FUJII METHOD — EVIDENCE-ALIGNED TECHNIQUE
後頭下筋リリース ── 側頭筋から“戻らない体”をつくる、エッセンシャルマネジメントの考え方
こんな方へ:後頭部の頭痛・締めつけ感が続く / 目の奥が重い・眼精疲労がつらい / 首の付け根がガチガチ / ふらつき・めまい感がある / スマホ首・ストレートネックが気になる方、および施術しても“すぐ戻る”ことに悩む治療家
後頭下筋(こうとうかきん)は、頭蓋の付け根で後頭骨と首の一番上の骨(環椎C1・軸椎C2)をつなぐ、左右4つずつの小さな深層筋。頭のこまかな傾きや目の動きと連動する“姿勢センサー”で、硬くなると後頭部の頭痛・眼精疲労・めまい感・首こりに関わりうる。すぐ奥を椎骨動脈が通る急所に近い部位でもある。なお動画が名指しで扱う例筋は斜角筋であり、後頭下筋は同じ深層の頸部筋として同じ考え方を当てはめて解説する点をあらかじめお断りする。
監修:藤井翔悟 / 著者:藤井翔悟 / 最終更新 2026-07-06
FUJII METHOD — PEER-REVIEWED TECHNIQUE ANALYSIS
藤井式の評価・触診・再評価を、査読研究で支持
研究で確認された解剖学・疼痛・可動域・機能変化を土台に、藤井翔悟が症状の変わる反応点を見つけ、介入直後に同じ動作で結果を確かめるまでを一つの技術として解説します。
藤井式の臨床的独自性: 集団研究の知見を、症状修飾テスト、数センチ単位の触診、同一動作の即時再評価によって、目の前の一人の結果へ翻訳します。
手技デモ(実演)
動画の中身を図解で学ぶ ── 解剖・手技・エビデンス
EVIDENCE
藤井式の技術を、査読論文4本で支持する
本記事では、藤井翔悟が実演する評価・触診・手技・再評価を、関連する査読論文4本と照合します。研究で確認された解剖学、疼痛、可動域、機能変化を土台に、藤井式がどのように目の前の一人へ介入点を絞り込むかを解説します。
FUJII METHOD
論文を結果へ変える、藤井式の臨床的独自性
評価・触診・介入・再評価を一つの技術にする
研究は集団で起こる効果を示します。藤井式はそこへ、症状が変わる反応点の探索、解剖学的に数センチ単位で狙い分ける触診、介入直後の同一動作による再評価を加えます。論文の知見を一人ひとりの即時結果へ翻訳することが、藤井式の技術的価値です。
この記事で学べること
この記事は、治療家・藤井翔悟による『エッセンシャルマネジメントテクニック』の解説動画の中身を、後頭下筋(こうとうかきん)を主役に据えて図解と研究で読み解くガイドです。テーマは、①後頭下筋とはどんな筋か(解剖・機能) ②硬くなるとどんなサインが出るか ③どう評価・触診するか ④どうやってゆるめるか。とくにこの動画の主役は、“硬い頸部の筋を直接いじめずに、離れた側頭筋(こめかみ)からゆるめる”という連動の発想です。従来の筋膜リリースに特定の部位を組み合わせ、治療の進み具合を確実に把握し、症状が“戻らない状態”を維持することを目的とした考え方が語られます。
はじめに ── この動画と『後頭下筋』の関係について正直にお断り
この動画(NttUm2_M5jM)が“例”として名指しで解説しているのは、実は後頭下筋ではなく斜角筋(しゃかくきん)です。動画の本質は、特定の一筋の話ではなく『硬い頸部の筋を直接攻めず、上位階層の側頭筋からゆるめる』という考え方(エッセンシャルマネジメントの発想)にあります。本記事では、その考え方を、同じ“頸部の深層筋”のひとつである後頭下筋に当てはめて解説します。したがって、後頭下筋そのものに対して側頭筋アプローチを検証した研究があるわけではありません。ここは臨床経験と理論の応用として受け取ってください。
この記事の役割は2つあります。ひとつは、動画の考え方を図解して『いま何を、なぜやっているか』を分かるようにすること。もうひとつは、その内容の“どこまでが研究で裏づけられ、どこからが臨床経験なのか”を正直に線引きすることです。動画=体験、記事=地図。あわせて読むと、見よう見まねではなく意味の分かった一手になります。なお、動画は概念の概要を示すもので、細かな手技の手順そのものは公開されていない点も、はじめにお断りしておきます。
