛の原因になりやすく、とくにデスクワーカー・クリエイター・生理前後の女性に多い、と解説される。評価法は「こめかみ周辺で一番硬い点(重責部位)を探してギュッと押し、押すと頭痛が楽になるかどうかを確認する」という前後比較による疼痛誘発テスト。このアプローチは血管性頭痛にも有効な可能性があるとされる(浅側頭動脈が走る部位のリリースにもなるため)。
監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-07-21
FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS
藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持
研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。
藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。
手技デモ(実演)
動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス
EVIDENCE
藤井式の技術を、査読論文4本で支持する
本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。
FUJII METHOD
論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性
評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする
研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。
この記事で学べること/結論を先に
この記事は、治療家・藤井翔悟による側頭筋(そくとうきん)の実技解説動画の内容を、図解と実在の研究論文で読み解くガイドです。テーマは4つ ── ①側頭筋とはどんな筋か(解剖・機能)、②硬くなるとどんな頭痛が出やすいか、③どう評価・触診で原因を絞り込むか、④どうアプローチするか。動画の核心は「こめかみ周辺で一番硬い点(重責部位)を探してギュッと押し、押すことで頭痛が楽になるかを確認する」という、非常にシンプルかつ明快な評価とリリースの一体化した手技です。この手技の背景にある解剖学的な根拠と、周辺の研究論文を照合することで、「これは信頼できる考え方か」を読者自身が判断できる地図を提供します。
あらかじめ正直に言っておきます。この動画は「側頭筋の具体的な手技のハウツー動画」というより、「側頭筋が頭痛の原因になりうることを臨床経験から説明する動画」に近い内容です。動画の中で解説される解剖学的な説明や触診・リリース手順は概念的なものが多く、細部の手技については字幕から読み取れる情報が限られています。ですので本記事は、動画の主旨(側頭筋の過緊張→頭痛のメカニズム、疼痛誘発テストの考え方、圧迫によるリリース)を軸に、一般的な解剖学の知見で文脈を補いながら整理しています。動画に明示されていない細部については「動画には記載なし」と明記し、創作をしません。
この記事の骨組みは2本柱です。(A) 動画の手技=藤井先生の臨床経験に基づく評価(一番硬い点を押して前後の変化を見る)と、側頭筋リリースの考え方(圧迫→血行改善→頭痛軽減)。(B) 周辺のエビデンス=側頭筋を含む顎関節症・咀嚼筋痛への徒手療法(ドライニードリング・マニュアルセラピー)とボツリヌス毒素治療に関する実在の系統的レビュー4本。(B) の研究は「側頭筋の圧迫で頭痛が軽減する」という動画の手技を直接証明するものではありませんが、「咀嚼筋の緊張を緩めることが側頭部の痛みを改善しうる」という方向性を間接的に示す文脈的な裏づけとして使います。「治る」といった断定はしません。
この記事の読み方 ── 動画(体験)と記事(地図)
動画は藤井先生の「側頭筋が硬いとこうなる・こう評価する」という臨床の発想を体験するもの。記事は「それはどんな解剖学的根拠か・どこまで研究で裏づけられているか」を確認する地図です。とくに「押して楽になるかどうかで判断する」という評価法は、動画独自の実践的な発想であり、一般の臨床ガイドラインと同一ではありません。