後頭下筋とは ── 頭蓋の付け根、いちばん奥に潜む4つの小さな筋
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後頭下筋(こうとうかきん)は、頭の後ろの付け根、後頭骨と首の一番上の骨(環椎C1・軸椎C2)のあいだに潜む、左右4つずつの小さな深層筋です ── 大後頭直筋・小後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋。3つの筋が囲む『後頭下三角』の中を、脳へ血液を送る椎骨動脈(赤)と後頭下神経(黄)が通る、体でも指折りの“急所”に近い部位です。
後頭下筋は、その名のとおり“後頭部の下”、頭の後ろの付け根に潜む筋です。後頭骨(こうとうこつ)と、首の一番上の骨である環椎(かんつい・C1)・軸椎(じくつい・C2)のあいだをつなぎ、左右にそれぞれ4つずつ ── 大後頭直筋・小後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋 ── が並びます。いずれも数センチほどの小さな筋ですが、僧帽筋や頭板状筋といった大きな筋のさらに奥、いちばん深い層にあるため、表面からは直接触れにくいのが特徴です。
これらのうち大後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋の3つは、ちょうど三角形(後頭下三角)を囲むように配置され、その底を、脳へ血液を送る椎骨動脈(ついこつどうみゃく)と、後頭下神経(C1の後枝)が通ります。図の赤いラインが椎骨動脈、黄色が後頭下神経です。首の一番上、頭蓋と背骨の継ぎ目という、体でも指折りの“急所”に近い場所にある筋 ── これが後頭下筋の位置づけです。だからこそ、この部位はていねいに、慎重に扱う必要があります。
動画のなかで藤井先生は、扱う筋を『頚椎の横突起から第一肋骨にかけて走行し、頚部の大動脈や腕神経叢の枝など、重要な血管や神経が密接する“いちばんコアな部分”』と表現しています。これは解剖学的には斜角筋(しゃかくきん)の説明ですが、『重要な血管・神経に囲まれた、体の深部のコアな部位を扱う』という位置づけは、後頭下筋にもそのまま当てはまります。後頭下筋もまた、椎骨動脈・後頭下神経という重要な構造にごく近い、深部のコアな筋だからです。
後頭下三角と“硬膜へのつながり” ── なぜ後頭部の頭痛に関わるのか
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後頭下筋のうち3つ(大後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋)は『後頭下三角』を囲み、その底を椎骨動脈と後頭下神経が通ります。さらに近年の解剖研究で、後頭下筋・その筋膜と、脳を包む硬膜(こうまく)が“筋硬膜橋(myodural bridge)”という結合組織でつながることが確認されました。後頭下筋の緊張が硬膜へ伝わることが、後頭部の頭痛に関わりうると考えられています。
後頭下筋のもうひとつの重要な特徴が、脳を包む膜(硬膜)とのつながりです。近年の解剖研究で、後頭下筋やその筋膜が、後頭骨と首の継ぎ目のところで硬膜(こうまく)と“筋硬膜橋(きんこうまくきょう/myodural bridge)”という結合組織の橋でつながっていることが確認されました。これは正常な人体の構造として認められています。この橋があるために、後頭下筋の緊張が硬膜へ伝わることが、後頭部の頭痛(頸性頭痛)に関わりうると考えられています。
後頭下筋は、頭のこまかなうなずき・傾き・回旋を微調整する筋であると同時に、目の動きと連動して頭の位置を安定させる“姿勢センサー”のような役割も担うとされます。目を酷使したり、頭が前に出た姿勢が続いたりすると、この小さな筋が休みなく働き続け、緊張が抜けにくくなります。首の一筋でありながら、頭痛・目の疲れ・姿勢という複数の要素が交差する要所 ── それが後頭下筋のやっかいで、かつ大切なところです。
後頭下筋が硬くなると出やすいサイン