背景 ── なぜ「側頭筋」が頭痛の原因として注目されるのか
頭痛は、日常生活における最もありふれた症状の一つです。その中でも、こめかみ・前頭部・頭頂部が締めつけられるような、あるいはズキズキと拍動するような頭痛を経験したことがある方は多いはずです。そして、こうした頭痛の相当数が、実は頸部や頭部の筋肉の緊張によって引き起こされている、または悪化させられているという事実は、現代の頭痛医学でも認識されています。そのなかで、こめかみに位置する側頭筋は、特に注目される筋の一つです。動画でも藤井先生は、「頭痛持ちの人、特に女性に多い頭痛の原因として、側頭筋の硬さが関与していることが多い」と述べています。
なぜ側頭筋が頭痛に関わるのでしょうか。その背景には、いくつかの解剖学的・生理学的な理由があります。第一に、側頭筋は顎を閉じる力(下顎挙上)の主役であるため、食いしばり・歯ぎしり・強いくいしばりの癖(ブラキシズム)がある人では、側頭筋が24時間近く過剰に緊張し続けることがあります。この持続的な緊張は虚血(血行不全)を招き、筋の硬結(硬いかたまり)とトリガーポイント(触ると遠い場所に痛みを飛ばす過敏な点)を形成します。第二に、デスクワーク・パソコン作業・スマートフォンの長時間使用など、顎や頸部を静止した姿勢で長時間保つ現代的な生活様式が、側頭筋に慢性的な負荷をかけます。動画でも「PC作業が多い人、頭を使う仕事(クリエイター・広告・計算・ロジック思考)をする人に頭痛が多い」と説明されています。
第三に、女性の生理周期との関連があります。女性ホルモン(エストロゲン)の変動は、痛みの閾値(どの程度の刺激を痛みと感じるか)に影響することが知られており、生理前や生理中には同じ筋の緊張でも頭痛として感じやすくなる生理学的な背景があります。動画では「生理の前後で頭痛が起こるパターン」が側頭筋の硬さと関連することが臨床経験から述べられています。第四に、側頭筋の硬さは、肩こり・首の痛みを持つ人に頭痛が重なるパターンとも関連します。肩こり・頸部筋の緊張が頭蓋周辺の筋肉(側頭筋・後頭筋・前頭筋など)の緊張を連鎖的に高める、という臨床的なパターンは広く認識されています。
そして注目すべきは、側頭筋のすぐ表面を走る「浅側頭動脈(せんそくとうどうみゃく)」という血管の存在です。浅側頭動脈は、こめかみ付近で容易に脈打ちを感じることができる動脈で、偏頭痛(片頭痛)の拍動性の痛みと深く関わる部位とも言われてきました。動画では、側頭筋をリリースすることが「血管周囲のリリース」にもなるため、血管性頭痛(偏頭痛的なズキズキ)にも有効な可能性があると述べられています。これは藤井先生の臨床推測の部分であり、偏頭痛の発作期への適用には慎重な判断が必要ですが、筋と血管が近接しているという解剖学的事実はこの考え方の基盤となります。
本記事の立場を明確にします。動画に語られた内容を誠実に紹介しながら、研究の裏づけがある部分(咀嚼筋への徒手療法・BoNT-Aの系統的レビュー)と、藤井先生の臨床経験に基づく部分(一番硬い点を押すことで頭痛が楽になるかを見る評価法)とを明確に区別します。頭痛は原因が多岐にわたる症状であり、「側頭筋が硬い=頭痛の原因」と断定することはできません。ただし、側頭筋の過緊張が頭痛の一因となりうること自体は、臨床的に十分に根拠のある観察です。
側頭筋の解剖と機序 ── 側頭窩を覆う扇形の咀嚼筋
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側頭筋(そくとうきん)は頭蓋骨外側の側頭窩(そくとうか)を扇状に覆い、頬骨弓(きょうこつきゅう)の下を通る腱を経て下顎骨の冠状突起(筋突起)に停止する咀嚼筋の一つ。主作用は下顎の挙上(口を閉じる)と後退。浅側頭動脈がその表面を走るため、動画では「血管周囲のリリース」にもなると言及されている。
側頭筋(学名:Musculus temporalis)は、頭蓋骨の外側面にある側頭窩(そくとうか)と呼ばれる凹んだ部分を、扇形に満たすように位置しています。側頭窩は、側頭骨・頭頂骨・前頭骨・蝶形骨に囲まれたエリアで、こめかみから耳の上・頭頂部の側面にかけての広い範囲を占めます。ここを扇状に広がって起始した筋線維は、下方に向かって次第に収束し、ちょうど耳の前の「頬骨弓(きょうこつきゅう)」の下を通る腱へとまとまります。この頬骨弓は、頬骨と側頭骨の間に橋のように渡る骨の弧で、側頭筋の腱はこのアーチの下をトンネルのようにくぐり抜けて、下顎骨の前方上部にある冠状突起(かんじょうとっき、筋突起とも)に停止します。
側頭筋の主な作用は2つです。第一は下顎の挙上 ── つまり口を閉じる動きです。咀嚼筋の中でも側頭筋は最も大きな体積を持つ筋の一つであり、強く噛む力の主要な担い手です。第二は下顎の後退で、前に出た下顎を引っ込める動作を担います。この2つの作用から、食いしばり・歯ぎしり(ブラキシズム)・長時間の咬合(かみ合わせ)保持、あるいはストレスによる顎の緊張といった状況で、側頭筋は慢性的に過負荷を受けやすいことがわかります。特に現代人の多くが無意識にやりがちな「歯を食いしばって集中する」「ストレスで顎に力が入る」といった癖は、側頭筋の持続的な収縮と疲労につながります。
側頭筋の機序を頭痛との関連で整理すると、こうなります。①側頭筋が慢性的に緊張する(食いしばり・デスクワーク・ストレス等)→ ②筋内の血流が低下し、局所的な虚血が生じる → ③虚血により発痛物質(プロスタグランジン・ブラジキニン等)が蓄積し、筋が硬結化・トリガーポイントを形成する → ④これがこめかみ・前頭部・頭頂部の頭痛として感じられる。加えて、側頭筋の硬結が浅側頭動脈の周囲の組織を締めつけたり、炎症性の変化が血管周囲に波及したりすることで、拍動性のズキズキ(血管性頭痛に似た痛み)が生じることもある、と藤井先生は臨床的に説明しています。
動画内で「一番重責が起こりやすい場所、血行障害が起こっている場所」として藤井先生がマークする部位は、側頭筋の中で最も緊張・虚血が起こりやすい「筋腹の特定の点」です。これはトリガーポイントの概念と一致しており、押したときに局所の圧痛だけでなく、頭部の広い範囲に不快感・重さが誘発される場所です。このような「押すと遠い場所に症状が広がる」現象は、筋膜性疼痛の特徴的なパターンとして臨床で広く観察されており、側頭筋のトリガーポイントが頭痛のパターンに関与することは、顎関節症や頭痛の専門的な文脈でも言及される現象です。ただし、動画でこのメカニズムが詳細に解説されているわけではなく、字幕から読み取れる範囲で整理しています。
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藤井先生の臨床観察に基づく症状分布。こめかみ(①)から前頭部(②)・頭頂部(③)にかけての頭痛が主。デスクワーク・クリエイティブ職・計算仕事・女性の生理前後といった「頭を使う」状況で悪化しやすく、肩こり・首の痛みと併発するケースが多い。これらは藤井先生の臨床経験に基づく分布であり、症状には個人差がある。
側頭筋の緊張による頭痛は、主にこめかみ(①)から前頭部・額(②)、頭頂部(③)にかけてのパターンが多いとされています。こめかみは側頭筋の中心部にあたり、最も症状が出やすい部位です。前頭部への波及は、側頭筋の前方線維が額の方向に向かって走ること、また前頭筋・眼輪筋との筋膜のつながりが関与する可能性があります。頭頂部への波及は、側頭筋の後方・上方線維の走行方向(頭頂骨の外側縁)と関係します。ここで大切なのは、側頭筋の緊張だけがこれらの部位の頭痛を引き起こすわけではない、という点です。前頭部・頭頂部の頭痛は、後頭筋・前頭筋・帽状腱膜(ぼうじょうけんまく)の緊張によっても生じます。動画の評価法(押して楽になるかどうかの前後比較)は、「この頭痛が側頭筋由来かどうかを絞り込む」という意味で有用なアプローチです。
動画の核心
動画の手技 ── 評価・触診から圧迫リリースへ
ここからは動画の内容そのものに沿って、評価からリリースまでを図解します。冒頭で述べたとおり、この動画は具体的な手技の細部(どの指を・どの向きに・何秒・どの角度で)を詳細には解説しておらず、主に「側頭筋が頭痛に関わる理由」と「一番硬い点を押して確認する評価の考え方」に時間が割かれています。したがって、本記事でも動画に忠実に「評価の発想と手順」を中心に解説し、細部の手技は字幕から読み取れる範囲で提示します。