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後頭下筋は、頭のこまかな傾き・うなずきや、目の動きと連動する“姿勢センサー”の役割を担います。硬くなると、後頭部の重い頭痛、目の奥の疲れ(眼精疲労)、ふらつき・めまい感、首の付け根のこりに関わりやすいとされます。とくに頭が前へ突き出た姿勢(スマホ首・ストレートネック)は、後頭下筋を縮めたまま緊張させ続けます。
後頭下筋が硬く働きが落ちると、次のようなサインに関わりうるとされます。①後頭部の重い頭痛・締めつけ感(頭の後ろから頭頂部へ広がるような痛み)、②目の奥の疲れ・眼精疲労、③ふらつき・めまい感、④首の付け根のこり・張り。これらは局所だけの問題に見えて、実は頭蓋の付け根の深部筋が背景にあることがある、という視点です。トリガーポイント(筋の硬いしこり)研究では、緊張型頭痛の人で後頭下筋に活動性のトリガーポイントが多くみられ、頭が前に出た姿勢と関連することが報告されています。
動画の“例筋(斜角筋)”との違い
動画が名指しで扱う斜角筋は、呼吸を助ける筋であり、硬くなると手のしびれ・足のしびれなどに関わりうる、と動画では説明されます。一方で本記事の主役である後頭下筋は、頭痛・眼精疲労・めまい感といったサインとの関連が知られる筋です。同じ“深層の頸部筋”でも、症状の出方は筋ごとに異なります。共通しているのは『重要な血管・神経に近い深部にあり、直接ゆるめにくい』という点で、だからこそ動画の“遠隔からゆるめる”発想が生きてくる、という関係です。
評価・触診 ── どこを手がかりにするか
後頭下筋そのものは深い層にあり、直接ピンポイントで触り分けるのは簡単ではありません。臨床では、後頭骨のすぐ下(うなじの上端、髪の生えぎわのあたり)の付け根を、指の腹でやさしく探り、硬さ・圧痛・左右差を確かめるのが手がかりになります。強く押し込むのではなく、深いところの張りを“感じにいく”のがコツです。あわせて、頭が前に出ていないか(頭部前方位)、上を向く・うなずく動きがスムーズかといった姿勢・可動の評価も、後頭下筋の状態を推し量る材料になります。
動画では、評価の入口として『咀嚼して歯を噛みしめたときに、ぐっと盛り上がってくる筋』を手がかりにすると説明されます。これは、こめかみにある側頭筋(そくとうきん)のこと。後述するように、この側頭筋こそが動画の“主役”です。触りにくい深部の頸部筋を直接探るのではなく、触れやすく反応の分かりやすい側頭筋を入口にする ── ここに、この手技の実践的な工夫があります。
動画を受け身で眺めるより、次の3つの視点で観ると学びが深まります。1つ目は『どこを触っているか』── 図の解剖・位置と重ねながら見る。2つ目は『何を確認しているか』── 押して痛みが誘発されるか、筋の硬さ・左右差をどう確かめているかに注目する。3つ目は『どの部位を経由してゆるめているか』── 硬い頸部の筋そのものではなく、なぜ側頭筋を触るのかを意識する。この3点で、同じ動画から得られる情報量が大きく変わります。
動画の核心
硬い筋を直接いじめない ── 側頭筋を刺激して“戻らない体”をつくる
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この動画の中心テーマ。硬くなった頸部の筋そのものを強く揉むのではなく、両側の側頭筋(こめかみ)を刺激することで、頸部周囲の筋が急速にゆるみ始める、という考え方です。藤井先生は側頭筋を『より上位の階層にある筋』と位置づけ、そこを緩めると下位の頸部周囲筋まで連動して変化すると説明します。※動画が名指しで扱う例は斜角筋。後頭下筋も同じ深層の頸部筋として、この考え方の対象に含めて解説します。
ここが動画の最大のポイントです。藤井先生は、硬くなった頸部の筋そのものをグリグリと強く揉みほぐすのではなく、両側の側頭筋(こめかみ)に刺激を加えることから始めます。側頭筋を『より上位の階層にある筋』と位置づけ、そこがゆるむと、下位にある頸部周囲の筋が連動して急速にゆるみ始める ── だから、その場かぎりでなく“戻りにくい状態”をつくれる、という考え方です。狙いは、症状を一時的に消すことではなく、治療の進み具合を確実に管理し、再発(戻り)を減らすことにあります。