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藤井先生の評価法:こめかみ周辺で「一番硬い」と感じる場所を探し、そこを指でギュッと押す。押した瞬間に頭痛が軽減したり、強い圧痛(重だるさ)が誘発されたりすれば、その頭痛は側頭筋由来の可能性が高い。「押して楽になるか」という前後比較が評価の核心であり、変化がなければ別の原因を考える。
評価の出発点は「触診(一番硬い場所を探す)」です。こめかみ周辺、具体的には耳の上から前にかけての側頭部をゆっくりと指で触れながら、「一番硬い」と感じる点を探します。この「一番硬い点」が、動画で藤井先生が「重責(じゅうせき)が起こりやすい場所、血行障害が起こっている場所」と表現している部位です。この点は人によって位置が異なりますが、こめかみのやや後上方、または前上方に多く見られます。側頭筋が全体的に緊張している人では、触っただけで広い範囲が硬く感じられますが、特に「ぐっと押したときに強い圧痛・重だるさを感じる点」がターゲットになります。
次のステップが「疼痛誘発テスト(前後比較)」です。一番硬い点を指でギュッと押し込みます。その状態で、普段感じている頭痛の症状が軽減するかどうかを確認します。動画では、押すことで「楽になる」という変化があれば、その頭痛は側頭筋の過緊張・虚血由来である可能性が高い、という評価が成り立つと説明されています。これは「疼痛誘発操作(provocative testing)」の一種で、ある部位への刺激が症状を変化させるかどうかを見ることで、その部位の関与を推測するという、臨床で広く使われる評価の考え方です。ただし、この方法は確定診断ではなく、「関与の可能性を絞り込む手がかり」として使うものです。押しても変化がなければ、別の原因(頸椎・緊張型頭痛の別の筋・神経的な問題など)を疑います。
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藤井先生の手技:側頭筋上の「一番硬い点」に母指または人差し指を当て、ゆっくり圧を加えて5〜10秒保持する。圧を抜いた後の変化を確認する。この操作は浅側頭動脈周囲のリリースにもなり、ヘッドスパのようなリラックス効果(血流改善)をもたらすとされる。血管性頭痛にも有効な可能性がある(血管が豊富な部位のため)。※効果は個人差がある。
評価で側頭筋の関与が示唆されたら、リリース(圧迫保持)に進みます。手順はシンプルです ── 一番硬い点に母指(親指)または人差し指の腹を当て、ゆっくりと圧を加えます。強く速く押し込むのではなく、「じわっと」圧を増やしていくのがポイントです。その圧を5〜10秒程度保持し、その後ゆっくりと圧を抜きます。この操作を数回繰り返し、症状の変化(頭が軽くなる・こめかみの重さが取れる等)を確認します。動画では、このアプローチによって「ヘッドスパのようなリラックス効果」が得られることがある、と説明されています。これは、圧迫→血流改善というメカニズムの体感的な表現です。
動画のもう一つの重要なポイントは、血管性頭痛(拍動性のズキズキ)への言及です。藤井先生は「側頭筋の周囲には血管が色々走っているため、このリリースは血管周囲のリリースにもなっているだろう」と述べています。これは医学的な断定ではなく臨床的な推測ですが、浅側頭動脈という動脈がまさにこの部位の直上を走るという解剖学的事実は、この推測を支持する根拠になります。ただし、偏頭痛(片頭痛)の急性発作期には、頭部への直接的な圧迫が症状を悪化させる可能性もあります。拍動性の強い頭痛がある場合は、急性発作中のセルフリリースは避け、まず発作が落ち着いてから試みてください。
動画の最後で「ビッグダディ外注テックのやり方」という言葉が出てくる場面がありますが、これは字幕上の表記であり、具体的な別の手技の説明はされていません。本記事では、字幕から確認できる範囲での内容のみを提示します。動画には含まれない手技・細部については、独自の創作を一切しないことを明記します。
症例の考え方・よくある疑問(FAQ)
Q. デスクワーク中は頭痛がひどいのに、仕事をやめると治まります。側頭筋が原因でしょうか? ── A. 「仕事中に悪化し、休むと楽になる」というパターンは、側頭筋(および頸部・肩の筋)の緊張型頭痛の典型的な経過と一致します。デスクワーク中はモニターを凝視し、無意識に顎に力が入り、頸部が前突した姿勢(いわゆるストレートネック・スマホ首)になりやすい ── これらが複合的に側頭筋と周辺筋の緊張を高め、仕事中に頭痛を引き起こします。休憩すると姿勢がほぐれ、筋の緊張が自然に緩んで症状が改善する、という流れです。こめかみを押したときに頭痛が楽になるようであれば、側頭筋の緊張が関与している可能性は十分あります。ただし、毎回仕事中に発症する頭痛が「薬なしでは耐えられないほど強い」「悪化を続けている」「視覚的な前兆(閃輝暗点など)がある」場合は、緊張型頭痛ではなく片頭痛の可能性があり、頭痛専門外来を受診することをお勧めします。
Q. 側頭筋を押すと圧痛(痛み)はあるのですが、頭痛が楽になる感覚はわかりません。効いていないのでしょうか? ── A. 評価結果として、圧痛はあっても頭痛自体が楽になる変化がなければ、「側頭筋が唯一の原因ではない可能性が高い」と判断するのが動画のロジックです。圧痛だけの場合は、側頭筋に緊張や硬さがある(=側頭筋は関与しているかもしれない)が、その頭痛の主な原因が別の部位(例えば後頭下筋・胸鎖乳突筋・肩の筋群)にある可能性があります。あるいは、側頭筋の緊張は頭痛に関与しているが、単発の圧迫では短期的な変化が出にくいケースも考えられます。変化が出ない場合は、まず他の原因の筋群を評価すること、また頭痛の持続期間・強度・随伴症状(吐き気・光過敏など)を医師に伝えることを優先してください。
Q. 生理前後に頭痛が出やすいのですが、側頭筋へのアプローチが有効でしょうか? ── A. 動画でも藤井先生が言及しているように、生理前後の女性の頭痛と側頭筋の硬さが関連するケースは臨床的に少なくありません。女性ホルモンの変動(エストロゲン低下)が痛みの感受性を高めるため、普段は気にならない筋の緊張が頭痛として現れやすくなります。生理前後に特定の筋(側頭筋・後頭下筋・肩の筋群)が硬くなりやすいことも観察されています。もし「こめかみを押すと楽になる感覚がある」であれば、生理前に予防的に側頭筋を緩めるセルフケアとして試す価値はあります。ただし、生理前の周期的な頭痛(月経関連片頭痛)は、ホルモン変動が主因であることも多く、婦人科・頭痛外来への受診が最初のステップとして重要です。頭痛薬の適切な使用と、筋のセルフケアは対立するものではなく、両立させるアプローチが有効なケースが多いです。
Q. 顎関節症(顎が痛い・口が開けにくい)もあるのですが、側頭筋のリリースは同時に有効ですか? ── A. 顎関節症(TMD:Temporomandibular Disorders)の患者では、側頭筋を含む咀嚼筋の過緊張が関与していることが多く、本記事で引用した研究(Menéndez-Torre 2023、De la Torre Canales 2024など)がまさにその文脈で行われています。顎関節症の症状(咀嚼時の痛み・口を開けにくい・顎がカクカクする)に加えて頭痛がある場合、その頭痛の一部は側頭筋の緊張由来である可能性があります。側頭筋のリリースが顎関節症の症状にも良い影響を与えうることは、引用論文が示す徒手療法の有効性(Menéndez-Torre 2023)から間接的に示唆されます。ただし、顎関節内に関節板(関節円板)のずれや、骨の変性・炎症がある場合は、専門の歯科医・口腔外科への受診が必要です。セルフケアの側頭筋リリースは、専門家の評価を受けた上で並行して行うものとして位置づけてください。
この手技が使われた改善症例
顎関節症の相談を、外側翼突筋の話から ── 「体表からは直接触れない筋」への間接アプローチと、頸部側屈の即時変化
同席していた治療家(動画内で藤井翔悟が「前の先生」と呼びかける人物)は、顎関節症や肩こりの主訴を自ら申告したわけではなく、外側翼突筋と頸部可動性の関連を実演するための対象として参加した。開始時に頸部を側屈してもらうと、可動域に硬さがあった。