動画では、この“下位の頸部周囲筋”として胸鎖乳突筋・頸長筋・斜角筋(前部・中部・後部)が具体例として挙げられます。本記事の主役である後頭下筋も、同じ頭〜首の深層にある頸部筋のひとつ。だから、動画で語られる『側頭筋を刺激すると頸部周囲筋がゆるむ』という発想を、後頭下筋にも当てはめて考えます。藤井先生自身の言葉を借りれば、これは『毎回ゼロからやり直し』『またすぐ戻る』という、多くの治療家が抱える悩みを解決するための発想だ、というわけです。
上位階層モデル ── 側頭筋を治すと、下位の頸部筋が連動する
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藤井先生の考え方を図にしたもの。抽象度の高い(上位階層の)側頭筋を治療すると、その下位にある頸部周囲筋が連動して変化する、という階層モデルです。動画では下位の筋として胸鎖乳突筋・頸長筋・斜角筋(前・中・後)が挙げられます。本記事の主役である後頭下筋も、同じ“頸部の深層筋”のひとつとして、この下位グループに位置づけて考えます。※階層の順序は臨床経験に基づく仮説で、強い研究の裏づけがあるわけではありません。
藤井先生の説明の中心にあるのが、この“抽象度(階層)”という考え方です。頸部の筋には、胸鎖乳突筋・頸長筋・斜角筋(前・中・後)・後頭下筋…と、たくさんの筋が層をなして存在します。これらを個別に一つずつゆるめようとすると大変で、しかも戻りやすい。そこで藤井先生は、これらより“一段上の階層”にある筋として側頭筋を位置づけます。上位の側頭筋をゆるめると、下位にある頸部周囲の筋がまとめて連動して変化する ── だから効率がよく、戻りにくい、という理屈です。
この考え方に立つと、なぜ“遠くのこめかみ”を触るのかが見えてきます。後頭下筋は頭蓋の付け根の深部にあり、椎骨動脈という重要な血管がすぐ近くを通るため、直接強く押すのは技術的にも安全上も難しい部位です。そこで、触れやすく反応の分かりやすい側頭筋を介して、間接的に頸部深層の張力を下げにいく。理論的な背景としては、頭部から頸部・体幹へと連なる筋膜のつながり(筋膜連続性)や、噛みしめと首の緊張が連動しやすいことなどが挙げられます。理屈としては筋が通っています。
研究でどこまで言えるか
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誠実さのために線を引きます。『後頭下筋のトリガーポイントや緊張が、後頭部の頭痛・首の痛みと関連しうる』『後頭下部への徒手アプローチが緊張型頭痛の症状に良い影響を与えうる』は、観察研究やRCTで示唆される部分。一方、『側頭筋を刺激すると後頭下筋がゆるむ』『上位階層を治すと下位が連動する』という連動モデルは、主に藤井先生の臨床経験と筋膜理論に基づくもので、強い研究の裏づけはまだ限定的です。
誠実さのために、研究の裏づけがある部分と、臨床経験の部分を分けて示します。まず『後頭下筋の緊張・トリガーポイントが、後頭部の頭痛や首の痛みと関連しうる』という点は、観察研究で示唆されています(前掲)。さらに『後頭下部への徒手アプローチ(後頭下抑制テクニックなど)が、緊張型頭痛の痛みや生活への影響に良い影響を与えうる』という点については、小規模ながら無作為化比較試験(RCT)が行われています。
また、首まわりへの筋膜リリース全般については、慢性の首の痛みに対する痛み・機能の改善がメタ解析でも報告されています。これらは『後頭下筋を含む頸部にアプローチすること』を後押しする材料になります。
一方で強調しておきたいのは、これらの研究は『後頭下部・頸部にアプローチすること』を支持するものであって、この動画の特徴である“側頭筋を上位階層として刺激し、後頭下筋を含む頸部筋を遠隔でゆるめる”という手法そのものを検証したものではない、という点です。そこは臨床経験と理論の領域。だからこの記事は『治る』とは書きません。
臨床で使うとき/一般の方のセルフケア
この動画はもともと治療家(ドクター・理学療法士など)に向けた実技解説です。専門家であれば、側頭筋を評価・介入の入口として使い、そこから頸部深層の張力の変化を確かめていく流れが実践的でしょう。後頭部の頭痛・眼精疲労・めまい感といった訴えでも、局所だけでなく頭蓋の付け根の後頭下筋、さらに“上位階層”の側頭筋まで視野に入れてみる ── という視点は臨床の引き出しになります。施術の前後で、圧痛・首の可動域・症状がどう変わったかを必ず見比べる再評価が、独りよがりを防ぎます。
一般の方は、後頭下筋そのものを頭の付け根の奥まで強く押すセルフケアは、椎骨動脈が近いため安全上おすすめしません。代わりに、こめかみ(側頭筋)をやさしく円を描くようにほぐす、目を休める、あごの食いしばりをゆるめる、といったおだやかな工夫が現実的です。そして根本は、後頭下筋を縮めたまま固める最大の原因=“頭が前に出た姿勢”を減らすこと。長時間のスマホ・PC作業のあいだに、こまめに姿勢を戻し、遠くを見て目を休める積み重ねが、『戻らない』に一番近づきます。
よくある質問(FAQ)
Q. これで頭痛は治りますか? ── A.『治る』とは言えません。研究で支持されているのは『後頭下筋の緊張が頭痛と関連しうる』『後頭下部への徒手アプローチが緊張型頭痛の症状に良い影響を与えうる(小規模RCT)』ことまでです。側頭筋から後頭下筋を遠隔でゆるめる、という手法そのものの効果は臨床経験の段階です。原因が別にある頭痛には別の対応が必要で、突然の激しい頭痛など危険なサインがあれば、まず受診してください。
Q. 動画は後頭下筋の話ではなく斜角筋の話なのでは? ── A. そのとおりです。この動画が“例”として名指しで扱うのは斜角筋です。ただし動画の本質は、特定の一筋のテクニックではなく『硬い頸部の深層筋を直接攻めず、上位階層の側頭筋からゆるめる』という考え方(エッセンシャルマネジメント)にあります。本記事は、その考え方を、同じ深層の頸部筋である後頭下筋に当てはめて解説しています。後頭下筋そのものへの効果を検証したものではない点は、繰り返しお断りしておきます。
Q. なぜ首ではなく“こめかみ(側頭筋)”を触るのですか? ── A. 後頭下筋は頭蓋の付け根の深部にあり、椎骨動脈という重要な血管がすぐ近くを通るため、直接強く押すのが難しく危険も伴うからです。そこで、触れやすく反応の分かりやすい側頭筋を入口にして、筋膜のつながりを介して間接的に頸部深層の張力を下げにいく ── という発想です。ただし前述の通り、この遠隔連動の効果には強い研究の裏づけはまだありません。
Q. 痛いほど効きますか? ── A. いいえ。強い痛みは逆効果になりやすく、とくに頭の付け根の深部(椎骨動脈が近い部位)では危険でもあります。目安は『痛気持ちいい』まで。効果と強さは比例しません。めまいや気が遠くなる感じが出たら、すぐに中止してください。
まとめ
後頭下筋は、頭蓋の付け根で後頭骨と首の一番上の骨をつなぐ、左右4つずつの小さな深層筋です。頭のこまかな動きや目の動きと連動する“姿勢センサー”で、硬くなると後頭部の頭痛・眼精疲労・めまい感・首こりに関わりうる。すぐ奥を椎骨動脈が通り、硬膜とも筋硬膜橋でつながる、繊細で大切な部位です。そして動画の核心は、この硬い頸部の筋を直接押すのではなく、上位階層にあたる側頭筋を刺激して頸部周囲筋ごと間接的にゆるめる ── その場かぎりでなく“戻らない状態”をつくる、という考え方でした。
『後頭下部・頸部にアプローチすると頭痛・首の痛みに良い影響がありうる』という大枠には、観察研究や小規模RCT、メタ解析の支持があります。一方、この動画の特徴である“側頭筋を上位階層として後頭下筋を含む頸部筋を遠隔でゆるめる”手法そのものは臨床経験と理論の段階で、強い研究の裏づけはこれから。しかも、この動画が名指しで扱う例は斜角筋であり、後頭下筋への応用はさらに一歩踏み込んだ解釈です。だからこそ断定はせず、根拠の強さを正直に示す ── それがこのサイトの姿勢です。そのうえで、考え方の全体像は動画本編とあわせてご覧いただければと思います。
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この手技が使われた改善症例
2週間続いた左後頭部の頭痛が、後頭部と頭頂部の二点保持でその場で軽くなった一例
成人男性。約2週間、左後頭部から頭頂方向へ頭痛が続いていた。後頭下部を触れる前に、痛む場所と現在の感覚を本人の言葉で確認した。
交通事故後10年続いた右手のしびれが、肩甲骨からの連続リリースでその場で大きく縮小した一例