父親の20年来の耳鳴りが、側頭筋のリリースで「ない気がする」に変わった ── 疼痛誘発動作テストは陰性だった一例
藤井の父親には、長年(藤井自身の見積もりではおよそ20年)続く耳鳴りがあった。耳の中で虫が飛んでいるような「ギーン」という高い音が細く長く持続し、就寝時にも鳴っていた。過去に脳神経科・耳鼻咽喉科を受診して聴力検査などを受けたが、原因となる異常は指摘されず、処方薬を服用しても変化はなかった。
※ いずれも本人の同意を得て匿名化した記録です。経過には個人差があります。
限界と注意・受診の目安
- ▸動画の核心(一番硬い点を押して頭痛が楽になるかを見る評価法、圧迫によるリリース)を直接検証した高品質な研究は現時点では存在せず、藤井先生の臨床経験に基づく手技です。効果には個人差があります。
- ▸雷鳴頭痛・発熱嘔吐項部硬直・意識障害・外傷後頭痛・夜間悪化する頭痛は二次性頭痛のレッドフラッグです。これらがある場合は手技を行わず即座に救急受診してください。
- ▸偏頭痛の急性発作中(強い拍動性の痛みがある時)はこめかみへの圧迫が症状を悪化させる可能性があります。急性期は避け、発作が落ち着いてから試みてください。
- ▸高血圧の方・抗凝固薬服用中の方は、こめかみへの強い圧迫の前に医師に相談してください。
- ▸圧迫中に強い拍動感・強い痛み・不快感がある場合はすぐに中止してください。「治る」ことを保証するものではありません。
監修・参考文献
掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。
監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)
- [1] De la Torre Canales G, Câmara-Souza MB, Ernberg M, Al-Moraissi EA, Grigoriadis A, Poluha RL, Christidis M, Jasim H, Lövgren A, Christidis N.(2024).「Botulinum Toxin-A for the Treatment of Myogenous Temporomandibular Disorders: An Umbrella Review of Systematic Reviews」. Drugs.
- [2] Menéndez-Torre Á, Pintado-Zugasti AM, Zaldivar JNC, García-Bermejo P, Gómez-Costa D, Molina-Álvarez M, Arribas-Romano A, Fernández-Carnero J.(2023).「Effectiveness of deep dry needling versus manual therapy in the treatment of myofascial temporomandibular disorders: a systematic review and network meta-analysis」. Chiropractic & manual therapies.
- [3] Buzatu R, Luca MM, Castiglione L, Sinescu C.(2024).「Efficacy and Safety of Botulinum Toxin in the Management of Temporomandibular Symptoms Associated with Sleep Bruxism: A Systematic Review」. Dentistry journal.
- [4] Zhu M, Huang Z, Wang Y, Qin J, Fan M.(2024).「Effects of botulinum toxin type A in patients with painful temporomandibular joint disorders: a systematic review and meta-analysis」. Annals of medicine and surgery (2012).