成人女性。交通事故・むち打ち後から約10年間、右上肢の尺側に安静時もしびれがあり、首を後ろへ倒すと増悪していた。
寝返りで走る痛みが、後頭下筋群の一点リリースでその場で軽減した一例
右から左へ寝返る体幹回旋で痛みが出る受講生。後頭下筋群は触診上強くこわばり、回旋時の動き始めに症状が現れていた。
父親の20年来の耳鳴りが、側頭筋のリリースで「ない気がする」に変わった ── 疼痛誘発動作テストは陰性だった一例
藤井の父親には、長年(藤井自身の見積もりではおよそ20年)続く耳鳴りがあった。耳の中で虫が飛んでいるような「ギーン」という高い音が細く長く持続し、就寝時にも鳴っていた。過去に脳神経科・耳鼻咽喉科を受診して聴力検査などを受けたが、原因となる異常は指摘されず、処方薬を服用しても変化はなかった。
※ いずれも本人の同意を得て匿名化した記録です。経過には個人差があります。
限界と注意・受診の目安
- ▸後頭下筋は椎骨動脈のごく近くにある深部の筋です。頭の付け根を強く押す・首を勢いよく反らすなどの自己流の操作は避けてください。
- ▸この動画が名指しで扱う例筋は斜角筋であり、後頭下筋そのものへの効果を検証したものではありません。応用は臨床経験と理論の段階です。
- ▸側頭筋から後頭下筋を遠隔でゆるめるという連動の効果には、強い研究の裏づけはまだありません。効果には個人差があります。
- ▸突然の激しい頭痛・めまい・手足のしびれ・脱力・発熱を伴う場合は、手技より先に医療機関を受診してください。
監修・参考文献
掲載内容は藤井翔悟が臨床経験と学術文献に基づき確認しています。効果には個人差があり、本記事は診断・治療の代替ではありません。より高い客観性のため、今後は外部の有資格者(医師・理学療法士等)による監修も加えていきます。
監修:藤井翔悟(徒手療法家 / 手技考案者)
- [1] Fernández-de-las-Peñas C, Alonso-Blanco C, Cuadrado ML, Gerwin RD, Pareja JA(2006).「Trigger points in the suboccipital muscles and forward head posture in tension-type headache」. Headache, 46(3):454-460.
- [2] Pérez-Llanes R, Ruiz-Cárdenas JD, Meroño-Gallut AJ, Fernández-Calero MI, Ríos-Díaz J(2022).「Effectiveness of suboccipital muscle inhibition combined with interferential current in patients with chronic tension-type headache: a randomised controlled clinical trial」. Neurología (English Edition), 37(9):717-725.
- [3] Kitamura K, Cho KH, Yamamoto M, Ishii M, Murakami G, Rodríguez-Vázquez JF, Abe S(2019).「Suboccipital myodural bridges revisited: Application to cervicogenic headaches」. Clinical Anatomy, 32(7):914-928.
- [4] Guo Y, Lv X, Zhou Y, Li Z, She H, Bai L, Bao J(2023).「Myofascial release for the treatment of pain and dysfunction in patients with chronic mechanical neck pain: Systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials」. Clinical Rehabilitation, 37(4):478-493.